しっかり者の妹リリーと気のいい兄ロバートの二人が活躍する「グレイス&フェイヴァー」シリーズの第5弾、「君を思いて」(ジル・チャーチル/戸田早紀:東京創元社)。「グレイス&フェイヴァー」とは、リリーたちが住んでいる「グレイス&フェイヴァー・コテージ」から来ているようだ。


君を想いて
  • ジル・チャーチル
  • 東京創元社
  • 798円
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書評


 時代は、ルーズベルトが大統領に就任し、ニューディール政策にのりだそうとしているころ。二人は元々はお金持ちのお坊ちゃまとお嬢さまだったようで、作品に描かれている二人は、なんとなく育ちの良さを感じさせる。もっとも、大恐慌のために財産を失い、伯父の財産を相続したものの、相変わらず田舎町で貧乏暮しをしているようだ。この時代は、まだ、あの悪名高い禁酒法も施行されていたようだ。(もっとも、この作品のエンディングでは廃止となっていたが。)

 近所の養護ホームを手伝うことになった兄妹だが、そこで、昏睡状態に陥り余命数時間の老人・コナー氏がが殺されるという事件が発生する。事件の捜査をするのは、旧知の警察署長・ハワードだが、リリーも、この事件に興味津津である。

 田舎町ののんびりとした雰囲気が全体に流れているよう作品であり、特に驚くようなひねりもどんでん返しも無く、エキセントリックで、誰からも嫌われているような一番怪しい人物が、やはり犯人だったという、ミステリーとしては非常に素直?なストーリーだった。よくありがちな、いやな奴が実はとってもいい人だったなんてことは全然なく、嫌な奴はやっぱりそのまんまいやな奴だったという話だ(笑)。

 しかし、どうして、こんな事件を起こしたかは、結局不明だった。事件は2件の殺人と1件の殺人未遂に発展しているが、事件の動機も結局は不明であり、ミステリーとしては少し物足らない気がする。

 そうはいっても、リリーのキャラクターはなかなか魅力的だ。キュートな表紙イラストは、リリーの魅力をよく表している。あまり、ミステリー部分を気にしなければ、なかなか楽しい作品である。

 なお、この本は、「本が好き!」さまを通じて献本していただいたものです。お礼申し上げます。


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