お寺の和尚さんの語る怪談話、「怪談和尚の京都怪奇譚」(三木大雲:文春文庫)。著者は、京都の日蓮宗宗光照山蓮久寺の住職で、関西テレビの「怪談グランプリ」準優勝者だという。どうして、和尚さんが怪談話をと不思議に思われるかも知れないが、これには理由がある。寺の次男に生まれた著者は、大学を出ても継ぐ寺がない。そこで夜の公園で、若者たちに仏教の布教活動をしたという。しかし若者たちに最初から仏教の話をしても、聴いてくれる訳がない。そこで、方便として怪談話から始めのがきっかけらしい。

 なにしろ、1200年以上のの歴史を持つ魔界都市京都だ。こんな怪談話に溢れていても不思議ではない。著者は、いわゆる見える人のようでもあり、お祓いもやっているということなので、ますますこんな話が集まってくるのだろう。

 ただ収録された話は、ゾクリとするようなものもあるのだが、夜トイレに行けなくなるほど震えあがるような恐い話はない。いや、もしかするとあったのかも知れないが、なにしろ話の数が多いので、読み終わった時には、色々とごっちゃになって、なにがなんだか・・・。

 特徴的なのは、怪談にも関わらず、しんみりとした話が多いこと。そのままお説教としても使えそうなのは、著者の職業柄か。

 残念なことに、これは京都ならではといった感じはあまりないのであるが、和尚さんの語る一味違う怪談話、一度お試ししてみるのもいいだろう。

 ところで、何ともインパクトのあるこの表紙。著者ご本人なのだろうか。「いや、アナタが一番怖いんですけど」とつい思ってしまった。

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