dokujisei

私的公開日誌@ウェブ暦:111004.01

海と月社という一風変わった名前の出版社がある。
05年創業と新しい出版社であるが、広告・宣伝、PRなどマーケティングコミュニケーション関係の書籍にフォーカスした出版物を刊行している。

同社では、新刊だけではなく、以前は他社から出版され現在では絶版となっているような書籍、しかも原著の改訂版や最新版を新たに訳出して続々と刊行している
今、私が最もお気に入りの出版社である。

それらの中には、デイヴィッド・オグルヴィの『ある広告人の告白[新版]』(当時ダヴィッド社)や『「売る」広告[新訳]』(当時誠文堂新光社)、ハリー・ベックウィスの『あのサービスが選ばれる理由』(ダイヤモンド社刊時は『逆転のサービス発想法』)などをはじめとし、いわゆる業界の古典や名著の復刊が多い。
今月はセス・ゴーディンの代表著作『パーミッション・マーケティング』(当時ダイヤモンド社)がほぼ10年ぶりに復刊され、書店の平台に積んであったのを見かけた。

その同社では、ポジショニ ング戦略の第一人者ジャック・トラウトの古典『ポジショニング戦略[新版]』を2年ほど前に復刊させているのは知っていたが、『独自性の発見』が今年の4月に復刊されているのを書店で知った。

同書籍は、最初に刊行された01年当時は『ユニーク・ポジショニング』というタイトルで、これまたダイヤモンド社から刊行されていた。ゴーディンと同様、こちらも 10年ぶりに復刊ということになる。それも、ただの復刻版ではなく原著の増補改訂版の復刊だ。

独自性というタイトルは、ダイヤモンド社刊行当時、訳者(島田陽介)が副題に「あなたは自社の「独自性」を見落としている!」とあり、また訳者が通常のマーケティングでいうところの差別化ではなく、敢えて原題のDifferentiate(識別する)を“独自性”と訳したことへの思いを酌んだものだろう。


■差別化の連鎖による陥穽

その昔、マーケティング企画で差別化を口にしながら、成功した競合他社に倣うがごとき企画内容を要求された経験が幾度かあり、それを不思議に感じていた。それは、まず同じレベルの商品を市場に出して、それから差別化を図るというように感じた。

しかし、先ずは追随してから微細な差別化を図るという発想は、競合他社も同様の視点で行っているので、結局は差別化と言いながら堂々巡りの同質化や均質化の連鎖から抜け出ることはできないのだ。

差別化とは、競合他社の強みを捨てることから始まるのである。

しかし、仮に担当者がそれを理解しているとしても(理解していない人の方が多い)、上司からの指示や業務命令に逆らってまで、あるいは上を説得してまで差別化(この場合は独自性)を推進しようとするほどの勇気や気概を持つ人は希である。

米国においてさえ、いくらでもある話なのだから(例:世界初の高速レーザープリンタを開発したゼロックスのゲーリー・スタークウェザー等)、いわんや日本をやである。

だから、そうした手垢のついた「差別化」という言葉を捨てて、あえて「独自性」という訳語を当てたのだろう。

ところで、先日、NECパーソナルコンピュータ(NECとレノボ・グループが合併した会社)が、幻となった Android製品が記者向けに公開したニュースに接した。

コンセプトモデルで開発コードネーム「MGX」といい、当初は2013年ごろに製品化を予定していたが8万円という高価格になることから製品化を断念したそうだ。
ネット上では、そのニュースや記事に対してさんざんな批判のされ方で、「MSX」の間違いじゃないのなどというありさまだった。私にはその製品を評価できるだけの技術的な知見をもってははない。

一方、米国ではHPがPalmを買収してまでスマートデバイス市場に賭けていた
かつてPDAで隆盛を誇ったPalm、 そのPalmが買収し一時はMacユーザーすら魅了した(私もよろめいた)BeOSという技術的資産を活用し、それを基にスマートデバイス(主にスマートフォン)用に開発をすすめていたWebOSを、iPhoneやAndroid陣営を前にしてついに開発継続を断念した。

