永い永い眠りから目覚めると、俺はキアダンジョンの祭壇の上に居た。何をしようとしていたのか?当時の記憶は無い。手に持った弓と長剣から推測するに、俺は弓使いでありながら剣士だったらしい。年齢を見ると271歳と表示されていた。

 そうだ、確か俺は弓メインの弓使いだったのだ。15歳の時、弓が得意なエルフとかいう種族が実装されると知り、絶望して引退したのだ!

 それにしても、なぜキアダンジョンに居るのだろう?
 とりあえず持っていた矢を1つ落として、ダンジョンに入ってみた。

 出現するモンスターはゴブリンだった。クモを想定していたのだが、どうやら、その次あたりに訪れるダンジョンだったらしい。とは言え初心者用らしく、敵は強くない。アローリボルバーを連射してサクサクと先へ進んだ。

 間もなくハーブ畑にたどり着いた。これは確か、ポーションの材料だった気がする。青が貴重だった記憶があるのだが、生えていたのは残念ながら緑と金だった。何となく価値のありそうな金だけ取って、先を急いだ。



 その後も無傷で進めたが、問題が起きた。装備していた弓が壊れてしまったのだ。仕方なく代用に長剣を構えたが、こちらも耐久力が残り3しかない。そこで俺は、アイスボルトを使える事を思い出した。そう、俺は当時覚えられる魔法は全てマスター(と言ってもランクはまちまち)していたのだ。試しにアイスボルトを撃つと、1~2発でゴブリンは息絶えた。どうやら俺は魔法戦士だったらしい。

 しかしマナの回復が遅く、2Fをアイスボルトで攻略したらマナの3分の2以上を使い果たしてしまった。これではボス戦までもたない。そんな時、思い出したのがランク1まで育てたウィンドミルだった。

 試しにモンスターの大群の真ん中に、無防備に歩み、ウィンドミルを発動させた。これは効果バツグンだった。9割方のモンスターが吹っ飛んで、死んでしまったのだ。これは簡単だ!

 ウィンドミル中心に敵を倒し、残りをアイスボルトで、時々自分にヒールしながら3Fを攻略した。



 そしてついにボス部屋。
 ボスはゴーレム。
 俺の過去の記憶が蘇る。
 確かダークナイトに変身して、ミルスマでハメ殺しだ。

 攻略方法を思い出したところで、周囲のザコをアイスボルトで除去。

 そして、いざゴーレム!と思ったが、変身できない。
 そうだ、課金していないと変身できないのだ・・・。



 そこで俺はとっておきだった、精霊武器を取り出した。攻撃力は131。今まで持っていた長剣とは桁違いの威力。

 そして戦いは始まった。といっても、ウィンドミル数発で終了。

 その後、宝箱を開けると『キア上級入場証』が出た。
 自身の強さがわからないので、丁重にお断りして捨てた。
 時間も無かったし・・・。

 そしてダンジョンを後にした。




 それにしても、俺はなぜあんな初級ダンジョンにいたのだろう?
 まだ把握していないが、キャラの実力と見合っていない気がする。

 当時の記憶が戻るまで、各地のダンジョンを巡ろうかと思った。
 しかし、馬を走らせていると、郵便が来た。クエストだ!
 
 慌ててWIKIをチェックする。
 オープニングムービーが記憶と違ったのは、気のせいでは無かった!
 G3までしかなかったメインクエストの続編が、大量に出てるではないか!?



 俺は、並の人よりは数多くのMMOやMOを渡り歩いてきた。
 だがストーリーが一番楽しかったのはマビノギだ。
 王道ストーリーと、クエストがきちんとプレイヤースキルに直結している感。
 「ぜひ続編がやりたい!」
 そう思った。

 村で装備をあらかた修理し「明日Webマネー買おう」と決意してログアウト。

 結局、新システムや新情報はほとんどわからなかった。
 何か、いつの間にか大陸が2つになっているのは驚いたが・・・。
 まぁ、それは追々わかってくるだろう。

 とりあえず、転生して1ヶ月サービスを開始する事だけ決めた。




 まだ俺のマビノギ新ライフは始まったばかりである。