チープな感じのイラストがちょっと気になる「占星術殺人事件」(島田荘司:講談社)。文庫版の初版は1987年となっているが、発表されたのは、1981年で、文庫版の後ろの方にある解説によれば「伝説的な作品」と称されているらしい。実は、うちの子が買っていた(まだ読んでなかったようだが)ので、ちょっと先に読んでみたわけである。日本ミステリーの古典と言うには、まだ新しいと思うが、うちの子にとっては、自分が生まれる前に発表されているので、古典のようなものだろう。どうしてその本を買ったのかと聞いてみると、どうも、何かの漫画に出て来たらしい。さすがに漫画の影響力はすごいものだ。




 さて、この作品で扱われているのは、かなり猟奇的な事件だ。画家とその娘(義理の娘を含む)や姪の合計8人が殺されたのである。問題は、この画家が遺した手記の内容だ。そこには、自分の娘や姪たち6人の処女から、それぞれ違う星の加護を受けている部分を取り出して、完璧な人体(アゾート)を生成しようという計画が記されていた。画家の娘たちは、手記に示された部分を切り取られている死体となって、日本の各地で次々に発見されたが、一番怪しいはずのその画家は、最初に殺害されていたのである。しかも殺害現場は密室。

 実は、この猟奇的な事件は、実際に作中で発生する訳ではなく、発生したのは昭和11年。40年前の記録上の出来事として出てくるのである。余りのミステリアスぶりに、日本中のミステリーファンが散々謎解きに挑戦してきたが、これまで誰も解決できなかったという設定だ。これを名探偵ホームズ役の占星術教室を主宰している御手洗潔と、ミステリー好きのワトソン役石岡和己が追い求めていくというのが基本的な筋書きである。もっとも、御手洗は、ホームズのことを作中でけちょんけちょんにけなしているのだが。

 最初は、石岡が事件を説明し、それに対して、御手洗が推理を述べるという形だったので、てっきり安楽椅子探偵ものかと思ったら、途中から行動的になって、京都まで手がかりを探しに行く。結局事件は、京都で解決した形になったのだが、使われていたトリックの意外さには舌を巻いてしまった。このトリック、作中にも述べられているが、よほど捜査が御座なりでない限り、今だったらまず成立しないものである。ところが、事件の舞台を昭和11年としているために、不可思議な事件として成り立ってしまったのだ。だから、40年後の謎解きというのは、作品の中できっちりと意味を持たされているのである。最後に犯人が分かるところは少しあっけない感じはあるが、なかなか読みごたえのあるミステリーだった。


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(本記事は、「時空の流離人」と同時掲載です。)

 
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