最近、メンターという言葉をよく聞く。メンターとは一言でいえば、人生や仕事における「師」のことである。「メンターが見つかれば人生は9割決まる!」(井口晃:かんき出版)は、メンターを見つけて、その人物をお手本にしていけば、人生の成功はほぼ約束されたも同然と主張するものだ。

 ただし、本書は、ずっとメンターに頼れと言っているのではない。1年間はメンターから集中して学び、その後は独り立ちせよと言うのである。たしかに、ロールモデルとなる人物を定めて、最初は集中的に真似をするというのは、一から自己流でやっていくよりは、遥かに効率的だ。日本では古来より、「守・破・離」ということが言われる。どのようなものも、これまで積み重ねられてきた長い歴史の上に乗っかっているものだ。ある日、これまでに影も形もなかったようなものが、急にぱっと現れるわけではないのである。だから、最初は、基本を身に着けるという意味で、メンターの言動をまねるということは理に適っている。しかし、いつまで真似をし続けていては、メンターのミニ版ができるだけだ。だから基礎を身に着けたら、そこから自分なりのやり方というものを模索していかなくてはならない。こういった意味で、本書の主張は納得ができるものだ。

 しかし、いくつか異論もある。メンターから学ぶ方法だ。本書では、メンターに接触して学ぶことが重要だとして、以下のような方法を勧めている。

.瓮鵐拭爾書いた本を読む
▲瓮鵐拭爾諒拔会、セミナー、講演会を受ける
少人数に限定したメンターのプログラムを受講する
つ樟棆颪辰動貘舒譴馬辰
                           (p116)

 あなたがこれを読んで、「もっとも」だと思えるなら、かなり視野が狭くなっていると言わざるを得ない。たしかに、セミナー系の講師でも目指すのならこれでもよいだろう。しかし大部分の人が目指しているのは、それ以外の職業なのだ。本書には、メンターは一流の人物から選べと述べられている。しかし、多くの職業において一流の人間すべてが、本を書いていたりセミナーを開いているわけではない。例えば、「超一流の外科医」がセミナーなど開いているとは考えにくいと思うのだが。また、メンターの書いた本を読めと言っても、それが「電気回路」だとか「電磁気学」のような本だとしたら、メンターに接触したことになるのだろうか。

 そのうえ、メンターは身近な人からは選ぶなとも書いてある。そうだとすると、大部分の人間にとって、メンターから学ぶといるのは、かなり難しいことになってしまうのではないだろうか。

 なお、本誌は、レビュープラスさまより献本いただきました。ありがとうございます。 


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