風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

このブログの特徴

 このブログは、私の読書記録のようなものですが、感想文でも、ビジネス本の書評ブログによくみられるような定型的なものでもなく、なるべくきちんとした書評になるように書くようにしています(例外も多いですが(汗))なお、いただきものでもちょうちん持ちのような評はしません。あくまでも思った通り書きます。ちなみに、単なる精神論には厳しめかもしれませんw

 ビジネス専門、小説専門といったジャンルを限った読書ブログは多いですが、このブログの一番の特徴は「全方位系」というところでしょうか。専門書(自然科学・工学、社会科学、人文科学)、小説(名作から、ミステリー、SF、官能小説等)、ラノベからコミックスまで、あらゆるジャンルが網羅されていますので、中には「これ自分も読んだよ」というのがあるかもしれません。

 なお、★の数の意味は、一応以下の通りです。

★:クソ本、読む時間が無駄。めったにない。
★★:もう少し工夫が必要。あまり興味が湧かない。
★★★:普通〜面白い。
★★★★:かなり面白い、興味深い。
★★★★★:上記+どこかがツボにハマった。

 ただし、読んだ時の体調やその日の気分などで多少のブレはあるため、あくまで目安ということです。

虚構推理(7)4


・虚構推理(7)
・(原作)城平京、(漫画)片瀬茶柴
・講談社

 「ひとつ目いっぽん足のおひいさま」と妖や幽霊たちから慕われる岩永琴子という少女と、妖怪くだんと人魚を食べたために、不死身で未来を見ることができる桜川九郎のコンビが活躍するシリーズの最新刊。

 前6巻までで、原作小説の内容は終わってしまっていたのだが、この巻は、漫画にすることを前提に書き下ろした短編小説を原作としているらしい。

 もちろんこのコミカライズ版の方も短編集となっており、収録されているのは以下の3話。

・よく行く店
 二人が行きつけの喫茶店の話。九郎は、元カノとよく来ていたらしいが、その事が琴子には気に食わない。

・ヌシの大蛇は聞いていた
 琴子が沼に住む大蛇からの依頼で謎を解決する話。琴子は九郎から豚汁を持たされて送り出される。

・うなぎ屋の幸運日
 琴子がたまたま昼食を食べに来たうなぎ屋で出くわした男たちの話。そこでは、かなり不穏なことが話されていた。

 収録されている話は、主に琴子が動いているエピソード集のような感じだ。一応九郎も出るには出ているのだが、前巻のラストで、「でもお前は花より綺麗だから僕はどこにも返していないだろう」と言っていた割には、琴子に対する扱いがひどい。最初の話では、琴子にアイアンクロー(ちょっと、懐かしいかもw)をかましているし、二番目の話では、昼つくった豚汁を食べないといけないからと、琴子が大蛇のところに行くのについて行かなかったのだ。

 一方、琴子の方も間違いなく良家の令嬢のはずなのだが、九郎と温泉に行きたがる目的が「秘宝館」だったり、うなぎ屋によった理由が、今夜は九郎のところに泊まるので精を付けておくためだったりとなんともぶっ飛んでいる。

 そうはいっても、二人のやり取りは、とっても面白い。正に夫婦漫才と言った感じで、案外とうまくいっているようである。この物語は、嬉しいことに、まだまだこの後も続くようなので、これからの展開がどうなるのかとても楽しみである。

 ところで、初回限定の特典として「七瀬かりんデビューCD販促用風ミニポスター」が付いていた。七瀬かりんとは、前巻までに登場した怪異「鋼人七瀬」の基になった人物である。コミックス版には、作中話もあったが、ぜひ「青春火吹き娘」をスピンオフ作品として発表して欲しいものである。

〇関連過去記事
虚構推理

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天牌外伝1,23

天牌外伝1,2


・天牌外伝1,2
・来賀友志、嶺岸信明
・日本文芸社

 昔は麻雀と言えば男子大学生の必修科目。今のようにやれデートだとか、リア充だとかは普通の大学生にはあまり関係のなかった時代、大学生の暇つぶしと言えば麻雀しかなかった。もうウン十年も昔のことだ。私も田舎の高校生だったので、麻雀の「マ」の字も知らずに育ったのだが、大学に入ると、いつの間にか覚えてしまっていた。

