『その土曜日、7時58分』


《監督》 シドニー・ルメット
《脚本》 ケリー・マスターソン
《出演》 フィリップ・シーモア・ホフマン、イーサン・ホーク、マリサ・トメイ、アルバート・フィニー

『十二人の怒れる男』のシドニー・ルメット監督が実力派キャスト共演で描いた犯罪サスペンス。アンディとハンクの兄弟は、自分たちの両親が営む宝石店に押し入り強盗を働くが、事態は思わぬ方向に転んでいき…。

まず、このタイトルにそそられました。

原題は 「Before the Devil Knows You're Dead」で、これは映画の初めのシーンに字幕で流れた言葉で、この不吉な原題にもまた惹かれるものがあります。

                 May you be in heaven half an hour
                         Before the devil knows you're dead

            早く天国に着きますように
          死んだのが悪魔に知られる前に


その土曜日、7時58分、おそらく開店直前の宝石店を襲おうと計画したアンディ(ホフマン)とハンク(ホーク)の兄弟。映画はその顛末を、それぞれの人物の視点で、時間を前後させながら少しずつ見せていくというスタイルで進んでいく。 
けれども、こんな不吉なタイトルからして観る前から、この物語は良い方向へは進んでいかないだろうということは分かっていました。。。いましたが、想像以上に最悪な結末を迎えることになりました。

両親の店に強盗に入ろうなんて考えてしまうほど金に困っているこの兄弟は、その計画が失敗する以前に、もうすでに人生に失敗しているように見えます。
この物語のように、どこまでも悪い方へ転がり落ちていく話の主人公の多くは、そのきっかけが起きる時点ですでに破たんしてしまっている...「おまえはすでに死んでいる」状態であって、どうしてここまで堕ちてしまったのだろう、何が本当の原因だったんだろうと、そこに本来のテーマを探してしまうことがよくあります。

この映画では、そのひとつは「家族」...アンディとハンクと両親...特にアンディと父親との関係であろうことが垣間見えます。
親子というものは、本来は血で繋がった一番近くシンプルな関係のようですが、実に複雑でやっかいで、微妙な間柄であり、ひどく影響力のあるものだと思うことがあります。
でも、この親子にどんないきさつがあったにせよ、映画の中でのこの父親はまっとうな人間に思えるし、長男アンディがこんなにも酷く破滅の道を行ってしまったことの言い訳にはならない気がします。

クスリに溺れ、父親にも、妻にも、誰にも愛されない人間だと思っているアンディは、おそらく自分自身も自分を愛することができなかったのでしょう。

この映画は2007年のものですが、アンディの姿がフィリップ・シーモア・ホフマン本人の最期のイメージと重なってしまって、とても辛くなりました。
多くの人が認める名優であったのに、残念でなりません。

フィリップ・シーモア・ホフマンは、無事に天国に着いたのでしょうか?
死んだのが悪魔に知られる前に。



『バッド・ルーテナント』


出演: ニコラス・ケイジ, エヴァ・メンデス, ヴァル・キルマー

監督: ヴェルナー・ヘルツォーク

ストーリー:ハリケーン・カトリーナが襲来した直後のニューオリンズ。逃げ遅れた囚人を救い出したことで表彰され、昇進を成し遂げた正義の刑事テレンス・マクドノー(ニコラス・ケイジ)。
しかし彼は賭博に興じ、恋人の高級娼婦フランキー(エヴァ・メンデス)と共にドラッグに手を染め、挙げ句の果てには警察が押収したドラッグを盗み出すという裏の顔を持っていた。ある日、不法移民の一家5人が惨殺されるという事件が起こる。テレンスはこの事件の陣頭指揮を執ることになるが、事態は思わぬ方向へと転がっていく


以前から大絶賛していた、ハーヴェイ・カイテル主演の『バッド・ルーテナント 刑事とドラッグとキリスト』が、ニコラス・ケイジでリメイクされる。。。その話を聞いた時には、私的には大ブーイングでした。
リメイクは、最初から比較対象があるだけに難しいものだし、リメイク映画が成功した例の方が少ないのでは?ましてやあの、衝撃的問題作を...ハードル高いよ?ニコラス刑事(笑)?ムリムリ〜という観る前からの感想。

けれどもこのリメイクのおかげでオリジナルバージョンもDVD化が実現、加えて、これを観たからオリジナルも見てみようという人もあって、バッド・ルーテナントは20年の歳月を経て再び日の目を見る運びとなりました。ヘルツォーク監督、ありがとう。

