私も昔、倉敷市民だった時期もあり、岡山弁を聞くと懐かしい思いがする。「ぼっけえ、きょうてえ」(岩井志麻子:角川書店)は、岡山を舞台にしたホラー短編集である。




 「ぼっけえ、きょうてえ」は岡山弁で「とても、怖い」という意味。表題に岡山弁を持ってくるだけあって、作品の語り口も岡山弁であり、退廃的な内容とも相まって、この作品に独特のどろどろとした雰囲気を与えている。掲載されているのは、次の4作品。

○ぼっけえ、きょうてえ
 岡山の遊郭で、遊女が問わず語りに客に語る壮絶な身の上話。彼女の「姉」の身の毛もよだつような正体とは。

○密告箱
 虎列刺(コレラ)蔓延を防ぐために村役場裏に備え付けられた、感染者を密告するための「密告箱」の管理を押し付けられた役人の悲劇。

○あまぞわい
 岡山市から、辺鄙な漁村に嫁いだ女の禁じられた恋の悲劇。

○依って件の如し
 村人たちに虐げられていた兄妹の秘密と復讐劇。

 どの作品もゾクゾクッと来るような怖さを秘めている。しかし、通常のホラー小説のようなオカルティックな怖さではない。本当に怖いのは、幽霊や妖怪ではなく人間の情念、怨念だ。そんなことを思わせてくれる一冊だった。


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(本記事は、「時空の流離人」と同時掲載です。)
 
 
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