今年の広島の街の話題で特に注目していたものは2つ。
一つは、先日記した FISE Hiroshima 2018」の開催。そしてもう一つが、この『THE OUTLETS HIROSHIMA』のオープンです。

どちらも広島では久しぶりの”全国初”という代物で、一部全国メディアにも取り上げられたりしましたが、果たしてどれだけのインパクトがあるのか関心があります。


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       「THE OUTLETS HIROSHIMA」の完成予想図

この施設の内容や現地の様子については、鯉党αさんの『AND BUILD HIROHIMA』などで詳しく説明されている(こちらをご覧ください)のでここでは記しませんが、長年、広島圏域に欠けていると言われていたアイテムの一つである(本格的な?)”アウトレットモール”というものが、やっと(全国から遅れること約20年…)できることになります。

このことについては、中四国地方の最大都市を擁する県でありながら、交通の利便性の弱さなどにより、お隣の岡山県(倉敷市)に先を越されていたこともあり、今さら感も含めて複雑な感慨があります。


でも、本当のところは、私自身、この”アウトレットモール”自体にはほとんど興味はありません。
(自覚症状があるくらいに異常に物欲のない身にとっては、どんな店が入り何を幾らで売るかなどまず関係がないからです。)

ただ、そろそろ限界に近づいている気がするSC(ショッピングセンター)など大型店舗の今後のあり方にはちょっと興味があります。
今回、スケートリンクやプロジェクションマッピングなどのエンタメエリアを設け、”もの”だけでなく”こと”も売ることにした点を見ると、”アウトレット”と言う名を潔く捨て去り?、マニアックなイベント開催や水族館を作るなどの変貌を見せ、個人的に面白いなあと思っていたあの『マリーナホップ』が、実は大型店舗のあり方を先取りしているのではないか、なんて思ってしまいます。


※ちなみに、SCなどの存在からコンパクトシティや未来の都市のあり方までを、縦横無尽・支離滅裂?に語っていきながらも、キラリと輝く発想が随所に散りばめられている次の本はとても面白いので興味ある方はご一読を。
●『ショッピングモールから考える:ユートピア、バックヤード、未来都市』(大山 顕、東 浩紀 著 ゲンロン叢書)
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                    ◇

さて、先日の「FISE」についての”トピがたり”でも記したのですが、今回も私が関心を持ったのは、「未来の新しい広島の街の姿」を見ることができるのは…と期待しているからです。
その”未来の姿”とは、このアウトレット自体のことではなく、今回のオープンがその加速化を誘発するであろう、「広島中心部のトランスフォーム(変容)」のことです。

ただでさえ、イオンモール、アルパーク、LECT、ゆめタウンと、郊外の大型店舗が飽和状態の中、更なる巨艦が建造されれば、郊外の競合店だけでなく、”楕円形”の中心部とされる「紙八」(紙屋町・八丁堀)や「エキ」(広島駅)周辺も相当な影響を受けるでしょう。
特に、まだ目立った再開発が少ない「紙八」への影響は大きいと思われます。
という事は…、
「紙八」も否応なく”トランスフォーム”せざるを得ない状況が加速されていきます。
つまり、そこから「未来の広島の姿」を見出すことができそうで興味津々なのです。

ただし、それがどんな風に”トランスフォーム”するかはとても微妙で、下手をすれば空洞化が進み魅力も何もない中心部になってしまう危険性もあります。
そうなれば広島の街にとっては致命的なので、それだけはどうしても避けなければなりません。


幸い、広島の中心部には、より魅力的に”トランスフォーム”できるポテンシャルがあるんじゃないかと思っています。

ちなみに、普通にちょっと考えてみると…

●郊外の大型店舗が供給するものは、
【ファミリー層が車で行ける手ごろな】
 ・ショッピング、ファッション、グルメ、アミューズメントなど。

★これに対抗(役割分担)して中心部が供給すべきものは、
【ビジネスパーソン、観光客、若者等をターゲットとした】
 ・エンタメ化(スポーツ、ライブ、アート、MICE +アルコールなど)
 ・ブランド化・ハイエンド化(グルメ、ファッション、ショッピング、先端ビジネスなど)
 ・広島化(より個性的にブラッシュアップ+イイ感じのカオス)
 された”もの”や”こと”。


そして、そのためのツールとして、現在の広島中心部には、
・川、旧市民球場跡地、中央公園、平和大通り、比治山などのフリー空間
・山、川、海、島など自然が望める環境
・個性的な地場産業、交通機関
など”可能性を秘めた素材"が揃っています。

これらから私が妄想する個々の”未来の姿”については、今後の『ひろしま街がたり』で語っていきたいと思っていますが、愛読しているヒロさんの『封入筋体炎患者闘病記』でも度々中心部の再生について提案されていてとても興味深いものがあります。(こちらなどをぜひご覧ください。)

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      広島中心部(どのような変容を見せるのか?)

                   ◇

都市中心部の”トランスフォーム”については、もちろん広島だけの課題ではなく、数年前に参加したエリアマネージメントのシンポジウムでも、「名古屋や福岡で既に起きており、いずれ広島でも同じことが起きるだろう」と述べられていました。

あの”メトロポリス”東京も例外ではなく、中心部のあり方にどこも苦慮しているようです。
例えば、次の「渋谷」のニュースを聞いて、正直溜息が出ました。
『渋谷駅西口に「東急プラザ」が復活 ターゲットは”成熟した大人層”』
「若者の街」と言う個性で輝いていた街が、今やその姿を変な方向?へ”トランスフォーム”しようとしています。
これは少子高齢化社会の中、”渋谷”というエリアだけ見れば(もしかすると)客層の広がりという点で良いことかも知れませんが、東京という都市で見れば、同じような個性のない街がますます増えていき、全体の魅力を押し下げるような気がします。。。
(ずいぶん前から秋葉原も⇒この記事のコメント欄が…。)

また、お隣の岡山では、中心部にSCやアウトレットなどを配置する対照的な動きを見せていますが、これも今後どのような”未来”となるんでしょうか。。。

                   ◇

果たして、わが広島の中心部はこれからどのように”トランスフォーム”していくのか。
より魅力的な活力ある街と変容するのか、それとも衰退の一途を辿るのか。
期待と不安でワクワク、ハラハラ…、得も言われぬスリルがあります。
ただ何であれ、今回は後戻りできない分岐点になりそうな気がするので、乾坤一滴、本気のチャレンジをしてもらいたいと思います。

そして、それが結果どのようになろうとも、後から振り返ると次のように語られるかもしれません。
広島の街は、2016年、大きな節目を迎えた。
 そして、2018年、広島の街の次の”新しい姿”へのターンオーバーが始まった…。」と。