先日、たまたまラジオで、懐かしい小説のことを話していた。
池波正太郎著「その男」。
十代のとき、その時の友人のお父さんに頂いて、貪るように読んだ。
十代は煌めくような主人公の活躍にカッコ良さを感じ、主人公と妻の濡れ場で鼻血が出そうになるほど興奮し…といった表面ばかりを感じたものだが、30代にもなるとまた、そこに流れる悲しみやそこに対する共感が入り混じり更に面白く読めた。
主人公は、幕末から昭和を駆け抜けた、杉虎之助という架空の人物。時代に翻弄されつつ、数奇な運命で幕府の立場で明治維新に巻き込まれ、西南の役では薩摩側の立場から歴史を経験する。
詳しい内容は実際に読んでもらうとして、感想を…。
両方とも、正史的には賊軍扱いになる立場。
幕軍で隻腕の剣士として活躍する伊庭八郎や主人公の師、池本茂兵衛、最初の妻礼子、作中で坂本龍馬を斬ったようにほのめかされている佐々木只三郎…西南の役では桐野利秋や西郷隆盛といった、人びとが躍動する。
で、みんなすごいいい奴らばかりで、なんでそんないい奴ら同士で殺しあわなきゃいけないんだ、って気持ちになる。
そのヒントになるのが、師が主人公に話す、このセリフに尽きるのではないか。
今だからこそ、このセリフ、大事じゃないかな。
正義を安っぽく唱える連中は、フィクションであっても池本茂兵衛が吐き出したこの言葉を改めて繰り返し、噛みしめるべきではないか。
池波正太郎著「その男」。
十代のとき、その時の友人のお父さんに頂いて、貪るように読んだ。
十代は煌めくような主人公の活躍にカッコ良さを感じ、主人公と妻の濡れ場で鼻血が出そうになるほど興奮し…といった表面ばかりを感じたものだが、30代にもなるとまた、そこに流れる悲しみやそこに対する共感が入り混じり更に面白く読めた。
主人公は、幕末から昭和を駆け抜けた、杉虎之助という架空の人物。時代に翻弄されつつ、数奇な運命で幕府の立場で明治維新に巻き込まれ、西南の役では薩摩側の立場から歴史を経験する。
詳しい内容は実際に読んでもらうとして、感想を…。
両方とも、正史的には賊軍扱いになる立場。
幕軍で隻腕の剣士として活躍する伊庭八郎や主人公の師、池本茂兵衛、最初の妻礼子、作中で坂本龍馬を斬ったようにほのめかされている佐々木只三郎…西南の役では桐野利秋や西郷隆盛といった、人びとが躍動する。
で、みんなすごいいい奴らばかりで、なんでそんないい奴ら同士で殺しあわなきゃいけないんだ、って気持ちになる。
そのヒントになるのが、師が主人公に話す、このセリフに尽きるのではないか。
日本人というのは、虎之助。白と黒の区別があっても、その間の色合いがない。
白でなければ黒、黒でなければ白と、決めつけずにはいられないところがある。
しかしな虎之助。人の世の中というものは、そのように、はっきりと何事も割り切れるものではないのだよ。
何千人、何万人もの人びと、みなそれぞれに暮らし もちがい、こころも躰もちがう人びとを、白と黒の、たった二色で割りきろうとしてはいけない
今だからこそ、このセリフ、大事じゃないかな。
正義を安っぽく唱える連中は、フィクションであっても池本茂兵衛が吐き出したこの言葉を改めて繰り返し、噛みしめるべきではないか。
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