chikuma_gakugeibunko
私的公開日誌@ウェブ暦:120621.01

私が好きな文庫は、今日ではなんといってもちくま学芸文庫、講談社文芸文庫が双璧である。
両文庫とも新潮文庫などに比べると、1冊の値段は3倍はする。それでも文庫で買うのは、圧倒的にこの2つだ。
これにもうひとつ加えるとしたら、講談社学術文庫なのだが、こちらも安くない。
しかし、私にとっての購入頻度では、これらが今日では“文庫御三家"だ。

特に、ちくま学芸文庫の場合、人文科学、社会科学系の書籍を中心に、時に自然科学系やサブカルチャー系の刊行物までも含まれる。
しかも、歴史的な古典や名著は無論のこと、比較的最近の書籍(例:マイケル・サンデル『公共哲学─政治における道徳を考える』)まで幅広くライアンアップされていて、岩波文庫とは別の意味で非常に貴重な文庫群である。
むろん、一般のちくま文庫も負けず劣らず、他社から刊行されている文庫に比べれば素晴らしい本ばかりだ

私にとって、これらはブランド文庫である。私の学生時代には、岩波文庫がブランドだった。

私は書店にはいると、まずは先述の“文庫御三家"の新刊をチェックする。ネットなどで新刊の発売日をチェックするのもこれらである。
いずれの文庫シリーズも、価格は高く購入者(読者)もある程度限定されるが良質な書籍群。これらの文庫に共通しているそうした本ばかりだ。しかも、駄本は刊行しない(書籍に無駄金を使わないで済む)。
仮に、私が知らないあるいは関心のない分野の本や著者だとしても、学芸文庫化されということはそれなりに意義や価値のある本なのだろうと判断する

もちろん、新潮文庫のYonda?Club、毎年夏のキャンペーン「新潮文庫の100冊」を展開するプロモーションン施策も、一種のブランド戦略ではある。
角川グループとは異なる、老舗の出版社ならではのコミュニケーションプランである。


今月は、『茶の本 日本の目覚め 東洋の理想 岡倉天心コレクション』『バタイユによるニーチェ箴言集』が、ちくま学芸文庫から刊行された。
しかも、前者にはなんと『東洋の目覚め』まで含め、4編が収録されている。

天心の本では、やはり『茶の本』が一番有名で各出版社から刊行されている。講談社学術文庫では、嬉しいことに、文芸批評家として知られる桶谷秀昭の訳本で刊行されている。

これに次いで有名なのが、「アジアは一つである」の書き出しの『東洋の理想』で、こちらは現在は講談社学術文庫のみ。

今回の文庫化では、『岡倉天心コレクション』と銘打たれているものの、『フーコー・コレクション』のように分冊ではなく、これ1冊のようだ。

このコレクションに所収されているものは、私の手元にある平凡社東洋文庫『東洋の理想 日本の覚醒 東洋の覚醒』(絶版)と同じ内容に、代表作の『茶の本』まで納められた実にお得な1冊である。

しかし、どうせコレクションというのであれば、これに『日本美術史』 (平凡社ライブラリー) とほかも加えて三部作くらいだと、同じ文庫版で揃えられるのでありがたい。

さて、天心の遺稿となった『東洋の目覚め』は、ナポレオン政権下のフランス軍に支配されていたドイツ(プロセイン帝国)国民に向かって、フィヒテが『ドイツ国民に告ぐ』を発したとの同じような心境なのだろうか。

冒頭から「アジアの兄弟姉妹よ!」と訴えかけ、「ヨーロッパの栄光は、アジアの屈辱である!」とまで叫ぶ。

「不幸なことに、西洋の態度は東洋を理解するのに好ましいものではない。キリスト教の伝道師は授けようとするが、受け取ろうとはしない」(『茶の本』)というのが、西洋人の東洋人に対する典型的な態度であり、決してアジアを敬うことのない西欧列強により蹂躙されている当時のアジア諸国を、その文化的な紐帯(東洋の美)でひとつにならんことを願っている天心の激情に満ちている。

もう1冊も嬉しい『バタイユによるニーチェ箴言集』である。
20歳そこそこのキリスト教徒であった若きバタイユが、ニーチェに啓示あるいは教示を受けて書き残した箴言集である。

ちくま学芸文庫は、これまでにもバタイユの本は『エロティシズム』『純然たる幸福』『宗教の論理』『呪われた部分 有用性限界』をはじめとし、既刊で7冊も刊行しているし、既に文庫版で『ニーチェ全集』を出している「前歴」があるので、文庫版でバタイユ全集を望みたい。

それと、モーリス・ブランショの『明かしえぬ共同体』も既に文庫化しているので、ここはひとつ『文学空間』『来るべき書物』などの主要な文芸批評を是非とも文庫化してほしい。
仮に文庫で1冊が2,000円だとしても買いたいところ。

それにしても、ちくま学芸文庫は、ここのところ森有正『ドストエフスキー覚書』、フッサール『間主観性の現象学 その方法』など、立て続けに本当にありがたく特に良い本を刊行している印象。

ところで、文庫ではないが、現在、大手書店で専用コーナーで実施中の8出版社(岩波書店、紀伊國屋書店、東京大学出版会、白水社、法政大学出版局、みすず書房、未來社、勁草書房)共同復刊プロジェクトの「書物復権」も、16年前から年1回続く復刊だが非常に素晴らしいラインアップで毎年楽しみにしている。

どれもこれも欲しくなる素晴らしい書籍ばかりなのだ。今回の復刊には、紀伊國屋書店刊のモーリス・ブランショによる『焔の文学 完本』(5,040円)が含まれているのが、なによりも嬉しい。
しかし、どの書籍も高くて1冊安くて2,500円、ほとんどが5,000円以上する書籍ばかりなのが辛い。


あ〜、それにしても仕事と関係のない、こういう趣味的なブログを書くのはなんと楽しいのだろう!


▼『茶の本 日本の目覚め 東洋の理想 岡倉天心コレクション 』
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480094599/

▼『バタイユによるニーチェ箴言集』
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480094650/

▼ちくま学芸文庫


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