風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

2013年06月

怖いこわい京都4




 生粋の京都人である入江敦彦氏による怖〜い京都を案内するエッセイ集「怖いこわい京都」(新潮文庫)。

 京都は一見華やかに見えても魔界都市だ。「鳴くよ(794)ウグイス平安京」のごろ合わせは有名だが、794年に遷都されて以来、京都には、どろどろとした澱(おり)のようなものが積もりに積もっているのである。なにしろ、京都への遷都だって、桓武天皇が、早良親王(崇道天皇)の怨霊に怯えてのことだと言う説もあるくらいなのだから。京都には怖〜い場所がいっぱいだ。怨霊についても、六所御霊だとか、八所御霊だとか、祀られている神社は多い。

 血天井というものもある。関ヶ原の戦いで数百名が切腹した伏見城の廊下の板を、寺の天井に使用しているのだ。現在は観光材料のひとつになっているが、これも、考えてみるとかなり怖い。

 貴船神社は昔から丑の刻参りで有名だが、これが今でも行われているようだ。本来は五寸釘を使うのが作法だが、日本文化に対する教養がなくなって来たのか、最近は5cmの釘が使われているらしい。怖いけど、どこか滑稽でもある。

 神社に奉納される絵馬だって、よく見れば時にぞっとすることが書かれている。著者は、絵馬を見るのが好きなようだが、神社参拝で怖い思いをしたくなければ、他人の奉納した絵馬なんて見ない方が良いだろう。

 これらはほんの一例だ、京都には、怖〜い場所が数え切れないくらいある。これらの怖さを引き立たせる怖〜い伝説にも事欠かない。

 しかし、怖〜いのはそんな恐怖スポットだけではない。人間だって怖いのだ。京都人の特徴を表す言葉に「イケズ」(いじわる、いやがらせ)というのがあるが、彼らはこれを刺激的な娯楽にしているという。

 京都には、大学の学部と大学院の修士課程の計6年間住んでいたが、こんなに怖いところだとは知らなかった(笑)。実は私の大学は、当時、大阪人や名古屋人はやたら多かったが、京都人は少なかった。15の春は泣かせないという府の政策のおかげで、18の春に泣くものが多かったということらしい。そのため、京都に住みながら、京都人以外との付き合いが多く、本当の京都を体験できていなかったのかもしれない。宝くじが当たれば(当たらないけどw)、春秋は京都で過ごしたいと常々思っていたが、本書を読んで、少し考えが変わってしまった。

 苦笑したのは、「秋吉台の蛇女」の話。著者が子供の頃に、今宮神社の御旅(お祭り)の見世物小屋で見たそうだがこれがなかなかすさまじい。秋吉台に捨てられて、蛇を食べて生き延びていたという触れ込みで、蛇女なるものが、青大将の頭を咬み切ったり、血を飲んだりするのである。いや、秋吉台は私の地元だけど、いくらなんでもこんな人いませんって(苦笑)。



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ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~4




 北鎌倉にある古書店、「ビビリア古書堂」の女店主・篠川栞子は、人とのコミュニケーションが苦手なくせに、本の話になると人が変わったように饒舌になる。そんな栞子が、店員で本が読めない体質の五浦大輔と、本にまつわるミステリーを解決するという「ビブリア古書堂の事件手帳」(三上延:メディアワークス文庫)の第3弾「栞子さんと消えない絆」

 今回収録されているのは、3つの本を「探索」する物語。市場でヒトリ書房の落札した「たんぽぽ娘」が無くなり、その疑いが栞子に向けられる話。ある事件から交流がはじまった坂口しのぶから依頼された、タヌキとかワニとか犬とかが出てくる絵本見たいな本を探すと言う話。そして、栞子の母親の同級生という玉岡聡子から、兄夫婦が盗んだに違いない宮沢賢治の「春と修羅」を取り返して欲しいと依頼される話だ。

 この作品が面白いのは、描かれているのが、単なる本の探索というだけではなく、そこに様々な人間ドラマを絡めていて、奥深い物語となっているところだ。それに加えて、本に関する色々な知識が付くと言うのも良い。


