風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。最近、ちょっとフリーライターを気取っていますw 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

ペナンブラ氏の24時間書店4


・ペナンブラ氏の24時間書店
・ロビン・スローン、(訳)島村 浩子
・創元推理文庫

 失業中だった主人公のクレイ・ジャノンが働き始めたのは、<ミスターペナンブラの二十四時間書店>という不思議な書店。コンビニではないが、その名の通り、24時間営業。しかし一向に本が売れないのに、どうやって経営が成り立っているのか。クレイの給料は、どこから出ているのか。

 この書店、実は2軒の店が1軒にまとまっており、手前の方は普通の古本屋なのだが、奥の方には、暗号で記されたような不思議な本ばかり並んでいる。この本は売り物ではなく貸し出しを行っているのだが、借りに来るのは、ちょっと変わった人ばかり。いったいこの書店にはどんな秘密があるのか。

 全体としては、クレイがこの秘密を解き明かしていくものだが、本書の構成は大きく3部に分かれている。まずは、クレイが、<二十四時間書店>の秘密を発見するまでが第一部の「書店」。

 第二部「図書館」では、<二十四時間書店>のスポンサーである秘密結社との対決だ。対決といっても血なまぐさいものではなく、その組織が500年もの間アナログな手段で解き明かそうとしてきたある本の秘密を、グーグルに務めるクレイの彼女の協力を得て、グーグルの全リソースを使ってデジタルな手段で一気に解き明かそうというもの。言うなればアナログv.s.デジタルとでもいうことだろうか。

 第三部「塔」では、グーグルの全リソースを使っても解明できなかった謎が、ひょんなことから解けてしまった。しかし、それは秘密結社が500年もの間追っていた内容とは違っていたのだ。ここでは、秘密はかなりアナログな方法で解き明かされる。結局、デジタル万能ではないということなのだろう。
 しかし、本書に出てくるプログラミング言語がC言語からというのは、ジェネレーションギャップを感じてしまった。フォートランとか、アルゴルとかないのね。せめてパスカルとか・・・(笑)。

 ただ、HP社のコンピュータで「逆ポーランド記法」が出てきたところは少し懐かしかった。私は、学生時代にHPのプログラム電卓を使っていたが、これが逆ポーランド記法を使ってプラグラムを組むというもの。今やれと言われても、できないのだが、昔は結構使いこなしていた。それにしても、著者はまだ若いと思うのだが、よくこんなことを知っていたものだと思う。

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※初出は「本が好き!」です。


電力システム工学5


・電力システム工学
・大久保仁編著
・オーム社

 本書は「新インターユニバーシティ」と銘打たれたシリーズの一冊であり、大学において電気工学を学ぼうとする学生たちのための教科書である。内容としては、2年次から3年次あたりの半期の授業2単位分くらいに当たるのかなといったところだ。

 内容はタイトルの通り、電力システム全般にわたる内容を網羅したものだ。ただし、電力システムには当然発電設備も含まれており、本書でも多少は触れられているのではあるが、そちらは通常「発電工学」のような科目で詳しく学ぶことになるので、この本では主として送電、変電、配電といった電力流通設備についての話が主体となっている。

 もっとも、具体的な機器の話については、送電工学、変電工学、配電工学といったような、もっと詳しい科目で学ぶことが多い。本書では、個別の機器についての常識的な話は解説されているが、一番学ばなければならないのは、電力システムが全体としてどのような特性を持っているかということだろう。例えば、電力システムの運用や制御に関する事項、事故時における電流・電圧の挙動、絶縁協調といったようなところだ。これらについても本格的に学びだすときりがないようなところもあるのだが、本書には電気技術者としては当然知っておきたいような内容がコンパクトに説明されている。

 本書において特筆すべきところを一つ挙げるとすれば、遮断機や断路器の開閉時における現象が1章を割いて解説されているところだろうか。雑誌などでは、こういった内容を読んだ覚えはあるのだが、教科書に掲載されている例はあまりないだろう。