監督が「これはリメイクではない」と言っているという話も聞きましたが、確かにストーリーも雰囲気もかなり異なっていて、舞台はニューヨークからニューオリンズへと移り、オリジナルのまさに《衝撃》の部分の核となる「刑事とドラッグとキリスト」という部分も省かれ、ただの「バッド・ルーテナント」になってしまった…リメイクというよりはパロディに近いものに感じられました。
や、もしかしたら、もっとパロディ色を前面に出すとか、もっとブラック寄りにするとかしたら、より面白い映画になったんじゃないのかなぁ…

腰痛に悩むジャンキーのニコラス刑事は、ある意味カイテル刑事のそれに迫る怪演でした。ニコラス・ケイジもカイテルほどではないにしても良く見ている俳優さんの一人だし、こういうキレまくった役だと『ワイルド・アット・ハート』を思い出して、ヒーローとかコメディとか恋愛ものとかよりも彼にはハマり役なのでは?と思ったし、なにより本人がこの役作りを楽しんでいるみたいな気がしました。
むしろ役作りしすぎて、やりすぎっていうか...笑ってしまいます。

笑ってもいい映画だと分かっていれば(笑)もっと楽しめたかもしれないのに、そこには「リメイク」という大きな壁があって、私にはどうしてもオリジナルの鮮烈なイメージが強すぎて、こちらを巧く楽しめませんでした。
オリジナルの方は20年も前の映画だし、特に日本でヒットしたわけでもなかったので、多くの方がニコラス版を先に観たのかもしれないし、その方がこちらを素直に堪能できただろうと思います。

出演: ハーヴェイ・カイテル, ゾーイ・ルンド, ヴィクター・アーゴ

監督: アベル・フェラーラ

過激な暴力性と贖罪の行く末を描き、92年劇場公開当時物議を醸した問題作。
ありとあらゆる悪行と不正に溺れた、神をも恐れぬ悪徳警官〈バッド・ルーテナント〉が主人公。ショッキングな内容と全編を支配する退廃的な空気感、そして、罪の意識に苦しみもがく主人公の荒々しい叫びが本能的に人々の心を捉えてはなさない。
ニューヨークの警部補LTは、野球賭博、麻薬中毒、買春……と、自らの職業とは真逆を行く、どうしようもない男。ある日、教会の尼僧が強姦されるという事件が起こり、彼は自分の負債をカバーしようと、犯人逮捕の賞金5万ドルを目当てに仕事を始める。
だが、犯人を許そうとする尼僧の信仰深さを目の当たりにした彼は自分の弱さと罪を懺悔し……。


そうは言ったものの、それではニコラス版を観た方にオリジナルを是非ともおススメするかと言えば、それはそれで難しい話かもしれません。
「刑事とドラッグとキリスト」という、観る人を選ぶタイトル。
内容も、上のDVDの解説の通り、酷く重苦しく、ニコラス版のような笑いの要素は全くありません。
そういう意味では「リメイクではない」という話も頷けます。

こちらのバッド・ルーテナントは、悪徳警官というよりも、賭博とドラッグとで堕ちるところまで堕ちた、救いようのない男。もうすでに破たんしていて、殺されるか首をくくるか...その最期の日は目前まで迫っている。
昼間っから彼女の部屋でヘロインをキめ、立場を利用して少女たちに卑猥なまねをさせ...一方で、家族を連れてミサに出かけたりする。
とことん破滅的な、もうめっちゃくちゃな刑事の日々がまた、酷すぎる。

しかし、なんでここまで来ちゃったかねぇ。。。救いを求めるならば、贖罪を望むならば、もっと前にそうするべきだったのに。
それは、自分の弱さなのだと、自分はただただ弱いのだと、子供のように泣きじゃくって神(?)の足にすがる刑事。
大の男が、ここまで自分の弱さをさらけ出す姿には、どういうわけか心を打たれました。
このLTという警官には全く共感するところがないにもかかわらず。
そのクライマックスのハーヴェイの演技は圧巻です。
まさにこの映画が、ハーヴェイ・カイテルの独り舞台と言っていいような、彼のために作られたような映画とも言えるような、そんな気さえする映画です。

