松代守弘の展示日記

松代守弘の展示準備および開催状況を告知するブログです。

小池英文写真展「瀬戸内家族」と子鬼石拓写真展「鉄港」

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なんだかんだでやることは多いのだけど、引きこもって作業しているとカラダがなまって仕方ない。また、間もなく閉鎖されるコニカミノルタプラザの展示が最終週を迎えていることもあり、時間を割いて鑑賞に赴いた。

とまぁ、そんな気持ちでコニカミノルタプラザを訪れたためか、いずれの展示も感傷的ななにかを刺激する。特に小池英文写真展「瀬戸内家族」は、自分自身が過ごした中国地方から九州にかけての沿岸風景を思い起こさせるものがあり、観るというよりは懐かしさに浸るようなところがあった。
作品としてはピントの位置が興味深く、つい覗き込むような感じになってしまうところもまた、没入感を高めていたように思う。もちろん、自分の記憶にある沿岸風景と島の生活は全く異なり、作品が描き出す人間模様は見知らぬ世界と言っても良いのだが、それを安々と乗り越えて醸し出される既視感に、作者のかすかな企みを感じる。もちろん、自分は大喜びでその企みに乗り、そして島の暮らしを疑似体験するのだった。

次にプレイスMへ向かい、子鬼石拓写真展「鉄港」を鑑賞した。
こちらはポストカードのギラついた船腹に惹き寄せられていたのだが、会場ではタイトルそのままの硬質な作品が観るものを待ち構えており、作品の前でしばし立ちすくんでしまった。これは作品と無関係の連想で、むしろ作者の意図には反しているだろうが、それでも眼とか鉄とか構成とか、そういう言葉が脳内をぐるぐる回ってしまう。それどころか、無駄にテンションまで上がってしまい、妙に楽しい気持ちが芽生えても来る。作品そのものはクールで、どちらかと言えば正反対の静謐さを醸してさえいるのだが、その中にひとり佇んでいると、なぜか自分で自分をコントロールできないような、そんな衝動が湧き上がってくるのだ。

ともあれ、いずれも素晴らしい内容で、鑑賞を強くおすすめします。

リフレクション写真展2016




風景写真をテーマとして湊雅博氏がディレクションする「リフレクション写真展」が今年も開かれたので、仕事の合間に会場の表参道画廊へ足を運んだ。
展示の内容や方向性などについては、湊氏のコメントや深川雅文が寄稿した『「夜警」を超えて』を参照していただくこととして、自分の中で煮詰まりつつあった風景写真という存在に対し、強い刺激をもたらすと同時にひとつの道筋を示す内容であったことは、大きな収穫でもあった。
なかでも寺崎珠真氏の作品からは、来てはそっと覗き込み、そして立ち去るような漂泊者めいたまなざし、どことなくピーピングめいた聖域への侵犯を思わせる背徳性すら漂わせた、強く、しかしとらえどころのない、言語化することで変質してしまうなにかを感じ、深く惹きつけられた。

会期は今週末まで。とてもおすすめの展示です。是非会場へ足を運んでください。

中島洋紀写真展「Tokyo Attribute」と原陽子展「霏霏」

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前から観たかった「アントニオ・ダス・モルテス」がソフト化されていたことを知り、喜び勇んで購入、視聴したところ、案の定というかなんというか、すっかりハマってしまう。ありがたいことに、ネットではメインテーマが配信されており、さっそく購入しては繰り返し聴いている。

 さておき、好きな作家氏が個展を開いたので新宿へ向かい、ついでにメーカー系ギャラリーもはしごした。
 最初に鑑賞したのはニコンサロンの中島洋紀写真展「Tokyo Attribute」で、ファッショナブルに決めた人々をカタログ的に正面からとらえたモノクロポートレートだが、作家のクールな目線が見事に決まった展示である。ファッショナブルな人々のポートレートは、作家とモデル、そして着用者との距離感が難しいように思っているが、この展示ではそこをうまく制御しつつ、作家の主張を押し付けすぎない冷静さもあり、すっかり感心させられた。

