【巨大研究工場で働く女の子の話】
(女の子というところは期待しないで)

私はトラックの運転手をしているのですが、実際に運んでいるものは、大手電機メーカーの研究工場から出るゴミ、紙、鉄、什器などの廃棄物です。
工場内のゴミ屋なわけで、はっきり言ってしまえば、巨大研究施設の中での最下層民です。

エリートサラリーマンとはあまりしゃべることはありません。
まともな人は寄ってこないのですが、変な奴が寄って来るんですよね。ゴミ屋だから仲間だと思われてるのでしょうか。

巨大工場内の有名人、みっちゃん。知的障害の女性です。これがなれなれしいのです。年のころは40か50か。ああいう人って、見た目では年齢がよくわからないです。女性だからいいじゃないのと思われるかもしれませんが、全然よくないです。工場付属の温水プールで泳ぎながらうんこを漏らしたという伝説の持ち主です。

みっちゃんは工場内のいろんなところを掃除するのが仕事です。このまえなんか私のところに来て、
「これなんてかいてあんの? これなんてかいてあんの?」
と手のひらを私に差し出しながら言うのです。その手のひらにはマジックペンで、

「ちゆうりんじよう そうじ」

と書いてありました。
「みっちゃん。駐輪場を掃除しろって書いてあるよ」
「ちゅうりんじょうってどこ? どこ?」
「そこんとこじゃないの。でも手に字を書くなんて、佐藤のババアもひどいね」
「そうそう。これじゃあわかんないよね? これじゃあわかんないよね?」
「分かりにくいよ。全部ひらがなじゃ分かりにくいよ」
「だよね。わかんないよね。わかんないよね」

いつもこんな感じです。奇妙な人ばっかり寄ってきます。仲間だと思われているんでしょう。

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