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日本を飛び出してアメリカのブルーグラス・コンテストに挑戦してみたい、という方おられるかと思います。アメリカでのコンテストの話を聞かせての欲しいという声もたまにあるので、ちょっと記事として書いてみました。

 入賞者には賞金・商品などが贈られることも

ブルーグラス・フェスではイベントの一環として、各楽器のコンテストが用意されていることがあります。

入賞者には商品や賞金などが贈られることが一般的です。商品は、トロフィーだったり、賞状だったり、楽器だったりと、さまざま。賞金は例えば1位は1000ドルなどと、3位までの入賞者に贈られることが多いです。

コンテストの開催については各フェスのイベントページや専門誌などで情報が見ることができます。検索ワードとしては「Bluegrass "(楽器名)" Competiton 」などでリサーチしてみてください。

 参加資格と部門について

参加資格は、プロ・アマ関係なく出られるケースが多いです。その日に仕事がオフであるフリーランスのプロミュージシャンが賞金目当てに参加するのも珍しくありません。

参加に年齢、性別、国籍などの制限などは特にありません。

私は当時9歳のお人形さんのようにかわいらしい女の子に破れ、表彰台に立てなかったことがあります。
彼女の名はシエラ・ハルさんといいました。

ナッシュビルのカントリー博物館には彼女の展示物があるほどで、今やブルーグラス界のスーパースターですね。

ミュージックシティの異名を持つテネシー州ナッシュビル周辺地域のコンテストは若いミュージシャンの卵たちがこぞって参加してくるので、レベルも高く、観客として観覧しても見ごたえ十分です。

大きく分けて、参加できるコンテストは

・フィドル
・ギター
・マンドリン
・バンジョー
・バンド

上記の5部門が主流。

これにフェスによってはダンス部門やオールドタイムがそれぞれに設けられていたりします。一人で複数の部門で参加することもできます。

今やリッキー・スキャッグス&ケンタッキーサンダーやトラベリン・マッカリーズなど、様々なセッションで活躍している、どの楽器も巧みに弾くことで知られるコディ・キルビーさん。そんな彼は若いときに私と同時期にコンテストを受けたりしていましたが、ギター、マンドリン、バンジョーの3部門で全て優勝することもあるなど、周囲を圧倒していました。

プレイヤー人口の比較的少ないドブロやベースのコンテストはあまり聞いたことがありません。おそらく、彼らの受け口としての「バンド部門」でもあるのだと思います。

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 コンテストの日程と負担費用はどのくらい?

たいていは予選と本選(決勝)が別日で存在し、2日、あるいは3日かけてコンテストを行います。

コンテスト期間が3日の場合、木曜日か金曜日を初日・予選日とする開催ケースが主流です。参加者は、これに合わせて3日間のスケジュールも確保しなければなりません。

ちなみに、2日目に準決勝がある場合は、3日目の決勝が順位決定戦である場合が多いです。コンテスト・イベントがメインの場合は、朝から予選、昼に準決勝、夜はファイナルと、1日のうちに全てやってしまうこともあります。

コンテストそのものの参加料は無料の場合が多いですが、例えばフェス主催の場合で、3日かけての審査があるケースでは必然的に3日間の通しチケットの購入が参加条件になってきます。

これに付随して、遠方からだと車や飛行機、レンタカーなどの交通費、キャンプやホテルにかかる宿泊費、食費などがかかります。

 部門によって存在する演奏条件

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このように演奏してくださいという条件を参加者に通達されることがあります。

コンテストによっては適用がない場合もありますが、ご参考までにいくつか例を挙げてみますね。

・2曲(あるいは3曲)演奏すること

予選で弾く曲から決勝まで、それぞれ2〜3曲ずつ。つまり4〜6曲準備しておけば大丈夫です。セミ・ファイナル(準決勝)がある場合はさらに2、3曲準備しておきます。選曲は自分で決めてOKです。予選と本選でどの曲を選んで弾くかも参加者の戦略のひとつ。

・自分のスタイルで演奏すること

「誰かのコピー演奏でコンテストに勝とう、とかはナシですよ」ということ。フェアプレーの精神。

・トラッド曲、スタンダード曲を弾くこと

スタンダードの線引きは曖昧なときも。あるフェスでクラシックや吹奏楽でも有名な「エル・クンバンチェロ」を弾いて"失格"にされた人を見たことがあります。

・演奏曲のうちのひとつはスローな曲を弾くこと

スローな曲でありさえすればOKです。フィドル・コンテストにこの指定は多いです。残りの曲は自分の得意なものをご自由にどうぞ、というパターン。

・2曲のうちのひとつは課題曲を弾くよう指定される


こちらもフィドル・コンテストに多いパターン。まれにマンドリンも。たいていはスロー曲。トレモロが苦手なプレイヤーさんはこの指定が出た瞬間に全自動でピンチに陥る。事前に曲名を教えてもらえる場合もあれば、当日発表だったりすることも。一般的なフィドラーさんなら誰でも知っているだろうという曲が指定されます。例)「Ashokan Farewell」「Faded Love」など。