かねてから大絶賛していたにもかかわらず、なかなか他人にはストレートに薦められない、私の中のカルト人気No.1の映画でしたが、もしもハーヴェイ・カイテル好きのアナタ(そういう人がいたとして)が観て、面白いと言ってくれたら幸いです。





『ボディクライム 誘惑する女』


出演: ハーヴェイ・カイテル, エマニュエル・ベアール, ノーマン・リーダス

監督: マニュエル・プラダル

■ストーリー
何者かに妻を惨殺され、心を閉ざしたビンセント(リーダス)。隣人アリス(ベアール)は、愛するビンセントの心に明かりを灯したい一心で、殺人犯をでっち上げることを思いつく。たまたま乗ったタクシーの運転手ロジャー(カイテル)を標的と決め、豊満な肉体を与えて誘惑するアリス。熟れた色香の虜となったロジャーは、アリスの意のままに操られ、やがて衝撃の結末を迎えることに──!


リンクを貼ろうと思ってAmazonで検索したら、レヴューにこんな風に書いている方がいた。
…ご丁寧に「誘惑する女」などと余計な副題まで付けて、まるで低級なAVのような作品に仕立てられているのは、メーカーの下卑た販売戦略か…
確かに作品紹介にも「官能」「セクシー」「愛欲」などの文字が並んでいて、なんかそういうエロいものを期待して間違ってDVDを買わせる魂胆なのかもしれませんが。。。ともあれ内容にそぐわない、TUTAYAとかでレンタルするにもちょっと躊躇われる邦題とジャケットです。

先日、これと同様エマニュエル・ベアール主演の『変態島』という映画を観たのだけど、こちらの原題は「Vinyan」というタイ語で「魂」を意味する言葉だそうで、内容も人身売買の絡む社会ドラマ(しかもあんまり面白くない)でしたが、それをアナタ、変態島って...(笑)。変態チックなホラーとかを期待して観た人は気の毒としか言いようがない。この邦題は詐欺だといわれても仕方ない気がしますね。


この『ボディクライム 誘惑する女』の販売戦略も私なんかにとっては逆効果で、ベアールとカイテルが出ていると知らなければスルーしていたに違いない。こんなタイトル、B級の匂いがプンプンするし。。。
けれど、こんな大好きな二人が共演していても、最初に観た時にはあまりいい映画だとは思わなかった。
サスペンスとしてのプロットだとか、謎解き、解決のようなものが一切ない。。。ああ、これはサスペンスですらなかったのだ。「A CRIME」という原題の通り、犯罪を扱った映画ではあるけれど。

観終わってそれほどでもなかったなーという映画は、普通はそれでおしまいでしだいに印象が薄れていくのだけど、この映画の場合はどうもモヤモヤと後を引いて、どういう訳か何度も何度も、この映画の様々な場面を思い出してしまったり、なんでそうなんだろうとか考えてしまったり...
それで一週間経って、いっそのこと、もう一度観た!(笑)

もう一度観たことで、この映画の良さも分かったし、モヤモヤの理由も分かった。(モヤモヤが無くなりはしないが)

簡単に語れば、ビンセント、アリス、ロジャーという、都会の片隅で孤独に生きる三人の男女の物語なのだ。

冒頭、ビンセントが帰宅すると妻が殺されていたというシーン、そして3年後にも犯人は捕まっていないところから物語が始まる。。。ので、この事件を軸にサスペンスが展開するのだと思ってしまうが、彼の妻が何故、誰に、どうやって殺されたかなどの詳細は全く触れられることがない。
ただビンセントが心を閉ざした経緯として、その事件が描かれているのかもしれない...とも思える。

ビンセントに一方的に好意を寄せるアリス...ベアール演じるこの女は全く謎で、どこでどういう風に生きてきたのか...のちに出会うロジャーから「苦悩が顔に刻みこまれている」と言われるけれど、その苦悩は何処から来たのか、何も明かされない。
確かにミステリアスだが、正直言って不思議で不可解な女だ。
たとえば、邦題のごとくターゲットの男を「誘惑」しに行くとして、普通なら謳い文句のような「セクシー」な服でも着て、メイクで盛って「官能」のワナを仕掛けそうなものだけど、すっぴんにジーンズなのだよ。私の普段着のユニ〇ロファッションと違わぬカジュアルさで!そしてその誘い方も、犯人に仕立て上げる騙し方も、やることすべてが稚拙なのだ。

こんな《騙されてください》って顔に書いてあるような女にまんまと引っ掛かるのが、カイテル演じるロジャー。。。彼は毒入りと知っていて喰らったんじゃなかろうか?
「帰ってくるものが好きだ」と言ってブーメランを飛ばすロジャー。かつては浴びるほど飲んで、地獄を見て、それ以来一滴のアルコールも、香水さえも避けてるんだという...彼の過去も、どんな地獄を見たのかも、やはり明かされることはない。
やがて、心底アリスに惚れてしまったロジャーは、毒を食らわば皿までの勢いで自らまた地獄へ身を投じたのではなかろうか?

