2005年11月07日
インテリジェント・デザイン論に腰を抜かすその4:これが選挙で最高に票を稼げる方程式なんだよ!!

(前回からの続きです)
まとめてみたい。
人間には信じたいものを信じたいだけ信じる自由が本質的にあり、それ故に宗教を信じる自由や信じない自由や無関心でいて構わない自由が「信教の自由」として憲法で保障されている。何かを信じて財産や時間を失う代わりに心の平安を得る自由もあれば、何も信じない代わりに死ぬまで不安な一生を送る自由もあるわけだ。
そういった個々人の勝手な価値観、つまりは宗教的信条が、実証主義が根本にある自然科学に入り込むのは間違っている、というか同一に語れるわけがない、というのがその1からその3までの主張である。
最後に話題にしたいのは、政治と宗教の分離についてだ。国や国が行う義務教育とかいったものは究極のパブリックドメインであるわけで、国家権力が特定の宗教的活動を援助したり圧迫したりしてはならない、これが「政教分離」という概念である筈だ。
だからこそ、ブッシュ大統領が生物の授業でインテリジェント・デザイン論を進化論と並列に教えようなんて発言したことは大いに間違っている。「宗教」の授業で、「世の中には宗教的理由からビルに爆弾を仕掛けたり、地下鉄で毒ガスを撒いたり、聖書に書いてあることが全部本当にあったことだというように歴史や科学を歪めようとする人達が居るんですよ」と教えることは大いに正しいと思うが。
ブッシュ発言の根本には、科学的な理論を偽装した宗教的信条を自然科学の仮説の一つに並べ、論争を巻き起こすことで信者を増やそうというキリスト教右派団体による作戦があるらしい。はてなのキーワードに鵜浦裕が朝日新聞に書いたID創造論者の戦略と現状についてのまとめがあったので引用したい。
1) 潤沢な運動資金を奨学金や研究費にあて、「批判」研究を出版させ、マスコミを利用し「生物進化論をめぐる科学論争」の既成事実化をこころみた。
(2) 教育論争においても政教分離の原則内で論陣を張れるよう、「神による創造」を争点からはずし、「生物進化論vs.デザイン」の対立軸を設定する。
(3) この対立軸を「信仰の否定vs.信仰との調和」の対立軸に重ね合わせることで、これまで生物進化論を受け入れてきた中道派市民にそれは科学教育としても信仰としてもふさわしくないことを説得する。
(4) 彼らの支持で当選した州議会議員や教育委員が、対象を特定せず「論争がある場合には賛否両論を公平に教える」という遠まわしの表現を州や学区の教育方針に滑り込ませる。オハイオ、ニューメキシコ、ミネソタでは州レベルでこの規則が制度化され、カンザス州でも検討されている。
また、アメリカにおけるキリスト教右派が進化論を潰そうとしてきた歴史についてはこのブログに詳しい。
憲法に政教分離を謳っているものの、ヨーロッパを逃れたプロテスタントが建国したアメリカという国は、様々な民族をまとめ上げる為に宗教を上手く利用してきた歴史がある。一度でもアメリカで生活した経験があるのなら理解して貰えると思うのだが、アメリカの一般生活における宗教のウェイトは大きい。宗派に関わらず日曜日には教会に足を運んでミサや日曜学校に参加する。裁判において証人は神に対して真実を述べることを宣誓する。食事前に、日本人が「いただきます」と言うのと同じ感覚で神に祈る。神を信じてないと発言した人物は、多分大統領になれない。
もし今後アメリカで生活する経験に恵まれた人は、アメリカ人の友人が出来たら必ず日曜の礼拝に誘われると思うので社会勉強のつもりで行ってみると良い。最後に各自が軽食を持ち寄るパーティーがあったりなんかして実に良い雰囲気で、宗教が人々の心を繋いでいる実情を感覚的に掴めるだろう(私は小学生時代にアメリカに三年間住んでいたのだが、きっと開拓時代の昔から日曜の教会ではこのような催し物が行われており、人々の心の拠り所や情報交換所であったんだなぁ、神なんてまったく信じておらず日曜の朝に特撮やアニメを見まくる自分も、太陽降り注ぐ日曜の朝このような催しに参加して友人や知人を増やすのも悪くないんじゃないか、と小学生なりに思った)。
しかし、建前の上においてだけでも、民主的な国家が特定の宗教を援助してはならない。何故なら我々は国家と宗教が結びついた時どれだけ悲惨なことが起こったかを知っているからだ。歴史の教科書を開けば、人が神の名において行った正義の戦争が如何なる不正義をもたらしたか、その実例でいっぱいだ。十字軍の遠征からアメリカのテロへの報復から始まった現在進行中のイラク戦争まで、21世紀を迎えても宗教観の違いに端を発した争いは終わりを見せる気配が無い。
人類が過去の歴史に学ぶつもりがあるのならば、政治と宗教が結びつき、人々が無批判に神の教えを受け入れるのと同様に、国家や特定の指導者の行いを無批判に受け入れることがあってはならないのだ。
