ひろしま街がたり

広島の街が大好きな名もなき個人の、広島の街がもっともっと素敵な街になってもらいたいと願った妄想の記録です。。。

前回の「川のうた」で、広島の川を題材としたコンテンツはまだまだ未開で、これから広がっていく余地がたくさんあるのではと記しました。

今回は、そのコンテンツの一つ、川の「絵」について語ってみたいと思います。



広島の川の「絵」で誰でも知っているものは?
と言われると、私自身「うた」と同じようにちょっと躊躇してしまいます。

では、東京の川の「絵」は?
となると、パッと次のような素晴らしい絵たちが頭に浮かんできます。

安藤広重「大はしあたけの夕立」
日本橋川(安藤広重『大はしあたけの夕立』)

葛飾北斎「江戸日本橋」
日本橋川(葛飾北斎『日本橋』)

安藤広重「両国花火」
隅田川(安藤広重『両国花火』)

言わずと知れた、日本が世界に誇る文化的コンテンツの一つである浮世絵。
ゴッホやモネなど印象派の巨匠たちが憧れた北斎や広重などの絵は、今見ても本当に美しくてドキドキワクワク時めきます。
と同時に、数多く描かれた江戸を中心とした川(橋)の絵には、そこで暮らす人々の日々の営みが愛情深く描かれていて、たぶんそれは世界共通である人間の”ものがたり”を存分に発しているのではないかと思います。
(江戸(東京)の川や橋の浮世絵については、こちらのサイトが参考になります。)

こんな素晴らしい絵を思い浮かべ、「川のうた」を口ずさみながら、川辺を散策できたらどんなに素敵だろうっと、やっぱり羨ましく思います!


一方、広島の浮世絵と言えば宮島や錦帯橋くらいしか思い浮かばず、広島の街の川の様子を描いたものは記憶がありません。
ただ、浮世絵そのものではないのですが、広島の街中には浮世絵のような印象的な絵があります。

それはこちら、

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「広島拘置所の壁画」(ダイヤモンドライフさんのUP動画より)

これは、広島市中区上八丁堀にある「広島拘置所」の壁画です。
巨大な鯉が跳ね、木造の橋を人々が往来し、数多くの川船が行き交う…、そんな太田川から瀬戸内海までの江戸期広島城下の様子を、全長200mに渡り描いた一大絵巻です。

これは、広島出身の画家・入野忠芳さんが、1989年に広島城築城400年記念として殺風景な拘置所の壁に描いたもので、2013年に色褪せた作品を本人の手で5年の歳月をかけリニューアルされました。
(入野さんはこの年の10月、リニューアルを完成された後直ぐに逝去されました。)

現在はビルやマンションが建ち並ぶ広島の中心・官庁街にひっそりとある絵ですが、立ち止まってじっと見ていると幾筋もの川で形成された広島城下の住民生活の息遣いが感じられ、江戸の浮世絵に負けず素敵な作品だと思います。


そしてもう一人、広島の川の「絵」と言うといつも思い浮かべる画家がいます。
それは、四国五郎さんです。

四国五郎さんは、1924年広島(三原)生まれ、戦時中にはシベリア抑留を体験され、戦後は広島で平和運動に取り組んだ画家(絵本作家、詩人)で、原爆をテーマにした絵本『おこりじぞう』(1979年金の星社)が有名です。(2014年没)

その四国さんは、戦後、広島の川や橋をずっと描き続けられました。
それが画集となったものが『広島百橋』(1975年春陽社出版)

四国五郎『広島百橋』

広島の川ごとに、そこに架かる橋を一つ一つ優しいタッチでスケッチし、素敵なエッセイを付けて紹介されています。
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※なお、『四國五郎ギャラリー』が2018年6月に広島県三原市にオープンしたそうです。


そして、この四国さんが尽力されたものが、NHKの「市民が描いた原爆の絵」プロジェクト

1974年に、被爆者の方々の被爆体験を絵として残していこうと始められた取り組みにおいて、四国さんはテレビ出演し、どのように描けばよいのか、描き切れないところは文章を添えてもよいのではとアドバイスを送り応募を呼びかけました。
そして、当時寄せられた絵の数は予想を超える約2000点。(現在は4000点以上になっているそうです。)