ともかく、明らかにされない部分が多すぎる。それがモヤモヤの理由です。
その殺人事件の真相と、3人の人物の背景を、ヒントだけでもいいから(笑)誰か教えてくれませんか?

それでもこの映画が良いと思えたのは、その映像の美しさです。
中でも、明け方アパートの屋上からマンハッタンのビル群へブーメランを飛ばすシーンはとても印象的。早朝のブルックリンの空気感を色を抑えた映像で撮っていて、そのモノクロに近い全体的に灰色な中で、差し出される赤いジャケット…あの赤はまさに毒の皿でした。

こうしてあれこれ書いたけれど、誰にでもおススメしたい映画ではありません。モヤモヤするし、後味も良くないし。
でも、ノーマン・リーダス、ハーヴェイ・カイテル、E・ベアールの誰かのファンなら観て損はない映画だと思います。
カイテルのラブシーンはノーサンキューですが。。。








ビアンコのピエロ 《4》

ちらし


【Pierrot de Pierre】の思い出を辿りながらあちこち探していたら、紙モノ類が引き出しから出てきました。
古いちらしやパンフレット、クラウンクラブの会員証、すべて使ってしまったと思っていたポストカードも何枚か...。

数ある中で『ワインとジェスター』をプロフィールに選んだのは、赤ワインと一人酒が好きな自分と重ね合わせたからだったのでしょうか?(笑)

なんだかとても懐かしくて、思い出に浸っていると時間を忘れてしまいそうです。


ちらし2中でも、当時から興味深く何度も読み返したのがこちらでした。

B5用紙が二つ折りになっていて、表側はこんな賑やかなサーカスの広告のような絵になっています。


中は、ピエロと道化についての解説になっています。

ちらし3













日本では、道化師=ピエロと言いますが、サーカスの道化師は「クラウン」という言葉を使うのが一般的。
道化には、宮廷道化のアルルカンやジェスター、オーギュスト、ビアンコ(ホワイトクラウン)など、様々に分類されることがこれに書かれています。

これには私も目からウロコでしたし、もっとクラウンのことを知りたくなりました。
この記事のタイトルも、ビアンコのピエロではなく、ビアンコのクラウンにするのが正しいのかもしれませんが…(どっちにしてもややこしい)

裏側には、「月が照っていて...」というビアンコのピエロ《1》の冒頭に書いたむらいさんの詩のような文章が載っています。

こんな紙一枚でも、私にとってはそれぞれが思い出深い宝物で、だからこそひとつも捨てずにとっておいたのでしょう。
もう新たに手に入れられないのは本当に残念です。

最後に、クラウンミュージアムのパンフレットに載っていた、むらいさんの言葉を記したいと思います。


   夢とうつつを行き来して、愛と悲しみに身をゆだね、
   喜び楽しみに涙して、静かな夜にたたずみて
   雑踏の中で立ち止まり、富と貧とを繰り返し、
   美と醜とを持ちあわせ、遠いまことを求めるもの、
   それを私は道化と呼びたい。

ビアンコのピエロ 《3》

ダンシング クラウン

ビアンコのピエロ、今日はオルゴール編をお送りします。

オフィシャルHPにも載っていますが、この『ダンシング クラウン』は、むらいこうじさんの量産品第一号なのだそうです。

ダンシングクラウン2 ダンシング ライムライト
















箱型になっていて、下の引き出しを引くとオルゴールに合わせて白い道化(ビアンコ)が踊りだす!! という、楽しい作品です。

箱の裏面にも素敵な絵が…サインと1977の作品であることが記されています。

すっかり色あせてしまいましたが、今でもオルゴールはちゃんと鳴りますし、ビアンコも案外激しく踊ります(笑)

