ドクダミ(十薬・重薬)の効用
●PROFILE
薬学博士
林輝明
はやし・てるあき
薬学博士。日本生薬学会幹事、中国・長春中医薬夫学名誉教授。大阪府生まれ。1948年大阪薬学専門学校(現在の大阪大学薬学部)卒。大阪大学医学部薬学専門科助手として薬学分析などの研究に従事。さらに、国立予防研究所で抗生物質の研究にあたる。67〜73年まで、大阪大学薬学部生薬学教室研究員として生薬学を専攻。76年、大阪大学より薬学博士号を授与。その後、近畿大学東洋医学研究所講師として東洋医学の研究を続ける。現在、財団法人教育文化研究所理事、財団法人東洋医学国際研究財団評議員などを努めるかたわら全国各地での講演や執筆活動などに幅広く活動中。主な著害に『若さを保つ食べもの学』『からだに効く食材調理図典』『症状別健康食品の選び方』など。
ドクダミとはどのような植物か
「どくだみや真昼の闇に白十字」
この草は北海道南部から、本州、四国、九州と日本中のいたるところの陰地に生えており、草全体に特有の臭気があって、すぐドクダミとわかります。繁殖力が強く、しぶとく広がるのでシブト草とも呼ばれる東アジアに分布する野生の多年草です。
ドクダミの名は「毒矯み」(毒を矯めてくれる)「毒にも痛みにも効く」ということからきているといわれます。また「十薬」とも呼ばれますが、江戸時代の名医貝原益軒が「大和本草」という薬物書に馬医者が、「馬に用いて十種類の薬効ありとして十薬と呼んでいる」と記し、これに由来しているといわれます。しかし漢方では「蕺」と呼び、これに「十」または「重」を当てたのが正しいと思います。
また中国では魚のような生臭いにおいがするので「魚鯹草」とも呼ばれています。
ドクダミは、菩提樹の葉のようなハート型の広い卵状で、草丈は30cm位で、白色の地下茎で横に長く伸びて繁殖します。梅雨が明けたころに4枚の十字状の白い花をつけるといわれますが、実は葉に近い性質をもつ苞で、本当の花は、その上に伸びる穂につく、非常に細かく多数つく淡黄色の花なのです。
ドクダミを草として採取するのは、5月〜6月のこの花の咲いている時期で、根を含めて取り、乾燥して適当の大きさに切り、紙製に入れて貯蔵しておき煎じて用います。
切傷や化膿した腫れものなどの外用に使う生の葉は、随時必要なときに採取します。
ドクダミの効用
「花は十字、葉は菩提樹と一茎に奇しくもそなえる聖(ひじり)毒だみ」
久松眞一
ドクダミは、確かに一つの茎にキリスト教(花は十字)と佛教(葉は菩提樹)をもっています。そして素晴しい薬効をもつ薬として、肌の衰えを美事に防ぐ美容化粧料として、そして飢饉のときの食物として私たちに恵みをもたらしてくれるのです。
薬としては中国では約1500年前、日本では300年前の江戸時代から使われてきました。そして最近では健康食品として改めて注目されています。私たちは新鮮な酸素と体に栄養を与えてエネルギーを作り出し、免疫力を与えて健康を支える食物なしには生きてはいけません。その大切な食物の中で最高の食物を健康食品と呼ぶのです。薬は病気になってからですが、健康食品は、ほっておくと病気になる前の未病の段階で、体の免疫力を高めて病気にならないように予防してくれる働きをもちます。その意味で薬以上に大切なものといえましょう。それだけに本物の健康食品でないといけません。長い間、人間に使われてきて、全く副作用がなく、確かに効果のあることが裏付けられたものが必要です。
そして、現代医学で有効成分がしっかり判り、臨床的にも科学のスポットが当てられ、その効用が証明されたものこそが本物なのです。ドクダミは、その数少ない本物の健康食品といえましょう。
ドクダミが薬として記載された最初の本は、中国の梁の時代に出版された神農本草経集注(502年)で、その後、漢方の薬として伝承され、明の時代に入って、李時珍という名医の書いた世界最大の薬の百科辞典「本草網目」(1590年)にドクダミの色々な効能が述べられ、日本にも大きな影響を与えました。
日本で薬草としてその効果を最初に記したのは、江戸時代の図説百科辞典「和漢三歳図会」(1712年)で、著者の寺島良安は本草網目のドクダミの原文をそのまま訳して書いています。このような数多での薬物医学書にその効用が書かれてきましたが、匂いが強力であるため、漢方薬にはあまり配合されず、民間薬として單擉で幅広く人々に使われ、その効用が確認されてきました。ドクダミは内服薬としては根を含む乾燥物を煎じたり、粉末にして用い、外用には生葉やそのしぼり汁を主として用いてきました。
