自作SSシリーズ第50弾。それがこれって……
 





和父「麻雀などほぼ運で決まる不毛なゲームだろう」


 
【原村家】

恵(和父)「ふぅ……」 

恵(仕事は一通り片付いたし、ベッドに入るまで結構時間があるな。さて何をするか……と、その前に明日の荷物を……ん?)ガサガサ 

恵「これは……」 

『WEEKLY麻雀TODAY』 

恵(そういえば……『和が載ってるから読んだらどうだ』と同僚に貰ったんだったな……) 

恵「…………」 

恵(いい機会か……ふむ。雑誌もいいが、どうせなら県予選の時の映像を観てみるとしよう)

恵(父親として娘の姿をチェックする必要があるのは事実だ) 

恵「麻雀などほぼ運で決まる不毛なゲームでしかないがな」 

ピッ.. 

美穂子『ロンです 8600!』 

実況『先鋒戦終了~!!』 

恵「…………」

佳織『リーチツモ…トイトイ?でしょうか』 

未春・智紀『そっ それは――』 

まこ『四暗刻じゃ…ッ!!』 

恵(ほら見ろ。和よ……この子は私から見ても素人だ。それなのに運だけで1位になる。どれだけ正着打を打とうが運には勝てん……全くもって不毛なゲームだ)フン



星夏『とおらばリーチ!!』 

久『通らないな……リーチ一発ドラ4 12000』 

星夏(キャプテン――――!!!) 

恵(結果オーライだな……やはり運頼みじゃないか)



実況『この副将戦、注目はなんといっても昨年のインターミドル王者…』 

実況『今…日本一強い1年生かもしれませんッ!!清澄高校1年 原村和!!』 

恵(和……ペンギンでゲン担ぎか。いや、それも仕方がない。なんといっても、麻雀はほぼ運で決まる不毛なゲームだ) 





実況『副将戦終了―――!!』 

恵(和……あれほどミス無く打っていたのに2位……ふん、不毛だ不毛) 

恵(……和の出番が終わった以上、大将戦は観なくてもいいといえばいいんだが……せっかくだ。最後まで観るか)



咲『嶺上開花ツモ』 

恵(運がいいな) 

咲『カン 嶺上開花』 

恵「…………ぐ、偶然にしては出来過ぎだな」フフ 

ゆみ『搶槓だ。その槓、成立せず!』 

恵「………この子も運がいいようだ」 

衣『海底撈月』 

恵「…………」

衣『海底撈月』 

恵「…………ば、バカな……」 

恵(これらの役を和了るには相当の運が必要だ。何故なら、牌山にどの牌が積まれているか分からない以上、こちらに出来る事は限られる……) 

恵(それをこの子たちは……)クラクラ 

咲『カン!もいっこカン。もいっこカン!!』 

恵「!!!!」 

咲『ツモ。清一…トイトイ 三暗刻 三槓子 赤1 嶺上開花』 

咲『32000です!』 

恵「…………………………………………うぅ~ん」バターン





翌日 

ピピピピ... 

恵「はっ…………朝か……っ!」 

恵(体が痛い……県予選を観ていて、そのまま眠ってしまったか……) 

恵(あの決着は…………あれを運だけで片付けていいものだろうか?もしかしたら、麻雀とは運よりも重要なものが……) 

恵「…………いや!認めん!!」 

恵(あれはたまたまだ!たった一度のレアケースで全てを覆すわけにはいかん!) 

恵(そうだ……決勝でおかしかったのは大将戦だけ。5分の1じゃないか……それなのに私は……全く情けない)ククク 

恵(……全国大会を録画したものがあったな。今夜も観てみるか。そう、麻雀がほぼ運で決まる不毛なゲームだと再確認するためにな)





夜 

怜『ツモ』 

恵(また一発ツモ……運がいい子だ…………が、ツモ切りリーチを必ず一発でツモるのは運なのか、それとも……) 

玄『うぅ……』 

恵(な、なんなんだこの娘は……ド、ドラがこれほどまでに偏るなど……ありえない……) 

照『ツモ』ビュオォォ.. 

恵(ば、馬鹿な……自力で竜巻を起こすだと!?どんな力が働いている!?)ガタガタガタ.. 

淡『リーチ!』 

恵「がはっあ!ま、またダブルリーチだと!?連続でダブルリーチになる確率は……あああああ…………」ガタガタガタ!

穏乃『そこはもうあなたのテリトリーじゃない』 

恵「げほぅっ!テリトリー!?は、はは、牌山を支配!?……おえええぇえ!!」ゲリョッ! 

恵(ぐぅ……せっかく食べたザーサイを全部吐いて…………ぅぷっ!) 

