bridge
私的公開日誌@ウェブ暦:100915.01


今回のブログから、過日に参加した“近年最高のソーシャルイベント”「BRIDGE2010 September」を基に、その時に皆で話し合われたこと、さらにはこれまでの自分の考えてきたことを整理する意味で5回の予定で連載ブログ記事とする。

当日のイベントは、「頭のいい人も新事業で大ゴケ!?事業創造のサイエンスとは」というのがテーマだが、それだけに限らない広範な問題が語られ、有意義であったことは先日のブログ“プロローグ”でも既に述べている。

これは新規事業や経営、マーケティングに携わるものに限らず、ビジネスに携わる人たち全員に有意義な話が詰まった玉手箱のようなunconferenceであった。

レクチャーの冒頭、サイボウズ創業者の高須賀宣さんは、新製品開発や新規事業の出すときにブレストのようにアイデア量に頼るのもロジカルで導かれたアイデアも共に駄目だとばっさりと切りてた。

もちろん、それらの発想や手法が全て有効性を持っていないという訳ではなく、状況によってはもちろん有用だということは分かっているうえでの発言である。

それは、高須賀さんが新規事業創出やイノベーションについていろいろと試行錯誤した中で、良いアイデアを考えつくための方法を徹底的に“考える”ことで、良いアイデアを創出する方法論とは確率を上げる方法こそがキーになるということにたどり着いた1つの結論である。

その確率を上げる方法として、切り口とアイデアがセットが有用だということである。

今回は、この件について書くことにする。


■80年代の徒花ーー新規事業ブームの実態

ところで、80年代半ばから90年代前半にかけて新規事業ブームというものがあった。
1979年のエズラ・ボーゲル『ジャパン・アズ・ナンバーワン―アメリカへの教訓』に端を発し、その後80年代のバブル社会へと邁進する我が国であった。

当時、もはや西欧から学ぶことはなくなった」とうぬぼれていた絶頂期。各企業では新規事業部なるものを設け、新しい事業の種を求めていた。
しかし、そういう一方で最新の経営戦略やマーケティング手法が米国から上陸すると、皆がありがたがって拝聴していたのは何故と私は当時疑問に思っていた。

また、ビジネスマンの勉強会ブームの追い風もあり(私も興味のある勉強会には積極的に参加していた)、そうした勉強会に参加すると必ずそうした新規事業部門の担当者の方々に出会ったものだった。

しかし、そうした中から真の新規事業は育たなかった。それは発想やアイデア以前の問題だったのだ。ちょうど、TwitterやSNSなどソーシャルメディアが流行っているから、という理由で導入してみたが成果の上がっていない企業と同様である。

この80年代の新規事業ブームの折、そうした部門長の肩書きをもった人たちと名刺を交換することも多かった。その当時、私自身が新規事業に関心が高かったこともあり、そうしたマーケティング企画の依頼を受けていくつか提出したことがある。

そうした人たちは真剣に新規事業について考えてはいなかった。担当者は元々が営業部門の次長クラスの人で、業務命令で新規事業部の部長のポストを与えられていた。
会社からは週1本の新規事業のアイデアに関するレポートが課され、その報告書作成のためのネタ探しのためにあちこちの勉強会に出席していた。しかも、参加費は会社持ち。

そうした人たちの中には、3年ほどこの部門でつつがなく過ごせば、今度は営業部へ部長として戻れると語る御仁もいた。

こうした考え方や人では新規事業の良いアイデアを創出できる訳もないではないか、思う人もいるだろう。そう、その通りなのだ。しかし、当時の新規事業部門担当者の実態とはそうしたものだった。

企業としてのビジョンも戦略なく、担当者自身も業務命令どおりにしか動かなければ至極当然の結果である。

まあ、それまでにも斬新な企画を依頼されたので提出したら「前例がない」と言われたり、口では“差別化”とは言いながら他社と似たような企画を要求されたりしたことがあるので、我が国のマーケティング担当者は理解のない上から指示されれば、自身で熟考することなくその通りにだけ動くだけのは現在でも代わり映えしないのだが。


■切り口とアイデアをセットで考えるとはどういうことかーー切り口とは別象限から考えること

これは、一言で言えば「異なる象限」のフレームワークで考えることだ。 
ある業界の問題はその業界内での枠組み内だけで考えていても、根本的な解決策は出ないということ。四象限(α象限/β象限/γ象限/δ象限)基に説明しよう。

α象限内の問題を解決する時、同象限内で発想したりアイデアを出し合って解決するのではなく、まったく別象限から考えるというのが「切り口」である。

より具体的に説明すると以下のようなことである。

例えば、喫茶店業界が抱えている課題を解決する際、その業界団体の人間が集まって業界内の視点だけから考えていたのではだめで、他業界で解決しようなアイデアをベンチマークする、あるいはそうした別業界人の視点や発想からアイデアをもらうようなことである。
逆に言えば、同じ業界人同士(同質性)が集まって、業界人フレームワーク内だけで考えているだけでは、それほど効果的なアイデアは思いつかないということである。
そして確立を上げるためには、そうした違う象限からアプローチする方がイノベーティブで効果的なアイデアの出る確立が高いという訳だ。

ところで、かつて広告代理店の“企画請負人”をしていた頃、イベント企画の仕事で似たような経験をした。

代理店の人間としてはイベント屋的発想とは異なる企画案を求めていたのだろう。私はイベント企画の専門家ではないことを承知で、企画の依頼してきた。

プレゼン当日、はたして会議の席にはイベント制作会社も参加していた。
しかし、私のプランに対して、「それは消防法に抵触するので不可能」とか「道交法上の制約がある」などの発言を繰り返した。

その時思った。その道の専門家(経験豊かなプロ)なのだろうが、それがアキレス腱となってその業界発想枠を突き抜けたり異なる視点(切り口)から企画(アイデア)ができないからこそ、その代理店の担当者は私に声をかけたのだろうと

これが、切り口(別象限発想)とアイデアはセットということの意味である。換言すれば、異なる枠から着眼・着想するということである。いったん、従前の枠組みによる発想をリセットするべきであり、同一枠内で改善することだけで何とか凌ごうという発想は思い切って“削除”すべきなのである。

私個人としては常々そのようしてきたので、基本的には企画やアイデアを求められる人間にとっては常識だと思うのだが。

これについては、昨年の「WISH2009」について記したブログにも、ドレスファイルの例を引きながら“閉じた業界的な発想からでは出てこない部分が重要”と書いたので(下記(5)のブログ)ご参照いただければ幸いである。

AMNの徳力さんもブログで「もっともっとそういった、いわゆるネットベンチャー以外の人たちとも、つながっていくべきだと思うわけです。」と語っているのは、そういう意味できわめて深く鋭い意味を孕んでいるのだ。

次回は、着眼・着想などについてもう少し考えてみたい。

(続く)

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【おすすめブログ】
(1)プロローグーー近年最高のBRIDGE2010 Septemberに参加して

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(2)「WISH2010」に参加して(1)ーーオープニングセッショ ンに寄せて
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(4)昨晩ではなく昨年末の『カンブリア宮殿』に思うーー希望と期待を 持てないこの国の行方

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(5)熱気、活気、興味にあふれたイベントーー「WISH2009」に 参加して
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