風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

2010年08月

太ってたってぼくはぼく4


 韓国人気童話シリーズの第15弾、「太ってたってぼくはぼく」(イ・ミエ/チェ・チョルミン/吉田昌喜:現文メディア)。




 この物語の主人公であるドンピンは、かなり太めの男の子。ドンピンの一家派4人家族なのだが、全員重量級で外を歩いていると、「カバの部隊」と噂されることもあるようだ。彼が困っているのは、母親が、自分に合うサイズがなくて服を買いそびれると、思い出したようにダイエットを始め、家族も巻き込まれることだ。しかし、どうせ長続きはしないので、ドンピンは、いつも面倒くさく思っている。

 彼がいちばん仲の良い友達はスホ。ドンピンと真反対で、ちびっ子だが、正義感が強く、なにかといじめられるドンピンをかばってくれる。ドンピンがいやなやつと思っていたのが、やせっぽちで背の高いソンヒョンという男の子。女の子には人気があるのだが、その分男の子からは無視されている。どこにでも割り込んでくるのが、偉そうな感じで、憎たらしいのだ。しかし、ある日、ドンピンは、家から離れた銭湯でソンヒョンと出会って、自分が誤解をしており、誰だってどこかに悩みを持っていることを知る。

 金子みすずの「わたしと小鳥とすずと」という詩に、「みんなちがって、みんないい。 」という有名な一節があるが、人は誰だって、人と違う強み弱み、得意なこと、悩んでいることなどを持っているものである。みんなと同じでなければいけないというのは、集団主義者の幻想にすぎない。人は、みんなちがっているからこそ面白いのだ。ドンピンは、そのことに気づき、自分の意思でダイエットを成功させ自信をつける。

 「太ってたって、ぼくはぼくだ。太ってたってぼくはぼくだ。それからぼくはもうデブから卒業するぞ。」(p155)

 ドンピンの自信に満ちた叫びは、なんともすがすがしい。

 ところで、この作品中には、いくつか現代韓国の面白い風習などがでてきて興味深い。まず、韓国にはポッキーデーという日本のバレンタインデーのような日があるようだ。女の子が、気になる男の子にポッキーを渡す。なぜポッキーなのかは不明だが、義理チョコならぬ、義理ポッキーもあるようだ(笑)。

 もうひとつ、韓国には、「肥満児手帳」なるものがあるようだ。やせなさいと保健の先生が、ドンピンにくれたのだが、何とも、ストレートなネーミングだ。ドンピンでなくても、もらうのはいやだろうなと思う(笑)。

 なお、この書籍は、「現文メディア」様より献本いただいたものです。お礼申し上げます。

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時空の流離人
(本記事は、「時空の流離人」と共通掲載です。)

闇の妖精王4

 メリッサ・マールによる、現代のアメリカを舞台に繰り広げられる、妖精ファンタジーシリーズの第2弾、「闇の妖精王」(メリッサ・マール/相山夏奏:東京創元社)。


闇の妖精王
  • メリッサ・マール
  • 東京創元社
  • 1029円
Amazonで購入
書評



 表題だけ見ると、つい、世界を滅ぼそうとする闇の支配者が現れて、ヒーローがその野望を阻止するために戦うと言ったようなストーリーを想像してしまうのだが、まったく違う。妖精と人間の娘との奇妙な愛情の絡んだファンタジーである。

 この作品世界では、妖精たちは、いくつかのコート(国のようなもの?)にそれぞれ所属しており、それぞれに王が存在している。前作の「妖精の女王」は、ウインターコートの女王ベイラにより力を封じらていたサマーコートの王キーナンが、自分の力をア取り戻すため、生まれた時からフェアリーを見る力を持っていた人間の少女アッシュリンを、なんとかサマークイーンに仕立てようとする話だった。アッシュリンは、サマークイーンとなった際に、いくつかの問題に対して現代っ子的な解決をもたらしており、物語はハッピーエンド、妖精界にも平穏が訪れたと言う訳だ。

 ところが、ダークコートに属するダークフェアリーたちには、それは不都合なことであった。ダークフェアリーは、他のフェアリーたちの負の感情を糧にしているからだ。ダークキングであるイリアルは、自分たちのコートを再び強くしようと、人間の少女レスリーに目をつける。

 レスリーは、前作でのヒロインアッシュリンの友人である。家庭環境は極めて悪い。失踪中の母、酒と賭博に溺れる父、そして薬物中毒の兄。なんとか自分の人生をリセットしたい彼女は、やり直すきっかけとしてタトゥを入れようとする。ところが、そのタトゥというのが、ダークキングと彼女を結ぶ、闇絆の術(シャドーリンク)であった。イリアルは、レスリーを通じて、人間の負の感情を手に入れようというのである。