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新鉄子の旅55




 描き手が、菊池直恵からほあしかのこに変わった「新鉄子の旅」(小学館)も、これでもうもう5巻目。下手だけど、味のある絵柄にも慣れてきたと思ったら、もう最終巻となった。

 今回収録されているは、以下の7旅。

・第28旅 留萌本線駅巡り
・第29旅 横見さんと北海道
・第30旅 水路から鉄道を見てみよう(前編)
・第31旅 水路から鉄道を見てみよう(後編)
・第32旅 東京・駅前ピクニック
・第33旅 初急襲・阿蘇三昧!
・最終旅  熊本、長崎、そして終着!?

 お馴染み、横見さんの案内で、北海道では、古き良き鉄道時代を偲んで、ノスタルジーに浸り、トロッコ列車に乗って、子供のようにはしゃぐ。東京では、水路をボートで巡って、鉄道を眺めるという企画だった。でも、横見さんは、鉄道を見ていると乗りたくなって、ストレスが溜まったらしい。そして、次の旅では、水路巡りに対抗して、鉄道で楽しむ水辺巡りを企画。なかなかの、負けず嫌いである。また、九州では、南阿蘇鉄道で阿蘇山を楽しみ、島原鉄道で有明海の風景に感動する。

 相変わらず、横見さんは、「変な人」ぶりを遺憾なく発揮している。ほあしさんは、そんな横見さんのことを、どんな人なのか、「一生わからん、!」と、とうとう悟りを開いてしまった(笑)。

 菊池版から続いた、楽しい鉄子の旅もこれでおしまいとなると寂しいものだ。また、いつか、何らかの形で続きを読みたいものである。


○関連過去記事
新鉄子の旅4

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薬師寺涼子の怪奇事件簿 4,5 巴里・妖都変4





 田中芳樹の小説を原作として、垣野内成美がコミカライズを担当した、「薬師寺涼子の怪奇事件簿」(講談社)。副題は、「巴里・妖都変」だ。

 主人公は、警視庁刑事部の参事官でキャリア警視の薬師寺涼子。大金持ちの後継ぎ娘で、絶世の美女だが、高ビーで危険な性格は、美女が大好物のはずのドラキュラもよけて通る言われるほど。ついた二つ名が「ドラよけお涼」である。野望は世界征服。そしてなぜか、怪奇事件専門。

 今回の舞台は、花の都巴里。参事官付の警部補で、下僕兼お世話係の泉田と共に訪れたかの地で、涼子たちは、いきなり奇妙な生物が人を襲うという事件に出くわす。日系マンモス企業アルゴのヨーロッパ総支配人である、妖艶な美女の奈澄、霊能力者だという謎の老婆、そして涼子たちを襲ってくる男たち。巴里の空の下では、世界を揺るがすような陰謀が進んでいた。

 この話から、涼子の頼りになるスタッフが登場する。普段は涼子が巴里に所有するアパルトメントのメイド。お人形のように可愛い、マリアンヌとリュシエンヌの二人だ。しかし彼女たちは驚くべき戦闘のプロでもある。

 高ビーな涼子だが、泉田には時折甘えた顔を見せる。もうツンデレぶり丸出しで、そこがとっても可愛らしいのだが、にぶちんの泉田は、涼子に振り回されているとしか感じていない。しかし、生真面目な彼は、上司である涼子をきっちりとサポートしている。二人のそんな関係が何とも楽しい。







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ガリレオXX 内海薫最後の事件 愚弄ぶ4

 22日の土曜日にフジテレビ系の土曜プレミアムで放映していた「ガリレオXX 内海薫最後の事件 愚弄ぶ」。今回は湯川の登場はほんの少し。タイトルの通り、内海薫が主役を演じるスピンオフドラマだからだ。

