仮面舞踏会ならぬ、「仮面同窓会」(雫井脩介:幻冬舎)。主人公の新谷洋輔は,システムキッチンの営業マン。彼が通っていた狐狸山高校の同窓会で出会った級友たちに、かっての生活指導教員だった樫村に仕返しをしようと持ちかけられる。

 樫村は、横暴な教師で、なにかと目をつけた生徒たちをいたぶっていた。樫村の十八番は、「天突き体操」。「よいしょー!」と大声を出しながら、空に向かって拳を突き上げる体操らしいが、これを延々とやらされるのである。「あほか!」と思うほどの時代錯誤ぶりだ。そう言えば、小林多喜二の「蟹工船」に、「カムサッカ体操」という謎の体操が出てくる。乗船員たちを脅す時に、これをやらせるぞと言って使われるようだが、「天突く体操」とは。ここからヒントを得たのだろうか。

 彼らが考えた仕返しとは、「倍返し!」ではないが、樫村を廃工場に拉致して、自分たちがやらされた「天突き体操」を、彼にやらせようというもの。ところが、いたぶった後で廃工場に置き去りにしたはずの樫村が、2kmも離れたため池で、溺死体で見つかる。一体誰が樫村を殺したのか、4人の間で広がる疑心暗鬼。そして、4人のうちの和康も何者かに殺され、互いの不信が頂点に達したとき、ストーリーは驚くような展開を迎える。

 ストーカに追われていたのをたまたま助けたことがきっかけで恋人になった、高校の同級生の美郷。美郷のストーカーで、どこかヘンな感じのジョージ、洋輔のもうひとつの人格かと思われた不思議な声。これらが一気に仮面を剥がし、その正体を表す。仮面を被っていたのは彼らだけではない。いっしょに樫村をいたぶった洋輔の級友たち、いたぶられた樫村もまた仮面を被っていたのだ。どの人物も、仮面の下は嫌悪すべき素顔ばかり。これだけ後味の悪いミステリーも珍しいのではないだろうか。

 実は、「天突く体操」の「よいしょー!」の掛け声が、ラストでも別の使われ方をしているのだが、これが、なんともいやな感じを残す。

 なお本書は、「本が好き!」さまを通じて献本いただいたものです。お礼申し上げます。


○姉妹ブログ
文理両道
時空の流離人



http://takotakotakoyaki.blog52.fc2.com/blog-entry-5038.html