 何でも徹底的にやらないと気が済まない私の性格から、市販の教本を何冊か買い込んで勉強したものだ。当時は、正確な符の数え方やあまり一般的でない役までいろいろと覚えていたのだが、それも今は昔の物語。ウン十年もやっていないと、もはやかなり記憶が抜け落ちてしまう。

 しかし、今でも麻雀の世界を描いた漫画があるくらいだから、一定の人気はあるのだろうか。たまたまキンドルの無料マンガで見つけたので、なんだか懐かしくなってダウンロードしてみた。

 主人公は、一晩で億の金を動かすと言われる黒沢義明という凄腕の雀士。基本的には、彼が色々な面子と卓を囲むというのが基本的なストーリーだ。

 この黒沢、どうみても悪人面なのだが、なかなか情に厚い人物として描かれている。このギャップがなんとも面白いのだ。まあ、麻雀漫画でさわやかなイケメンが主人公を務めても、あまり流行りそうにはないのだけど。ヤクザに足抜けをさせたり、ろくでもない男に貢いでいた女性に麻雀で金を取り返させたり、弟子を取らないと言いながらも弟子を取ったり。

 ところで、昔は麻雀牌を手で積んでいたが、だいぶ前から雀荘なんかでは、全自動で機械が積んでくれるようになった。だから、本書に出てきた積み込みなどのイカサマの手口は、炬燵に入って手積みでやるのでない限りは、今では使えないと思う。こんなところにも技術革新の影響が出ているのかと思うとなんだか面白い。昔は、よくテレビにプロ雀士と言われる人たちが出ていたが、いまどうしているのだろうか。

 今は、麻雀と言えば、ギャンブルというより、お年寄りの老化防止のための娯楽といった面が強いような気がするが、麻雀人口って、果たして今どのくらいいるんだろうか。


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小さくても勝てます4


・小さくても勝てます
・さかはらあつし
・ダイヤモンド社

 本書は、理容室「ザンギリ」を舞台にして、小説仕立てで小さな組織でもうまく戦略的な事業活動を行えば成果があがることを示したものだ。なお、舞台となった「ザンギリ」は実際に西新宿に存在している。

 実際のホームページにはスタッフが似顔絵イラストとともに紹介されているので、本書に登場するザンギリのスタッフはすべて実在の人物であることが分かる。

 ザンギリは元々は、家族で営むオフィスビルの地下にあるどこにでもある理容室だったようである。ある日ザンギリ二代目の大平法正氏は、たまたま訪れた立三という元戦略系のコンサルタントに興味を持つ。京都の人間という設定のようだが、関西弁丸出しのヘンなおっちゃんという感じなのだ。

 本書は、法正氏が、立三さんの指導を受けながら、どのようにザンギリを発展させていくかというものになっている。

 よく知られているように、理容業界というのは価格競争が激しい世界だ。組合に加入している理容店だと4000〜5000円の料金が普通だが、その一方では早くて安いがい売り物の格安理容室も台頭している。果たしてどのようにすれば、普通の理容室である「ザンギリ」に未来が開けるのか。

 ところで、皆さん、経営学や経営戦略に関する本を読んで、どうにも理解できなかったことはないだろうか。本書は、それらに出てくるツールを具体的にどのように使えばいいのかがよく分かり、その方面を勉強したい人には役に立つものと思う。

 蛇足ながら一言付け加えたい。本書の中で法正氏の父親が、知人の保証人になる場面があったが、その後の展開は予想通り。借りた人間が行方をくらましたらしく、法正氏の父親も入院したので、法正氏が対応した。その時取り立てに来た先方の営業部長が、「払えなかったら、どうなるんすか?」という問いに対して、「(前略)足りない分は腎臓でも売って、返してもらうことになるんじゃないかな」(p212)なんて言っているが、今どきこんな取り立てをしたら、法的には完全にアウトだ。

