今回の定期公演は盛りだくさん! 井上音楽監督がタクトを振り、没後200年メモリアルのハイドンに、劇音楽「アルルの女」。そしてなんと言っても最大の注目はチャイコフスキー国際コンクール優勝の神尾真由子さん。OEK定期初登場です。

プレコンサートは松井さん、上島さん、石黒さん、大澤さんによる弦楽四重奏曲。ハイドンの弦楽四重奏曲第77番ハ長調「皇帝」第1楽章と、モーツァルトのハイドンセットより弦楽四重奏曲第16番変ホ長調の第4楽章。ともに美しい旋律でひじょうにいい心地。

本公演1曲目はハイドンの交響曲第100番「軍隊」。第1楽章の序奏がかなりゆったり始まり、おやっと思わせます。第3楽章メヌエットの雰囲気もなんとなくリズムが変わってるような気がします(どことは明確にいえないのですが…)。プレトークでの井上さんのお話によると、OEKは以前ギュンター・ピヒラーさん(現OEK名誉アーティスティック・アドバイザー)指揮による「軍隊」のCDをリリースしているそうですが、その演奏とはまったく違うよ!とのことでした。おそらくピヒラー先生の演奏はわたしたちがふだん聴きなれているオーソドックスな演奏で、今回はそれとは異なる古楽奏法的なアプローチなのでしょう。ハイドンのすっきり美しい弦楽部に、バロック・ティンパニの引き締まった打撃がいいアクセントになって面白い味わいがありました。

さあ、続いてはいよいよ神尾真由子さんの登場です。曲はブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番。…はあああ、これはすごかった! いや、「凄かった」と漢字で書いたほうが雰囲気が出るような「凄絶」な演奏でした。とりあえず音量がハンパない。重音もこともなげに弾きこなす力強さ。炎がほとばしるように激しく情熱的で、どこをとっても迫力満点でした。プレトークで井上さんは「フェラーリのような演奏」と評していましたが、なるほど的を射た表現です。個人的にはクレーメルとか庄司紗矢香嬢とか、繊細さや憂いを含んだ表情が得意な演奏家が好みではありますが、そういう個人の嗜好など吹き飛ばすくらい圧倒的な存在感を放っていました。

で、当然聴衆はアンコールを求めるわけですが、なんと、弓が今にも壊れそうな状態とのこと。あれだけの熱演ならこの珍しいアクシデントもさもありなんという感じです。弓を交換する時間を待ってから、あらためてアンコールを演奏。パガニーニのカプリースから13番「悪魔の微笑」。交換した弓からはさすがに透明な響きが聴こえ出します。で、やがて技巧を熱く鮮やかに披露し、これも見事な演奏でした。いやあ、こんなヴァイオリニスト、初めて聴いたよ…!今度は彼女のブラームスとか聴いてみたいですね。

さて、後半はビゼーの劇音楽「アルルの女」。井上さんは「ペールギュント」のときもそうだったように、組曲化された劇音楽を、物語の筋書き通りの順番に戻して演奏するのが好きなようです。といっても最初が第1組曲第1曲の「前奏曲」であるというのは変わらず、おなじみのユニゾンから始まります。神尾さんのパワーに触発されたか、OEKは冒頭から迫力溢れる演奏。一気に物語の世界に引き込まれます。前回公演でアンコール演奏され素晴らしい出来栄えだったのは「アダージェット」。今回の構成からは外れており一瞬がっかりしたものの、実は「メロドラマ」という全曲版から抜粋した曲に含まれており一安心。今回も絶妙に美しいアンサンブルを聴かせてくれました。ほかにも、渡邉さんのプロヴァンス太鼓は楽しげで、客演の作田聖美さんによるサクソフォンは甘美。岡本さんのフルートソロは名旋律が心に響きます。そして最後のファランドール。前奏曲の旋律が重なり、クライマックス感が加速度的に高まって気持ちよく終結します。

アンコールはこのファランドールの終結部をもう一度。井上さんが踊りながら手を叩き足を踏み鳴らし、聴衆の手拍子足拍子を誘います。演奏もテンション高く熱狂的にフィナーレ。快感です!!

いやあ、今回も充実した演奏会で満足しました。今回は北陸朝日放送が収録を行っており、3月28日(土)16時から同局で放映されるとのこと。また、神尾さんは8月27日のIMAコンサートで井上さん&OEKとチャイコフスキーの協奏曲で再共演が決まったとのこと。いずれもいまから楽しみです!!

オーケストラ・アンサンブル金沢 Orchestra Ensemble Kanazawa
第257回定期公演マイスター・シリーズ
The 257th Subscription Concert / Meister-serie

日時:2009年3月6日(金)19:00開演 Friday, 6 March 2009 at 19:00
会場:石川県立音楽堂コンサートホール Ishikawa Ongakudo Concert Hall
指揮:井上道義 Conductor: Michiyoshi Inoue
コンサートマスター:マイケル・ダウス Concertmaster: Michael Dauth

■フランツ・ヨーゼフ・ハイドン F. J. Haydn
 交響曲 第100番 ト長調 「軍隊」 Hob.I-100
 Symphony No.100 in G major Hob.I-100 "Military"

  第1楽章 アダージョ〜アレグロ
  1st.Mov. Adagio - Allegro

  第2楽章 アレグレット
  2nd.Mov. Allegretto

  第3楽章 メヌエット:モデラート
  3rd.Mov. Menuetto: Moderato

  第4楽章 フィナーレ:プレスト
  4th.Mov. Finale: Presto


■マックス・ブルッフ M. Bruch
 ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調 作品26
 Violin Concerto No.1 in G minor Op.26

  〜ヴァイオリン独奏:神尾真由子 Violin: Mayuko Kamio

  第1楽章 前奏曲:アレグロ・モデラート
  1st.Mov. Vorspiel: Allegro moderato

  第2楽章 アダージョ
  2nd.Mov. Adagio

  第3楽章 終曲:アレグロ・エネルジコ
  3rd.Mov. Finale: Allegro energico


(アンコール encore)
■ニコロ・パガニーニ N. Paganini
 24の奇想曲(カプリース)作品1 より
 第13番 変ロ長調 「悪魔の微笑」 アレグロ
 24 Caprices Op.1 No.13 Allegro in B-flat major

  〜ヴァイオリン独奏:神尾真由子 Violin: Mayuko Kamio


---休憩---


■ジョルジュ・ビゼー G. Bizet
 劇音楽「アルルの女」より
 L'Arlésienne

  1. 前奏曲 Prelude 《第1組曲 第1曲》

  2. 牧歌 Pastorale 《第2組曲 第1曲》

  3. 間奏曲 Intermezzo 《第2組曲 第2曲》

  4. メヌエット Menuet 《第1組曲 第2曲》

  5. メロドラマ Melodrame 《全曲版》

  6. 鐘 Carillon 《第1組曲 第4曲》

  7. メヌエット Menuet 《第2組曲 第3曲》

  8. ファランドール Farandole 《第2組曲 第4曲》


(アンコール encore)
■ジョルジュ・ビゼー G. Bizet
 劇付随音楽「アルルの女」より ファランドール 終結部
 L'Arlésienne - Farandole