曲名は書かれていなくて、聞き覚えのあるメロディでクラシックか、古い映画音楽か...と、かなり検索してみたのですが未だに分かりません。


虹


こちらは手巻きのオルゴールです。
この絵のタイトルは「虹」だったかなぁ…もっと別の、ピエロの心の情景を表すようなタイトルが付いていたようにも思いますが、気のせいかもしれません。
ともかく当時は、むらい作品の中でこの絵が一番好きだったのです。
この絵の、どこかおセンチな感じが心に響いたのだと思います。
この絵のポスターも欲しかったのですが、どうしてだったか手に入れられなかったようで、ポストカードは持っていたはずですが、誰か(たぶん大切な人に)送ったのだと思います。

これも見た目はボロッちいですが、つまみを回すと「Over The Rainbow」がちゃんと鳴っています。

虹 over the rainbow 三人のクラウン ライムライト 









手巻きオルゴールはもう一つ持っています。

三人のクラウン
こちらは『3人のクラウン』というタイトルで、曲は「ライムライト」
箱の裏にシールが貼ってありました。
オーギュストとホワイトクラウンかな...3人それぞれの表情と、ぎゅっと寄り添っているポーズが何かの物語の一場面のようで、訴えかけられるものがあります。


オルゴールは三つとも玄関に飾っていて、陽は当たらなくても20年以上も経てば傷みや色あせは免れませんね。最初からしっかりと保管しておけばよかったかもしれませんが。。。
ヘタに修復しようとして台無しになると大変なので、そ〜っとしておきます。


ビアンコのピエロ 《2》

人形二人

ふたりの人形について。

25〜30年も前のこと、池袋サンシャインの片隅に【Pierrot de Pierre】は、ありました。
黒を基調とした店内は照明も控えめで、サンシャインの喧噪のなかにあってはそぐわない、異質な空間のようでした。

よくピエロを怖いものと捉える人がいますが、まさにそんなダークな、ピエロの暗黒面を表現したような雰囲気もありましたが、私にはそれがとても神秘的で美しく、キャラクター人形やぬいぐるみをカワイイと思うのとは別の感情で、これをウチに連れて帰りたい、連れて帰らなければいけない、という気持ちを抑えられませんでした。
「魅せられた」という、まさにそんな感覚でした。

オルゴール

これがたぶん、一番最初に手に入れた、むらいこうじさんのオルゴール人形です。

ぜんまいを巻くと、ライムライトの曲に合わせてゆっくりと首を回します。
(回すと言ってもエクソシストのように回るのではありませんョ)

実はこの人形の元の衣装は違っていました。
たしか、襟は白、上着はグリーンに赤い星柄で、大きな赤いくるみボタンが付いていました。
けれども長い年月の間に布は風化してボロボロと粉のようになり、手と足も塗装がはがれ落ちてきていました。
オルゴール手足
手足は、剥げてきた塗装をやすりで落とし、アクリルペイントとニスで塗り直し。
洋服は、病後の母のリハビリも兼ねて作ってもらいました。

こんなピエロらしからぬ衣装を着せたのは母のセンスですが(笑)、でも、着せ替え出来るようにして、型紙もとってくれたので、オリジナルに似た布地が見つかったらいつでも着せ直してあげられます。

オルゴール手2
ふっくらとしたその手は、左右の握り方が微妙に違っていて、甲には骨のような静脈のような筋もあり、とても繊細で表情豊かな「手」になっています。

首の後ろに、むらいさんのサインと@1983の文字がうっすらと刻みこまれています。

このオルゴール人形で【Pierrot de Pierre】にすっかり魅せられてしまった私は、少しずつ(当時はまだ貧乏だったので・笑)ピエロをコレクションを増やして行きました。


人形


こちらは、むらいこうじさんのHPにも載っていますが、CMにも登場したことがあるそうです。
Piro(ピロ)という名前だそうですョ。
代々木だったかのミュージアムに行って手に入れました。

こちらもだいぶ色あせ、ブロンドが茶髪になってきてしまいました。
ベルベットのジャケットの《P》は、Piroのイニシャルだったんですね。
この人形も本当に大好きで、自分用に胸にイニシャル入りの黒いジャケットと、黒いつば付きの帽子を持っていたほどです。
人形靴
靴の裏に、PIERROT DE PIERREとお名前と1986とが刻まれています。

本当にこういう細部にまで手が施してあって、単なるピエロの人形ではなく「作品」というにふさわしいものですよね。
私が持っているものはお値段から言っても量産されたものではあるでしょうけれど、それでもとっても美しい作りです。