よって、アメリカの大統領がインテリジェント・デザインを学校で教えようなんて口にするのは間違っている。
アメリカでの政教分離とは、「国家がいかなるキリスト教会派とも手を組まない」ことを意味するらしい。英語での政教分離は"separation of church and state"であって、"separation of religion and state"ではない。これは、その昔ヨーロッパでは教会が社会に対し圧倒的な権力を有していた時代があり、カトリックとプロテスタントの対立に政治的な利害が複雑に絡み合い、同じ国民同士が血を流して争いあう宗教戦争が頻発し、その反省から政治に対して教会の口出しを許さない"separation of church and state"という概念ができた、という歴史的な理由によるらしい(参考リンク)。
そう考えると、アメリカは未だ政教分離のできていない遅れた国だという考えに辿り着く。最近では特にその傾向が激しくなってきた。ブッシュ(勿論息子の方)はアメリカ史上、もっともあからさまにキリスト教を語る大統領だ。ブッシュ大統領の支持基盤の一つにキリスト教右派があり、先の再選でも大きな役割を果たしたと言われている。政治家にとっていつどんなときでも自分に投票してくれる団体の存在、いわゆる固定票の存在はとても有り難いものらしく、インテリジェント・デザインを学校で教えよう発言もそういった背景から飛び出したことは想像に難くない。
一方、我が国日本はどうだろうか。同じ日にお寺と神社に足を運び、結婚式は教会で挙げつつも葬式には坊さんを呼び、クリスマスとバレンタインにはセックスを欠かさない。そんな我々日本人は、churchどころかreligionとの分離をあくまでも自然体で果たした、世界に先駆けし進歩的な民族なのだ!そんな日本人の住む日本を見渡すと、21世紀を生きる日本人がインテリジェント・デザインなんて遅れた考えを信じるわけがなかろう、と安心できる。いや、良かった良かった。
…なーんて考えていたのだが、違憲判決が出たのに首相が靖国参拝を強行したり、新憲法草案に靖国参拝や玉ぐし料支出合憲化を目的とした政教分離原則緩和の記述があったりと、近年の日本の右傾化になんだかドキドキする毎日だ。小泉純一郎はそんなに遺族票が欲しいのか?それにしても、公明党の偉い人が首相の靖国参拝は政教分離に反しているなんて叫んでいる姿は性質の悪いコントか何かだと思ったよ。
私はオタクなので、こういうことがあるとかわぐちかいじの「沈黙の艦隊」を思い出してしまう。極秘裏に建造された日本初の原子力潜水艦が戦闘国家「やまと」として独立、日米と対峙するという有名な漫画であるのだが、劇中「やまと」の艦長海江田四郎は日本と友好条約を結んだ理由についてこう説明する。
私が最初に日本と友好条約を結んだのは、私が日本人だからではない。日本が宗教的正義と政治的判断を混同しない、すなわち「政教分離」を実現した国であり、軍事というものに否定的な感情を持っている国家だからだ。
でも、もうちょっとしたら日本は「やまと」から相手にされない国になっちゃうのかな、なんて考えると少々寂しいものがある。まぁ、自分を含む国民の選択次第なのだけれど。
1) 潤沢な運動資金を奨学金や研究費にあて、「批判」研究を出版させ、マスコミを利用し「生物進化論をめぐる科学論争」の既成事実化をこころみた。
(2) 教育論争においても政教分離の原則内で論陣を張れるよう、「神による創造」を争点からはずし、「生物進化論vs.デザイン」の対立軸を設定する。
(3) この対立軸を「信仰の否定vs.信仰との調和」の対立軸に重ね合わせることで、これまで生物進化論を受け入れてきた中道派市民にそれは科学教育としても信仰としてもふさわしくないことを説得する。
(4) 彼らの支持で当選した州議会議員や教育委員が、対象を特定せず「論争がある場合には賛否両論を公平に教える」という遠まわしの表現を州や学区の教育方針に滑り込ませる。オハイオ、ニューメキシコ、ミネソタでは州レベルでこの規則が制度化され、カンザス州でも検討されている。
また、アメリカにおけるキリスト教右派が進化論を潰そうとしてきた歴史についてはこのブログに詳しい。
憲法に政教分離を謳っているものの、ヨーロッパを逃れたプロテスタントが建国したアメリカという国は、様々な民族をまとめ上げる為に宗教を上手く利用してきた歴史がある。一度でもアメリカで生活した経験があるのなら理解して貰えると思うのだが、アメリカの一般生活における宗教のウェイトは大きい。宗派に関わらず日曜日には教会に足を運んでミサや日曜学校に参加する。裁判において証人は神に対して真実を述べることを宣誓する。食事前に、日本人が「いただきます」と言うのと同じ感覚で神に祈る。神を信じてないと発言した人物は、多分大統領になれない。
