風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。最近、ちょっとフリーライターを気取っていますw 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

釣りキチ三平1〜34



・釣りキチ三平1〜3
・矢口高雄
・講談社

 言わずと知れた、伝説の釣りマンガの3巻までのレビュー。内容は、釣り好き少年の三平三平(みひらさんぺい)が、その天才的な釣りの才能で、いろいろな魚を釣り上げるというのが基本的なストーリーである。アニメでも放映されたし、実写映画にもなった。

 少年マガジン(講談社)に連載されていたのが、1973年から約10年間らしいので、これらの巻は半世紀近く前に描かれたことになる。そういった目で見ると、三平の家が藁ぶき屋根だったり、三平の祖父の服装が江戸時代のお百姓さんのようだったりと、なんとなく時代を感じてしまう。

 今回読んだのは3巻までだが、1巻は三平が鮎釣大会で優勝する話、2巻がカルデラ湖の青鮒に挑む話、3巻が夜泣谷の左膳イワナ釣る話と、巻ごとに釣りの対象が変わっている。

 ところで、この三平、学校にも行かずに釣りばっかりしていることをよく突っ込まれていたようだが、連載誌は週刊だ。きっと毎週日曜日に釣りをしていたんだろう。2巻の青鮒釣りでは、祖父の一平や幼馴染のユリといっしょに温泉宿に何泊もしているようだが、これはきっと夏休み中だったんだよね(笑)。

 3巻までを読んだ限りでは、この作品の底に流れている思想(というと大げさになるが)には、「釣り好きには悪人はいない」ということだろうか。1巻では三平の優勝にクレームをつける釣りグループ、2巻では県会議長のドラ息子が敵役として登場するが、最後は結局仲良くなっているのだから。

 昔読んでいるはずなのだが、すっかり記憶から抜け落ちており、新鮮な気持ちで読むことができた。たまには昔の定番的な作品を読んでみるのもいいものである。なお、これらの巻ではまだ三平にとって重要な人物となる魚紳さんは出てきていない。


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「シミルボン」にコラムを投稿4



 「シミルボン」に「学ぶのに遅すぎることはない」というコラムを投稿しました。興味のある方は、リンク先を覗いてみてください。




T_ADS TEXTS 02 もがく建築家、理論を考える3


・T_ADS TEXTS 02 もがく建築家、理論を考える
・東京大学建築学専攻
・東京大学出版会

 本書は東京大学の無料オンラインコース「現代日本建築の四相」シリーズの「第一相 理論」をベースにしたものだ。この四相とは、「理論」、「技術」、「都市」、「人間」のことで、丹下健三の建築活動から得られた成果から見出されたもののようだ。

 この丹下健三を第一世代とすれば、現代は第五世代に当たるようである。本書は、この第四世代までの代表的な建築家の活動に、丹下健三という軸を通すことにより、気付きにくかった関係性や一貫性を浮かび上がらせることを狙ったものだという。

 本書は、各世代から2名を選び、自ら設計した建築を基にそれぞれの建築理論を語るという構成になっている。

 しかし、この理論というのが、実は私にはよく分からない。建築学というのは、一応工学部に所属しているものの他の理工系分野とは異なっている部分がある。それは、感性というものに大きく依存していることだろう。もちろん構造力学などといった分野などは、他の理工系と大きくは変わらないないだろうが、通常建築と言えばどちらかと言えば美術的な側面の方にスポットが当たっているように見える。

 他の理工系分野では、確立した理論というものは、客観的で人によって内容が違うようなことはない。しかし、本書に言う理論は、主観的であり、どちらかと言えば信念だとか考え方に近いもののように思える。だから本書を読んで思ったのは、人によっていろいろな建築に関する考え方があるんだなということ。だけど、通常の理工書を読むようなすっきり感はない。

※初出は、「本が好き!」です。


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「シミルボン」にコラムを投稿



 「シミルボン」にコラム「送配電線と雷」というコラムを投稿しました。興味があれば、リンク先を覗いてください。


千里眼 堕天使のメモリー3


・千里眼 堕天使のメモリー
・松岡圭祐
・角川文庫

 元戦闘機のパイロットで臨床心理士のヒロイン・岬美由紀が大暴れするシリーズの一冊。

 実は同じ作者のQシリーズ、αシリーズ、探偵シリーズ、水鏡推理シリーズと異なり、この「千里眼シリーズ」はつまみ食い程度に数作しか読んでいない。読んだのは、荒唐無稽な話ばかりだったので、全体がそんな感じなのかと思っていたら、どうも彼女には壮絶な過去があるようだ。

 彼女にはメフィスト・コンサルティングという敵がいる。今回敵に捕まった際に、ふと漏らした<わたしは、処女じゃないわ>(p237)という一言。いったい過去に何があったんだと思ってしまう。このシリーズをずっと読んでいけば分かるのかもしれないが、最近積読の山が高すぎて、そこまでの元気が出ない。まあ、気が向いたらぼちぼち読んでいこう。

 ところで、この作品も結構ハチャメチャなストーリーだ。何しろ、東京の街中で、敵が装甲車を乗り回して、機銃を打ちまくっているのだから。まあ、このシリーズは、このハチャメチャぶりが売りといってもいい、一種のSF娯楽小説だと思うので、あまりその辺りに突っ込んでも仕方がないのだろう。

 この作品では、敵は人工地震を起こそうと計画している。一度目の地震のあと、東京が壊滅するくらいの大地震を計画しているのである。これを美由紀がいかに阻止するかというのがこの作品の見どころなのではあるが、人工地震を起こすために使われたのが、ベルティックプラズマ爆弾なるものだそうだ。これいったいなんだろう。放射線を出さずに、核爆弾と同じくらいの爆発力があるらしいが、いったいどのような仕組みでE=mc^2と同じだけの莫大なエネルギーを放出するのかは気になるところだ。気にはなるのだが、これはSF娯楽小説なのだから、これはあるものとして、これ以上突っ込むのは止めよう。

