風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

2014年05月

怪談和尚の京都怪奇譚3




 お寺の和尚さんの語る怪談話、「怪談和尚の京都怪奇譚」(三木大雲:文春文庫)。著者は、京都の日蓮宗宗光照山蓮久寺の住職で、関西テレビの「怪談グランプリ」準優勝者だという。どうして、和尚さんが怪談話をと不思議に思われるかも知れないが、これには理由がある。寺の次男に生まれた著者は、大学を出ても継ぐ寺がない。そこで夜の公園で、若者たちに仏教の布教活動をしたという。しかし若者たちに最初から仏教の話をしても、聴いてくれる訳がない。そこで、方便として怪談話から始めのがきっかけらしい。

 なにしろ、1200年以上のの歴史を持つ魔界都市京都だ。こんな怪談話に溢れていても不思議ではない。著者は、いわゆる見える人のようでもあり、お祓いもやっているということなので、ますますこんな話が集まってくるのだろう。

 ただ収録された話は、ゾクリとするようなものもあるのだが、夜トイレに行けなくなるほど震えあがるような恐い話はない。いや、もしかするとあったのかも知れないが、なにしろ話の数が多いので、読み終わった時には、色々とごっちゃになって、なにがなんだか・・・。

 特徴的なのは、怪談にも関わらず、しんみりとした話が多いこと。そのままお説教としても使えそうなのは、著者の職業柄か。

 残念なことに、これは京都ならではといった感じはあまりないのであるが、和尚さんの語る一味違う怪談話、一度お試ししてみるのもいいだろう。

 ところで、何ともインパクトのあるこの表紙。著者ご本人なのだろうか。「いや、アナタが一番怖いんですけど」とつい思ってしまった。

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金曜のバカ4






 「陽だまりの彼女」、「いとみち」などの作品で知られる越谷オサムの、「金曜のバカ」(角川文庫)。標題作をはじめ、5本の作品を納めた短編集である。

 標題作の「金曜のバカ」は、女子高生とストーカー男との、ちょっと変な交流の話だ。

 主人公のカナは、たまたま彼女のパンツを見たことから、変な妄想を起こしストーカーになってしまった青年を、得意の護身術で投げ飛ばしてしまったことで、金曜日毎にその男と闘うことになる。
 ストーカー男が護身術破りを研究してくれば、カナは、その上をいく、護身術破り破りで応戦すると言った具合で、もっか4連勝。まるでジョーと力石が、クロスカウンター、ダブルクロス、トリプルクロスとやった、あの名場面を彷彿させるではないか。ところが、カナが期末試験にはいるというので、最後の対決となった5戦目で、ちょっとしたハプニングが。
 カナとストーカー男が闘いを通じて、なんとなく心が通っていくようになっていくのが面白い。しかし、しょせんは、女子高生と変質者。普通の友達になるのは無理。でも、ストーカー男は、カナによって、人生を踏み外すところを救われたのだ。この物語は、一種の救済の物語として読めるだろう。

 その他を作品をごく簡単に紹介しよう。

 獅子座流星群の降る夜に起こった、不思議だけど、ちょっと暖かい天文少女との出会いを描いた、「星とミルクティー」

 彼女と二人で東京旅行。童貞を捨てられると、期待満々だった松山の高一男子が、ドタキャンされてしまうという、「この町」

 恐竜オタクの男の子が彼女と恐竜博でデート。オタクだと分かると彼女に引かれると思って、必死で隠していたが、実は彼女にもオタクな趣味がという、「僕の愉しみ 彼女のたしなみ」

 才能の限界を感じて、部活を辞めた女子高生ナナ。彼女を部に戻そうとする後輩の男子高生荻野、彼を好きな女子高生キミ。浜辺での出来事をナナと飼い犬のゴンの両方の視点から描く、「ゴンとナナ」

 様々な角度から青春の一コマを描いた作品群は、微笑ましくありながらも哀愁を感じさせる。


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耳袋秘帖 妖談しにん橋4




 とっくに還暦を過ぎているのに、頭の冴えは天下一品。力丸姐さんという若くて美しい恋人もいる。熟年世代の希望の星、我らがスーパー爺さん、元祖刺青奉行の、南町奉行根岸肥前守鎮衛さまが、怪奇な事件に挑むという「耳袋秘帖」シリーズのうち、「妖談しにん橋」

 今回根岸さまが挑む事件は、「しにん橋」と呼ばれる、不気味な橋にまつわるもの。その橋を4人で歩くと、誰か一人の影が消えて、その者に死が訪れるというのだ。既に2人の人間が死んでおり、3人目は、あまり素行の良くない旗本の4男坊だった。

 この事件を軸に、黒猫が白猫になってしまった話や、崖崩れで謎の神さまが出て来た話などの小ネタを組み合わせて、物語は進んでいく。ただ、この作品、出てくる小ネタはあくまで話に色を添えるための小ネタであり、これらが最終的に収束して、大きな謎が解明されるといったようなことはない。