 常連客の弁護士に相談したら、「これは仕方ないね。契約は契約だから」と言ったらしい。取り立ての際にそんな発言をしているくらいだから、金利の方も違法な可能性もある。本当にどこまで返済しないといけないのかを洗い直す必要もあるだろう。かなりフィクションが入っているとは思うが、弁護士が本当にこんな発言をしたのなら、どれだけ無能なんだと思ってしまう。

 ともあれ、経営企画関係に興味がある方、その方面で仕事をしている方、大学などで勉強をしている方などは、一読しておいても損はないと思う。

 なお、本書は「オトバンク」さまよりのいただきものです。ありがとうございました。
 

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ニッポンの奇祭4


・ニッポンの奇祭
・小林紀晴
・講談社現代新書

 本書の著者は、諏訪生まれの写真家だ。私も昔訪れたことがあるが、諏訪と言えばなんといっても諏訪大社である。諏訪大社は、上社と下社に別れ、更に前者は本宮と前宮に、後者は秋宮と春宮に分かれているので、合計4つの神社から構成されていることになる。

 時折、テレビで放映されるのを視るが、諏訪大社では、6年に一度御柱祭りというものすごい祭りが行われることでも有名だ。これは、山から切り出した大木を神社の四隅に立てるというものだが、それを運ぶ際には、氏子たちが群がって、山から転がり落ちてくるといった表現がぴったりなくらいのなんとも豪壮なものだ。ちなみに時々死傷者が出るらしい。

 しかし、日本の奇祭はこれだけではない。まだまだ全国には、私たちが驚くような祭りが存在しているのだ。本書は、著者が取材したそんな祭りに数々を写真と文章で紹介している。

 しかし、新書一冊に収めるためだろうか、収められているものに結構偏りがあるのだ。長野県や九州・沖縄、東北の祭りは結構収められているのに、中国地方のものは一件もない。例えば日本三大奇祭として知られる岡山西大寺観音院のはだか祭り、山口県下関市長府にある忌宮神社の数方庭祭、同じく山口県防府市の小俣地区に伝わる「笑い講」などは、本書に収められている奇祭と比較しても、けっして引けは取らないと思うのだが。これは、ぜひ続刊を出してくれることを期待したい。

 ショッキングだったのは、宮崎県の銀鏡神社で行われる銀鏡神楽だ。なんと猪の生首が神様に捧げられるのである。これにはびっくり。

 沖縄県の宮古島で行われるパーントゥという祭りも極めて興味深い。全身を草を編んだもので覆い、そこに泥を塗りつけ、仮面を被った奇怪な姿の人々が、誰かれ構わずに泥を付けていくというもの。新築の家には、このパーントゥに中に入ってもらい壁に泥を塗りたくるのが、しきたりらしい。

 どの祭りを見ても、まさに縄文の息吹、ディオニュソスの狂乱といったものが感じられそうだ。しかし、近年の少子高齢化、過疎化の影響を受けて、滅んでしまった祭りもかなりある。そういった中で、このような本を編むのは、各地方の文化を後世に伝えるという観点からも意義があるものと思う。

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幸せとお金の経済学4


・幸せとお金の経済学
・ロバート・H・フランク、(訳)金森重樹
・フォレスト出版

 本書の教えるところによれば、財には、「地位財」と「非地位財」の二つの種類があるようだ。私は元々は電気工学が専門だが、経済学関係の本も割と読んでいる。しかし、他書であまりこの概念について書いてあった覚えはない。

 ここで、「地位財」はコンテクストの影響を受ける財のことだ。要するに相対的な位置づけが重要だということである。本書に載っている例としては、家の広さがある。他の人が6000平方フィートの家に住んでいる中で、自分だけ4000平方フィートの家に住むのと、他の人が2000平方フィートの家に住んでいる中で、自分だけが3000平方フィートの家に住むのとではどちらが良いかというものだが、絶対値でいえば前者の方が家が広いにも関わらず、ほとんどの人が後者を選ぶという。