 最初に本書を大学の教科書と書いたが、現場の電気技術者の方も、この程度の内容は知っておいた方が良いだろう。昔と違って、最近は電気工学はあまり人気がないと聞く。おそらく電気のことをあまり勉強しないまま、電気の現場に入った人も多いのではないかと思う。そのような人にもお勧めの一冊だろう。

 最後に一つ言いたいのは、電気の事をろくに知らずに、噴飯ものの議論を行っている経済学者と呼ばれる連中を見ることがあるが、ぜひ最低限の電力システムに関する知識をつけてから出直してきて欲しいと思うのだが。

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地理3月号 特集:青森と函館をくらべてみる4


・地理3月号 特集:青森と函館をくらべてみる
・古今書院

 今月号の特集は「青森と函館をくらべてみる」だ。青森と函館には懐かしい思い出がある。かなり前になるが、仕事がらみで行ったことがあるからだ。私の住んでいる広島から函館に行くには、飛行機だと羽田で一度乗り換えねばならないうえに料金も圧倒的に高い。そもそも飛行機は搭乗手続きが面倒臭いし、あんな鉄の塊で空を飛ぶのはなんとも落ち着かないので、できるだけ乗りたくないという気持ちもある。その時は、ちょうど差し迫った仕事がなかったため、時間はかかるが安く行ける列車で行くことにした。

 移動日は、ぎりぎりまで仕事をして、新幹線に飛び乗った。東京で一度東北新幹線に乗り換え、当事は終点だった新青森で降りる。そこから在来で青森に行き一泊。次の日は特急列車で青函トンネルを渡って函館に。当時は、車窓から工事中の新幹線駅が見えていた。それが今では無事に開通して、北海道と青森を結んでいるのだから月日の過ぎるのはなんとも速いものだ。

 この特集では、新幹線開通後の青森と函館の状況を伝えている。新幹線が北海道まで伸びたことにより、確かに青森と函館は時間的には近くなった。

 両地区はそれを活かした「まちづくり」に知恵を絞っているようだ。青森や函館には素晴らしい観光資源が沢山あることは、昔訪れた際に実感した。機会があればまた行ってみたいと思う。ところで、変な全身タイツのオジサン(お兄さん?)が新幹線の被り物を被っている表紙写真には、思わず吹き出しそうになったが、これは「函館はやぶさPR隊」といって、函館のPR活動の一環だそうだ。これは七戸十和田駅にはやぶさを停車させるために運動していた「七戸はやぶさPR隊」との交流から生まれたものらしい。うん、両地区とも色々頑張っている(笑)。

 しかしその一方では、色々な課題も顕在化しているようだ。例えば、青森県今別町は、新幹線開業により訪れる人は確かに増えた。しかしその割には経済的に潤っておらず、観光客がお金を落とす仕組みづくりがまだ整っていないという。また、青森〜函館間の列車の料金が倍増し、新幹線の並行区間がJRから切り離されるようだ。将来現在の函館に新幹線が乗り入れるという約束も反故にされたということで、いいことづくめではないことも事実である。

 この特集を読むとそんな青函地区の現状とこれからの課題というものがよく分かる。地方ではどこも少子高齢化が加速している。そのような中で、新幹線の開業はその地区の希望の光でもあるだろう。ぜひ10年後くらいにもう一度検証のための同じような企画をやって欲しいと思う。

 最後に、本書の特徴として書評欄が充実していることが挙げられるだろう。興味深い本が多いのだが、値段を見ると、なかなか自分で注文というわけにもいかない。ところが今回は「活断層地震はどこまで予測できるか」というブルーバックスの一冊が取り上げられていた。これならと早速注文してみたのは余談(笑)。

〇写真は、函館と青森にある旧青函連絡船の「摩周丸(函館)」と「八甲田丸(青森)」
摩周丸

八甲田丸

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※初出は「本が好き!」です。







 

