・「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法
・中室牧子、津川友介
・ダイヤモンド社

 複数のデータ間に何らかの関係があるとする。例えばある数字が増えると、別の数字も増えていく。あるいはその逆で、ある数字が減っていくと、別の数字が増える。粗忽者はすぐにそれらの間に因果関係、すなわち原因と結果があるものと早合点してしまいがちだ。実際に新聞などでも結構同様の事象を目にする。

 しかし、データ間に何らかの関連性が見られるからといって、それが直ちに原因と結果である因果関係にある考えるのは早計というものだろう。確かに因果関係がある場合もあるが、実は全くの偶然だったり、互いに関連はあるが、因果関係にはないただの相関関係に過ぎない場合や、原因と結果が逆であるような場合もあるから、データの解釈は慎重に行う必要がある。本書は、そのような見かけの関連性に惑わされずに、どのようにすれば、データーから真実を見抜くことができるかを解説したものである。

 それではどうすれば因果関係があることが分かるのだろうか。本書が教えるのは現実と「反事実」を比較することだという。「反事実」とは、仮にあることをしなかったらどうなっていたかということだ。

 「反事実」と比較するために、まず思いつくのは二つグループの間で行う比較実験だろう。特定の条件のみ変えて、その他の条件は同じになるように選んだ二つのグループの間で結果がどうなるかを調べてみる。しかし実際には実験を行うことが難しいような分野もある。その場合には、「疑似実験」という方法もあるのだ。

 本書はこれらの比較を行う場合の注意事項を解説するのみならず、そこから導かれた驚くべき研究結果も併せて紹介している。

 本書を一読すれば、これまで通説だったものがいかに根拠がない物か分かると同時に、何かのデータの関連性を報道するようなニュースに接した場合でも、それは偶然か、因果関係ではなく単なる相関関係ではないのかなどと懐疑的な目で見ることができるようになるだろう。それが、人の言うことを鵜呑みにせず、自分の頭で考えることの第一歩なのだと思う。
 
 なお本書は、「ダイヤモンド社」さまからのいただきものです。ありがとうございました。


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