しかし、その直後、今や世界的スマートフォン・携帯情報端末メーカーとなった台湾のHTC、 そしてamazonまでもがWebOSに食指を示しているほどの技術なのだ。

開発を断念するというのは、技術者もちろんのこと企業としても断腸の思いだろう。
しかし、シャープの「GALAPAGOS」といい、今回のNECの「MGX」といい、日本企業の再生への道が難しい事例の典型のように思える。
世界市場で勝負できる戦略的な目算があるように私には感じられず、もしあるのであれば是非ともご教授を願いたいものだ。

大手企業や巨大組織に庇護にあって、その企業文化やら企業風土が染みついた人ほど、イノベーションしにくいものである。どうしても、今までの仕事のこなし方や発想、それも成功体験があるほどに従前の手法に固執したりそれらに拘泥するものである。

そうした失敗は、Appleですら免れえないのである

例えば、斬新なPowerMac G4Cubeのような失敗製品もあった。

約20cmの立方体型筐体、冷却ファンを搭載していないので静粛性が高く注目された。また、光学ディスクドライブはスロットインタイプで、筐体上部からトー スターのように飛び出てくるユニークな設計だった。

その筐体デザインは高く評価され、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のデザインコレクションとしても所蔵されているほどだった。

その反面、拡張性などに乏しく、さらに様々な不良問題から、販売は芳しくなかく1年ほどの寿命で生産が終了した。

また、かつてのeMateで開拓したような、当時の低価格帯のモバイル・コンピューティング、Newtonとして知られるMessagePad なども失敗だろう。

もちろんジョブズが復帰して、それらがジョブ自らの手による製品でない、製品ラインの集中と選択による再編をしなければApple社は倒産してしまうなど、様々な事情や理由などもあったことも事実である。

その後、この失敗を糧に、ジョブズ自らの手でMacBook Airとしてモバイル・コンピューティング、タブレットプロダクツとしてiPadなどを「再発明」してタブレット市場(タブレットという言葉は嫌いだ)を牽引していく。

更には、iPod/iPodtouch、iPhone、iPadで蓄積したマルチタッチ技術やUIを、今度はこれまでのMacOSへフィードバックし、iPod、iPhone、iPad、iPad、Macなど、Apple社のデジタルデバイスのUIやUXの統合へと志向していくのである。


(続く)


▼NEC、 マボロシの極薄Android試作機を公開
http://plusd.itmedia.co.jp/pcuser/articles/1109/28/news026.html

▼NECパーソナル、9.9mm厚のAndroid端末コンセプトモデル「MGX」を公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20110928_479971.html

▼WebOS、Palmハードウェアと正式に決別
http://www.google.co.jp/news?hl=&q=HP%E3%80%80WebOS&sourceid=navclient-ff&rlz=1B7GGLL_jaJP393JP393&ie=UTF-8

▼未発表のHP TouchPad Goのカタログ情報が流出。こんな素敵な7インチタブレットが発売されないなんて...残念! 
http://www.gizmodo.jp/2011/09/hp_touchpad_go7come_on_pre.html

▼アマゾンがwebOSに食指 - Palm部門獲得に向けてHPと交渉(VentureBeat報道)
http://wirelesswire.jp/Watching_World/201110031205.html

▼HTCが「webOS」もしくはほかのモバイルOSの買収を検討中
http://bit.ly/rdm8nG

▼海と月社サイト(トップ)

▼『独自性の発見』
http://www.umitotsuki.co.jp/book/b88721.html
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【おすすめブログ】
・撤退? 継続? 迷走するGALAPAGOSと最新刊『コトラーのイノベーション・マーケティング』に思う
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・ 切り口とアイデアは“セット”の意味とはーーBRIDGE2010 Septemberに参加して(1)
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・同質化から飛躍的なアイデアは生まれないーー BRIDGE2010 Septemberに参加して(3)
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・今、最も参加したいイベント「BRIDGE 2011 February」ーー面白法人カヤックとのコラボ
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・ 今日的な企業文化のあり方に思うーーBRIDGE 2010 Decemberに参加して
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