不快指数80突破の蒸し暑い午後ですが、休日で時間には余裕がありますので歩いて石川県立音楽堂へ。ゆっくり歩いたため40分くらいかかりましたが、汗は滲む程度で噴き出るというほどでもなく、ホワイエに到着した後は扇子をパタパタあおいでクールダウン。やがてホワイエにトロイ・グーギンズさん(Vn)、上島淳子さん(Vn)、石黒靖典さん(Va)、大澤明さん(Vc)が登場。大澤さんいわく、今日の衣装は通常の黒服だったのですが、大澤さんは間違えて燕尾を持ってきてしまい、あわてて家にとりに戻ったものの今度は家の鍵を忘れて…と、ちょっとパニックだとのこと(笑)。プレコンサートは今日のプログラムにちなんで、ハイドンの弦楽四重奏曲第76番「騎士」より。今日の三枝氏のプレトークにもありましたが、ハイドンは交響曲だけでなく弦楽四重奏曲を確立し、そうしたソナタ形式の楽曲を数多く残したのですから功績は偉大です。といいつつ「ソナタ形式」をいまいち説明しきれないわたし(だめじゃん)。

ともあれ、そのハイドンの交響曲から公演の幕開きです。ザロモンセットより第96番「奇蹟」。ハイドンらしい軽快な音楽であります。三枝氏いわくハイドンは「陰がなくてつまらない」とのことでしたが、わたしはその屈託のなさはキライじゃありません。朝の出勤前にいい感じです(モロ主観)。

続いて現代曲が2曲。まずは金沢出身の作曲家堀内貴晃さんの作品で、1998年のOEK創立10周年記念「作曲登竜門オーディション」で岩城マエストロにより初演された「あばれ祭りによせて」。能登宇出津のあばれ祭りの勇壮豪気な雰囲気が目に浮かびます。次は2002年の石川県立音楽堂開館1周年に初演された「憂鬱な海のためのセレナーデ」。2004-2005シーズンのOEKレジデンスインコンポーザーだった旧ソ連出身の女性作曲家・アウエルバッハの作品。Vn、Vc、Pfの独奏に弦5部の編成で、武満徹氏の愛した海「SEA」=Es(E♭)、E、Aの動機が展開されます。カンタさんの独奏が見事。

当公演の後、OEKはフランス・ドイツの音楽祭に招かれて演奏会を行いますが、これら2曲も演奏プログラムに含まれるとのこと。作曲家にとっては初演もさりながら、招待公演で再演されることはもっと光栄なことなのだろうなと思います。

休憩を挟んで後半はベートーヴェンの4番。「英雄」と「運命」に挟まれて比較的地味な印象の4番ですが、あらためて聴いてみますと、なんのなんの心躍る素晴らしい名曲ではありませんか。おどろおどろした序奏から、爆発的な転換を経て快活な主部へと流れ込む第一楽章のカタルシスは7番並み。各楽章を通して小気味よいバロックティンパニとともに、軽快爽快な音楽が楽しめます。いつもは失礼ながらストレスのたまることの多いホルンですが、今日の演奏は会心の出来でしょう。特に4楽章終盤は大ホームランです。こういう日があるからやめられないのです。

カーテンコール後、井上マエストロが「そろそろ日本一のオーケストラにしませんか?」と、要するに定期会員の募集(笑)。わたしは来シーズンはフィルハーモニーに加え、マイスターシリーズの会員にもなりました。

アンコールは武満徹作曲・3つの映画音楽より「他人の顔」の“ワルツ”。今年のニューイヤーコンサートでも披露された曲ですが、本日の完成度は驚くほど絶品。完全にこの曲をモノにしたという感じです。欧州公演のアンコール曲として使用されるようですが、今後のOEKアンコールピースとしても欠かせない定番曲にしてほしい気がします。


オーケストラ・アンサンブル金沢
第245回定期公演フィルハーモニー・シリーズ

日時:2008年7月26日(土)15:00〜
会場:石川県立音楽堂コンサートホール
指揮:井上道義
コンサートミストレス:アビゲイル・ヤング

■ハイドン
 交響曲 第96番 ニ長調 Hob.I-96「奇蹟」

■堀内貴晃
 小編成管弦楽のためのCapriccio「あばれ祭りによせて」

■アウエルバッハ
 憂鬱な海のためのセレナーデ 〜武満徹へのオマージュ
 〜ヴァイオリン独奏:アビゲイル・ヤング
  チェロ独奏:ルドヴィート・カンタ
  ピアノ独奏:松井晃子

---休憩---

■ベートーヴェン
 交響曲 第4番 変ロ長調 op.60

(アンコール)
■武満徹
 3つの映画音楽より「他人の顔」ワルツ