 また、「しにん橋」の種明かしにも少し疑問が残る。今のように指向性が強く明るい光源のある時代ならともかく、この時代にこんなことで、影が消える現象が起きるというのは考えにくいのではないだろうか。

 それでもこの作品が面白いのは、根岸肥前守のキャラが、並はずれて魅力的だからだろう。冒頭に書いたスーパー爺さんぶりだけではなく、下世話にも通じて、なかなか融通もきく。若い頃にはいっぱしのワルだったようで、思いがけないところに昔の仲間がいたりするのだ。歳を取るほどますます元気。こんな根岸さまにあやかりたいものである。


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春にはすべての謎が解ける5




 わずか11歳の名探偵が大活躍する「少女探偵フレーヴィア・ド・ルース」シリーズの第5弾、「春にはすべての謎が解ける」(アラン・ブラッドリー/古賀弥生(訳):東京創元社」)。

 今回の事件は、教会で聖人の墓の発掘中に、行方不明のオルガン奏者の死体が見つかったことから始まる。もちろん、好奇心いっぱいの我らがフレーヴィアは、こんな事件を放っておくはずがない。事件の真相を求めて、まさに八面六臂の大活躍を見せるのである。

 思うに、この作品は、徹底的に、主人公の魅力で読ませるミステリーだろう。主人公のフレーヴィアは、化学オタクで、一番興味を持っているのが、なんと「毒物」。時折、ちょっとアブナイことを妄想する。化学分析などお手の物で、今で言う「リケジョ」の元祖のような少女である。

 しかし、化学が大好きだからといって、いつも実験室に閉じこもっているというような性格ではない。事件現場だろうが、墓場だろうが、愛車グラディス(自転車)で駆け巡り、事件の手がかりを探すという超ポジティヴな面も併せ持っている。そのため、時にピンチに陥るのだが、結局は、その行動力と、化学知識により、事件を見事に解決に導いていくのだ。

 そんなフレーヴィアがなんとも可愛らしくって、愛おしくって、もうハラハラ、ドキドキ。読者の年代によっては、フレーヴィアが孫のように見えたり、娘のように見えたり、妹のように見えたりするだろう。もう彼女が心配で、目が離せなくなってしまう。

 ところで、この巻では、ストーリーが大きな転機を迎えているようだ。一番上の姉のフィーリーには、結婚話が出ており、教会の正式なオルガン奏者にも選ばれた。その一方、ルース家の財政がいよいよ行き詰って、なんと一家の住むバックショー荘が売りに出されてしまう。もし買い手が現れたら、一家は宿なしになってしまうのだ。ルース家最大のピンチである。さすがに、天才少女フレーヴィアでも、こういった大人の事情については、どうしようもないようだ。いったいルース家はどうなってしまうのか。そして、最後に明かされる、驚愕の事実。これは次巻が発売されるのが待ちきれない。

 なお本書は、「本が好き!」さまを通じて献本いただいたものです。お礼申し上げます。


○関連過去記事
人形遣いと絞首台


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江戸のエロスは血の香り4






 明治の俳人、荻原井泉水の学生時代の日記は、一人エッチと男色の妄想に溢れていたらしい。しかしこれは彼がヘンな人という訳ではなく、当時の高校、中学では一般に見られた傾向のようだ。男色は、戦国の遺風で男らしいと思う人間も多かった。BL小説も読まれていた。しかし、今のように腐女子の読みものではなく、青年たちの読み物だった。どうも維新の勝者である薩摩から伝わった風潮らしいが、元来花のお江戸にはそんな素養があったようだ。

 なにしろ、江戸時代のお江戸では、衆道は文化だったのだ。男同士の三角関係もめずらしくなかったという。これが刀を持った武士たちのことだから、なんとも始末が悪い。恋の鞘当てが、そのまま、殺しあいになってしまうこともある。また、殿様のお気に入りの小姓に手を出したりしたら、切腹ものだった。当時は、オカマ掘るのも命懸けだったのである。

 女達だって負けてはいない。腰に大小着けて、江戸の町を闊歩していた女傑もいたのだ。BL好きの腐女子も、男色とは無縁の男の娘もいたというから、現代サブカルの元は、既に江戸時代には揃っていたことになる。

 ところで、本書は、こんな話が続く前半が圧倒的に面白い。これが、後半になると、変わった話ではあるのだが、基本は、男と女の話になってしまい、最初のあの勢いが落ちてしまうのは、何とも残念。最初の勢いで最後まで飛ばしたら、稀代の「ヘンな本」になっていたであろうに。それにしても、花のお江戸は、ヘンな話には事欠かない、すばらしいワンダーランドだったようだ。


