SCHOLAR_logo 

私的公開日誌@ウェブ暦:150225.01

前回ブログのSLP PRESENTATION DAY 2015に続き、魅力的で興味深く面白いイベントを体験させてもらったので、どうしてもブログを書きたくなった。
 
SCHOLAR.professorという、こちらも開催2回目のイベントである。いや、むしろコミュニティというべきだろう。
これは「研究開発や新規事業開発を担当されているみなさまに向け、現場で活躍する超一流のサイエンティストもしくはエンジニアによるレベルの高い講義とディスカッションを提供することで、価値創造プロセスそのものを革新することを目指すセミナー」ということをミッションとしている。

今回も集まったのは30人ほど。
私は、何百人と集まる大規模なイベントの必要性も価値も理解はしているが、そうした集まりに参加することはもはや少ない。
それは、イベント専業の主催社や企業主導によるイベントではなく、有志による小規模でより質を重視したイベントが中心となる集まりを重要視し優先しているからだ。


■「ソーシャル・スモールイベント」考現学

09年のブログ『“スモールイベント発想”による「望年会」への密やかにして大いなる期待ーー理念や賛同者による意義深い忘年会』で、私はこれからの時代はスモールイベントあるいはソーシャル・スモールイベントの時代になると下記のように“宣言”した。

「スモールイベントらしく、規模は大きくはないが(それは本来の目的でない)、主催者、来場参加者の双方にとって中身の濃いイベント」
ライトニングトークも用意され、登壇者たちと来場者たちが一緒になり、関心の高いテーマやイベントの談笑したり、初面識者同士でも対談したり、リアルタイムで問題意識を共有したり、相互の知識、人的ネットワークなどのよる“化学反応”が起きることも、他のイベントでは経験できないこと」

また、翌年(10年)のブログ『「BRIDGE 2010 March」に見るソーシャルイベントの時代ーー有志が創り出す参加者と主催者の共有イベント』にも、「これからはむしろイベントのコンセプト、伝えたいメッセージ、盛り込みたいテーマ等を主催する人たちと参加者と協同で開催する「スモールイベント」の時代になる。」と確信して書いたのだった。

当時、朋友とその趣旨に賛同した仲間が中心となって開催していた「BRIDGE」というイベントだった。

当時は、TwitterもFacebookも、まだ限られたイノベーター層しか利用していないころだったが、それでもSNSだけで告知し、毎回100人前後の人たちが集まっていた。

今日では、多様なソーシャルメディアがあり、だれでもが活用している。そうした状況下では、イベント告知や案内も簡単に共有できる。
たとえば、今では誰でも、ほぼ毎日なにがしかのイベントのお誘いが届くであろう。ましてや、Facebookで友達が数千人もいる人ともなると、招待状が山のように溢れているだろう。
しかし、同時にそれは開催日時が重なることが多く、参加ができないイベントの件数が増えることにもなる。私のように友達が600人ほどの人間でも、案内をいただくイベントの同日同時刻の開催が5つも重なることが年に数回はあるほどだ。

そうなると、義理やしがらみに縛られることなく、自分が関心が高く有意義と思われるイベントをどれか一つを選ばざるをえないことになる。

そうしたイベントだと感じたひとつが、今回はじめて参加した「SCHOLAR.professor」だった。


■キャリアパス(形成)について示唆に富む内容

今回のイベントは、ちょうど5年前、先に紹介したBRIDGE2010が9月に「頭のいい人も新事業で大ゴケ!?事業創造のサイエンスとは」をテーマで開催したものにも通じる気がした。
そのときは気づきや発見が多く、7回も連載のブログを書いたほど内容の濃い集まりだった(下記「おすすめブログ参照」)。
それと同様に、今回の話しもえることがも多かった。参加者は、あらかじめいくつかのテーブルに
別れた適宜案内され、1テーブルあたり4〜6人で編成されていた。私が着席したテーブルは4人だった。

当日のゲストスピーカーは、東京工業大学・総合理工学研究科教授の原正彦氏で、当日は以下のような8つのテーマに関する講義を行い、価値創造プロセスを革新するための着想や手法について語った。

1.研究内容と社会にもたらす価値の説明
2.独自の研究開発の方法論
3.ネット系のサービスに使い方における特徴
4.上手くいく産学連携の進め方
5.注目している先端技術や分野について
6.うだつを上げる方法とは何か
7.読むべき一冊、見るべき映画
8.最近注目している話題(社会全般)

これらについて一気呵成に語るのではなく、1つないしは2つについて話し、その後に各テーブルで話されたばかりにテーマについて相互で語り合い、最後にそこで話し合われた内容を各テーブルでリーダーに指名された人がまとめて発表する形で進行した。
私のテーブルでは、一番若い大学院生を指名した。

これは、いわゆるワークショップあるいはその進化形として知られているワールドカフェ形式だ。その場で聞いたばかりの話から何に気づき、発見や学びがあったかをその場でシェアする。
そうすることで、講演内容への理解を深めたりする効果を高め、新たな視点や着眼などをえることになり、さらには知らない同志でのコミュニケーション促進にもつながる有効な手法だ。

原氏は、専門領域は粘菌コンピューティングとのこと。なにやら、私の好きな『スタートレック/ヴォイジャー』の基幹コンピュータシステムとして利用されている<バイオ神経回路>のようなお話し。
それに取り組みながら、揺律創発を研究しているとのこと。これは「揺らぎや不安定性を抑圧するのではなく積極的に活用し、生体分子素子群の自己組織化から生じる創発的挙動を原動力として実現する」方法を、イノベーション、組織やキャリア開発に応用することのようだ。