 そして、もう一人、今回重要な役割を果たすのが、サマーキングキーナンのアドバイザーであるニール。アッシュリンの意向を受けて、レスリーをフェアリー界に関わらせないようにしようとするのだが、結局はうまくいかない。一番の問題は、彼がレスリーに首ったけということだ。レスリーも彼のことがとても気になっているのだが、彼がフェアリーであることにはもう一つの問題があった。彼はガンコナーというフェアリーで、娘を恋の中毒にさせて死なせてしまうというやっかいな性質をもっているのである。だから、アッシュリンの意向が無くとも、レスリーに思いを伝えることができない。

 ダークキングイリアルも、自分のコートを守るためにレスリーを利用しようとしていたのだが、彼女に愛情を感じている。レスリーの方もニールが気になりながらも、イリアルにも惹かれている。おまけに、イリアルとニールは過去の因縁があるようで、ニールに対して愛情とも言える感情を持っているようである。この三者が繰り広げる奇妙な三角関係が本作品の見どころであろう。

 最後は、三者三様だ。レスリーは、壮絶な体験をしたが、結局はすべてをリセットして、新しい人生を歩み始めることになる。ニールは、少し可哀そうかな。大切なものを守り抜いて、結局は失ったのだ。おまけに、イリアルから大きな責任を押し付けられている。イリアルは、自分のコートやレスリーのために、自ら最善と思う解決を見出した。終わり方は、ちょっとかっこいい。最後にイリアルの台詞を紹介しておこう。

 「ときに愛とは、強く抱きしめておきたいものを手放すことだ。」

 なお、この本は、「本が好き!」さまを通じて献本していただいたものです。お礼申し上げます。


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司書教諭・茉莉の気紛れ書き
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新参者5



「加賀さん、あんた、一体何者なんだ?」
         ・
「何物でもありません。この町では、ただの新参者です」(p348)


 阿部寛が主演していたテレビドラマの記憶も新しい「新参者」(東野圭吾:講談社)。ドラマが面白かったので、原作の方も買ってみた。

 主人公は、日本橋署の赴任してきたばかりの刑事、加賀恭一郎。階級は警部補。周りの評判は、頭は切れるが、ひねくれ者で頑固だということらしい。その彼が、小伝馬町のマンションで発生した女性殺人事件の真相を追い求めていくというのがごくおおまかなストーリーだ。

 名探偵ものといえばそうなのだが、この作品は名探偵ものでも一味違う。加賀は単に事件を追い求めるだけではない。

「事件によって心が傷つけられた人がいるのなら、その人だって被害者だ。そういう被害者を救う手だてを探し出すのも、刑事の役目です」(p220)

 事件の捜査の中で関わった人々。彼らが抱えているちょっとしたトラブルの真相を彼の迷推理で解き明かしてケアしていく。こういった人情味溢れるサブストーリーを積み重ねながら、本筋の事件の真相に迫っていくというのが一番の魅力だろう。特に、ほとんど崩壊していた被害者の家族に、再び再生の糸口をつけたところは感動的だ。ちょっとした、行き違い、思い違いが不幸な結果に結びつくことはよくあるものだ。彼は、そんな絡まった糸を見事に解きほぐしていく。

 ドラマの阿部寛の好演の印象が強かったため、読んでいる最中、頭の中を彼が動き回っていた(笑)。改めてこの原作を読んでみると、まさに彼のハマり役だったことが良く分かる。


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時空の流離人
(本記事は、「時空の流離人」と共通掲載です。)

セクシィ古文3

 高校生や中学生の頃、学校で古文を習っていた時に、どうして同じ日本語ながら、こんなに分かりにくいんだろうと、苦手意識を感じた方も多かったのではないだろうか。この苦手意識を払しょくするには、本能に訴えるのが一番とばかり、エロで古文を理解しようというのが、「セクシィ古文」(田中貴子/田中圭一:メディアファクトリー)だ。




 古代の人は、暇を持て余していたのだろう。今のように趣味となるようなものの種類も少なかったので、本能的な娯楽が生活に占める割合は、今より大きかったことは想像に難くない。古文は、当然ながら、当時の生活を反映しているので、その本質はエロといっても過言ではないだろう。だから、エロ的な描写がそこかしこに出てくるのである。この本は、そこに注目して、古文とは、決して荘厳で堅苦しいものではなく、エロチックで楽しいものだということを、色々な作品を例にとって説明している。取り上げられているのは、古事記から今昔物語、源氏物語など、誰もが知っているものが多い。

 この本の前書きには、「断言しよう。この本を教科書にすれば、高校生の古文読解能力が飛躍的に伸びることは確実だ」と書かれている。しかし、昔のように、中学生が、国語辞典から卑猥な単語を探して喜んでいたような時代ならともかく、今時の高校生が、古文を読んでそのエロさに感激するなんてことは考えにくい。解説も、エロという分野を中心に行われているので、この本を読んでも、決して受験では役立たないことは断言できる(笑)。ただ、古文に対しての敷居を低くするのには有効だと思う。 


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時空の流離人
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テレビ画面の独り言・・・
ぱらぱらあんてな