 とは思いながらも、やはりいくつかの疑問点が湧いてくるので、少し列挙してみよう。

<いわゆるP波、縦揺れがあっただけで、ねじれを生じさせる横波のS波が生じない。>(p124)

<三つの観測点の初期微動継続時間から大森公式で震源距離を計算、・・・>(p126)

 確かに地下核実験などによる地震波形は、P波が優勢の特有の波形になるようだ。しかし、大森公式に使われる初期微動継続時間とは、P波が来て、S波が来るまでの間、カタカタと小さな揺れが生じている時間のことなのである。S波が生じないと言っておきながら、どうやってこの公式を使用しようというのか。

 そして、美由紀が阻止することになる2回目の人工地震計画だ。これは、海底活断層を、例の爆弾で刺激して大地震を起こそうというものである。まあ、ここまでは理屈が分からないこともない。ところがその方法というのは、海底掘削で活断層まで到達した穴に、水中スクーターで爆弾を叩き込むというもの。海底掘削というのは、パイプをどんどんつなげていって、掘り進んでいくものだと思うのだが。どこに、水中スクーターが通れるような穴があるんだろう。

 ちょうど今、「活断層」に関する本も読んでる最中だったので、いくらSF娯楽小説だといっても、ちょっと気になるところではある。

 しかし、ふともっと大きな疑問が浮かんだ。それは美由紀の、臨床心理士資格の正当性に関することだ。美由紀は防衛大を首席で卒業したために、例外的に臨床心理士の受験資格を得られたらしい。本当にそんなことがあるのかちょっと調べてみた(嫌な読者だねえ(笑))。

 臨床心理士というのは、現在は指定大学院制度が取り入れられて、医師免許取得者以外は、大学院を出なければ受験できない。ただし、以前は経過措置として、このような条項があった。
「 学校教育法に基づく4年制大学学部において心理学又は心理学隣接諸科学を専攻し卒業後5年以上の心理臨床経験を有する者。」
 でも、そもそも防衛大学校は、学校教育法に定める大学ではなく、防衛省の付属機関だ。だから、自前での学位はだせないのだが、一応大学相当の教育をしているということで、学位授与機構により学士、修士、博士などが授与されている学校である。だから、岬美由紀がいくら防衛大を首席で卒業しようが、受験資格があったとは思えないのだが。何か私の知らない抜け道が存在していたのだろうか。

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3年で年収1億円を稼ぐ 「再生」不動産投資4


・3年で年収1億円を稼ぐ 「再生」不動産投資
・天野真吾
・ぱる出版


 著者は、サラリーマンとして企業に勤務する一方で、「再生」不動産投資を行ってきたという。著者が強調しているのは、「不動産投資」は、「投資」という名はついているものの、「事業」として行わなければならないということだ。

 不動産には、いろいろな利害関係者がいる。大家、入居者はもちろんのこと、不動産の仲介会社や管理会社などである。大家は、目先の利益に惑わされることなく、これらの利害関係者とWin-Winのいい関係を作っていかなければならないのである。つまりは、自分のことだけを考えるのではなく、どうしたら、これらの利害関係者にとっても好ましいことになるのかを考えていくことが大切なのだ。

 これは、別に不動産投資に限らず、あらゆる事業でも成り立つものなので、不動産投資を直接やらない人にとっても多いに参考になるものと思われる。しかし、これを「事業」と考えずに、単なる「投資」と考えると、忘れがちになるのだろう。
 
 本書においては、それを「おしい大家」と「できる大家」にわけて、それぞれの考え方を紹介している。」もちろん、見習わなくてはならないのは「できる大家」の方だ。大家をやるというのは、決して「不労所得」を得るためではない。色々な人に喜んでもらうサービス業を始めるつもりで取り組んでいかないと、残念な結果になってしまうのである。

 なお、本書は株式会社オトバンクさまを通じての頂き物です。ありがとうございました。
 

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認知行動療法 (放送大学教材)4


・認知行動療法 (放送大学教材)
・下山晴彦、神村栄一ほか
・放送大学教育振興会

 先般単位認定試験を受けてきた放送大学の教科である「認知行動療法」のテキスト。表紙には編著者二人の名前しかでていないが、実際には5名の研究者が分担して執筆している。

 「認知行動療法」というのは、一種の心理療法であり、ある人に何か問題が生じている場合は、その原因が認知の誤りにあるとしてそれを修正して、問題行動を無くしていこうというようなものである。

 こういったものを読むときには、何がキモなのかを押さえるということが大切だろう。原理原則を知っておけば、細かい内容を覚えていなくても、色々と応用が利く。

 さて、本書から読み取れる認知行動療法のキモとは、次のようなものだろう。

1.認知行動療法というのは、第一世代である「行動療法系」と第二世代である「認知療法系」を経て、現在は第三世代と言われるものが新たな動向となっている。今巷で話題になっている「マインドフルネス」といったものも、この第三世代に分類される。
2.認知行動療法には、統一的な原理は存在しない。色々な研究者が関わることにより発展してきたものである。
3.認知行動療法では、セラピストとクライエントの協同を重視している。セラピストからの一方的な押し付けや叱咤激励などは否定される。

 こういったことを頭に入れて読んでいくと、なるほどとうなずけるようなことも多いだろう。「マインドフルネス」などの通俗本を読む前に、その基礎にはこんな考え方や理論があることを知っておくのもいいと思う。

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H29.7.4「彗星パンスペルミア」の書評が「新刊JP]に掲載
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