progressiverock

私的公開日誌:ウェブ暦@150506.01

プログレッシブロック(以下プログレ)が45周年を迎えた。雑誌『ストレンジ・デイズ』(187号)でその特集号を見つけたので思わず購入した。

とはいっても、これは英国で明確にそのように規定あるいは表明しているわけではなく、雑誌『ストレンジ・デイズ』が、ワーナー・ミュージック・ジャパンから50枚ものアルバムが復刻発売されたことを記念して企画された特集での話しではあるのだが。

だから、記事ではそのプログレ誕生の起源とされるのが、1969年発表のキング・クリムゾンのデビューアルバム『クリムゾン・キングの宮殿』とするならば、という「但し書きつき」である。
このアルバムは、確かにプログレの歴史において金字塔的なアルバムであることを認めるにはやぶさかではないが、私もそうなのだが、これを「起源」とするのに異論のある人はかなりいるだろう。

70年代前半、プログレは全盛期であった。私がプログレに目覚めるきっかけとなったのは、The Moody Bluesの71年リリースのアルバム『童夢』(Every Good Boy Deserves Favour)を聞いた衝撃だった。
この時期、ラジオや音楽雑誌(『ミュージック・ライフ』や『音楽専科』)では、King Crimson、EL&P、Pink Floyd、Yesの英国バンドをいわゆる「プログレ四天王」と呼んでいた。

今回の特集で「5大プログレ」という表現を初めて知ったのだが、特に記載はないが、多分これにGenesisを加えたバンドをそのように称するのだろうと思う。

残念ながら、それらのどれにもThe Moody Bluesが入っていない。
しかし、あのLez Zeppelinのジミー・ペイジをして「この世で本当にプログレッシブなバンドは、ピンク・フロイドとムーディー・ブルースだけだ」と言わしめたほどにもかかわらず、日本ではなぜかそれほどには語られないことが、個人的にはいまでも最高のロックバンドだと思っている私にはなんとも悲しい。
この当時、英国だけではなく、米国も含め世界的なバンドとして評価されていただけに、私はなんとも納得がいかないのである。

また、プログレがクラシックとの融合あるいはシンフォニックロックから出発しているし、私自身は当時は特にELO(The Electric Light Orchestra)をプログレだと思ったことはなかったが、デビューアルバム(71年)がここで取り上げられていても異論はない。

バンドというのは不思議なものだ。オリジナルメンバーの誰かが脱退し、あとから新しいメンバーが加わることでバンドが劇的に変化する(ビッグになる)ことがある。
The Moody Bluesでいえば、ジャスティン・ヘイワード(ギター)、ジョン・ロッジ(ベース)、Genesisでいえばフィル・コリンズ(ドラム)、Supertrampでいえばロジャー・ホジソン(ギター、キーボード)などが新メンバーとして加入したことで、そうした彼らが素晴らしい楽曲を創出することでバンドとしての完成度を高め、それにともない世界的なバンドへと発展していく。

これはロックバンドに限らず、企業組織(ベンチャーやスタートアップ含め)も同様だろう。新しい人材を迎え入れることで、その後の企業として変化を引き寄せたり成長や発展をを左右することがある。


■私が考える「プログレの起源」

The Moody Bluesは、67年に『デイズ・オブ・フューチャー・パスト』(Days Of Future Passed)をリリースしたが、これはクラシックのドボルザークの代表曲『新世界』のロックバージョンの再構成(解釈)しようという試みだった。
シンフォニーオーケストラとコーラスをバックにシンフォニー・ロックの誕生を告げた記念すべきアルバムだった。

68年の『失われたコードを求めて』(In Search Of The Lost Chord)、69年の『夢幻』(On The Threshold Of A Dream)などは、オーケストラに替わりどこよりも早くシンセサイザーやメロトロンを導入してサウンドを作り上げ、約半世紀ちかくたったいま聞いても斬新だと思う。
後者などは、冒頭にはコンピューターの効果音が導入され、「我思う、故に我あり」というデカルトの有名な言葉で始まる導入部だった。

2000年には、完全オリジナルメンバーによる英国ロイヤル・アルバート・ホールでコンサートを開催し、往年の名曲オンパレードのライブを見せつけたが、やはり私にとっては史上最高のロックバンドだと改めて実感した。

そういう意味においても、The Moody Bluesの成功は、その後に続々と登場する多彩なプログレの先駆的なバンドであり、草分け的な存在といっても過言ではないはずなのだ。

また、かつてキース・エマーソンが在籍していたことで知られているTHE NICEも(67年)デビューであり、68年にはJethro Tull『日曜日の印象』(This Was)でデビューを飾って注目された。