・一切話してはいけない


ヘッドホンを付けて別室にいる審査員が音だけで、先入観なしの公正なジャッジをしているため。有名なウィンフィールドのコンテストなどはこのスタイル。

エントリーした時に、これらの演奏ルールをプリントされたものが配布されますので、しっかりと目を通しておきましょう。

 伴奏者はたいてい付けてもOK

マンドリンやフィドルは特にそうですが、ソロで弾いて、音の表現を審査員に伝えるというのはなかなか難しいもの。そこで伴奏者としてギタリストを雇います。本当に「雇い」ます。

といっても、コンテストに参加している人たちの誰かに声をかけ、「もし入賞賞金が出た場合はお金の取り分は折半で。」などの条件でたいてい引き受けてくれます。

自分が予選にパスしたものの、雇っていたギターさんが他部門で落ちた場合、そのギターさんは私のためだけに翌日もコンテスト会場に来ないといけないなど、時々心苦しいシチュエーションになることも。本選になると、参加者の人数がすでに絞られ、新たにギタリストを雇うのが困難です。せっかく合わせたパートナーとの微妙なタイミングのすり合わせのやり直しは避けたいので、日程をまたいでも大丈夫なように、お互いに納得しながらやってもらう心づもりでお願いしましょう。

 傾向と対策はある?コンテストの赤本

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どんな試験にも出題傾向があるように、コンテストにも傾向があります。先ほどの曲指定の話などは「試験範囲」のようなものでしょうか。

また、フェスやコンテスト独特の雰囲気はつきものなので、そこからある程度、どんなものが受け入れられやすいのか予測できる可能性も。ヒントはフェスの出演しているミュージシャンでしょうか。トラッド系か、コンテンポラリーか、ニューグラス系か、などなど。チラシひとつからでも主催者の人脈、フェスの方向性が見えてくると思います。

さらに、Youtubeなどで、自分が参加しようとしているコンテストの雰囲気をチェックしたり、ホームページなどで過去の入賞者(何人か有名人もいるはず)を掲載していれば、彼らの演奏スタイルからも審査傾向のヒントがつかめるかもしれません。

 フェス別の対策 ヒントはこちら

テクニックが求められる傾向があるフェスだと、大抵は技量にアドバンテージのあるプロが賞金をかっさらっていくイメージがあります。対策としては、コンテスト用の特定曲を徹底的にやりこむことで上位に食い込める可能性が期待できます。

トラッド指向が強いフェスでは、タイミング良く、きっちりかっちりタイプのミュージシャンの方が入賞しやすいかもしれません。実際、テクニックで卓越したあるミュージシャンは、完璧な演奏をしたにも関わらず、そのアクセル全開フルスロットルな演奏がベテランのおじいちゃん審査員たちにうまく伝わらなかったのか、あえなく予選落ちしました。

逆もまたしかりで、前衛的指向の強いフェスが主催するコンテストで、きっちりトラッドを演奏しても審査員受けは難しいかもしれません。

どのコンテストという訳でもないですが、審査員がミュージシャンや音楽関係者なら、その人の音楽に対する考え方も少なからず加味されてくると思います。

また、小さなローカル・フェスなどでは、その土地の音楽好きと思われる有志が審査をしている場合もあります。複数名いて年齢層がバラバラだったりすると、まったく好みが読めません(笑)。

なんにせよ、自分が受けようとしているコンテストの傾向と対策、探ってみて損はないと思います。

 コンテストに落ちても切り替えて

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仮に、予選で落ちても、審査に通らなくても、がっかりしないように。
プロでもコンテストとの相性が合わなければあっけないものです。

あるスタジオ・ミュージシャンさんは、どんな短期間で大量の曲を渡されてもきっちりかっちり、そつなくいいタイミングでこなし、弾くことで定評を得ています。しかし、ある日参加したコンテストでは「華がない」と判断されたのか、予選落ちしてしまいます。裏では「なんであの人が落ちるのー!」とミュージシャン仲間で驚いていたりと、合否の基準はよく分からないことも多いもの。

変に悩んだり落ち込んだりせず、今回は縁がなかったかなぁ、くらいに考えて、次のコンテストにチャレンジしていってくださいね。

テネシー周辺エリアなら、シーズン中は頻繁にどこかでやってますから。