私たちの太陽系は、天の川銀河に属しており、銀河の中心から2万8000光年、銀河円盤からは130光年ほど隔たったところに存在している。太陽はその質量が1.99×10^30キログラムで、恒星の分類上としては、水素燃焼段階の主系列星に属する。地球は、太陽系の第3惑星であり、平均半径1.496×10^8キロメートルで太陽の周りを公転している。地球が、質量が太陽の33万分の1で、ただ一つの月を持っている。これら種々の条件がうまい具合に組み合わされて、地球は豊かな水と適度な気温に恵まれた、豊かな生命が溢れる星となった。

 もし、これらの条件を変えてみたら、地球に相当する惑星は、どのような環境になるのか。この壮大な「IF(イフ)」に対して、現在の科学的知見に基づいて、可能なシナリオを私たちに示してくれるのが「もしも月が2つあったなら ありえたかもしれない地球への10の旅」(ニールFカミンズ/増田まもる:東京書籍)である。


もしも月が2つあったなら ありえたかもしれない地球への10の旅 Part2
  • ニールFカミンズ
  • 東京書籍
  • 2205円
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書評



 本書では以下の10の「IF」が示されている。

1.もしも月が2つあったなら?
2.もしも地球が月だったら?
3.もしも月が逆向きに公転していたら?
4.もしも地殻がもっと厚かったら?
5.もしも地球が今から150億年後に生まれたら?
6.もしも太陽の反対側の地球の軌道に反地球があったなら?
7.もしも地球が銀河のどこかほかの場所で生まれていたら?
8.もしも太陽の質量がもっと小さかったら?
9.もしも地球に太陽が2つあったなら?
10.もしも他の銀河が私たちの銀河に衝突したら?

 本書は、各「IF」の冒頭に、その世界の住人を登場させる小説仕立てのショートストーリーを持ってきて、読者の興味を引いている。しかし、本書の最大の特徴はこのことではなく、各シナリオを解説する前に、現在の科学的知見に基づいて、問い自体の有効性を検証していることだろう。いかに面白そうな問いをたてても、それが科学的に見て意味のないものなら、どんな興味深いシナリオを提示しても、ただの妄想でしかないのだから。それにしても、1990年代の中ごろがもう「昔」呼ばわりされているのだから、この分野の進展の速さには驚く。

 だから、この本には2つの価値があると思う。ひとつは、もちろん、天文学的なスケールで、壮大な「IF」を楽しませてくれるというものである。しかしこれらは、ひとつの可能性をもとに作成されたシナリオだ。著者も述べている通り、自然界では、ごくわずかな変化が想像を絶する結果をもたらすことがあり、読者は、別のシナリオを描くことが十分に可能であると言うことは認識しておく必要があるだろう。

 もうひとつの価値とは、この「IF」の世界以前のものである。この本は、最新の宇宙物理学の知見に基づいて書かれているということだ。もちろん難しい数式などは出てこない。つまり、本書は「宇宙物理学」の入門書としても優れているのである。例えば宇宙論、天体の形成、潮汐の影響、地球の構造とプレートテクトニクス、磁場の形成、大気の誕生など、「IF」ではなく「Real」の世界での多くの興味深いことを教えてくれるだろう。

 ただ、誰でもすらすらと読めるかどうかとなると微妙なところだ。やはり、多少の天文学の知識と力学の初歩の知識くらいは持っており、書かれていることが頭の中である程度イメージできるような人でないと、読んだことがなかなか理解しにくいかもしれない。

 なお、この本は、「本が好き!」さまを通じて献本していただいたものです。お礼申し上げます。


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