 時間設定は、内海がオクラホマに研修にいく寸前。彼女は、アラサー世代となった彼女は、警察という男社会の中での自分の生き方に悩んでいた。そんな折、亡くなった老婆を車いすに乗せて歩いていた男を確保した。その男、上念研一は、老婆の娘を殺害した容疑で、長野県警から指名手配を受けていた。内海の取り調べで犯行を自供した上念だが、長野県警へ移送後、自供を完全に覆す。

 長野県警のオタク刑事である当摩と組んで、事件の真相を探る内海だが、そこには過去の不当逮捕事件やそれを追っていた新聞記者の謎の自殺に関する因縁があった。そして、警察内部に潜む大きな闇が、内海たちに立ちふさがる。

 内海が停まるところがなくてしかたなくラブホに泊ったり、オタク刑事の机の上にフィギアなどのグッズが置いてあったりと、小ネタにも凝っていて、結構笑える部分がある。内海の言動に、大分湯川が乗り移っているようなところも面白かった。

 ただ、このドラマ設定が少しヘンなんところがある。岸谷刑事はキャリア組という設定だったから、本来は警部補ではなく警部になっているはずだ。今回出て来た、所轄の女署長もキャリア組という設定だったから、あの年齢なら所轄の署長よりはもっと上にいるはずだと思うのだが。草薙刑事も湯川と同じ大学なら、通常はキャリア組として入るはずだが、地方採用で一警察官として入ったのだろうか。また、長野県警の闇に対しては、警視庁が介入して締めくくっているが、警視庁は東京都の警察組織なので、そこまでの権限はないだろう。警察庁が出てくるのなら分かるが。等々、考えてみると、いろいろな疑問が湧いて来る。それでもガリレオシリーズが面白いのは、警察ドラマではなく、本来は、湯川が物理学の知識で謎を解き明かすという科学ミステリーだからだろう。今回は、それがないので、少しヘンなところが目立ってしまう。

 本編のドラマも終わってしまうし、次は、彼女がオクラホマで怪異な事件を解決するというようなスピンオフドラマをつくって欲しいものである。もちろん、湯川とはネットで連絡を取りながら協力してもらうという設定で。


(出演)
・柴咲コウ(内海薫)
・ユースケ・サンタマリア(上念研一)
・柳楽優弥(当摩健斗)
・福山雅治(湯川学)
・吉高由里子(岸谷美砂)
・北村一輝(草薙俊平)
・渡辺いっけい(栗林宏美) ほか

・ガリレオシリーズの原点:探偵ガリレオ




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なまづま3




 なんだか不気味な感じの表紙イラストに思わず顔を背けてしまいそうになる「なまづま」(堀井拓馬:角川ホラー文庫)。角川ホラー文庫から出ているから、てっきり怖い話だろうと思っていたが、読んでみると怖いと言うより気色悪いということが先に来るような話だ。その気色悪さが半端ではない。世の中にはゴキブリを気色悪いと言う人が多いが、あれが1000匹位まとまった気色悪さだと言えば良いだろうか。もちろん、この種の本なので、気色悪さは一種の褒め言葉ではあるのだが。

 この作品世界では、ヌメリヒトモドキという不気味な生物で溢れている。青白い粘膜の塊で、生臭い粘液に覆われており、おまけに物凄く生臭い。個々のヌメリヒトモドキは、世界のあちらこちらにいる巨大な女王よばれる存在と融合を繰り返すことで、少しづつ進化していくのだが、特定の人間の髪の毛や爪などを食べているとだんだんとその人間に似てくるという性質がある。驚くべきことに、形態だけでなく、記憶や考え方までもそっくりになり、言葉もちゃんと喋れるようになってくるのだ。しかし、いくら人間そっくりになろうが、基本は粘膜の塊。粘液でどろどろの上に物凄く臭う。なまじっか人間そっくりになっているだけに、なんとも気色が悪い。