 次に鑑賞したのはプレイスMの原陽子展「霏霏」で、樹々に降り積もる雪と、その光景を丁寧に収めた作品を展示していた。雑木林と思しき樹木の立ち並ぶ空間が、降り積もる雪によってテクスチャめいた立体的な平面となり、明暗の境界すら定かではなくなる有様は、自分の好みにぴったりで、非常に強い印象を受けた。

 いずれもおすすめの展示です。ぜひ会場へ足を運んでください。

林朋奈写真展「かかとの砂」とゴトーマサミ写真展「Style」

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ようやく桜も咲いたかと思ったら、またえらくさむぅなってしもた。
とはいえ、冷たい風の向こうに感じる日差しの暖かさは、重い腰をほんの少し軽くしてくれる。

気になっている作家氏からポストカードを頂いたこともあり、久しぶりに新宿方面の写真ギャラシーをはしごした。

最初に鑑賞したのはニコンサロンで開催中のゴトーマサミ写真展「Style」で、河川敷に暮らす人々の棲家やその周辺を、正方形フォーマットでストイックに撮影したモノクロ作品だった。テーマや撮影の方法論は硬派と言っても良かろうが、最近よくみかける沙の入ったアートペーパーにプリントしているところは、いささか調和を欠いているようにも感じた。
ただ、飾り気のないバライタ紙を用いるとテーマのストイシズムを過剰にしかねないし、装飾的なアートペーパーを用いることによる批評性も無視できないので、趣味の問題と言ってしまえばそれまでなのだが、個人的には違和感を拭い去ることができなかった。
とはいえ、そのような点を差し引いてもなお魅力的な作品であり、隙のない構図とともに鑑賞者を惹きつける力強さも充分に備えている。

次に鑑賞したのはサードディストリクトギャラリーの林朋奈写真展「かかとの砂」で、こちらもストイックでケレン味を感じさせないモノクロ作品である。ただ、ニコンサロンの「Style」とは対照的に曖昧でとらえどころがなく、それでいて鑑賞者をとらえて離さない力を持つ、日常の隙間からこぼれ落ちたような光景をテーマにしていた。
作品に模範解答を求めてしまう臆病な鑑賞者にはけして手の届かないところに、作品の魅力が隠されている、そんな展示だった。

いずれもおすすめの展示です。機会を見て足を運んでください。

写真グループ展 「リフレクション」2015と若山忠毅写真展「余暇、観光、そして疎ら -東北・北陸-」

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楽しみにしていた写真展が始まったので、仕事の合間にでかけた。
最初に鑑賞したのは表参道画廊の写真グループ展「リフレクション」2015で、企画そのものへの興味もさることながら、参加している作家もかねてより注目している人々だったので、ちょっと無理して時間を作った。
展示内容については告知ページのコメンタリーが簡潔にして要を得ているので、そちらをお読みいただくとして、壁面にそれぞれの作家が個性を重ねあわせ、響きあうように作品を配置していたのが非常に印象深かった。
グループ展のインスタレーションは個展のそれよりもはるかに難しいところだが、この展示は作品を通じてにじみ出る作家の色を程よく調和させつつ、企画としての主題も意識して楽しめた。

次に鑑賞したのは蒼穹舎の若山忠毅写真展「余暇、観光、そして疎ら -東北・北陸-」で、若山氏は去年にもTAPギャラリーで「余暇、観光、そして疎ら」タイトルの展示を開いている。今回の展示はその東北編というところであろうが、アノニマスな風景であることに変わりはなく、自分はさほど撮影地を意識することなく鑑賞した。とはいえ、自分は若山氏の作品に「名も無き土地の語られざる風景」を観るので、実はアノニマスな中にも土地の持つ個性が滲んでいるのかもしれない。だが、それは分からないし、あえて読み取ろうともしなかった。
ともあれ、整った佇まいの中にそこはかとなく漂う空気感や、じわりと迫る不吉さ、あるいはどこか浮かれたような見通しの良さなど、様々な要素を含んだ作品であり、自分としては十分に堪能させて頂いた。