アナウンサー『インタビューです。新道寺のお二人さん、残念でしたね』 

哩『はい。私たちのリザベーションでも届かず、残念でした』 

姫子『あ、リザベーションとは、部長が縛りを入れた局で和了ると、私もその局で和了れるというやつです』 

恵「り、りざべーしょ…………」ジョワーー..(失禁) 

哩『しかも倍の翻数で』 

恵「ば、ばいで……あがれる……」モリモリモリ..(脱糞)





翌日(休日) 

恵「……昨日は不覚をとった」 

恵(だがしかし!麻雀が不毛なゲームではないと納得したわけではない!!) 

恵(ただ……脱糞した以上、驚いたのは認める。私の全てが正しいという主張は取り下げよう) 

恵(麻雀は不毛だという私の考えは間違っていない……が、確率に対する考え方が間違っていた) 

恵(昨日一昨日と試合を観て実感した。嶺上開花や海底ツモが成立する確率は低いと思っていたが……私が自分で低確率だと思い込んでいただけで、実はそれほどではなかったのだ!間違いない!) 

恵(連続で嶺上開花が成立する確率は1%無いくらいだと思っていた……しかしおそらく世間では20%ぐらいなのだろう。でなければあの決勝はありえん) 

恵「…………………くくく!私もまだ甘い。ここまで確率を低く見誤っていたとは」 

恵(……だがそれも今日までだ!) 

恵(私の新しい確率論が………つまり私が正しいと証明するため、出掛けるとしよう)ニヤリ





【東京駅 トイレ】

恵(私がこれから決行する作戦とは……) 

恵(全裸の上に和のワンピースを着て、大通りを歩く―――) 

恵(今までの私の予想では、90%の確率で捕まる。つまり10%は捕まらない) 

恵(これを新しい確率論で考えると………捕まらない確率は200%!)ウォォ! 

恵(……200%では安全すぎて証明にならんか。少し確率を下げるために、お尻の部分に穴を空けて肛門をスースーさせよう)ビリビリ 

恵(それと、左半身の毛だけ処理して……)ジョリジョリ 

恵(ふむ……これでよし。では行くか)ガチャ



キャー!ヘンターイ!バケモノ! 

恵「ふっ……いい天気だ」 

恵(これこそ散歩日和というもの。さて、軽く駅の周辺を歩いて……そうだな、1時間もすれば証明になるだろう)ペタペタ.. 

警官A「ちょ、ちょっとあんた!何やってるんだ!そんな格好……しかも裸足で!」 

恵(!?馬鹿な!穴を空けて毛を剃ったからといって、捕まらない確率は150%ぐらいあるはず!) 

恵「か、確率論の証明だ」 

警官A「は?わけわからないことを言ってるんじゃない!ちょっと署まで来てもらおう!」グイ 

恵「い、痛い!フリル部分が乳首に擦れてッ……や、やめろ!俺は弁護士だぞ!」 

警官A「それなら余計しっかりするべきだろ!来い!」グイイ 

恵(な……私の完璧な作戦が……く、くそっ!) 

恵(こうなったら……最後のあがきだ!)ムリムリムリ.. 

警官A「ん?………わあああ!こいつ脱糞しやがった!」 

恵(天罰だ。国家の犬め……) 

恵「……………」 

恵(和……インターハイ、頑張れよ。お父さんは応援してるからな――――)ニコリ





これらの出来事によって、和の父は多少おめでたい性格に変化し、麻雀に対する考えを改めた。

固定観念を捨て、柔軟な発想を持つようになったのだ。 

結果、裁判で劣勢になると間違いなく脱糞するという捨て身の弁護術で逆転勝利を得る、どこか憎めない凄腕の弁護士として活躍中である。 

そんな父の変化により、和は救われた。清澄高校はインターハイ優勝を逃したものの、和は麻雀を続けてもいいことになったのだ。 

おむつがフォーマルになった父に対し複雑な思いはあるものの、和はこれからも仲間と共に過ごせることに喜びを感じていた。 

高校2年生となった和は、今でも牌を握り、宮永咲のあの部分をつまみ、ひねり、笑顔で過ごしている。 

和「……………」 

咲「あ!和ちゃ~ん!」タタタ 

和「咲さん……///」 

咲「一緒に帰ろ?」 

和「はい!」ニコリ 



【完】









<あとがき>

このSSの発想として、『麻雀を不毛なゲームと考える恵がもし怪物たちの麻雀を見たら……』というのが初めにあったのですが……気が付けばこんな展開に。

疲れてたのかなぁ……もし食事中に読んでた人がいたら、ごめんなさい。