この二人は、今も私の家のテレビの両側に狛犬のように鎮座しております。時折、これ以上傷まないように箱に入れてしまってしまおうか...とも思うのですが。。。今更。。。ですよね。

ビアンコのピエロ 《1》

   月が照っていて
   地平線がほのかに見へ
   空気がちょっと冷たく澄んでいて
   そこに、道化が一人立っている
   そこでは、人間社会の醜さはすっかり昇華され、
   自分をとりもどす静かな夜が………。

             むらいこうじ


ポスター


一年ほど前、このブログのプロフィールに使っている絵のタイトルを問い合わせるメッセージをいただきました。

ワイングラスとカードを前に、頬杖をつく道化…
孤独で淋しげなクラウンの姿は、白塗りメイクのままだけれど「素顔」を見たような…
妙に惹きつけられるこの絵は、大好きなピエロ作家・むらいこうじさんによるもので、ミニサイズのカードを持っていたのですが、あいにくカードは誰かに送ってしまい、私自身もタイトルまでは分からない旨をお返事しました。

ところが先日その方から、絵のタイトルが分かったので...と、わざわざ報告をいただいたのです。

bianco

『ワインとジェスター』
…それがこの絵のタイトルでした。



その方にお礼のお返事をしながら、そういえばむらいこうじさんは最近どうされているのだろうと検索してみたところ、クラウン・ミュージアムというHPはあるものの、もう新しい作品は作られていないようで、しかも流通しているものもあまり見当たらず、もう彼のピエロは手に入り難いのだということに気がつきました。

それであらためて自分が持っているむらい作品が貴重な物に感じられて、ひとつひとつ手にとって見ているうちに、これは一度きちんと記録しておかねば…と思い立ちました。


上の写真は中でも一番の大物、モノクロのポスターです。

ぽすたー2左下に、サインと‘81 の文字。
1981年…私が購入したのはもう少し後でしたが、もう30年以上も前の作品のようです。

タイトルは分かりません。

パネルに入れたままずーっと部屋に飾っていたので、色あせてしまいましたが、この絵を見るとなぜか心が安らぎ、長年私のそばに一緒にいてくれた友人のような、そんな愛着を感じます。


他にもオルゴールや人形など、私が持っているむらいこうじさんのピエロを、数回に分けてアップしていきたいと思います。


 ★ ビアンコのピエロ 《人形》 

 ★ ビアンコのピエロ 《オルゴール》

 ★ ビアンコのピエロ 《ペーパー類》









『トゥルー・クライム』


翌日深夜0時に死刑執行が決められている囚人フランクの取材を急きょ任された新聞記者スティーヴ(クリント・イーストウッド)は、即座に彼が無実であることを察知し、捜査を開始する。。。残された時間の中で繰り広げられる傑作サスペンス映画。
製作・監督・主演:クリント・イーストウッド

監督がクリント・イーストウッドでジェームズ・ウッズが出ているのに、どうして今まで観なかったのか?
それは↑この、作品紹介にある大まかなストーリーに魅力を感じなかったせいでもある。
だってもう、すべてネタをバラしているようなもので、分かっていてもハラハラドキドキはするんだろうけど流れが想像できすぎてそれ以上興味が湧かなかったと思われます。

実はこのあらすじを読んだ時に、このストーリーはどこかで見たような聞いたような...と思ったのですが、原作がアンドリュー・クラヴァンと知って納得。私、この原作を読んだことがある!
この作家については後で触れますが、好きでよく読んでいたミステリー作家のひとりだったので、この映画も意外と面白いんじゃないかと期待が膨らみました。


イーストウッド監督は、さすが、非常にいい映画に作り上げています。
お話は、このあらすじから想像できる範囲を大きく超えることはないけれど、映画の臨場感と醍醐味は期待以上のものでした。

そもそもこのお話自体、少々作りすぎというか、現実的にはこんなタイムリミットの中ですでに下った判決を覆すような証拠を見つけ出すなんてことは起こらないし、奇跡というよりマジックかイリュージョンの世界です。
けれども、イーストウッド扮する新聞記者が自分の鼻に従って死刑囚の無実を信じ始めるくだりには無理がなく、自然とこのストーリーに入って行ける。だから我々も記者スティーヴと同じように、この死刑囚フランクが無実である、つまりこれは冤罪であると信じ、なんとかして死刑が執行されないことを願いながら観てしまう。
捜査がなかなか進まないところ、奇跡のように糸口をつかむところ、執行時刻が迫ってきているところ...緩急の付け方が巧くて本当に臨場感あるものになっています。