いずれもオススメの展示です。ぜひ会場へ足を運んでください。

Jui写真展「Through the Wormhole」

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百年の孤独を思わせる長雨が終わり、空に戻った透き通る青さと夏の雲にあおられて、雨の間は先送りしていた個展鑑賞へ出かけた。

お目当ては新宿ニコンサロンのJui写真展「Through the Wormhole」で、反射や透過光を活かしつつ、ややハイキー気味にまとめた硬質な写真が展示されていた。ラフな用でも破綻はさせず、整いすぎたあざとさも回避させつつ、ギリギリの境界域に落とし込んだ構図に、デジタルであることを活かした硬質さ、そしてノイズを排除した色調のすべてが私の心をとらえた。
深い思考を重ねつつ準備し、感じるままに撮影し、再び思考しつつまとめる制作スタイルには、これまでにも非常に多くの刺激を受けたが、今回の作品には特に強い衝撃を受けた。自分の求めていた回答のひとつを見出したと行っても過言ではなく、なんらかの影響をうけるのは間違いないだろう。

ともあれ、強くおすすめしたい展示です。ぜひ、会場へ足を運んでください。

タケイミナコ写真展「ひょん」に皆川はじめ写真展「キューバ!明日を信じて」と今井宏写真展「Another Planet」

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盆を過ぎてから曇りがちの天気が続き、夏というのに日があまり差さない。
曇天の下、季節感を失った街をモノクロで撮るのも好きなのだが、夏が好きな自分はやっぱり日差しが恋しい。そんな、かすかなフラストレーションを抱えつつ、新宿方面のギャラリーをはしごする。

最初に鑑賞したのはニコンサロンの今井宏写真展「Another Planet」で、山間部などに切り開かれた太陽光発電施設などをストイックに撮影している。テクスチャめいた発電パネルの群れと、削り取られた山肌とが対比をなし、展示のリズムを感じさせていた。
撮影もプリントも手堅くソツがなく、静かな生真面目さに包まれており、その落ち着いた佇まいは奥ゆかしさにもとづいているのだろうと、そんなことを思いつつ会場を後にした。

次に鑑賞したのはコニカミノルタプラザの皆川はじめ写真展「キューバ!明日を信じて」で、日差し降り注ぐ南国を舞台にしたストリートフォトとキャンディッド風味豊かなポートレートが展示されていた。こちらも手堅くそつなくまとめられた展示で、特に異国情緒を意識しない、させないところが素晴らしかった。確かにキューバがテーマで、作品もキューバであることの意味をしっかり保っているのだが、彼らが抱える困難を異国人として高みから見下ろすわけではなく、また同化しきって叙情に流れるわけでもない、そういう距離感が非常に素晴らしかった。
また、撮影のタイミングや構図のとりかたも高い水準に達しており、もろもろ参考になるとことが大きい展示だった。

最後に鑑賞したのは同じくコニカミノルタプラザのタケイミナコ写真展「ひょん」で、とりとめのない都市風景をひっそり撮影した、穏やかな作品が展示されていた。いささか被写体そのものの面白さというか、珍奇さに引き寄せられすぎているかのような雰囲気がしなくもなかったが、全体として自分の好きなテーマであり、手法であるので、そのへんはまぁ味わいのうちというか、ご愛嬌といったところでもある。

いずれもおすすめの展示です。ぜひ会場へ足を運んで下さい。

久野梨沙写真展「around here」と吉江淳写真展「村社」

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サークル参加しなくなってから十数年以上になるんだけど、それでもコミケ初日には気持ちがぞわっとしてしまう。いるべき場所にいない後ろめたさのような気持ちを抱えつつ、かと言って早朝から一般参加する余裕もないという、そんな中途半端さを抱えてやりきれない。
とりあえず、気晴らしを兼ねて久々にギャラリーをはしごする。

