・魔法騎士レイアース
・CLAMP
・講談社

 この作品は、講談社の月間漫画雑誌「なかよし」に、1993年から1996年にかけて連載されていたものだ。あの伝説の「セーラームーン」と連載が重なっていたこともあって少しかすんでしまった観もあるかもしれないが、私はこちらの方が好きだった。

 最初の舞台は、1993年の東京。まだスカイツリーなど影も形もなく、東京タワーが東京のランドマークとしての存在感があったころだ。同じ時に、東京タワーに集った獅堂光、龍崎海、鳳凰寺風の3人の少女。学校も違い、それまで面識もなかった彼女たちは、突然異世界「セフィーロ」に召喚される。

 彼女たちを召還したのは、「柱」として、祈りの力でセフィーロを支えてきたエメロード姫。ところが、姫が神官ザガードに幽閉されたために、セフィーロは今滅亡の危機に瀕しているというのだ。彼女たちが元の世界に戻るためには、ザガードを倒して、姫を救い出すしかない。

 セフィーロでは、「意思の強さ」がすべてを決める。エメロード姫の願いに応えて、セフィーロを救うためには、強い意志の力が必要だ。セフィーロで、様々な試練を乗り越えて、成長していく3人は、ザガードと戦うために3体の「魔神」を復活させた。しかし、それはセフィーロにとっては希望であると共に、悲しみの幕開けでもあったのだ。最後に待っていたのは驚きの結末。

 なぜ、エメロード姫は異世界から伝説の魔法騎士たちを召還しなければならなかったのか。姫の本当の願いは何だったのか。それらは、読者の予想を遥かに超えるものだった。彼女たちが姫の願いに応えて、セフィーロを救おうとすることにより、その「意思の力」も成長していった。しかしそれこそが、彼女たちに、大きな悲しみをもたらすことにもなったのである。そのようなアイロニーに満ちた物語は、とても小中学生向けの漫画とは思えない。

 ヒロインたちの設定は高校生くらいにしてもよかったと思うが、中学2年生にしたというのは、連載誌の購読層が小中学生の女子ということを意識してのものだったのだろうか。それとも中学生くらいの方が、成長というこのテーマの一つに対して、よりふさわしかったからだろうか。アニメにもなり、結構男子層のマニア心をくすぐっただろうこの作品だが、さすがに男子にとっては、「なかよし」を買うのはハードルが高かったろう。今だったら「戦闘派美少女」ものとして少年誌に連載されてもおかしくない作品だと思う。(そういえば昔は少女が主人公のものって、あまり少年誌にはなかったような・・・)


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