原氏が面白いのは、研究チームを5〜10年でスクラップ&ビルドすることで、次の新しい研究テーマに取り組むこと。
また、そうした際には、自分が得意の分野には取り組まず、素人の領域に挑戦する姿勢だというのがユニークだ。つまり、一方では、自分の得意な分野を残しながらも、プラスアルファ(新奇なこと)による創発こそがイノベーションを誘発するとおっしゃっていた。つまり、これは伸びしろが大切だということだ。
受験生でも勉強しすぎて大学に入学した学生より、多少余裕がある学生の方がその後に伸びるということはよく知られている。
また、真に革新的で新しすぎることは、普通の人たちには容易には理解されないとも語った。

今回の話された内容は理系やいわゆるポスドク(ポストドクター)に限った話しではない。
普通の一般の組織や企業で働いているビジネスパーソンにも重要な示唆や学びがあったと思う。いや、むしろそうした普通の人たちにこそ役立つ充実した時間だったように思う。

理系の優秀な人は、自分の座標軸を動かしたりずらしたりができず、耐性が弱いことから悩みや問題を抱え込んでしまう。世の中はままらないとか、不条理意識からノイローゼや鬱になりやすいとのことだが、これは最近のビジネスパーソン全般にいえる傾向でもある。

右肩あがりの経済成長時代とは異なり、テクノロジーの進化や社会の変化が激しい今日、自分の座標軸を堅持しつつ、柔軟な考え方や視点を持つ必要があり、かつての成功手法に立脚した発想ではこれからのキャリア形成は難しいと語る。

新規事業がうまく行かない原因は、人材、組織体制、企業文化をはじめとしていくつかの要因がある。また、人はできる理由よりできない理由を探したり求めがちだ。その方が楽だからである。できる理由や方法を探したり考えることのほうがずっとハードルが高い。

だからこそ、最近の多くの企業ではベンチャーファンドを組成し、積極的にベンチャーと組もうとしている。それは、イノベーションと何度も号令をかけても、なかなか上手く進すまないからだ。そこで、外部の異なる文化を持っているベンチャーなどとに牽引してもらうしかないと、ようやく悟ったということでもある。

私が今回の中でも一番印象に残ったのは、チームづくりについてである。私が得たことは以下の3点。

1.異分野の融合に欠かせない共通言語づくり
2.チームに適宜負荷をかけることによる結束づくり
3.チームを通じた文化(=歴史)づくり

また、モチベーションは誰かに与えるもらうこともあるだろうが、最終的には自分の内発的なものとして作り出さないとダメだろう。

私は、自分が20代のとき、30歳のころ、40歳のころ、全て違う会社や組織と仕事をしてきたが、一貫しているのはマーケティングコミュニケーションということだ。これが、自分で今まで興味深く深く追求していることである。
この分野も20世紀と21世紀では大きく転換している。

私のキャリア形成や仕事に対する姿勢や考え方については、昨年も『セレンディピティ、キャリアのピボット、またはレイヤーとしての人付き合いについて考えてみた』(ITmedia)で述べたので、ここでは繰り返さない。ご興味のある方は、あわせてご笑覧願えればありがたく思う。

このコミュニティは、今後も各々の専門分野のプロフェッショナルを招き、そうした人たちから学びをえることを目的に運営されるようだ。また、ユニークな会員制を採用しているのも特長だ。
オープンな場ある一方で、こうしたクローズドば集まりはこれからも増えるだろうことも確信している。

NHKの人気番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』というのがある。それのまさにリアル版にワークショップがついている趣のあるイベントといえば理解しやすいだろうか。

「興味深いイベントの歴史が、また1ページ……」と、ここは大好きな銀河英雄伝説風にいっておこう(^_^)。


(関連リンク)
▼SCHOLAR.professor
http://scholar.tokyo/

▼SCHOLAR.professor(Facebook公式ページ)
https://www.facebook.com/SCHOLAR.tokyo

▼SCHOLAR.professor(Twitterアカウント)
https://twitter.com/SCHOLARtokyo


▼メンバーを“シャッフル”すると化学反応が起きる
http://bizmakoto.jp/bizid/articles/0907/22/news045.html

▼「どーせ無理」を無くしたい…世界を感動させた町工場のおっちゃんのスピーチ
http://spotlight-media.jp/article/106300900536746109

▼「日本人は一生懸命働く。ただ、そこにビジョンがない」 ノーベル賞・山中伸弥教授が指摘
http://logmi.jp/37307

▼キャリア築く気概が必要 元「ポスドク」で作家の円城塔氏 
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGU1202K_T10C13A1I00000/

▼セレンディピティ、キャリアのピボット、またはレイヤーとしての人付き合いについて考えてみた
http://blog.marketing.itmedia.co.jp/macume/entry/594.html


(おすすめブログ)
・プロローグーー近年最高のBRIDGE2010 Septemberに参加して
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1241613.html

・切り口とアイデアは“セット”の意味とはーーBRIDGE2010 Septemberに参加して(1)
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1247506.html

・見ることと見えることの大きな差異ーーBRIDGE2010 Septemberに参加して(2)
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1248468.html

・同質化から飛躍的なアイデアは生まれないーーBRIDGE2010 Septemberに参加して(3)
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1250824.html

・就職する側と採用する側ともに“不変”とは…ーーBRIDGE2010 Septemberに参加して(4)
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1254091.html

・重層的で多岐にわたる問題提起ーー BRIDGE2010 Septemberに参加して(5)
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1254478.html

・エピローグーーBRIDGE2010 Septemberに参加して
http://blog.livedoor.jp/macumeld/archives/1256723.html