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法5


・「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法
・中室牧子、津川友介
・ダイヤモンド社

 複数のデータ間に何らかの関係があるとする。例えばある数字が増えると、別の数字も増えていく。あるいはその逆で、ある数字が減っていくと、別の数字が増える。粗忽者はすぐにそれらの間に因果関係、すなわち原因と結果があるものと早合点してしまいがちだ。実際に新聞などでも結構同様の事象を目にする。

 しかし、データ間に何らかの関連性が見られるからといって、それが直ちに原因と結果である因果関係にある考えるのは早計というものだろう。確かに因果関係がある場合もあるが、実は全くの偶然だったり、互いに関連はあるが、因果関係にはないただの相関関係に過ぎない場合や、原因と結果が逆であるような場合もあるから、データの解釈は慎重に行う必要がある。本書は、そのような見かけの関連性に惑わされずに、どのようにすれば、データーから真実を見抜くことができるかを解説したものである。

 それではどうすれば因果関係があることが分かるのだろうか。本書が教えるのは現実と「反事実」を比較することだという。「反事実」とは、仮にあることをしなかったらどうなっていたかということだ。

 「反事実」と比較するために、まず思いつくのは二つグループの間で行う比較実験だろう。特定の条件のみ変えて、その他の条件は同じになるように選んだ二つのグループの間で結果がどうなるかを調べてみる。しかし実際には実験を行うことが難しいような分野もある。その場合には、「疑似実験」という方法もあるのだ。

 本書はこれらの比較を行う場合の注意事項を解説するのみならず、そこから導かれた驚くべき研究結果も併せて紹介している。

 本書を一読すれば、これまで通説だったものがいかに根拠がない物か分かると同時に、何かのデータの関連性を報道するようなニュースに接した場合でも、それは偶然か、因果関係ではなく単なる相関関係ではないのかなどと懐疑的な目で見ることができるようになるだろう。それが、人の言うことを鵜呑みにせず、自分の頭で考えることの第一歩なのだと思う。
 
 なお本書は、「ダイヤモンド社」さまからのいただきものです。ありがとうございました。


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2050年 衝撃の未来予想2


・2050年 衝撃の未来予想
・苫米地英人
・TAC出版

 本書は、苫米地氏による未来予想である。まず目を引いたのが、2050年は平均寿命が120歳になるということ。少し驚いたが、その根拠を見ると、うーんとうなってしまった。日本人の平均寿命は、1925年から2014年までの89年間で男女ともに2倍になっているからだというのだ。(p19)このような数字の使われ方をすると、私のような理系人を自認する者としては、それだけで、気分がトーンダウンしてしまう。

 ネットで平均寿命の推移を調べてみると、1925年から1960年までは、戦前と戦後に大きな不連続点がある。だから、本書のデータで計算してみると、この間では、平均すると0.66年/年とやや大きな伸びとなるものの、2014年から1960年では、0.28歳/年(いずれも男の場合)となり、明らかに鈍化していることが分かる。もっとも、医学の進歩により、どこかで平均寿命のジャンプがある可能性はあるのだが、このデータを使う限りは、2050年の平均寿命が120歳になるという根拠にはならないだろう。

 それでも頂き物なので、一応最後まで読んでみた。書かれていることをごく大雑把に言ってみれば、これからの世界は、金融資本による支配がますます進んでいくということと世界のサイバー化がどんどん進展していくということだろうか。総論的にはその方向に進むのだろうが、各論がそうなるかについては、自分の知識では確信が持てない。

 頂き物に対してこんなことを言うのは気が引けるが、読んでいて、自分はこの方面にあまり興味がないということが分かった。今が2017年だから、2050年と言うと、33年も先。自分が今〇〇歳だから、そのころは△△歳か(年齢は秘密(笑))。果たして苫米地氏の予想が当たっているかどうか、自分の目で見届けることが出来る自信がないなあ。ぜひあと30年以上生きている自信がある人は、世界がどうなっているかを見届けて欲しいものだ。