もし今後アメリカで生活する経験に恵まれた人は、アメリカ人の友人が出来たら必ず日曜の礼拝に誘われると思うので社会勉強のつもりで行ってみると良い。最後に各自が軽食を持ち寄るパーティーがあったりなんかして実に良い雰囲気で、宗教が人々の心を繋いでいる実情を感覚的に掴めるだろう(私は小学生時代にアメリカに三年間住んでいたのだが、きっと開拓時代の昔から日曜の教会ではこのような催し物が行われており、人々の心の拠り所や情報交換所であったんだなぁ、神なんてまったく信じておらず日曜の朝に特撮やアニメを見まくる自分も、太陽降り注ぐ日曜の朝このような催しに参加して友人や知人を増やすのも悪くないんじゃないか、と小学生なりに思った)。
しかし、建前の上においてだけでも、民主的な国家が特定の宗教を援助してはならない。何故なら我々は国家と宗教が結びついた時どれだけ悲惨なことが起こったかを知っているからだ。歴史の教科書を開けば、人が神の名において行った正義の戦争が如何なる不正義をもたらしたか、その実例でいっぱいだ。十字軍の遠征からアメリカのテロへの報復から始まった現在進行中のイラク戦争まで、21世紀を迎えても宗教観の違いに端を発した争いは終わりを見せる気配が無い。
人類が過去の歴史に学ぶつもりがあるのならば、政治と宗教が結びつき、人々が無批判に神の教えを受け入れるのと同様に、国家や特定の指導者の行いを無批判に受け入れることがあってはならないのだ。
よって、アメリカの大統領がインテリジェント・デザインを学校で教えようなんて口にするのは間違っている。
アメリカでの政教分離とは、「国家がいかなるキリスト教会派とも手を組まない」ことを意味するらしい。英語での政教分離は"separation of church and state"であって、"separation of religion and state"ではない。これは、その昔ヨーロッパでは教会が社会に対し圧倒的な権力を有していた時代があり、カトリックとプロテスタントの対立に政治的な利害が複雑に絡み合い、同じ国民同士が血を流して争いあう宗教戦争が頻発し、その反省から政治に対して教会の口出しを許さない"separation of church and state"という概念ができた、という歴史的な理由によるらしい(参考リンク)。
そう考えると、アメリカは未だ政教分離のできていない遅れた国だという考えに辿り着く。最近では特にその傾向が激しくなってきた。ブッシュ(勿論息子の方)はアメリカ史上、もっともあからさまにキリスト教を語る大統領だ。ブッシュ大統領の支持基盤の一つにキリスト教右派があり、先の再選でも大きな役割を果たしたと言われている。政治家にとっていつどんなときでも自分に投票してくれる団体の存在、いわゆる固定票の存在はとても有り難いものらしく、インテリジェント・デザインを学校で教えよう発言もそういった背景から飛び出したことは想像に難くない。
一方、我が国日本はどうだろうか。同じ日にお寺と神社に足を運び、結婚式は教会で挙げつつも葬式には坊さんを呼び、クリスマスとバレンタインにはセックスを欠かさない。そんな我々日本人は、churchどころかreligionとの分離をあくまでも自然体で果たした、世界に先駆けし進歩的な民族なのだ!そんな日本人の住む日本を見渡すと、21世紀を生きる日本人がインテリジェント・デザインなんて遅れた考えを信じるわけがなかろう、と安心できる。いや、良かった良かった。
…なーんて考えていたのだが、違憲判決が出たのに首相が靖国参拝を強行したり、新憲法草案に靖国参拝や玉ぐし料支出合憲化を目的とした政教分離原則緩和の記述があったりと、近年の日本の右傾化になんだかドキドキする毎日だ。小泉純一郎はそんなに遺族票が欲しいのか?それにしても、公明党の偉い人が首相の靖国参拝は政教分離に反しているなんて叫んでいる姿は性質の悪いコントか何かだと思ったよ。
私はオタクなので、こういうことがあるとかわぐちかいじの「沈黙の艦隊」を思い出してしまう。極秘裏に建造された日本初の原子力潜水艦が戦闘国家「やまと」として独立、日米と対峙するという有名な漫画であるのだが、劇中「やまと」の艦長海江田四郎は日本と友好条約を結んだ理由についてこう説明する。
私が最初に日本と友好条約を結んだのは、私が日本人だからではない。日本が宗教的正義と政治的判断を混同しない、すなわち「政教分離」を実現した国であり、軍事というものに否定的な感情を持っている国家だからだ。
でも、もうちょっとしたら日本は「やまと」から相手にされない国になっちゃうのかな、なんて考えると少々寂しいものがある。まぁ、自分を含む国民の選択次第なのだけれど。
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