 主人公は、このヌメリヒトモドキを研究する会社に勤務する研究員。死に分かれた妻恋しさのあまり、ヌメリヒトモドキを使って、妻を蘇らそうとする。どんどんと妻に似てくるヌメリヒトモドキ。でも、どんなに妻に似てきても、やっぱり粘膜の塊。臭いし気色悪いことに変わりは無い、それなのに、主人公はどんどんそのヌメリヒトモドキにのめりこんでいく。しかし、主人公の目的は、いつしか完全な妻を取り戻すことではなく、妻の面影を宿した自分に依存する愚かなヌメリヒトモドキと暮らすことに変わってしまっていた。そして、ヌメリヒトモドキが更に進化して妻そのものの精神を宿したとき、破局が訪れる。

 彼は、禁断の所業を行ってでも蘇らせたいほど妻を愛していたその反面では妻の持つ暗い部分に恐怖していたのだ。つまり、この作品は、ホラーと言う舞台を使って、男女の愛憎の不条理さといったものをよく描いたのではなかろうか。本作は、第18回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作であり、十分にその賞に値する作品だと思う。でも、やっぱり気色悪い・・・(笑)。


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姉飼3




 遠藤徹の描き出す悪夢のような世界、「姉飼」(角川ホラー文庫)。表題作を含めた4つの作品から構成されている短編集だ。

 表題作になっている「姉飼」は、第10回日本ホラー大賞の受賞作である。これがフランス書院当たりから出ていれば、このタイトルに淫靡なイメージを感じてしまう人も多いだろうが、残念ながらこれは角川ホラー文庫。俗に、エロ、グロ、ナンセンスとひとまとめに言うが、エロはあまり感じられず、ほとんどがグロとナンセンスで構成されたような作品だ。もっとも、一部の特殊なマニアの人なら、ここにエロを見出すかもしれないのだが。

 「姉」とは、血を分けた姉のことでも、隣の美人のお姉さんのことでもない。だから、姉萌えの弟が、姉さんに不埒なことをすると言うような話を期待してはいけない。この作品では「串もの」とも呼ばれる「姉」は、見た目は人間の女そっくりなのだが、体を太い串で貫かれて、ぎゃあぎゃあ泣きわめきながら祭りの出店に並べられているというようなものだ。想像しただけで異様な光景だろう。「姉」は、かなりの凶暴さで、うっかり近付くと、肉を咬みちぎられてしまいかねない。

 この作品世界では、「姉」に魅了されて、所有したがる人間がいる。所有してどうするのか。おぞましいことに、ひたすら責めて楽しむのである。主人公も、子供の頃祭りで見た「姉」に魅せられてしまうのだが、成人して「姉」を手に入れる時に用意したものが、鞭、杖、スタンガン、剃刀、釘、錐、ダーツといった小道具である。この品ぞろえで、もう何をしようとしているのかが分かってしまう。ところが、「姉」の寿命は長くない。一度「姉」を手に入れた者は、その喜びが忘れられずに、次々と新しい「姉」を求めて、身代を潰し、破滅してしまうのである。

 こんなストーリーは、ナンセンス意外の何物でもない。しかし、人間と言うものは、時によっては悪魔のように残虐な存在になってしまうことは、歴史が証明している。かなりカリカチュアライズされた世界ながら、この作品は人間が奥底に秘めた残虐性を描き出しているようにも思える。

 この他、「キューブ・ガール」、「ジャングル・ジム」、「妹の島」を収録。いずれも、一筋縄ではいかないような一種独特の雰囲気を持った作品だ。それにしても、「姉」で始まって、「妹」で終わるのは、何か意図があってのことなのだろうか。


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H25.10.26発売の図書新聞(3132号、2013年11月2日号)に「泥棒は几帳面であるべし」の書評掲載

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H30.7.26.「シミルボン」にインタビュー記事掲載

2019.2.23.「本が好き!」×「書店フェア」で「あなたの街で本と出会う Vol.2」に「こころを彩る徒然草」のレビュー掲載

2019.04.28.【本が好き!×カドブン】コラボレビュー!第4回『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』の書評が掲載

2020.01.24.「貧乏大名“やりくり”物語 たった五千石! 名門・喜連川藩の奮闘」が「新刊JP」に掲載

2020.02.04.『どんなことからも立ち直れる人』の書評が「新刊JP」に掲載
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