2年前、夫と2人、カナダの最西端バンクーバーアイランドに住んでいた頃、素敵な出会いがありました。日系二世の鈴木ゴウジ(George)さんとフエコ(Helene)さんご夫妻。それぞれ85歳、81歳。犬の散歩中のゴウジさんが、私たちに声を掛けてくれたのが最初でした。お二人は戦後、日系人(日本人)として政府の政策によりバンクーバーのキャンプ地で暮らすことを強要されました。その後トロントに移りましたが、若い頃住んだバンクーバーアイランドにどうしても終の棲家を、とゴウジさんは週末セルフビルドで家を構えました。バンクーバーに住んでいた甥っ子が当時の仕事を手伝ってくれたそうです。もう大分昔の話です。まるで昨日のことのように楽しそうにいろんな話をするゴウジさん。こちらはまるで映画を観ているような錯覚に陥ります。アイランドの大自然を背景に、二人の時の流れにさわやかな風が吹いているような...。
フエコさんは膝が悪く、外出の機会も減りました。そんな彼女にゴウジさんは、家の回りにデッキの歩行路を作りました。全て手作り。玄関のサッシ枠でできた段差に小さなスロープを付けたり、コーナーも安全に歩行できるよう内側に三角の補助板を付けたり、ゴウジさんなりの優しさと思いやりの工夫があらゆる所に感じられました。決して完璧ではないけれど、もしかしたらまだ足りないかもしれないけれど、フエコさんはきっととても嬉しかったのだと思います。
彼女は、ゴウジさんが育てる野菜や果実に手が届く場所まで歩行器を使って歩き回れるようになりました。ある日訪ねたときのフエコさん、歩行器に付いた籠いっぱいに林檎を入れて私たちにおいでおいでをする彼女の笑顔が目に焼きついています。
ゴウジさんと写真を見ている夫の横顔を眺めながら、いつか私たちもそんな優しい家で暮らせるかしら、なんて想像してしまいました。
あとで聞いてびっくり!!ゴウジさんの甥っ子の名はDr. David T. Suzuki
カナダを代表する環境保護主義者。遺伝学者。今もテレビやラジオで活躍中です。