風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

このブログの特徴

 このブログは、私の読書記録のようなものですが、感想文でも、ビジネス本の書評ブログによくみられるような定型的なものでもなく、なるべくきちんとした書評になるように書くようにしています(例外も多いですが(汗))なお、いただきものでもちょうちん持ちのような評はしません。あくまでも思った通り書きます。ちなみに、単なる精神論には厳しめかもしれませんw

 ビジネス専門、小説専門といったジャンルを限った読書ブログは多いですが、このブログの一番の特徴は「全方位系」というところでしょうか。専門書(自然科学・工学、社会科学、人文科学)、小説(名作から、ミステリー、SF、官能小説等)、ラノベからコミックスまで、あらゆるジャンルが網羅されていますので、中には「これ自分も読んだよ」というのがあるかもしれません。

 なお、★の数の意味は、一応以下の通りです。(もちろん私の趣味で独断と偏見に基づいて付けています。他の人が読んで同じ評価になるとは保証いたしません。)

★:クソ本、読む時間が無駄。めったにない。
★★:もう少し工夫が必要。あまり興味が湧かない。
★★★:普通〜面白い。
★★★★:かなり面白い、興味深い。
★★★★★:上記+どこかがツボにハマった。

 ただし、読んだ時の体調やその日の気分などで多少のブレはあるため、あくまで目安ということです。

H30.02.27追記
 本日自分勝手な妄想で人を誹謗中傷した書き込みを行うという常軌を逸した鳥頭がいましたが、私も相手をするのが面倒くさいので、そういう人間はこの世に存在しないものとして扱います(完全無視)。どうも昔から、自分の身の程を知らないバカな連中に言いがかりをつけられる体質のようです。皆さまのお目汚しになるので、現時点では公開はしませんが、しつこいようなら次からは卑劣かつ稚拙な文章を晒すことにします。なお、このような書き込みをした人間は、それをどのように扱われても、承諾しているものとします。

山嵐4



・山嵐
・今野敏
・集英社文庫

 富田常雄さんによる柔道小説の傑作「姿三四郎」のモデルとなったと言われる講道館四天王の一人西郷四郎の一代記。ちなみに富田さんの父は、同じく講道館四天王の一人である富田常次郎である。この作品にも実名で登場している。ちなみにタイトルの「山嵐」は四郎の必殺技である。

 富田さんは、姿三四郎のモデルは西郷四郎ではないといっていたようだが、あまりに共通点が多く、どう考えてもモデルにしているのではないかと思う。

 会津藩士の子として生まれた四郎は元々の姓は志田だった。しかし会津藩家老だった西郷頼母の養子となったことから、姓が保科、西郷と変わっていく。陸軍士官学校に入るために東京に出てきたが、小柄な体格だったため果たせず、講道館を創立した加納治五郎に見いだされて、天神真揚流柔術の井上道場から講道館に移籍し、講道館の発展のためになくてはならない人物となる。

 しかし、四郎は苦悩していた。軍隊も警察も薩長の出身者で占められ、師の加納に対しても色々思うところがあった。加納が海外へ視察に行き、その間講道館の師範代を任されたが、四郎は出奔してしまう。彼の夢は大陸にあった。しかし、加納にはアンビバレントな感情を持っていたようで、その一方で、四郎は加納のことを慕ってもいたのである。彼の心が作品から伝わってくるようだ。

 本書の内容は、どこまでが史実で、どこからかフィクションかよく分からないが、大東流合気柔術の武田惣角と稽古をして、ころりとやられたり、八極拳の李書文と戦い辛勝したというのはフィクションだと思う。

 四郎は持病のリウマチが悪化し、その最後を尾道で迎える。享年56歳。早すぎる死であった。加納は、その死に際して講道館6段を追贈している。

 

麻雀放浪記 : 1 ,24



・麻雀放浪記 : 1 ,2
・(原作)阿佐田哲也、(漫画)嶺岸信明
・ 双葉社

 ある年代の人なら、原作者の阿佐田哲也という名前に懐かしさを感じるのではないか。麻雀の神様とも雀聖とも呼ばれた人だ。なお、阿佐田哲也というのは、麻雀小説を書く時の筆名で、純文学を書くときには色川武大という筆名を使っていた。直木賞なども受賞している。