 これに対して、「非地位財」というのは絶対的な位置づけが重要な財のことだ。これも本書に載っている例だが、他の人が、年間6週間の休暇をもらえる中で、自分だけが4週間の休暇しかもらえないのと、自分は年間2週間の休暇がもらえるのに、他の人は1週間しかないのとどちらが良いかというものだが、これはほとんどの人が絶対数の長い前者を選択したのである。

 アメリカでは、近年所得格差がどんどん広がっているという。そして、高所得層は、可処分所得が増えるので、例えば、もっと広い家を持つようになる。この割を食うのが中間所得層以下である。家は、「地位財」だから、高所得層に近接している中間所得層は、その影響で自分たちもより広い家を求めるようになり、それが次々に下位の層に伝搬していく。これでは、少しばかり所得が伸びても、決して生活は豊かにはならない。

 考えてみれば、これは日本でも似たようなことはある。例えば勤めている会社の給与水準が、世間一般では平均よりかなり高くても、同期の人間より100円でも給料が安いと、ものすごく不満を持つのではないか。これは、コンテクストの中で、満足、不満足を判断してしまうからだ。

 要するに、金をたくさん使えるようになっても、それは、基準が上方にシフトするだけで、決して幸福にはつながらないのだ。本書には面白い例が載っている。経済学者のリチャード・レナードの言葉のようだが、「豊かでない国では、夫の妻への愛情表現は1輪のバラですが、豊かな国ではバラの花束が必要です」(p209)というものである。しかし、いつも花束を贈っていては、それが当たり前になって、ありがたみも薄れるかもしれない(笑)。

 著者はアメリカの経済学者なので、アメリカを例に語られているが、これは日本についてもあまり変わりはないように思える。「吾唯足知」、「われただ足るを知る」という禅の言葉がある。京都の竜安寺のつくばいに記されていることでも有名だが、私達はこの言葉をもっと噛みしめなければいけないのではないだろうか。

 なお、本書は、フォレスト出版さまからのいただきものです。ありがとうございました。

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片思いレシピ4

 

・片思いレシピ
・樋口有介
・創元推理文庫

 本書は、樋口有介による「柚木草平シリーズ」の一冊であるが、他の作品とは少し性格が異なっている。もちろん、名探偵を務めるのは、柚木草平なのだが、彼が直接作品の中で活躍している訳ではない。変わって主役を演じているのは草平の愛娘でまだ小学生の加奈子なのである。

 つまりは、一種のスピンオフ作品のようなものなので、草平は作品には直接登場しない。それでも、草平は、加奈子と電話で話しているし、事件の調査自体も草平が請け負っている。しかし最後に真犯人を得意そうに暴露する役は、草平に事件の調査を依頼した、加奈子の親友の妻沼柚子の祖父。ちなみに、大地主で元学生運動の闘士らしい。

 事件は、加奈子と柚子が通う塾の学生講師が殺害されたというもの。ところが、この講師が、柚子にこっそりきのこチョコをあげていたことが判明。確かに柚子はお人形のように可愛いが、自分にはくれなかったと加奈子はちょっとおかんむり。小さいぞ、加奈子・・・ってまだ小学生か(笑)。

 もちろん最後には、草平により事件は見事解決される(ただし、柚子の祖父がまるで自分が解決したかのように話すのだが(笑))。

 ところで、タイトルにある「片思い」だが、どうも、加奈子には気になる男の子がいるようだ。それは柚子の兄の翔児(中学生)。さすがに、あの草平を父に持つ加奈子が気にしているだけあって、相当の変わり者のようだが、彼が入院した際には彼女らしき女の子が病室にいた。果たして、加奈子の初恋の行方はというところだ。

 

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H29.7.4「彗星パンスペルミア」の書評が「新刊JP]に掲載

H29.10.19「ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者」の書評が「新刊JP」に掲載
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