世界最大の広告会社である電通には、「鬼十則」なる教えが存在すると言う。何でも、四代目社長で「広告の鬼」と言われた吉田秀夫が50年以上も前に書き残したものらしい。

 「電通『鬼十則』」(植田正也:PHP文庫)は、この「鬼十則」をひたすら賞賛するものだ。どのような内容かと言えば、

 1.仕事は自ら「創る」可きで与えられる可きでない

 2.仕事とは先手先手と「働き掛け」て行くことで受け身でやるべきでない

 3.「大きな仕事」と取り組め小さな仕事は己を小さくする

 こういった調子で、十の教えが並んでおり、それを一つ一つ、著者が解説しているという構成になっている。著者は、広告業界での経験を持つフリーライターであるという。そのためか、この本には、まったく批判精神が見られない。ただひたすら賛辞を捧げているのである。

 たしかに、良いことも書いてあるのだが、なんとも説教くさくて、私のようなへそ曲がりには、どうにも違和感がある。この十則は、ただ馬車馬のように働けと言っているだけで、何のために働けくのかと言うことが無いからだ。

 私なら最初に以下の2つを入れたい。

 1.仕事は会社のためと心得るな、仕事を通じて、自己実現を図れ。

 2.会社のための仕事ではない、お客さまに喜んでいただくための仕事である。

 これらが無いと、ただ「行け行けドンドン」とはっぱを掛けられているだけの会社の奴隷ではないか。

 ただ、著者は、この「自己実現」に関して、第7則の「『計画』を持て、長期の計画を持っていれば忍耐と工夫とそして正しい努力と希望が生まれる」をそのようにも解釈している。もし、そうであるのならば、7番目に来るのは不自然である。目的というものは、本来一番初めに来るべきものだからである。ここは、単に仕事とは短期で考えるなと言っているにすぎないと思うのだが。

 そして、最後にも、もう一つ入れたい。

 「考えろ、そして実行せよ。」と。

※ 本記事は、2006年09月16日付けで「時空の流離人」に掲載したものに加除修正を加えたものです。



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