先ず乾燥物をむくみとり、毒物を除く利尿剤として、1回4〜12gを煎じて服用します。この働きの有効成分はケルセチンやケルシトリンといったフラボン配糖体で、特にケルシトリンは10万分の一まで薄めても、その効力がある強い利尿作用をもたらします。それだけではなく西瓜などの利尿成分であるミネラルのカリウム分が多量に含まれて居り、尿の排出を更に高めてくれます。腎臓病や心臓病、産前産後のむくみとりにドクダミが使われたのはこの理由によります。最近、お年寄りの頻尿や子供の寝小便の改善にも、膀胱に貯った尿を完全に出し切るドクダミの健康食品が良く利用されています。
また、ドクダミが心臓病や高血圧、冷え性、腰痛の民間薬として用いられてきたのは、ケルシトリンが強心作用をもち、ケルセチンが血管を強化し、拡げて血液循環を良くしてくれるからです。また老人性便秘などの緩下剤として古くから用いられるのは、ケルシトリンが衰えた大腸の運動を助け、送り出しの蠕動(せんどう)作用を高めてくれるからです。また、動脈硬化を防いで老化を防ぐ作用をもつのも、これらフラボン配糖体の血管強化、血行促進の働きによります。淋病や尿道患、食中毒、化膿、回虫、水虫などの殺菌治療剤としても利用されてきました。これは強い殺菌、殺カビ作用をもつドクダミ特有の匂い、効力の働きによります。デカノニールアセトアルレヒド、ラウリンアルレヒド、メチルノニルケトン、などの飛散し易い精油成分の働きによります。
従ってこれらの用途に用いるときは、長時間加熱し過ぎないよう注意が必要です。特にデカノニールアセトアルレヒドの作用は強力で、水虫の原因となるカビの白鮮菌に対しても強い抗カビ効果を発揮し、化膿菌のブドウ状球菌や淋菌に対しては4万分の一まで薄めても制菌力を持ちます。ドクダミの地下茎(根)にも、水虫を治すこれら精油成分が含まれています。
淋菌、梅毒の治療には乾燥物を1日20g、痔には1日40gを煎じて、夫々3回に分けて飲むと効果があります。ドクダミを外用に利用するときは、乾燥や過熱によって、殺菌成分が飛散して減少しないように生葉や生葉のしぼり汁を主として用います。古くから腫物や化膿傷、脱肚、疥癬、出血、蓄膿症、毒虫さされなどの治療に使われてきました。
化膿性の腫物や切傷には、新鮮な生の葉を水洗いし、新聞紙などに包んで火であぶり、柔らかくなったら、腫物や切傷の大きさに折って患部にあて、セロテープで止めておくと、膿を吸出し、腫れがひきます。またトゲがとれず化膿したとき、ドクダミの生葉をもんでつけ、セロテープで止めておくと、次の日にはトゲも取れて、膿もなくなるほどで、素晴らしい効き目を発揮します。
蓄膿症には、生葉4〜5枚を塩でよくもみ、汁の出るころに、まるめて鼻穴の片一方に挿入し、30分位で鼻をかむと、膿のような鼻汁とともに出てきます。これを1日3〜4回行うと効果があります。同時に乾燥葉20gを煎じて服用すると更に治癒が速まります。また、女子蔭部のただれは、煎液で洗い、1日20gの煎剤を飲むと、非常に早く回復します。
このようにドクダミは民間薬として、非常に広い効用を持ちますが、実は国が定めた日本薬局法という法律書に十薬の名で収載され、便通薬や利尿薬、消炎剤として用いられる立派な薬でもあるのです。従って、本物の健康食品として、健康に良い働きをするのは当然のことと云えましょう。
ドクダミは優れた美容効果をもつ化粧品でもあるのです。私たちの皮膚は、汗などに含まれる乳酸などによって微酸性を保って細胞やカビが皮膚に付いて繁殖するのを防いでいます。しかし女性ホルモンによって、分泌が促進される皮脂が、女性ホルモンの多い青春期に過剰に出て、皮脂が皮膚表面を覆い、これに空気中を浮遊するアクネ菌(ニキビ菌)が付着し、毛穴から侵入すると化膿してニキビが発生します。また他の化膿菌が、ほんのちょっとした傷から入り込み、繁殖すると皮膚は炎症を起こします。このときドクダミ化粧品やドクダミ液を使用すると、強力な殺菌力でニキビを治し、皮膚の炎症を治してくれます。ドクダミ入り化粧品は、皮膚細胞を活性化すると共に、細菌やカビの増殖を許さず常に清潔に保って、美肌を作り上げてくれるのです。
美しい肌とは、艶と潤いがあり、やわらかく弾力に富んでいて、血色のよいこととされています。このためには皮膚に充分に栄養と新鮮な酸素を補給してやらねばなりません。その役目をはたすのは血液で、血管というレールに乗って栄養と酸素を届けてくれるのです。ドクダミは先に述べたように、皮膚の毛細血管を強化し、拡張して血流の促進をはかってくれます。ですからドクダミを粒なり、お茶で毎日飲んでいれば、艶、潤い、弾力、柔軟性に富む血色の良い美肌となります。またドクダミのもつ緩下作用と利尿作用は、便秘を解消して毒素を排出して肌の吹き出物を防ぎ、むくみをとってくれます。ドクダミには内から飲む化粧品でもあるのです。
食物として
またドクダミは食物としても利用されました。江戸時代の貝原益軒の大和本革(1708年)に「駿州の山中の村民、ドクダミの根を掘り、飯の上に置き蒸して食す。味甘しという」と書いて食物としての利用法を述べています。