 賭け麻雀がばれて、大問題になった役人がいたが、、麻雀が男子大学生の必修科目であった時代、マルクスにかぶれていない人も、麻雀にはかぶれていた時代があったのだ。今ほど娯楽のなかった時代、麻雀は大学生の娯楽として普通だった。大学生は麻雀を知っていて当たり前だった。

 私自身田舎の高校出身ということもあり、高校時代は麻雀のマの字も知らなかった。覚えたのは大学に入ってからである。そのころは、あまり一般的な役ではないもの、符の数え方などすべて頭に入っていた(もちろん、そんななかでも麻雀をやらない人もいたが。)。

 本書は、同名の小説を原作としており、主人公は「坊や哲」という。明らかに阿佐田哲也自身がモデルなのだが、内容がどこまでフィクションなのかはよく分からない。戦後の混乱期、主人公は賭博の世界に入り、牌の積み込みなどを覚えていく。清水というガン牌の名人からガン牌を習得しようとするとき、清水は車にはねられてしまう。2巻はここで終わっている。

 博打打ちなんて、今考えれば犯罪者以外の何物でもないが、あの時代、麻雀の強さだけでなく、昔の男子大学生にとっては、阿佐田哲也は一種のヒーローだったのだ。


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荒野のおおかみ3



・荒野のおおかみ
・ヘッセ、(訳)高橋健二
・新潮文庫


 本書は自ら荒野のおおかみを自認するハリー・ハラ―という人物が間借りしていた部屋に残した手記とそこに記された「荒野のおおかみについての論文」が主な内容である。このハリー・ハラ―という主人公のイニシャルは作者のヘルマン・ヘッセと同じもので、巻末の訳者によるあとがきによれば、「50歳のヘッセを記念する仮借ない自己告白」(p276)だという。

 訳者も指摘していなかったが、ヘッセの作品にはニーチェと仏教の影響が強いことは、以前指摘した通りである。この作品にもそんなところが垣間見える。

 例えば、ニーチェ
「ハラ―は悩みの天才であること、ニーチェのよく言っていることばの意味で、天才的な、無際限な、恐ろしい苦悩の能力を養ったことを、私は知りました。」(p14)


 二―チェは、「悲劇の誕生」において、理性的なものをアポロン的と呼び、本能的なものをディオニュソス的と呼んだ。もしかすると、ハリーの人間的な部分と本能的な部分をこの二つに例えているのかもしれない。しかし、ニーチェは悲劇をこの二つを統合するものとして考えた。そうすると荒野のおおかみにおいての悲劇とはなんだろう。確かに手記は悲劇的な終わり方をしていたが。

 仏教については、次の記述に気が付いた。
「(前略)人間は百もの皮からできている玉ねぎである。たくさんの糸からできている織物である。古いアジア人はこのことを認識し、正確に知っていた。仏教のヨーガ(瑜伽)では、個性という錯覚を取り除くための正確な技術を発見した。(後略)」(p73)


このような記述もある。
「(前略)仏陀を解する人間、人間性の中の天国と深淵とをほのかに感じる人間は、常識や民主主義や市民的教養の支配する世界に生きるべきではないだろう。(後略)」(p79)


 実は、この作品は、専業学生のころ一度読んだことがある。その時はそうは思わなかったのだが、今回読み直してみて、かなり病的な文章ということを感じた。とにかく何が言いたいのかよく分からないのだ。

 その頃はこんな言葉はなかったのだが、今はぴったりの言葉がある。それは「厨二病」という言葉だ。なにしろ自分のことを「荒野のおおかみ」なんて呼ぶこと自体、かなりの重症だろう。

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大日本サムライガール新党(1)4


・大日本サムライガール新党(1)
・荒木宰、(原作)至道流星
・講談社

 本書の原作は至道流星さんによるラノベで、これまで3人の漫画家によりコミカライズされている。一人目は川村一真さんという人で、星海社のウェブサイトに連載されていたらしい。