最初に鑑賞したのは蒼穹舎ギャラリーの吉江淳写真展「村社」で、郊外化されたようなされていないような、街道沿いに点在するであろうショッピングモールとパチンコ屋から、さらに少し奥へ入ったようなところの、田畑と用水路と家屋が織りなす風景の作品だった。カラーの色彩が好みで心地よく、手慣れた雰囲気の構図にも安心感がある。
ふと「遠雷」が聞こえたような、そんな錯覚にとらわれるが、もちろんそんなことはない。むしろ、バブル期以前の都市化されざる郊外観はいい加減に捨て去ったほうが良いのだが、捨て去ることの出来ない、去りゆくこと、消えることを拒んだ景色がそこにあるようにも思った。

次に鑑賞したのはプレイスMの久野梨沙写真展「around here」で、東京の街角や路地をやや風景写真よりにとらえたモノクロのストリートフォトだった。作品の方向性が自分のそれとほぼ同じということもあり、どうしても好意的に観てしまうが、それにしても全体的に優れていると思う。欲を言えば、もう少し鑑賞者の印象に残りやすい、目を引きやすい要素をうまく取り入れられたら良いのだろうけど、かと言って飛び道具的に奇をてらうのはよろしくないし、じっくりと練り上げていくのが良いのだろうなと、そんなことも思う。
幸いにも作家氏は在廊していて、制作の裏側も含めた話をさせていただいた。今回が初めての個展だそうで、これからがほんとうに楽しみである。

どちらもおすすめの展示です。機会があれば、ギャラリーへ足を運んで下さい。

牟田義仁写真展「桃園川緑道」と瀬戸正人展「a lovely day, 1982」

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先月の連休中に仕上げるはずだった文章は、まだ仕上がっていない。ズルズル引っ張った末、別の仕事が入って後回しという、なんとも情けない経緯でいまに至っている。さすがにそろそろ区切りをつけねばならないし、自分のんかではそこそこ形もできているのだが、どうもうまくいかないね。

結局、作業を途中で切り上げ、展示を見に出かけてしまう。ただ、結果的にはそれが良かったのだけど、出かけた時には全く予想していなかったね。

いつものように新宿御苑界隈の写真ギャラリーをはしごする。最も印象に残ったのはサードディストリクトギャラリーの牟田義仁写真展「桃園川緑道」とM2ギャラリーの瀬戸正人展「a lovely day, 1982」だった。

まず、瀬戸氏の「a lovely day, 1982」は日常とも非日常ともつかない状況、空間で撮影された人物とイメージが、なんとも色っぽくて艶かしく感じられた。瀬戸さんはこの頃からこんな写真を撮っていたのかと、作家の過去を垣間見る思いも含めて、非常に楽しく、そして興味深く鑑賞させていただいた。

次にサードディストリクトギャラリーの牟田義仁写真展「桃園川緑道」を鑑賞したが、こちらは大判のストレートでストイックな都市風景を生真面目に丁寧にプリントしており、インスタレーションも巧みという、自分の好きな要素だけで構成されたような展示だった。もちろん大喜びである。
夏の日差しとコントラスト、そして植物が住宅地の静けさに潜むドラマを、静かに浮かび上がらせている。また、コンタクトなどいくつかの作品は大判フィルムのノッチもプリントされており、作品のシリアスな雰囲気を高めていた。

会期は日曜まで、いずれも非常におすすめの展示です。

川鍋祥子写真展「そのにて│sononite」

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連休中に仕上げてしまおうと思っていた文章は仕上がらず、書く代わりにふらふら出かけては写真を撮っていた。わかりやすく逃避行動なんだけど、こういう時に無理やり書いても、あまりよいものにならない。まぁ、そんなこんなで、気持ち良い五月晴れに誘われ、今日もギャラリーへ出かける。

乃木坂の書店兼ギャラリー「Books and Modern」にて開催中の川鍋祥子写真展「そのにて│sononite」を鑑賞した。川鍋氏の作品は正方形フォーマットの良さを十分に引き出す構図と、ややハイキー気味の処理で叙情的に仕上がっている。画面は穏やかに心地よい世界を形成しているが、そこには雪に埋もれたリンゴが静かに朽ち果ててゆく厳しさ、あるいは儚さが潜んでいた。

観るものを強く引きこむ作品です。
会期は今週末まで。土日は作家も在廊とのことで、ぜひ会場へ足を運んでいただきたい。
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