現在でも、ドクダミ特有の臭みは、加熱によって消失するので、若い芽をてんぷらにするとおいしく食べられます。また新しい葉を塩湯でよくゆでて、水にさらし、味噌とみりんで和える食べ方もあります。
これだけ広範囲の効用をもつドクダミが飲み易い健康食品となって市場に出ています。
エキス分を錠剤とした製品や、毎日飲み易いドクダミの根のお茶などです。
ドクダミ茶の作り方
1.採取
どくだみ草を採取。地面から少し上を摘み取り、水洗いして土や虫などの汚れを落とします。
2.乾燥
どくだみを一掴みずつ束にし、葉が下になるようにして、風通しのよい場所で乾燥させます。晴天の夏なら3〜5日。普通は1週間から10日くらいかかります。(どくだみを摘んでみてシャリシャリしていれば乾燥OKです。)
3.保管
乾燥したどくだみを、はさみなどで適当な大きさにカットし、密封できる空き缶などに入れ、風通しのよいところで保管します。(飴やお菓子などに入っている乾燥剤などを再利用すると効果的です)
4.飲み方
土瓶、耐熱ガラス、ホウロウ鍋などを使用し、1回当り5〜20gの乾燥どくだみを約500〜600mlの水で煮立てます。目安として1日2〜3回程度に分けて飲み、特に食前に飲むと体への吸収も良好です。
体験者の声
どくだみで原爆症の苦しみを克服した!
N.Tさん(広島県80代無職)
広島に原爆が落とされた昭和20年8月6日、私は被爆しました。連日高熱が続き、時には40度を上回る日もありました。当時は医薬品もなく、ただ熱にうなされ、苦しさに耐えるばかりでした。苦しさの中、私はすがるような思いで、看病してくれていた母に「どくだみを煎じてくれ」と頼んだのです。私はどくだみを連日飲み続けました。どくだみを飲んでは汗をかく。その繰り返し。とにかく浴びるようにどくだみを飲み続けました。
やがて10日後、奇跡が起こりました。熱が下がり、平熱に戻ったのです。その後もどくだみを飲み続け、高熱に苦しむことはなくなりました。
そもそも、どくだみは、わが家では昔から常備薬でした。あの高熱のさなか、どくだみを求めたのは、幼少時代から親しんできた常備薬を、無意識のうちに体が求めたからなのでしょう。
今80歳になりますが、被爆による後遺症も残らず、比較的健康体でやってこれたのも、どくだみのおかげだと思っています。私の場合、お茶代わりにどくだみを飲んでいます。とても手間いらずの健康法です。
慢性的な便秘症に悩んでいました
Y.Aさん(東京都50代主婦)
私は10代の頃からの慢性的な便秘症で、ひどい時には通院をするほどでした。それに伴い、肌荒れや吹き出物も多く、すごく悩んでいました。
ある日、知人から、「便秘・肌荒れには、どくだみがいいよ」と勧められました。最初は半信半疑でしたが、どくだみは子どもの頃、母から体に良いと聞かされていましたし、本やインターネットなどで調べてみると、どくだみは漢方にも使われていたり、利尿作用や緩下作用などがあるとわかりました。私の症状に合いそうなので「もしかしたら?」と思い、薦められたどくだみの錠剤を試してみることにしました。
1日1回、朝食前に毎日飲み始めました。すると飲み始めて数週間で、今までいろいろなものを試しても駄目だった便秘症の私が、毎日スムーズに路るようになったんです!
さらに3ヶ月ほどすると、便の出によるデトックス効果なのでしょうか、すっかり吹き出物も治り、肌荒れも良くなり、化粧のノリが良くなりました。それからすっかりどくだみにはまってしまい、普段飲んでいるお茶もどくだみ茶になりました。
今の私にはもう、どくだみは手放せません!
糖尿病の恐れがあると言われて
S.Yさん(東京都30代会社員)
2年ほど前、内科で血液検査をした際、血糖値が高く体内のインシュリン不足で、糖尿病の恐れがあると診断されました。医者から糖尿病という言葉を聞いた時は恐怖感でいっぱいでした。まさか自分がなるとは思いませんでした。とてもショックでした。
糖尿病の克服を決意し、徐々に食事制限をし始めたある日、親戚にどくだみを勧められました。どくだみの利尿作用から、水分の体内処理をスムーズにしてくれるため、糖尿病の改善に役立つとのこと。また、緩下作用から便の出も良くなり、ダイエットにも効果があり、コレステロール値も正常化してくれると教えられました。
勧められた商品は、粒状のサプリメントで、携帯して持ち運びできるので、毎日飲み続けることができました。
飲み始めてから半年ほど経ち、医者から「血糖値が正常の値まで戻っているよ」と言われました。どくだみのおかげだなと思い、思わずニヤッと笑みが漏れてしまいました。
今では美味しい食事を気兼ねなく食べられるようになり、制限していた大好きな甘いものも食べられるようになって、とても嬉しいです。