 二人目は「舞-HiME」などで知られる佐藤健悦さん。「チャンピオンRED いちご」に連載されていた。現在吉野弘幸さんの原作で「神呪のネクタール」を「チャンピオンRED」に連載している。

 そしてこの荒木宰さんが3人目ということになる。「ヤングマガジンサード」に連載されていたものだ。

 ヒロインは高校2年の神楽日毬という超絶美少女。グラビアアイドルをやっているが、普通のアイドルとは一味も二味も違う。なにしろその思想はバリバリの右翼。なにしろ

「真正なる右翼は日本に私ただ一人である!!」


なんて街頭演説をするくらいなのだ。アイドルをやっているのも、自分の主張を聞いてもらうためには、メディアへの露出が不可欠だと思っているからだ。

 だから日本史の教師とは良く衝突している。歴史観が全くかみ合わないのだ。

 しかし教師の中にも熱心なファンがいる。例えば、地歴科の橋本という年配の教師だ。心の中では「ひまりん」と呼んで応援している。ただ残念なことに、彼はマルクスの大ファン。つまり思想的にはかなり左ということだ。思想的には左なのに、右翼のひまりの大ファン。いっそのことマルクスはマルクスでも、喜劇映画のマルクス兄弟だったらどれほどよかっただろうと思っている。

 可愛そうなのは、斎藤というクラスメートの少年。実際は斎藤ではないらしいのだが、日毬が間違って斎藤と呼んだことから、すっかり定着してしまった。本名は出てこないので分からないのだが、もう斎藤でもいいや。

 まあ、思想的にはちょっとアレだが、笑えるところも多い。一読すれば、以外に可愛らしいところのある美少女日毬にすっかり夢中になるだろう。

 

このたびはとんだことで4




・このたびはとんだことで
・桜庭一樹
・文春文庫

 本書は、副題に「桜庭一樹奇譚集」と名付けられている短編集であり、6つの話が収められている。収められているのは次の6篇であり、話間の繋がりはない。

・モコ&猫
 大学で出会ったぼくとモコとの物語。しかし、いくら色が黒くて、美人でないとしても、女の子に「胡麻油の、瓶に似てますね」(p9)なんて言うか?

・このたびはとんだことで
 表題作だが、短い。女の情念を感じるような話。

・青年のための推理クラブ
 タイトルから分かるように、桜庭さんの作品、「青年のための読書クラブ」と関係がある話。巻末の解説によればこの作品の冒頭を飾る予定だったが、話の流れが変わったので浮いてしまったとのことだ。礼拝堂からマリア像を持ち出したのは誰かをクラブの面々が推理するというもの。

・冬の牡丹
 山田牡丹は32歳の派遣社員。牡丹と大家の老人田沼慎との話。牡丹は昔は優等生だったが、27歳の時に就職した会社を退職し、今は派遣会社に登録している。次の科白は、慎が牡丹に言ったものだ。
「おまえ知らないの、最近の婆さんは、爺さん、ナンパするんだぜ。こっちが相手選ばねぇと思ってる。年を取るほど強気だぜ。(後略)」(p141)

そうなのか?

・五月雨
 一言で言えば、バンパイアとバンパイアハンターの物語。それにしても、中国山地の奥にバンパイアの一族が住んでいるのか。ヒバゴンならいるかもしれないが。

・赤い犬花
 収録作の中で一番長い作品。短編というよりは、中編と言った方が相応しいだろう。母親とその再婚相手がもめて、その息子の床田太一は、義理の父の実家に預けられた。そこでユキノという少女と出会う。太一がそこに滞在した1週間の間の奇妙な出来事。以外などんでん返しもある。

 この中で桜庭さんらしさが一番出ていると思うのは最初の「モコ&猫」だ。とにかく桜庭さんらしくヘンなのである。一番長い「赤い犬花」も100ページちょっとなので、あまり長い話を読む時間がない人に勧めたい。






四畳半神話大系4



・四畳半神話大系
・森見登美彦
・角川文庫

 一言で言えば、作者の得意な、アホ京大生の出てくる話だ。作品中に大学名は明記されていたかったと思うが、書かれていることから、明らかに京大である。主人公の学部もはっきり出てこなかったと思うが、wikipediaによれば農学部の3回生らしい。

