ラブストーリーはあまり得意じゃないのですが、この作品はとてもイイです。

友人である人気モデルの撮影に忙殺される一方、本当はカナダで風景写真を撮りたいカメラマンの聡。花屋でバイトをしながらフラワーデザイナーを目指し、近々フランスへ留学予定の七緒。アパートの隣同士に住みながら、一度も顔を合わせたことのない2人の物語です。

岡田准一さん=カメラマン、麻生久美子さん=フラワーデザイナーという設定は少々オシャレ過ぎる嫌いもあるのですが、舞台となるアパートがいい感じに味わい深く古びていて、また、彼らの日々の生活(七緒の食生活とか)がほどほどに庶民的なので、わりと現実感をもって観ることができます。アラサーならではのそれぞれの葛藤は共感されやすく、他方、終盤のミラクルな展開には心躍ります。

そして、この作品の重要な要素となっているのが「音」。タイトルの「おと・な・り」とは、「お隣」という意味に加え、「音鳴り」という意味もあったのですね。そのことが観ているうちに理解できてきました。アパートの薄い壁を隔てて聴こえてくるそれぞれの生活音。聡も七緒も互いに心地よさを感じているようです。聡の部屋からはチェーンキーホルダーの音や、コーヒーミルを挽く音。七緒の部屋からは、フランス語の自主レッスンの声や、加湿器のアラーム音。そして、七緒が鼻唄まじりにくちずさむ「風をあつめて」。この鼻唄に聡は日ごろから癒されています。また、七緒も意外な形でこの曲に勇気付けられることになるのです。

エンドロールも必見、いや必聴です。そういえば「風をあつめて」を唄っていたのは「はっぴいえんど」でしたね。

(2009/07/04@ワーナー・マイカル・シネマズ御経塚)

★★★★★