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大江戸寺社繁昌記4




 江戸の庶民が、いかに現世利益を神仏に求めていたかは、「江戸のはやり神」(宮田登:筑摩書房)などに詳しいが、本書、「大江戸寺社繁昌記」(鈴木一夫:中公文庫)」は、江戸時代のそんな風潮の中で、特に目立った信仰風景を展開していた15の寺社を紹介したものである。

 とにかく江戸の庶民の御利益を求めるパワーというのはすごかったらしい。霊験があれば、例え、大名家の藩邸に祀られている神さまだって群がってくるのだ。大名家の方も、そんな庶民の信仰を利用して、自分の領地で信仰されている神様を江戸屋敷に分社し、ちゃっかりと賽銭集めをしていたというから面白い。

 例えば、久留米藩有田氏は、久留米城下から、水天宮を分霊し、江戸藩邸に祀った。久留米藩の屋敷神にすぎなかった水天宮が、なぜか江戸庶民の人気を呼び、藩邸でも、毎月日を決めて参拝を許した。もちろん、目当ては賽銭である。これが、多い年で1700両にも達したというから、賽銭といってもばかにできない。

 また、讃岐の高松松平氏、多度津京極氏、丸亀京極氏は、それぞれ金比羅さんを、屋敷神として祀っていた。丸亀藩では、やはり日を決めて庶民の参拝を許したという。もちろんしっかりと賽銭箱は置かれていたようだ。

 自分の領地に、有名な寺社がなくとも、なんとかこの流れに乗ろうと、上総久留里藩では、地中から出てきたという怪しげな不動尊を売り出そうとして、幕府から罰せられたという事件もあったというから、江戸庶民の屋敷神フィーバーがいかに凄かったかが分かるというものだ。

 この他、銭形平次で有名な神田明神、庶民に親しまれた浅草の浅草寺など、繁盛していた寺社の様子が紹介される。後利益の有るものには、なんでも飛び付こうとする江戸庶民のパワー。その一方で、それを煽って、ちゃっかりと利益を得ようとする者たち。そんな人々で成り立っている花のお江戸は、やっぱり面白い。

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人造人間キカイダー4




 石ノ森章太郎のキカイダーを、万能鑑定士Qの、松岡圭祐が小説化した、「人造人間キカイダー」。もう懐かしさに涙が出そうだ。もちろん、本作には、あのハカイダーも、強敵として登場する。

 キカイダーの生みの親は、ロボット工学の天才光明寺信彦博士だ。博士とMITで同期だったプレジデント・ギルことアレクサンドル・ポマレンコの創立したダーク・マジェスティック・エンジニアリング。その内実は、兵器用ロボットの開発・量産を図る死の商人だった。博士は、そこに監禁されてロボット開発をさせられていたのである。

 ダークの魔手が光明寺博士の子供たちに迫る時、さっそうと現れる、ギターを抱えた好青年。ジローこと、我らがヒーロー・キカイダーである。博士は、ギルに隠れて、彼らと戦うためのアンドロイドを作っていたのだ。

 ストーリーは、修復不能と思われるくらいに敵にやられても、復活するなど、ご都合主義的なところも見られたが、なかなか面白かった。しかし、読んでいくと、結構ツッコミどころが目立つ。キカイダーの頭の上部半分が透明になっているのは、プロトタイプの設計が、太陽電池パネルで動くようになっていたからだという。設計が変わったのは、夜は使えないからというかららしいが(最初から分かっているやん!)、昼間でも、頭に載せた太陽電池くらいじゃ、絶対に動かないと思う。

 この作品に登場するアンドロイドたちの特徴として、緊張を感じることができるというのがある。緊張は、内蔵されたワイヤーの張力の大小で測れるようになっているらしいが、そんなもの必要か?

 ダークの最下層のアンドロイドの武器は、なんと槍だ。高度なロボット兵器が作れるハイテク産業なんだから、もっといいものを持たせてやれよと思ってしまうのだが。面白いのは、作中に、彼らの愚痴のようなものが書かれていることだ。

 ジローがキカイダーに変身できる秘密も明らかになっていた。ロボットが本来の姿で、普段は液晶パネルなどを使って化けているらしい。しかし、理屈を付け過ぎて、却って嘘くさい(笑)。

 まあ、でも、こう言った作品は、あまり突っ込まずに、ただ単純に楽しむというのが本来の読み方なんだろう。


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H30.7.26.「シミルボン」にインタビュー記事掲載

2019.2.23.「本が好き!」×「書店フェア」で「あなたの街で本と出会う Vol.2」に「こころを彩る徒然草」のレビュー掲載

2019.04.28.【本が好き!×カドブン】コラボレビュー!第4回『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』の書評が掲載

2020.01.24.「貧乏大名“やりくり”物語 たった五千石! 名門・喜連川藩の奮闘」が「新刊JP」に掲載

2020.02.04.『どんなことからも立ち直れる人』の書評が「新刊JP」に掲載
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