神永学の「心霊探偵八雲」に出てくる斉藤八雲や、京極夏彦の京極堂シリーズに出てくる榎木津礼二郎などに代表される、何か人に見えないものが見えてしまう探偵たち。三津田信三もそんな探偵を描いている。彼の描くのは、死相の見える「死相学探偵」だ。

 主人公の名前は弦矢俊一郎という二十歳の青年。東京は神保町で探偵事務所を開いたばかりである。彼の祖母は有名な霊能力者であり、彼が死相が見える能力を持っているのも、祖母の遺伝子の影響が大きいのだろう。

 彼の探偵事務所を訪れた依頼人が、内藤紗綾香と言うかわいらしい女性。彼女の婚約者が急死し、死んだ婚約者の家でも異変が続く。怪奇現象の調査という名目で、紗綾香の元婚約者の家を調べ始めた俊一郎だが、その家の人間が次々に謎の死を遂げる。

 ところで、小説に出てくる何か見える探偵というのは、大体が性格に難ありなのだが、この俊一郎もかなりぶっきらぼうな性格でコミュニケーションが苦手なようだ。しかし、そこを反省しているようなところもあるので、八雲や榎木津なんかに比べれば、だいぶ可愛いものなのだが。

 作品中には、いかにも三津田作品らしい小ネタが出てきて、ファンにはうれしい。例えば紗綾香の元婚約者の本棚には、東城雅哉や姫之森妙元の小説が並んでいたり、神々櫛村のナガボウズのことが話題になったり、俊一郎の祖父母の家が杏羅町にあったりといった具合だ。
 
 大きく予想が外れたのは、紗綾香のこと。てっきり、「心霊探偵八雲」の小沢晴香のように、俊一郎のよい相棒になっていくのだろうと思っていたのだが、思いもかけない方に話が展開していった。最後の話の終わり方も、いかにも三津田流と言った感じだ。


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