キャストも素晴らしく、フランクとスティーヴを取り巻く脇役たちひとりひとりがとってもいいのです。
冤罪、死刑制度、人種...様々な社会問題を含みながら、テーマはもっと身近で暖かいもの。そうさせているのは、それぞれの役柄の演技だと思います。

でもスティーヴ...(笑)、イーストウッドは、もちろん素晴らしい演技をしてますが、やはりこの役柄にはちょっと年を取りすぎている感が否めませんでしたワ。


さて原作の『真夜中の死線』...あまり印象に残っていないのですが、昔のミステリー読書ノート(手書き)によれば、★4つでした(笑)ので、当時は面白く読めたということでしょう。
アンドリュー・クラヴァンは、キース・ピータースンという別名義でもハードボイルド物を書いていて、どちらも読みだしたら止められない、最後まで一気に読み進みたくなるツカミの上手さがある作家です。

過去に読んで面白かった本を挙げておくと
 『秘密の友人』
 『アニマル・アワー』
 『夏の稲妻』
 『傷痕のある男』
 『裁きの街』

どうも、『幻の終わり』というのが最高傑作という噂なので、これは読みたい本に入れることに。


もうひとつ、この映画から派生して書いておきたいことがあります。
昔、この映画と同様、死刑間近の囚人をカメラマンが取材するという映画がありました。
似たような題材ですが、こちらはよりミステリー色が強く、かなり怖い、そして暗い映画だった記憶があります。
主演はロイ・シャイダー、脇にボニー・ベデリア(ダイハードの奥さんね)が出ていて、この人の何とも言えない婀娜っぽさがとっても良くて、印象に残っていました。
「検索」という素晴らしく便利なことができるようになって、その映画が『ウォッチャー』というタイトルだということが判明しましたが、どうも日本では未公開だったらしくDVDもないようです。
私は幸い数年前にスカパーで見つけてもう一度観ましたが、記憶とたがわぬ面白さでした。。。
けっして後味の良い映画ではないのですが、映画好きにはちょっとおススメしたい一本です。





『アメリカの友人』

アメリカの友人 デジタルニューマスター版 [DVD]
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監督: ヴィム・ヴェンダース
出演: デニス・ホッパー, ブルーノ・ガンツ


画商を装うトム・リプリーが、額縁職人のヨナタンを殺人事件に巻き込んでいく様を描いたサスペンス映画。ヴィム・ヴェンダース監督の長編第7作目の作品。


ずいぶん昔に一度観ているはず...なのに全く内容を覚えていなかった。
記憶に残っているのは、初めのうちデニス・ホッパーとブルーノ・ガンツの顔が区別がつかなくて困った(笑)...ことだったので、やっぱり見たことはあるのだろう。今になってみると、全く違う顔なのにね。

不治の病に怯えながら暮らすハンブルグの額縁職人ヨナタン(ガンツ)と、ひょんなきっかけから彼を殺し屋にしてしまったアメリカ人(ホッパー)との友情の物語。

ホッパー扮するアメリカ人・リプリーは、冒頭から異様な存在感で観る者を圧倒していきます。カウボーイハットにベルボトム(笑)で、本当にカッコいい!確かにこの人は昔カッコよかった(過去形で申し訳ないですが)ということを思い出しました。
イージーライダーはもちろん、ブルー・ベルベット、アメリカン・ウェイなどなど、デニス・ホッパーが出ているからって観た映画も数知れずあったのに(なにしろ出演作が多いですからこの人)、『スピード』の印象がちょっとトラウマかもしれません。

リプリーとヨナタンの出会いは、あまりいいものではなかった。けれど、ヨナタンの病を知った同情もあるのか、仕事場を訪れて以降リプリーはヨナタンをジョナサンと呼び友情を感じるようになって行くのですが、そのあたりのリプリーの気持ちの移ろいが興味深いです。
そして、自分が巻きこんでしまった犯罪に自ら手を染め...というか、「手つだい」というより彼が主犯のようなもの。なにしろかたや病弱な額縁職人、犯罪とは無縁なヨナタン。彼の不器用さにハラハラさせられっぱなしです。

