June 04, 2016

 自筆証書遺言は,民法968条所定の方式に則って作成しなければ,無効となります。方式の一つに,押印が必要です。遺言者本人の真意に出たものであることを明らかにするために要求されます。
 署名とともに,押印を要求しているのは,日本では,正式の文書は署名又は記名・押印して作成されるのが慣行とされているからと説明されています。

 自筆証書遺言の押印は,実印である必要はなく,三文判等の認印でも問題はありません。実務上,問題になっていたのは,指印です。最高裁は,指印でも有効であると判断しています。

 最高裁平成28年6月3日第二小法廷判決は,花押が民法968条の押印と認められるかが問題になった事案です。原審は,民法968条の押印の要件を満たすと判断しました。
 最高裁は,まず,押印が必要とされている理由について,遺言の全文等の自筆とあいまって遺言者の同一性及び真意を確保するたともに,重要な文書については作成者が署名した上その名下に押印することによって文書の作成を完結させるという日本の慣行・法意識に照らして文書の完成を担保することにあるとし,日本では,印章による押印に代えて花押を書くことで文書を完成させるという慣行,法意識が存在するとは認めがたく,花押を書くことは,印章による押印と同視できず,民法968条の押印の要件を満たさないと判断しました。

m_sakamoto00 at 00:14コメント(0)トラックバック(0)法律家事事件  このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote

April 05, 2016

 労働者が,労働災害に被災した場合,被災労働者は,労基法上の災害補償又は労災保険給付の請求をすることができます。
 労災保険とは,別に,使用者に安全配慮義務違反があれば,被災労働者は,使用者に対して,損害賠償請求をすることができます。

 労基法の災害補償については,労基法84条2項が,使用者が災害補償を行った場合,同一の事由についてその価額の限度で民事上の損害賠償の責任を免れるという規定があります。
 一方,労災保険法には,労基法84条2項に相当する規定がありませんが,労基法84条2項を類推適用することで,労基法上の災害補償と同様に処理されています。

 労災保険の障害補償年金・遺族補償年金を受給している場合,既に給付を受けた年金分は,損害賠償額から損益相殺されます。
 まだ,給付を受けていない将来の年金給付について,最高裁は,損害賠償額から損益相殺できないと判断しています(最高裁昭和52年10月25日判決)。この最高裁判決を受けて,労災保険法が改正され,支払猶予制度が設けられました。

 支払猶予は,労災保険法64条に規定があります。
 労働者又はその遺族が,障害補償年金又は遺族補償年金を受けるべき場合であって,同一の事由について使用者から損害賠償を受けることができるときは,使用者は,年金給付を受ける権利が消滅するまでの間,年金給付の前払一時金の最高限度額の限度で,損害賠償の支払いを猶予されます。そして,支払が猶予されている場合,年金給付又は前払一時金給付がなされたときは,使用者はその限度で損害賠償の責任を免れます。

 使用者の側から言うと,労働者から一時金による支払いを求められた場合,支払猶予の抗弁を主張しておかないと,一時に全額を支払わなければならないということになります。

 また,労災保険給付に相当する部分を含む損害賠償が使用者から労働者に支払われたときは,損害賠償に相当する労災保険給付を行わないことができると規定があります。

m_sakamoto00 at 23:49コメント(0)トラックバック(0)法律労働法  このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote

March 21, 2016

 業務上の災害・疾病により労働者が死亡した場合,労災保険から遺族補償給付が行われます。給付は,遺族補償年と遺族補償一時金があります。

 上記の2つの給付のうち,年金である遺族補償年金の支給が原則です。年金の受給資格者がいない場合は,遺族補償一時金が支給されます。

 遺族補償年金の受給資格者は,死亡した者の配偶者,子,父母,孫,祖父母及び兄弟姉妹で労働者が死亡した当時その収入によって生計を維持した者です。
 ただし,妻以外は,死亡当時以下の要件に該当していることが必要です。
 ①夫,父母又は祖父母:60歳以上
 ②子又は孫:18歳に達する日以後最初の3月31日までの間
 ③兄弟姉妹:18歳に達する日以後最初の3月31日までの間,又は60歳以上
 ④①~③に該当しない夫,子,父母,孫,祖父母,兄弟姉妹について,障害等級5級以上に該当する障害がある状態又は負傷若しくは疾病が治らないで,身体の機能若しくは精神に,労働が高度の制限を加えることを必要とする程度以上の障害がある状態にある

 以上の受給資格者のうち,最先順位者のみが受給権者となり,支給を受けることができます。最先順位者が2人以上いる場合は,全員が受給権者になります。順位は以下のとおりです。
 ①妻又は60歳以上若しくは障害のある夫
 ②18歳に達する日以後最初の3月31日までの間の子又は障害のある子
 ③60歳以上又は障害のある父母
 ④18歳に達する日以後最初の3月31日までの間の孫又は障害のある孫
 ⑤60歳以上又は障害のある祖父母
 ⑥18歳に達する日以後最初の3月31日までの間の兄弟姉妹若しくは60歳以上又は障害のある兄弟姉妹
 ⑦55歳以上60歳未満の夫
 ⑧55歳以上60歳未満の父母
 ⑨55歳以上60歳未満の祖父母
 ⑩55歳以上60歳未満の兄弟姉妹
 なお,⑦~⑩の者が受給権者となった場合は,60歳までは年金の支給は停止されます。

 遺族補償一時金は,死亡当時遺族補償年金を受給できる遺族が存在しない場合に支給されます。受給できる遺族及びその順位は以下のとおりです。
 ①配偶者
 ②死亡当時その収入によって生計を維持していた子,父母,孫及び祖父母
 ③②以外の子,父母,孫及び祖父母
 ④兄弟姉妹
 なお,②及び③の者に関しては,子→父母→孫→祖父母の順位となります。

m_sakamoto00 at 20:03コメント(0)トラックバック(0)法律労働法  このエントリーをはてなブックマークに追加 Clip to Evernote
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