日本の文化人類学の草分けとも言える、京都大学名誉教授の梅棹忠夫氏による「知的生産の技術」(岩波書店)。初版が1969年で、現在73刷までいっているようだ。出版されては、すぐに消えていくような本が多い中で、驚くべき、超ロングセラーであり、この分野において、もはや古典と呼んでも良いのかもしれない。

○知的生産の技術(梅棹忠夫: 岩波書店)


 ここで言われている「知的生産」とは、人の知的活動により、新しい情報を人に分かる形で生産するということである。つまりは、考えることによって、様々な情報から、新しい情報を作り出していくという作業のことだ。

 「京大型カード」という言葉を聞いたことはないだろうか。一時はかなり有名であり、現在でも売られているB6型のカードである。これに様々な情報を書き込んで整理するのだ。実はこれを最初に使い始めたのが梅棹氏である。カードがたまっていくことは、そのまま知の集積ということでもあるのだが、カードに書くことの利点は、それをあれこれ組みかえることによって、新たな発想のタネが生まれるということだろう。現在は、パソコンを使えば、似たようなことは可能だろう。確かにパソコンは検索性には優れているのだが、色々な情報を並べてみながら考えるというのは、やはりカードのようなアナログなものの方が優れているのではないだろうか。また、キーボード入力よりは、手で字を書いていくという作業の方が脳の健康にも良さそうである。

 更に著者は、整理の方法として、ファイリングシステムを採用していることを紹介している。今でこそ、ファイリングシステムは当たり前のことだが、この本が初めて出された時代を感がれば、その先見性に驚かされる。

 著者の読書の方法が、面白い。一度読んだ後に、しばらく机の上に積んでおいて、それからカードにノートをとるのだ。その際、ノートするのは、氏が面白いと思ったところであり、著者が大事だと思っているところではないそうだ。氏によれば、これは本をダシにして、自分の考えを育てていくということらしい。

 また、ワープロ全盛の現代では、さすがに時代を感じさせるが、カナタイプを使って手紙などを書いていることが紹介されている。しかし、これも当時としては、非常に先験的な取り組みだったのであろう。この本は、前書きの部分に書かれているように、「知的生産」に関するハウ・ツー本ではない。だから、これを読んですぐに「知的生産」ができるわけではないだろう。しかし、時代を感じさせながらも、現代でも十分に通用する考え方はそこかしこに散りばめられている。後は、著者の言うとおり、「いろいろとかんがえてみること、そして、それを実行してみること」だろう。


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(本記事は「時空の流離人」と同時掲載です。)

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