「鴨川ホルモー」など、独自の作風で知られる小説家の万城目学氏が、自分の思い出や日常の愉快な話などを集めた面白エッセイ集・「ザ・万歩計」(文春文庫)。彼の作品の作風から想像はついていたが、本書を読むと、やっぱり「オモロイ人なんや」とますますその思いを強くする。

 「オモロイ話」が満載だが、特に笑ったのは、万城目氏が無職の頃に銀行口座を作ろうとした時の話だ。美人行員に、職業欄が未記入だと言われて、無職だと答えると、冷たい声で「専業主婦」欄にチェックを求められたという。万城目氏、不満に思いながらチェックしたようだが、「自由業」とか言った欄はなかったのだろうか。

 万城目氏が通っていた中学校の「技術」の時間についての話も面白い。中学校の「技術」というと、ほぼ「工作」の時間だったような記憶があるが、この学校ではそれが、「耕作」の時間。学校の農場で1年間農作物を育てて、その出来で、点数が付けられるらしい。これ、絶対「技術」じゃないだろうと思うのだが、椅子や本立てといった小手先のものを作るよりは、案外と精神修養には良いかもしれない。もっとも万城目氏、あまり熱心には取り組まなかったので、絶対に売り物には出来ないような野菜しか作れなかったようだ。私も中学校時代は、体育の時間がずっと、学校のグラウンド拡張のための砂運びだったのを覚えている。昔の学校というのは、結構いい加減だった。

 こんなたわいもないが、つい笑えてしまうような話が満載だ。ひとつ一つの話はそう長くないので、ちょっとした気分転換に読むのも良いだろうし、作者のようにトイレに持ち込んで読むのも良いだろう。

 著者以上に生きている私にも、振り返ってみれば、こんな「オモロイ話」というのは結構あったはずであるが、思い出そうとしても、殆ど思い出せない。「オモロイ」事を体験しても、見過ごして、脳の記憶として、インプットすら行われてなかったのかもしれない。やはり、作家になるような人は、観察眼がするどく、少しでもネタになりそうなことは見逃さないのだろうか。別に作家になるつもりはないのだが、「オモロイ」ことを見逃さずに「オモロイ」と感じる。心身の健康のためにも、そういったことを心がけたいものである。

(余談)
 著者が、作家の道を歩み出すきっかけの一つは、高校2年の時に現代文の宿題で先生に褒められて、文章というものに対する誤解が解けたからだという。その宿題は、「風が吹けば花屋が儲かる」というロジックを完成させろというものだ。万城目氏は。先生に褒められて、出入りの業者がサンプルで置いていった「漢字ドリル」を賞品としてもらったという。私もちょっと挑戦してみた。

風が吹く⇒肌寒く感じる⇒男女が寄り添う⇒親密になる⇒結婚式が増える⇒ブーケの注文が増える⇒花屋が儲かる。

 お粗末でしたw


○読書ブログがたくさん集まっています
br_decobanner_20101123214358


○姉妹ブログ
文理両道
時空の流離人