公述人になんと124人応募!!
4/5(木)、2度めとなる中央公聴会が開催された。
今回は初めて、一般市民への公募から選ばれた7人が国会議員
50名の前で意見を述べた。
一般市民への公募、と書いたが、そもそもこの公募自体がとても
「公募」と言えるような代物ではなかった。
前にも書いたが、募集要項が公開されたのは衆議院のサイトのみ
で、ネット環境がない人は公募されていると知ることすら
できなかった。
しかも、いくら探してもたどり着けないような場所にこっそりと
載せられていただけ。(今日あらためて確認してみたら、
応募要項はすでにまるまる削除されていた!!)
その上、募集期間もわずか1週間ほど。さらに募集開始から
公聴会までの期間もたったの2週間しかなかったのである。
ただでさえ、国の根幹である憲法を議論する国会の委員会で、
しかも50人ものセンセイ方を前にして、平日の昼間にわざわざ
仕事を休んで出向いて意見を述べる、と、
恐ろしくハードルが高いのだ。
加えてこのタイトなスケジュール。いったいどれだけ応募できる
人間がいるというのだろう。
このことだけでも、主権者の声を聞く気はありません、というのが
ありありとわかる。
だが、これだけ厳しい状況にもかかわらず、公述人への応募は
なんと124名にも上ったという。
聞けば10代も1名いたそうだ(スゴイ!!)。
まずはこの124名の方々に深く敬意を表したい。
その中から公述人に選ばれたのはたったの8名。当日は残念ながら
1名が体調不良のため欠席し、以下の7名が意見を述べた。
(午前)
・日本大学法学部教授 百地章さん
・社団法人自由人権協会代表理事・弁護士 庭山正一郎さん
・NPO法人「Rights」理事 小林庸平さん
・主婦 田辺初枝さん
(午後)
・大宮法科大学院大学法学研究科法務専攻 南部義典さん
・地方公務員 松繁美和さん
・弁護士 森川文人さん
7名のうち、百地さんだけが与党案を全面的に支持するという立場
だった。
また南部さんは「国民投票法案は可及的速やかに成立させるべき」
と言いながらもいくつかの検討課題を指摘し、
「今国会での成立を望んでいるわけではない」と述べた。
そして、残る5名はいずれも現在提案されている国民投票法案の
成立に反対という意見だった。
中でも、NPO法人「Rights」理事の小林さん、主婦の田辺さん、
そして地方公務員の松繁さんの公述は非常に迫力があり、
すばらしいものだった。
弁護士でも学識経験者でもない、ごく一般の市民があのような
場で発言するというのは、本当に勇気の要ることだったと思う。
以下、3名の公述の一部を紹介したい。
小林さんが理事を務めるNPO法人「Rights」は、サイトによれば
「“未来を長く生きる若者は未来の決定により大きな責任を”との
思いから、選挙権年齢の引き下げを通じた若者の政治参加を
めざす活動を、2000年5月から10代・20代で始めた」という
組織である。
小林さんは1981年生まれだそうだが、委員からの質問にも
実に堂々と答えていた。
彼の公述によって、委員会は初めて若者自身の声をヒアリング
できたのだ。
小林さんは、投票年齢を16歳に引き下げることも提案しながら、
「そもそも若い世代は選挙権がないことで、政治に対して考える
だけ無駄だと思ってしまう。
私たちは模擬選挙を実施することで若者への政治への関心を
喚起させてきた。
政治家は、選挙権がない人間には目を向けないのか。
選挙権なくても国民であることに変わりはない。若い世代にも
理解できるような議論をもっとたくさんしてほしい」
と述べた。
一方、主婦の田辺さんは、地域の母親たちと女性弁護士を囲んで
憲法について学ぶ会をおこなってきたという方である。
その学習会の中で、たまたま今回の公聴会の公述人募集のことを
知ったといい、
「まずこの公聴会のことが十分に知られていないのは大問題だ。
応募を断念した人も多数いる。準備期間もきわめて短いのに加えて、
公聴会の4日前にお米5キロ分ほどの資料がどさっと届いた。
これだけの資料に目を通すのには最低でも10日はかかる。
このようなやりかたはとても国民の声を聞く姿勢ではない」
と、緊張した面持ちながらも力強く主張した。
また、メディア規制については
「公平さを十分考慮してほしい。テレビCMは何億円もかかる
ものなので、規制がなければお金を持っている人だけが
たくさんCMを流せることになる。
お金で憲法を買うようなことにはなってほしくない」と、
公務員および教育社の投票運動規制に関しては
「約500万人の公務員や教育者はもっとも憲法を熟知している。
彼らの意見を聞かないのはもったいないと思うし、憲法99条には、
公務員は憲法を擁護する義務があると明記されている。
規制は違憲ではないか」
と指摘した。
そしてはるばる高知から出席した町職員の森繁さんは、
「高知県は非常に保守的な色合いが濃い土地柄ながら、6つの
自治体議会が国民投票法案の廃案や慎重審議を求める意見書を
採択している。
憲法改悪に対する反対署名が有権者の過半数に達した自治体も
2つある」
と報告。
また、
「公務員の“地位利用”という規定はきわめて曖昧で、国民投票
運動自体を萎縮させることになる。
服務の宣誓をした公務員にこそ自由闊達な意見表明を認める
べき。法案はいったん廃案にして出直すべきだ」
と公務員の立場から訴えた。
今回も傍聴席からは、衛視から事前に「傍聴人は拍手は禁止です」
と言われていたのにもかかわらず、公述の後には大きな拍手が
巻き起こっていた。
拍手せずにはいられないほど、3名の公述は感動的だったのだ。
他にも、弁護士の森川さんは、「国民のための国民投票法を
考える会」が中心となって、国民投票法案についてどれだけ
知っているかの緊急アンケートを実施。
わずか1週間ほどで全国21ヶ所、1247名からの回答を得、
その結果を報告してくれた。ただでさえ忙しい弁護士さん
なのに、その実行力には本当に頭が下がる。
アンケートでは、「国民投票法案の審議が尽くされていない」と
いう人と「わからない」という人が合わせてなんと92%と
いう結果が出たという。
また、国会の提案から国民投票が実施されるまでの期間
について、法案の「最短60日」という設定を知っていた人は
わずか11%、投票における「過半数」が何の過半数を意味して
いるかについては、「知らない」が47%だったそうだ。
(詳しい設問と結果は「国民のための国民投票法を考える会」の
サイトをご参照ください。)
集計結果
アンケート内容
これだけ国民に法案の内容が知られていないのに、
与党の委員たちは形ばかりの公聴会をおこなって
「国民の意見を聞きました」という既成事実を作り、
強引に法案を通してしまおうとしているのだ。
(続く)
(よしだっち)