 なお、本書は、TACさまよりの頂き物です。ありがとうございました。

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ケンコー全裸系水泳部ウミショー14


・ケンコー全裸系水泳部 ウミショー1
・はっとりみつる
・講談社

 神奈川県海猫市にある海猫商業高校。この高校に転校するため、父親といっしょに沖縄から家付き筏で神奈川まではるばるやってきたのがこの作品のヒロイン蜷川あむろだ。性格は天真爛漫、人懐っこくってマイペース。特技は潜水。すっぽんぽんで海に潜り、サメでも捕まえてきてしまうという野生児だが、なかなか可愛らしい。

 彼女は海猫商業で水泳部に入ることになるのだが、そこでマネージャーをしているのが、小さい頃のトラウマにより泳げなくなっている沖浦要という男の子。この作品は、そんな二人を中心にくりひろげられる水泳ラブコメのようである。

 水泳部の仲間も変な人が多いが、その中でもぴか一なのが巨乳で大企業のお嬢さまの静岡みれい。一見したところ上品でおとなしそうなのだが、見られるより見る方が好きということで、頭の中は妄想でいっぱい。ちなみに高校生なのに制服の下は、Tバックひもパン&ガーターベルトだ。

 水泳部を舞台にした物語だけあって、全裸で海に潜ったり、パンツが見えたりと、男子読者のためのサービスシーンも多い。でもタイトルの通りケンコー系なので変な期待はしないように。

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仕事&生活の「困った! 」がなくなる マンガでわかる 私って、ADHD脳!?4


・仕事&生活の「困った! 」がなくなる マンガでわかる 私って、ADHD脳!?
・司馬理英子 (著),しおざき忍 (イラスト)
・大和出版

 ADHDとは"Attention-Deficit/Hiperactivity Disorder(注意欠陥・多動性障害)"の略であり、不注意、多動性、衝動性をその特徴とする。昔は落ち着きのない子だとか注意力の足りない子だとか思われていたものだが、今は発達障害のひとつとして位置づけられているものだ。

 ただし、本書でいうADHD脳とは、ADHDという診断をされていなくとも同じような傾向がある人も含めた、もう少し範囲の広いものである。ADHD脳の人は、その脳の特性により、色々な失敗をしてしまう。しかし、決して自信を失ってはいけない。ADHD脳の特性をよく知って、うまく付き合っていくことができれば、失敗を減らしていくことができるのである。なお著者の司馬さんは、ADHD専門の精神科医だという。

 本書は、月刊「ルビー」の編集者である丸山里子の行動を通じて、どのようにすればADHD的な傾向がある人でも、ミスを減らすことができるかを解説したものだ。里子は、企画力、文章力はあるがそれ以外がまったくのダメダメ編集者。締め切りは守らない、取材先にアポをなかなかとらない。おまけに部屋は超汚部屋。おかげで自分が指導してきた後輩に先にチーフになられて、すっかり自信を失ってしまう。そんな里子だがメンタルクリニック院長である木場えり子のカウンセリングを受けながら自分を取り戻していく。

 ストーリーがマンガ仕立てになっているので、専門書を読むような堅苦しさはない。まずはマンガを読んで、それに関する解説と「コツメモ」と名付けられた対処法を試していけば、ADHD脳の人も、自分の特性とうまく付き合っていけるようになるのである。

 本書の巻末にはADHDの診断基準が掲載されているが、自分を振り返ってみて、この基準に当てはまらない人でも、ミスを減らしたい人には37の「コツメモ」が有効な場合も多いだろう。また身近にADHDの傾向がある人がいれば、その人に対する理解を深めるためにも役に立つ一冊だと思う。

※本書は「オトバンク」さまを通じた頂き物です。ありがとうございました。

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