現在、それらの絵の一部は広島平和記念資料館に展示されていますが、全体については、広島平和記念資料館の『平和データベース』の「原爆の絵」でネット閲覧ができます。(こちら、ぜひご覧ください。)

「原爆の絵」を見る度にいつも強烈に感じるのは、絵の持つ「力」です。
被爆者自身により描かれた絵には、上手いとか下手とか、美しいとか感動するとか、そんなものを一切無にするくらいの圧倒的な「力」があります。
到底言葉などにはできない「力」。
真実を切り取るはずの写真でも映し出せない「力」。
その絵の前では、ただただ立ち尽くすしかありません。
(もし私がプロを目指す画家だったら、これらの絵を見たら、自分の描く絵に絶望するだろうといつも思ってしまいます。)

そして、そんな「原爆の絵」の中でたくさん描かれたものは…
「川の絵」。




「原爆の(川の)絵」は、浮世絵とはまた違った意味で、日本が世界に影響を与えることができるものだと思います。
ただ、広島の川の「絵」はそれだけではないはず。
それ以後現在に至るまでの、そして未来に向かっての「川の絵」もあるはずです。
だからこそ、そこにはまだまだ大きな可能性が残っていると思います。


四国さんは『広島百橋』のあとがきで、次のように述べられています。

「私は広島の街が好きでしょうがない。私が育った街だからというだけでなく、原爆であんなに痛めつけられた街だから、そのうえに創りあげられた街だから好きなのです。大きな悲しみと、平和を願う高い使命をになった都市だから好きなのです。
 その広島の街をつらぬいて流れる川と橋が特に好きなのですが、それをテーマにして本にすることができたわけだから、正直言って嬉しくてしょうがないところです。
 広島における川は、他の都市に自慢してよい貴重な財産です。この流れと岸辺と橋とは、都市美やよい環境を創造してゆくうえに無限の可能性を内蔵していると思います。」

(次回へ続く)


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さて、このブログ『ひろしま街がたり』では、自分なりに考える広島の街の魅力を妄想のようにぐだぐだと語っています。

・本編の『ひろしま街がたり』では、東京、岡山、福岡と比較しての広島の魅力で、今のところ「VS東京」として、「山」「川」をテーマに記しています。
・また、時折ひっかかる広島の街に関するトピックスがあった場合、『ひろしまトピがたり』として、FISEアウトレット西城秀樹さん逝去都市ランキングヒルトン進出ひろしま美術館などなどについて記しています。
・さらに、広島の魅力としてはやはり別格の一つである広島カープについては、『ひろしまカープがたり』として、いろいろな思いが湧いた時に気ままに記しています。

そんな中、広島の街の魅力の一つは、「魅力的な企業」がたくさんあることとずっと思ってきて、今回ちょっとした切っ掛けから、ちょうど良いタイミングでもあるで、新たに『ひろしま企業がたり』というパートを始めることにしました。




そのちょっとした切っ掛けというのは、昨年末から年明けに読んだ本によるものです。

その本は次の3冊です。

『デザインが日本を変える 日本人の美意識を取り戻す』 前田育夫(2018年5月光文社新書)

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2009年、経営危機に陥り、米企業傘下からも外れた小さな自動車会社では、デザイン部門のトップに久しぶりに日本人が就任。期待と不安の中、リーダーは全車種のデザインプロセスを一新。容赦なき改革は激しい反発を受けるも奏功し、新ラインナップは欧州を中心にグローバル市場で人気を獲得。ついに'16年、スポーツカー「ロードスター」は世界で最も優れた車に贈られるワールド・カー・オブ・ザ・イヤーと同賞のデザイン部門のダブル受賞という史上初の栄誉に浴す。いまやマツダのモノづくりの根底にある「魂動」というコンセプトは、海外メディアからも〝KODO〟と呼ばれるほどの地位を確立しつつある。 日本メーカーが苦境に立つ現在、一地方の企業が世界で光を放てるのはなぜか。「日本人の美意識への原点回帰」を掲げ、これからの製造業の在り方を体現するリーダーの哲学がここにベールを脱ぐ。



『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』山口周(2017年7月光文社新書)
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◎もはや論理的思考・MBAでは戦えない…… 
◎「直感」と「感性」の時代 ◎組織開発・リーダー育成を専門とするコーン・フェリー・ヘイグループのパートナーによる、複雑化・不安定化したビジネス社会で勝つための画期的論考


『マツダがBMWを超える日 クールジャパンからプレミアムジャパン・ブランド戦略へ』山崎明(2018年5月講談社+α新書)
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「クールジャパン」はただの勘違い?

