彼はどうも血の気が多いようで、とにかくケンカっぱやい。
外を歩いていてもすぐに
「今アイツがオレの事睨んだ」
といってはケンカしようとする。
しかし私がいつもそれを
「やめて」
と言って制止するのは計算に入ってる。
本当にいく気はない。
ただある時こんな事があった。私達が住んでいたのは都内でも有数の繁華街(のそば)。
ナンパやスカウト、キャッチ、勧誘そういった人が沢山いる。
声をかけられてもいちいち反応してはダメ。
目を合わせず無視してスルーすれば諦めて立ち去っていく、というのがお互いの暗黙の了解となっているのだが・・・。
その日私達は2人で歩いていた。
しかし彼は歩くのが早い。
「オレは足が長いからお前に合わせてゆっくり歩くと疲れる」との事。
だから私はいつも小走り。ヒール履いてオシャレなんて到底無理。
しかしその日は彼と少し距離があいてしまった。
私をひとりと思ったのだろう。
近付いてくる黒服の男。
どうやら風俗店のスカウトのようだ。
私に何やら話しかけているがいつものごとくもちろん無視。
その時、前方を歩く彼が何気なく振り返り私を探しているのが目に入った。
私と目が合った。
すると突然
「何やおまえコラぁ!?」と言ってこちらに来て黒服に詰め寄りスゴんだ。
もちろん殴ったりはしてないが、黒服さんもビックリ。
「あ、いえちょっと」
「ちょっと何や、あぁ!?」
黒服さんは「すいません、すいません」を連呼。
突然の出来事に硬直している私をひっぱたき
「ホラさっさとせい!」と言ってダッシュで逃げる彼。
「え、え、え、?」言われるがまま私も彼を追いかける。
ただすぐに家には帰らない。
すこし落ち着いたところで
「後つけられてるかも知れん・・・回り道にして帰るぞ」と言う彼。
まだ興奮が冷めない様子。
彼の興奮は家に帰ってもまだ尚つづく。
「お前とんでもない事してくれたなぁ!オレはもうアイツらを敵に回してしまった!お前のせいや!お前はオレにまもって欲しくて、わざとに声かけられたんや!オレを危険な目にあわせよった!もうここも危険や、はよ引っ越さないかん。それまでは二度とあの道は通ったらいかん。今日着ていた服ももう着れん!」
えーと。
・・・
無視すればよかったのでは・・・?
そして少し大げさなのでは?
なんて言えるわけもなく、殴られているので、なぜか私も
「ごめんなさい、ごめんなさい」を泣きながら連呼。
その後小心者の彼は
「あの黒服に仕返ししてやる!」
と言い出した。
もう一度あの時の事を振り返る。
私に声をかけたスカウトに彼が「何やこらぁ!?」と言ったんだよね。それだけだよね。仕返し…?
仕返しするとしたらむしろあちらさんでは?と思うも言えるわけはない。
作戦としては、ネットを駆使してその黒服さんの特徴や場所などから店を割り出す。
店に嫌がらせをする。
というもの。
そして私にもそれをヤレと。
私のせいなんだから。
ただし家のパソコンで調べたらいつか足がつくかもしれないと言うことで漫喫のネットを使うとの事。
仕方なく言う通りに。
何日も漫喫に通い、手がかりなんてないに等しい中、ようやく彼の中で「怪しい店」をいくつか絞り込んだ様子。
そして・・・
そのお店の掲示板に彼が書き込んだ内容というのが、
「自分はこの店の常連。先日エイズにかかっている事が判明した。店の女にうつされた!店に行った事ある人はみんな検査した方がいい」
というもの。
これをコピーしては色々な掲示板に店名とともに投稿。
営業妨害。
あとは、ヤクザの真似をして公衆電話から嫌がらせの電話もしていた。
頭おかしい。
黒服さんだって嫌な思いはしただろうけど、きっと「頭のおかしいヤツ」くらいにしか思わなかったと思う。
彼のした事は、彼自身が思っている程大きな事ではなかったと思う。大げさなんだよいつも。
無視すればよかったんだと思う。
「仕返しをする」という発想と実行する執念に恐怖を感じた。
その後、彼は自分の友達にこの話を「アホな彼女をまもった武勇伝」として話したそうだ。
確かにスカウト・キャッチ・ナンパは正直うっとうしい。
嫌な思いをしたこともある。
けど。なんかこの出来事に関しては納得できないっていうか、彼氏のほうが大げさに考えすぎ&やりすぎなんじゃないかなーって。
結局私が「わざとやらせた」って事で悪者になってるし。
どう思いますか。