英国王ジョージ6世の実話に基づいた物語。今年のオスカーを総なめした話題作です。内気なヨーク公アルバート王子の悩みは、幼少の頃からの吃音症。エリザベス妃のすすめにより、言語聴覚士のローグのもとで型破りな治療をはじめました。アルバート王子とローグは、治療法や即位問題を巡って対立することもありましたが、次第に信頼関係を構築していきます。やがて兄・エドワード8世が「王冠を賭けた恋」のために退位し、アルバート王子がジョージ6世として国王に即位。折りしも英国はヒトラー率いるドイツとの戦争に突入し、新国王ジョージ6世は吃音問題を抱えたまま、英国全土へ向けて国民を鼓舞する演説を行うことになったのです…

本来は国王になるはずではなかったジョージ6世。元来内向的な彼が、次々と課せられる使命に対峙せざるをえないという苦悩がひしひしと伝わってきます。そして、そのおおきな手助けをする言語聴覚士のローグ。独特の治療法を飄々と施す一方、彼も患者たる王子との対立に思い悩み、反省しながら、症状の克服をすすめていくのでした。このふたりのテンポがとてもいい感じ。

ローグの吃音治療法はユニークなものでした。互いに愛称で呼び合う、下品な言葉を大きな声で連呼する…など。個人的に興味深かったのは、その場面描写で使われる音楽。口の筋肉や呼吸法などを訓練する場面のBGMは、モーツァルトの明るく輝かしいクラリネット協奏曲第1楽章でした。また、ヘッドホンで大音響の音楽を聴かせながら「ハムレット」を朗読させるという治療では、その大音響の音楽とはモーツァルトの「フィガロの結婚」序曲。これは治療結果ともども華々しい効果がありました。

さらに、クライマックスのスピーチシーンでは、ベートーヴェンの交響曲第7番第2楽章。葬送行進曲の荘厳な響きが、国王の並々ならぬ決意を劇的に印象付けます。そして、感動のスピーチ後からエンディングにかけては、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」第3楽章。名実ともに国王となったジョージ6世を祝福し、敬愛する国民の心情をあらわしているかのようでした。というわけで、音楽の面でもおおいに楽しめた作品でありました。

★★★★