高品質低価格の呪縛にとらわれた日本企業は、このままでは欧米プレミアムブランドに負け続け、韓国・中国企業から下から突き上げられ、存在感を失くしてしまいかねません。
プレミアムブランディングのプロであり、国内外で実際のブランディング戦略に関わってきた著者が、プレミアムブランドの成立のプロセスを紐解きながら、日本企業・日本製品が高価格・高付加価値の世界商品になる方法を語ります。
その中で注目すべきはマツダ。急成長を遂げる同社の戦略に、日本企業が隘路を脱するヒントを見ます。
プレミアムブランドに限らず、薄利多売で苦境にあえぐすべてのビジネスマンの常識を覆す知恵がたっぷりの1冊です。

この3冊に共通しているものは、
もちろん広島を代表する企業『マツダ』
そして、『デザイン、美、アート、ブランド』。

これらの本を読んでいて、その内容はマツダだけでなく広島の街を考えるのにもとても参考になると思ったのでした!



①については、
正しくマツダ本の一つで、過去からいろいろな本が出版されていますが、現在のマツダ車の商品群を象徴する2つの要素
・技術面の「スカイアクティブ」(常務執行役員の人見光夫さんの本『答えは必ずある』参照)
・デザイン面の「魂動デザイン」
の後者について責任者の前田さんが語っている本です。

そこには、単にマツダだけに留まらないような、企業のあり方を表現するトータルな思想としての”デザイン”について熱く語られており、このようなソフトパワー(”トータルパワー”と呼ぶべきか?)に関するメジャーな発信が広島を代表する企業からなされていることは、とても誇らしいです!

②については、
AI、IOT時代における世界的な最先端のトレンドである「美意識」の獲得において、マツダの取り組みが例示されていて、そこにはグローバルな普遍性もあるのだと感じ取れます。

③については、
表題のようにベタなマツダ本ではなく、上記②の本に近い構成で、(プレミアム)ブランドとは何か?世界に伍するため日本はどのようなブランド戦略を持つべきか?という考察において、最後にその困難な戦略に挑戦している企業の例としてマツダが紹介されています。


注目すべきは、
この3冊が1年満たない間に、大手出版社から出版されている点です。

マツダという日本の地方都市にある、年間販売台数(約160万台)では世界の自動車メーカーのトップ10にも遠く及ばない(10位のダイムラーは約330万台)企業が、これだけ注目されているのはなぜか?

そのことは、国内の都市ランキングのいろいろな指標でだいたい10~12位辺りをウロチョロしている「広島の街」のあり方(魅力づくり、ブランディングなど)に大いに参考になると思います。


そんな広島の街が生み出したマツダという企業の魅力については、今後も随時記していく予定です!






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川が溶け込んだ街、”水の都”広島、
これまでいろいろな魅力を紹介してきましたが、まだまだその魅力を広げていく余地がたくさん残っています。

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それは、水辺のカフェ水上交通などのハードだけでなく、もちろんソフトにおいても。
ウォータースポーツ水辺のコンサート野外上映会歴史的な祭などのイベント。
そして、それ以上に未開であり、だからこそ大きな可能性を秘めているのがコンテンツ。

広島の”川”を題材にしたコンテンツについては、以前、川の「」についていくつか取り上げました。
でも、ローカルでマイナーな作品はそこそこ出るのですが、少なくても多くの日本人が知っているようなメジャーな作品(広島の街をイメージさせるような作品)は残念ながらまだありません。

そして、それは「川の歌」でも同じ状況です。
江戸期以前からこんなに水運が盛んな街なのに、人々に伝承されている川の「うた」というものをほとんど聞いたことがなく、それがずっと不思議でしかたありません。
(「うた」については、”川”に限らず広島の街にはなぜか古いものが残っていません。もともとなかったのか、それともそんな文化も原爆で途絶えてしまったのか…。これについては、いつかまた記してみたいと思っています。)


