大前研一氏率いるビジネスブレークスルー大学(以下BBT大学という)の教授陣が執筆した、「プロフェッショナル シンキング (BBT大学シリーズ)」(宇田左近/平野敦士カール/菅野誠二著、大前研一監修:東洋経済新報社)。答えのない時代に、「思考力」を鍛えて未来を見通し、望ましい未来を作り出していこうということを教えるものだ。

 本書では、まず問題解決思考力を身に着けるための基礎的な事項が述べられ、続いて、「市場の未来を見通す思考力」、「『顧客の未来』を見通し『未来の顧客』を創造する思考力」が解説される。そして最後に、チームで問題解決を行うという「集団IQ」の重要性が説かれて締めくくられる。

 まず教えられるのは、「思考逃避」に陥ることに対する戒め。「大局観」を持って、世の中の「流れ」や「うねり」を見出すこと。「大局観」を養うために、世の中で起きている事象について、「なぜそのようなことが起きているのか」を問うこと等々。

 そして、「市場の未来を見通し創造」想像するための、「アナロジー思考」、「シナリオプランニング」、「デザイン思考」、「プラットフォーム戦略思考」などや、「『顧客の未来』を見通し『未来の顧客』を創造する」ための「事業構造と顧客交点アプローチ」、「時間軸と顧客交点アプローチ」、「顧客個人の内面と外部交点アプローチ」といった具体的なツールやアプローチ法についても概要が理解できるだろう。

 最後に締めくくりとして書かれている「集団IQ」に関しては、おそらくこの章が本書の「キモ」になるのではないかと思う。我が国には、「三人寄れば文殊の知恵」という諺もある。いくら色々なツールや手法に習熟していても、一人でやったでは出てくる知恵にも限界があるというものだ。チームでコラボし、他人のアイディアをヒントに、新しい考えをひねり出すということは、とても有効なことではないかと思う。

 ところで、本書は、まず「疑ってかかる」ということを教えているが、それは本書の内容についても例外ではないだろう。細かいことで恐縮だが、例えば、98ページには、「レンタルレコード、レンタルCD,レンタルビデオは、金融のアナロジーから生まれました」と書かれている。しかし、日本には昔「貸本屋」という商売があった。これについては言及されていないが、現在のレンタル商売のヒントにならなかったとは考えにくいだろう。

 そして、106ページの線虫によるがん検査について書かれた部分。「発見したきっかけは、寄生した「アニサキス」という線虫を取り除く手術の際に、線虫が胃がん部分に集まっていたことでした」とあるが、この文章を素直に読むと、アニサキスが、うじゃうじゃと胃がん部分に集合していたような印象を受けないだろうか。実はアニサキスというのは、線虫の一種というのは間違いないが、クジラの回虫の幼虫であり、大きさも20mm程度と結構大きい。人の体内では成長できないので苦し紛れに暴れて、アニサキス症をおこすわけだが、この虫がうじゃうじゃいるような食材を食べたとは、通常では考えにくい。

 とはいえ、本書に示されている手法やアプローチ法が、ビジネス上で有効なのは間違いないだろう。しかし、自分で実際にやってみようとすると、もう少し事例があった方が良いと感じるのではないだろうか。もっともそのあたりは、BBT大学に入学すれば学べるよという事かも知れないのだが。

 なお、本誌は、レビュープラスさまより献本いただきました。ありがとうございます。 

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