したがって、プログレ胎動の「67年」を起源とするのが、私個人としての意見である。もちろん、これにも異論のある人がいるだろうとは思っている。

また、プログレはアルバム制作に明確にコンセプトを持ち込んだことでも貢献している。詞や楽曲、アルバム全体の構成まで、そのコンセプトに基づいて製作される。これは、しかし、一方では大作主義という問題を生む温床ともなってしまった。

それにしても、プログレは、ライブで見ると今日ほどテクノロジーがないにもかかわらず、当時のレコードと同じサウンド、複雑だが的確なアンサンブルでレコードサウンドを再現するだけのテクニックを各人がもっていたことに驚嘆する。
同時代、我が国ではその後しばらく続く楽曲は二の次のアイドル歌謡の歴史の幕開の時期と重なっていた。
もとより、完全な洋楽&洋画育ちの私であるが、プログレ少年の私は楽曲レベル的にも演奏テクニック的にも、日本の音楽は100年たっても欧米ロックの水準には到達できないだろうと感じていた年頃でもあった。

72年、絶頂期のThe Moody Bluesは世界的な大ヒットの7枚目のアルバム『セヴンス・ソジャーン』(Seventh Sojourn)リリース後に来日公演を行った。私にとって初めての武道館、初の外タレのライブコンサートだったが、それを見ることができたのはいま考えれば幸運だった。

プログレにとって、作品的な完成度としては72年のYes『危機』(Close to the Edge)73年のGenesis『月影の騎士』(Selling England By The Pound)などの代表作が到達点としては双璧だろう、と私個人は思っている。

70年代後半、英国プログレは急速に退潮していく。それとは対照的にこの時期は米国製のプログレバンドであるKansasStyxが人気を博するようになるとはなんとも皮肉である。
もちろん、この2つの米国バンドも英国プログレの隆盛があったればこそなのであるが。Kansasのメンバーの一人は70,71年当時英国に滞在し、英国プログレに目の当たりにして衝撃を受けたそうだ。


■英国プログレの軌跡と意義とは

プログレの誕生は、72年以降の英国Art Rockの苗床となり、その後はRoxy Muxic、10cc、Sparks、Sailor、フランメンコロックのCarmen、女性ではKate Bushなど続々と輩出し、その後、さらにはThe Stranglers、The Policeの登場を促し、80年代になるとU2やDuran Duran、Matt Bianco、Sadeまで、英国の革新的あるいは斬新な音楽の栄華時代は続くのだ(素晴らしい時代だったな)。

今回、この記事を書くに際して、下記の関連リンクの映像を見ながら思ったのだが、60年代後半のブルース系バンドであるCream、Freeを初めとし、これらのロック史上的にも希に見るクオリティの高いバンド群のサウンドを聴いていると、そもそもロックは大人の音楽だったなぁ、と改めて実感する次第。

さて、今号のプログレ特集では、先のELOのほかには、Gentle Giant、Renaissance、Curved Air、Barclay James Harvestなど英国プログレオタク(じゃなかった、プログレ好き)にはたまらないラインアップが紹介されている。
特に、Gentle Giantの“On Reflection”をライブで再現するのはとても無理だろう、とレコードを聞いたときには思っていたのだが、BBCでのライブ(78年)を見てレコードと同じサウンドを再現したのにはビックリだった。

今回の復刻CDは、どれも1枚1,300円という安さだ。ファンにはたまらないリリースだろう。


(関連リンク)
▼『ストレンジ・デイズ』ープログレッシブロック45周年特集。
http://www.strange-ds.com/?p=6808

▼In Search of the Lost Chord(68年)- The Moody Blues
https://www.youtube.com/watch?v=9hXlY3b3oW8

▼“On The Threshold Of A Dream”(69年)- The Moody Blues

▼"The Lost Performance" - The Moody Blues live in Paris(70年)
https://www.youtube.com/watch?v=xdPlsov7bXY

▼Live at the Isle Of Wight Festival(70年) - THE MOODY BLUES
https://www.youtube.com/watch?v=vRuMgs4b1qk

▼“Hall of Fame Full concert”(2000年) - The Moody Blues
https://www.youtube.com/watch?v=gQGS1KolHA8

▼The Electric Light Orchestra(71年)
https://www.youtube.com/watch?v=fKtrdT6dxNg

▼Sight and Sound Live at BBC(78年) - Gentle Giant
https://www.youtube.com/watch?v=UM-yGcpaY_4


▼Close to the Edge - live 72 - YES
https://www.youtube.com/watch?v=kcvByrgofjc




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