護憲/改憲に関係なく、法案には公平さが求められるべき
公聴会で一般市民がすばらしい公述をおこなったのにもかかわらず、
一部の委員の態度は本当にひどいものだった。
まずは相変わらずの欠席。今回も最初から最後まで10名ほどの席が
空席のままだった。
一般市民をわざわざ平日の昼間に公聴会に呼び立てておきながら、
である。
選挙前で忙しいのだろうか。そもそもこんな時期に委員会を開催して
いるのは憲法調査特別委員会だけだ。まったくもって無茶苦茶だ。
そしてトップバッターで質疑をおこなった自民党の葉梨議員は、
のっけから
「閣僚が個人として憲法改正すべきと発言することは許されると
思いますか?」
と、先週に引き続き安倍首相の失言を取り繕うことに終始。
投票年齢について言及した小林さんに対しても、
「投票権を18歳に下げると言うが、タバコを吸っていい年齢も
18歳に下げればよいと思うか」
というムダな質問を投げかけていた。
(ここで冷静に「そのようなことは切り分けて考えるべきだと思う」
と切り返した小林さん、オトナです!!!)
また、公明党の赤松委員は
「安倍首相が“自分の任期中に改憲する”と言っているのは、
国民の中にそのような意見を支持するサイレントマジョリティが
あることを計算の上で、あえて言っていると思う」
などとのたまっていた。
さらに、辻元議員が午前中の質疑で
「この委員会の中には、はっきり言ってただ座っていさえすれば
いいと思って来ている委員もいる」
と述べると、与党議員はとたんに
「失礼じゃないか!」「あんたの弁論大会を聞きに来てんだよ!」
とすさまじいヤジ。
そのくせ午後の公聴会では何人もの与党議員が思いっきり
居眠りしていたのだ!
いったいこの委員会はなんなのだろうか。
こういう人たちに国政をまかせているだなんて。
ましてやこの委員会で話し合われているのは「憲法」の
ゆくえだ。
本当に恐ろしくてしょうがない。
そんな中で、民主党の長妻委員は、過去のさまざまな法案の
審議時間や公聴会の実施状況を詳細にまとめた資料を配布し、
「教育基本法改定の際は100時間を超える審議がなされ、
地方公聴会も6ヶ所で開催されたのに、本委員会ではたった
50時間強、地方公聴会も2回と少なすぎる」と指摘。
「手続き法を成立させるには、将来に禍根を残しては
いけない。
広く国民の意見を聞いてもっと議論する必要がある」
と、さらに「47都道府県で地方公聴会を開催すべきだ」と
明言した。
これまで民主党は、私の記憶では「47都道府県で公聴会を
実施しろ」とは言っていなかったので、これは嬉しい驚きで
あった。
何度も言うようだが、
この委員会は、国のありかたの根幹である
「憲法」を左右する
「手続き法」を議論している場だ。
そして「国民投票」とは、民主主義の究極の実現方法だ。
それなのに委員会は、必死で応募してきた残りの100人以上の
公述人希望者の声を聞こうともしない。
地方公聴会はわずか2ヶ所で、しかも公募もせずに党推薦の
公述人のみが出席。それぞれほんの20分ほどしゃべらせて
お茶を濁しただけ。
今回の公聴会で数少ない賛成派だった百地さんも、
「公聴会で述べた意見がどの程度反映されるかは、正直疑問。
セレモニー化している面もあるのではないか」と指摘していた。
たった7人の公述だけでも実にさまざまな意見が出、さらに
議論を深めなければならないことが山ほど浮かび上がってきた。
しかし与党委員は来週には本当に強行採決をもくろんでいる
らしいのだ。
公述人のひとりで弁護士の庭山さんは、
「委員会は中立的な立場を装っていながら、実態は政治的な
スケジュールを優先している」
と真っ先に指摘していた。
どうしてそんなに法案の成立を急ぐのか。
これでは国民の意思を反映する国民投票などできるわけが
ないではないか。
ところで今、この「国民投票法案」について関心を寄せて
いる人は果たしてどれだけいるだろうか。
多くの人にとって「憲法改正」そのものについてはたまに
話すことはあっても、その手続き法となると、
何かこむずかしくてよくわからない、という印象が
あるように思う。
しかし、何もむずかしいことはないのだ。
議論されるべきは、公平な手続きであるかどうか、という
ひとことに尽きるはずだ。
護憲か改憲かなんてもはや関係ない。
民主主義をないがしろにしているから、これだけ多くの人が
「今出されている法案は受け入れられない」と言っているのだ。
たとえば、メディアについての規制がないために、
資金力のある側だけがカネにモノを言わせて、影響力の高い
TV CMがばんばん打てること、
最低投票率が設定されていないために、どんなに低い投票率
でも結果が採用されてしまうこと、
国会が提案してから最短で60日で国民投票がおこなわれる
ことになるため、国民が十分に考える時間がないこと……。
たったこれだけでも、この法案のお粗末ぶりがわかるはずだ。
主権者の多くは、「国民投票」ということばの響きのよさに
「国民の意見が直接反映されるのはいいことではないか」と
思ってしまいがちだ。
しかし今の法案は、公平などとても言えるものではない。
しかもそれを、何が何でも今国会中に成立させようとしている。
我々主権者はここまでコケにされているのだ。
この法案を絶対通すわけにはいかない。
憲法調査特別委は、もっともっと国民の声を聞き、また国民に
説明をしなければならない。
そのために私たちは、地方公聴会をたった2ヶ所ではなく、
全都道府県でおこなうよう要求するべきだろう。
そこでみなさまに呼びかけたい。
衆議院ホームページの「憲法ひろば」に、
「地方公聴会をもっと開催してほしい」と早急に意見を
送っていただきたいのだ。
衆議院「憲法ひろば」はこちら
(「意見窓口「憲法のひろば」について」というところからどうぞ)
来週早々には憲法特別調査委の理事懇談会が開かれ、
今後のスケジュールが正式決定する見込みだから、
この週末が勝負だ。
私たち国民は黙っていないという意思表示をし、
この暴挙をなんとしても食い止めなければならない。