万城目学の「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」(ちくまプリマー新書)。

 かのこちゃんは小学1年生の女の子だ。そしてマドレーヌ夫人は、かのこちゃんの家の飼い猫である。夫人というからには夫がいる。 ところが、その夫は、なんと同じくかのこちゃんちで飼われている柴犬の玄三郎。猫は普通は犬語は理解できないのだが、なぜかマドレーヌ夫人は玄三郎とだけは意思疎通ができる。だから彼女は仲間たちに頼まれて、夫を通じて、犬社会に猫たちの要望を届ける仲介役を務めたりしている。例えば、どこそこの猫のお産が近いから、静かにしてくれといったようなことを犬たちに伝えるのだ。

 マドレーヌ夫人は、あるゲリラ豪雨の日に、玄三郎の犬小屋に迷い込んできた。自分も雷が苦手なくせに、玄三郎は彼女を追い払わなかった。そして二匹は夫婦になったのである。犬と猫の夫婦という設定が、なんとも突飛で面白い。

 マドレーヌ夫人には、玄三郎の言葉が分かるということ以外にも不思議な力がある。たまに猫又になるのだ。でも決して化け猫のような怖い存在ではない。人には化けるのだが、他の人に変わって、思いを伝えるという優しい猫又だ。でも自分でも猫又状態をうまくコントロールできないようで、ドタバタしてしまう。それが微笑ましくって、可笑しくって。

 やがて、老犬だった玄三郎との別れの時が来る。それは、マドレーヌ夫人にとっても旅立ちの時であった。描かれているのは、出会いと別れ。ほのぼのとした中に、最後はしんみりした寂しさが残る。


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