 収録されているのは、四つの物語。それぞれ、新入生で入った時に押し付けられたビラのうち興味を引かれたところに入ったらどうなっていたかというものだ。まあ、1種のパラレルワールドものと言えるのだが、共通部分が結構あることから、口の悪い人はコピー小説とも呼ぶ。

 例えば第1話「四畳半恋ノ邪魔者」は、映画サークル「みそぎ」に入った場合はどうなるかである。この話では、サークルの部長である城ケ崎やその腰巾着の相島とそりが合わず、主人公の腐れ縁の電気電子学科の同回生である小津とサークルを自主追放され、その復讐をするという話だ。

 第2話「四畳半自虐的代理代理戦争」では、樋口師匠に弟子入りしたらどうなるかである。ちなみに樋口というのは小津の師匠だ。「えっ、何の師匠かって?」 それはよく分からない。ただ第1話では樋口は下賀茂神社の御祭神である賀茂建角身命(かもたけつぬみのみこと)と名乗っているが、2話目からはそれが無くなっていたので、普通の人に格下げになったようだ。

 第3話「四畳半の甘い生活」では、主人公と小津はソフトボールサークル「ほんわか」に入る。実はこのサークル、大学に結構ある(あった?)変な宗教系のサークルだった。

 そして最終話の第4話「八十日間四畳半一周」は、秘密組織<福猫飯店>に入った場合の物語だ。ここではパラレルワールドものということが強調される。何しろ主人公が住んでいる四畳半を出ようとしても別の四畳半が広がっているのだ。

 主な登場人物は下鴨幽明荘に住む主人公とその友人の小津。主人公が恋する黒髪の乙女・明石さん、そして小津の師匠の樋口氏とその友人で歯科衛生士の羽貫さん。城ケ崎氏とそのラブドール香織さん。そして城ケ崎の腰巾着になったり、クーデターを起こしたりと忙しい相島。

 どのストーりーでも共通なのは明石さんが蛾が苦手で(どのくらい苦手かというと、蛾の大群をみて「ぎょええええ」とマンガのような悲鳴を上げるくらいだ)、それをきっかけに主人公との恋が成就するということ、そして主人公の部屋が樋口からの部屋の浸水で書籍やパソコンのデータが被害を受けること。小津が鴨川に落ちて骨折することなど。

 しかし、小津の所属が電気電子工学科というのは時代を感じるなあ。私たちのころは、電気系というくくりで電気工学科、電気工学第二学科、電子工学科と一括募集していた。

 さすがに、こんなアホな京大生はいなかった(いやいたかな・・)ような。この〇回生という言い方には、懐かしさを感じる。関西では〇年生ではなく〇回生ということを、大学に入って初めて知り、自分も〇回生となってうれしかったのを思い出す。


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H23.3:書評コミュニティ「本が好き!」より「免許皆伝」称号を受ける

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H25.10.26発売の図書新聞(3132号、2013年11月2日号)に「泥棒は几帳面であるべし」の書評掲載

H26.6,28発売の図書新聞(3165号、2014年7月5日号)に、「市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影」の書評掲載

H28.8頃より「シミルボン」への投稿開始

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H29.10.19「ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者」の書評が「新刊JP」に掲載

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H30.7.20.「極道ピンポン」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.26.「シミルボン」にインタビュー記事掲載

2019.2.23.「本が好き!」×「書店フェア」で「あなたの街で本と出会う Vol.2」に「こころを彩る徒然草」のレビュー掲載

2019.04.28.【本が好き!×カドブン】コラボレビュー!第4回『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』の書評が掲載

2020.01.24.「貧乏大名“やりくり”物語 たった五千石! 名門・喜連川藩の奮闘」が「新刊JP」に掲載

2020.02.04.「どんなことからも立ち直れる人」の書評が「新刊JP」に掲載

2020.04.28.「半自伝的エッセイ 廃人」の書評が「新刊JP」に掲載
本が好き!免許皆伝レビュアー風竜胆
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