片や、東京の川には「うた」がたくさん残っています。
このシリーズで何度も取り上げた川には、特に誰でも知っている「名曲」が。。。


隅田川(滝廉太郎『花』)


神田川(かぐや姫『神田川』)

また、東京でなくても、

仙台・広瀬川(さとう宗幸『青葉城恋唄』)


長野・千曲川(五木ひろし『千曲川』)

さらに、極め付けは、

ニューヨーク・イーストリバー(美空ひばり『川の流れのように』)


プラハ・ヴァルタヴァ(モルダウ)川(スメタナ『わが祖国』第2曲)

などなど、
こんな「うた」がある川は羨ましいですね!
川辺を散策していると、どこからともなく聞こえて来そうです。。。)



もちろん、広島の川にも”歌”がないわけではありません。


中山千夏『広島の川』(1975年)


加藤登紀子、島谷ひとみ他『広島 愛の川』(2015年)※中沢啓治氏作詞


島梨花『太田川恋唄』

うむ~、よく知らねえ…(-_-;)
さらに…


『川よ とわに美しく』(1986年 作詩:米田栄作、作曲:三枝成彰)


広島大学歌』(1957年) ※2番で「七筋に」と…。

と…
どれも知る人ぞ知る”歌”で、誰でもが口ずさめる「うた」ではありません。(そして、やはり「原爆」をテーマにしたものが多いですね。)

それにしても、吉田拓郎や奥田民生などの”地元愛”のあるソングライターたちが、なぜ「広島の川」を曲にしてこなったのか?
また、今や、”広島市民・県民のうた”と言っても過言ではない、『それ行けカープ~若き鯉たち~』の歌詞の中に「川」がなぜ登場しないのか?
川があまりにも街に溶け込み過ぎていて、「うた」にはなり難いのか?

本当にいろいろと不思議です。。。



そんな中、
2006年には、”水の都”づくりを進める広島市が中心となった「水の都ひろしま推進協議会」が、広島の『川のうた』を公募し、114曲の中から最優秀1曲、優秀2曲を選定しました。
(上記の三枝成彰さんも特別審査委員として参加)
ここで注目すべきは、どうしても「原爆」「平和」に拘りがちになるところを、「日常的に口ずさみ、演奏できる」曲をテーマにしたこと。

結果、最優秀、優秀曲は次の3曲です。(クリックすれば曲が聴けます)
・最優秀賞 『流れとともに』小田貴音
・優秀賞  『夢の河口』坪北沙綾香
・優秀賞  『川の詩』智

川のうた 表彰式
表彰式(広島市HPより)

どれも馴染みやすい歌ですが、
個人的には、坪北さんの『夢の河口』が大好きで時々思い出しては聴き返しています。
ただ、残念ながらこの3曲も、今や広島のほとんどの人に知られていない(最初から知らない?)「うた」となっています。
(本当にもったいないなあ。。。)



広島の街について、歌にしろ、小説にしろ、映画にしろ、何かのコンテンツを創る時、どうしても「原爆」の存在が大き過ぎるため、(良い悪いは別にして)そのイメージから解放された作品づくりはとても困難だと思います。
(ひょっとすると、上記の吉田拓郎や奥田民生らが曲づくりしない理由なのかもしれません。)

でも、それはそれとして、
別の”広島の魅力”を伝える「うた」があってもいいと思います。

広島の人々の普通の日々を描こうとすれば、そこには自然と「川」が映し出されてくると思うので、そんな日常の姿を「うた」にする。
どこの街にでもありそうな恋愛や青春や悲しみややすらぎなどを、どこにもない広島ならではの「川」を舞台に「うた」ってみる。
(そのことで、広島の街の魅力の発信と相まって、「原爆」「平和」もより一層際立つのでは。。。)

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そして、その可能性に溢れる余白は、まだ未開のままたくさん残っています。
いつの日か、「広島の川辺であの歌を口ずさみたい!」と言って、多くの人々が広島の街を訪れてくれるような「川のうた」が生まれることを、期待しています!

(次回へ続く)



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