ラストシーンの美しさには誰もが目を奪われるでしょう。
海辺を疾走する赤いワーゲン...こんなエンディングは...ヴェンダースならではなのだろうなぁって思いました。

ところでこの映画の原作はパトリシア・ハイスミスなんだそうです。原作があったなんて知らなかったのでビックリしました。
…っていうことは、「太陽がいっぱい」のリプリーと、このリプリーは同じ人物…ということでしょうか。
原作にも興味が湧きます。

『バーン・アフター・リーディング』

バーン・アフター・リーディング [DVD]
バーン・アフター・リーディング [DVD] [DVD]

監督:ジョエル・コーエン イーサン・コーエン

ワシントンのフィットネスセンターで働くチャドとリンダが更衣室で拾った1枚のCD-ROMには、CIAの機密情報が書き込まれていた。
一枚のディスクが発端となり、幼稚な企みが不運の連鎖を呼び、やがて事態は誰の手にも負えぬまま様々な人々を巻き込み、予想だにできない衝撃の結末へと転がっていく。。。ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピットら豪華キャストによる前代未聞のクライム・コメディ。この結末、見破れるか?!


先日の我が家の中年二人の会話

「地球の中通ってエレベーターみたいなので地球の裏側まで行くっていう映画あったよね?」
「あったあった、観たよ!確か映画館で観た」
「映画館?わざわざ?全然覚えてないなーなんて映画だった?」
「絶対映画館で観た。デカプリオ出てたよねー」(←出てない出てない)
「エレベーターで通勤してるんだよね、地球の裏まで...」
「あ!!!なんかのリメイクじゃなかった?」
「あーはいはい!…何の?だった?」
「ここまで出かかってるんだけど...主人公がビンボーで現実がイヤで夢を買う話だよね」(夢じゃなくて記憶を買うの)

・・・こういう会話が増えてきている私たち。
答えは(観た方はすぐ分かるでしょうけど)、コリン・ファレル主演の『トータル・リコール』だったのですが、去年観た(しかも劇場で)映画だというのに全く印象に残っていなかったようです。二人とも。
これはもしかすると映画のせいではなく、我々の記憶力の低下のせいかもしれませんが、いずれにしてもブログにでも書き残しておけば後々辿ることができるし、なにより書くことで記憶や印象に残ることになります。
このブログも備忘録となりうるようにしていかないとな...と。

前置きが長くなりましたが、この『バーン・アフター・リーディング』も、ここに書いておかなきゃ絶対に思い出せなくなる気がします(笑)

コーエン兄弟といえば、この前年にアカデミー賞に輝いた『ノーカントリー』、こちらを先に観るべきだったか、いやむしろ先にこっちを見といて幸いだった気もしていますが...というより『ノーカントリー』をまだ観てないか?!という声が聞こえてきそうですが大丈夫、ちゃんとHDにとってありますから。

とにかくコーエン兄弟にブラッド・ピット、ジョージ・クルーニーときたら、多くの人が期待して観たであろうし、その中の多くの人ががっかりしたのではないかなと思う。
私もコーエン兄弟ファンのひとりですが、どうせハチャメチャならとことん破たんさせて行ってほしかった気がします。
これってどうオチがつくの?という心配はコーエン兄弟にはつきものなのに、この映画では簡単に事態を収拾させるCIAの登場でプツッて終わらせてる感が強い。
元CIA職員による例の情報収集問題が明るみになった今は、こんなふうにCIAを茶化して笑ってる場合ではないかもしれませんが、CIAが真顔でやってる事って一般人から見たらちょっと笑っちゃわない?って、そのあたりを痛烈に風刺しているところがやはり兄弟らしさです。

だからブラッド・ピットとジョージ・クルーニーの名前につられて観た人には、お気のどくとしか言いようがありません。
別にこの二人が主演というわけでもないし、二人ともカッコ悪い役だし...でも久々に見たブラピのバカ役は最高でした。この人、二枚目よりもクセものとか悪者とかバカ者の役の方が力を発揮している気がします。この筋肉バカの役は、あれっ?ブラピってこういう人だった?っていうくらい板についてます。殿堂入りさせてもいい。
ブラピばかりか、クルーニーも、ジョン・マルコビッチも、フランシス・マクドーマンドも、みんながみんなカッチョ悪い。

もお〜、コーエン兄弟ったら、こんな名優たちにこんなバカなことさせちゃって。。。そんな風に思って観ると案外おもしろい映画だと思いました。
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