仕掛人藤枝梅安 14

 「必殺仕事人」を初めとする「必殺シリーズ」の中村主水がはまり役だった藤田まことが亡くなったのは記憶にまだ新しいが、このシリーズの原点といえるのが「必殺仕掛人」だ。放映は、1972年から73年にかけてである。、原作は、池波正太郎による『仕掛人・藤枝梅安』シリーズ。「仕掛人藤枝梅安 1」(リイド社)は、これをさいとう・たかおが劇画化したものである。


仕掛人藤枝梅安 1
  • さいとうたかを
  • リイド社
  • 550円
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書評



 主人公藤枝梅安は、腕の良い針医だ。しかし、それは表の顔で、裏では、針を武器に、金を得て悪人たちを葬る腕利きの仕掛人である。そして、梅安の相棒を務める仕掛人仲間が彦次郎という男だ。こちらは、吹き矢を使う。腕はいいようだが、梅安に比べてなんともキャラ設定が地味である。普通なら、通行人A位の役しかもらえないだろう(笑)。

 仕掛人たちが葬るのは、人から恨みを買うような悪人なのだが、この作品、単に勧善懲悪というだけのものではない。二人とも、過去の体験から、心に屈託を抱えているようであり、今回の仕掛は、過去の因縁との戦いといった意味合いも強い。そんな仕掛人達の心理もうまく描かれている。

 なお、この本は、「本が好き!」さまを通じて献本していただいたものです。お礼申し上げます。


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時空の流離人

 

絶滅した奇妙な動物 23

 長い地球の歴史の中で、様々な生物が進化し、滅んで行った。進化の過程の中では、かなり奇妙な生物も登場してくる。「絶滅した奇妙な動物 2」(川崎悟司:ブックマン社)では、生物の中でも動物に焦点を当て、今では化石でしか見ることができない、絶滅した奇妙な動物たちを紹介している。




 この本で紹介されている動物たちは、確かになかなか変わった姿をしているものが多い。進化の過程の中で発揮された、生物の多様性の面白さには心ひかれる思いだ。ただ、これらの生物たちが、現在生存している生物たちと比較して、ずっと変だと言うことはないだろう。例えば、この本の末尾に掲載されている広告に出てくる「深海魚」などは、「変さ」加減でこれらの動物に引けはとっていないし、「へんないきもの」(早川 いくを:バジリコ)といった本に紹介されている、現存する「変な」動物たちも、決して絶滅種には劣っていないだろう。

 おそらく、どちらの「変さ」も、環境に適応してきた結果なのだ。だから、昔の動物の「変さ」と今の動物の「変さ」は違うのだろう。 どの「変さ」がどのような環境に適応するのに有利なのかは、なかなか興味深い話題である。できれば、この辺りをもっと深掘りして欲しかったのだが。 

 なお、この本は、「本が好き!」さまを通じて献本していただいたものです。お礼申し上げます。


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時空の流離人

 

日本妖怪散歩3

 今、妖怪と言えば何と言っても水木しげるだろう。しかし、妖怪話は、水木しげる以前から、日本各地に存在していたのもまた事実である。例えば、柳田國男が1910年(明治43)に発表した「遠野物語」だ。「遠野物語」は、岩手県遠野地方に伝わる不思議な話を集めたものだが、同様の話は日本各地にあったに違いない。そんな日本各地に伝わる妖怪話を集めたのが、「日本妖怪散歩」(村上健司:角川書店)である。帯に「祝!遠野物語 刊行100周年」と書いてあるように、2010年は、遠野物語が刊行されて100年目に当たる。まさに、ベストタイミングで発行されたと言えるだろう。




 こうしてみると、日本各地へ、色々な伝説が残っており、昔の人の想像力がいかに豊かだったかが分かるだろう。日本の妖怪は、西洋のドラキュラや狼男などと比べて、どこか愛嬌があるように思う。もっとも、これは、水木しげるの描く妖怪の影響もだいぶあるとは思うのだが。

 また、身近なところにも、思いもかけないような妖怪話が伝わっていたことにも驚く。この本を片手に、身近なところから、妖怪を訪ねる旅をしてみるのも楽しいのではないだろうか。


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時空の流離人
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H23.3.16:読売新聞朝刊“読者のホンネ”に「カラスと髑髏―世界史の「闇」のとびらを開く」の100字書評掲載

H25.10.26発売の図書新聞(3132号、2013年11月2日号)に「泥棒は几帳面であるべし」の書評掲載

H26.6,28発売の図書新聞(3165号、2014年7月5日号)に、「市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影」の書評掲載

H28.8頃より「シミルボン」への投稿開始

H29.7.4「彗星パンスペルミア」の書評が「新刊JP]に掲載

H29.10.19「ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者」の書評が「新刊JP」に掲載

H29.11.24「ペンギン・ハイウエィ」の書評が「新刊JP」に掲載

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H30.7.20.「極道ピンポン」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.26.「シミルボン」にインタビュー記事掲載

2019.2.23.「本が好き!」×「書店フェア」で「あなたの街で本と出会う Vol.2」に「こころを彩る徒然草」のレビュー掲載

2019.04.28.【本が好き!×カドブン】コラボレビュー!第4回『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』掲載
本が好き!免許皆伝レビュアー風竜胆
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