風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

2015年01月

戦海のテティス5



 かって、私が「楽天ブログ」でブログを始めたころに知り合った、漫画家のかたやままことさんの絵による「戦海のテティス」(原作 中里融司:白泉社)。太平洋戦争中期を舞台にした戦記漫画である。かたやまさんは、ヤングアニマルなどの誌上で活躍されている方である。

 この作品の主人公は、米軍から「稲妻アサヒ」と呼ばれて恐れられた日本海軍の軽巡洋艦「三瀬」。正確に言えば軽巡「三瀬」の守り神で美少女の巫女さん姿をした船魂の「三瀬」である。実は、「三瀬」は元は人間であったが、軽巡を一人で動かす「船魂計画」の失敗により命を落とし、その魂が元々あった船魂と合体して現在のような姿になったのだ。その姿は、乗組員にはっきりと見え、会話も普通にできるのである。「三瀬」は、戦いを嫌っているが、自分の乗組員が傷つかないように、力を尽くしている。その姿が、なんとも可憐で可愛らしい。

 かたやまさんの絵は、軍艦や戦闘機の描写がすばらしく、軍艦ファンや戦闘機ファンの方にとっても、描かれている戦闘シーンの迫力は、十分に満足がいくものであろう。おまけに美少女の巫女さんまででてくるのだから、もう言うことはないものと思う。(笑)船魂が主人公なのは、現在人気の「艦これ」の先駆とも言えるかもしれない。

 ちなみに、かたやまさんは、ブラジョンさんのHNでブログを運用されているが、こちらも、時によきパパぶりが垣間見れたりして、なかなか楽しい。

※本記事は、2009.02.18付で「時空の流離人」に掲載した記事に加除修正を加えたものです。


凍える街3




 病気の野良犬が、縄張り内にある地下室でご馳走を見つけて貪る。なんとそれは4体もの人間の死体だった。こんなショッキングな出だしで始まる、アンネ・ホルトのノルウェー警察小説、「凍える街」(枇谷令子訳:創元推理文庫)。殺されていたのは、海運会社の社長夫妻とその長男、そして彼らとの関係が不明な出版コンサルタントの男だ。被害者の娘はヤク中、二男夫婦も何かに怯えている。この家族には何らかの確執があったようで、疑いは社長の娘と二男夫婦とに向く。

 この作品の主人公は、ハンネ・ ヴィルヘルムセン というオスロ市警の女性警部。有能だが、マイペース。一応美人ということになっているが、42歳で中年太りが気になるお年頃。この作品にも何箇所か中年太りネタが織り込んである。有能な女性刑事といえば、私などは、ついストロベリーナイトに出ていた竹内結子を連想してしまうのだが、「体は中年太りで丸みを帯び、ズボンがきつくて座ると苦しそうだった」(p74)なんて書かれると、私の持っている美人女性刑事のイメージがガラガラと・・・(以下略)。

 事件の方に戻ろう。ハンネも含めたオスロ市警のメンバーが、この事件を捜査していく訳だが、全部で400ページ以上もある作品にも関わらず、途中で第2の事件といったようなものも起こらないので、読んでいて緊張感が持続しない。ハンネは、この事件に他の捜査員たちとは違う臭いをかぎ取っていたようだが、全体としては、最初からこいつらが怪しいと見込み捜査がずっと続いていくような感じだ。

 本書を読んで興味深かったのは、事件そのものより、ノルウェーの社会制度の方だった。ハンネは、恋人のネフィスと7LDKのマンションで暮らしている。ただし、このネフィスも女性なのだ。本書が書かれた当時でも同性同士のカップルにも相当な権利が認められていたし、現在ではなんと結婚まで認められているというから驚きである。

 そして、作品中で主要な役割を演じている一人であるアンマリという女性検察官だが、彼女は、検察官なのに、検察庁のようなところではなく、オスロ市警に所属しているのだ。犯罪捜査課の課長より起訴権限を持っているのに、課長の方が上席らしい。また、検察官なのに、弁護士会の次期会長候補とも書かれており、司法制度が日本とはかなり違うようだ。この辺りは、何らかの注釈でも欲しかった。

 また、細かいところではあるが、「腫れ上がった前立腺から尿を出した」(p249)というところも気になった。尿が出てくるのはもちろん膀胱からだ。前立腺ではない。原文がそうなっているのか、それとも訳し間違いなのだろうか。もしかして、前立腺肥大で、排尿が困難になっていることを言いたかったのか。

 ところで、この作品は、冒頭に出て来た病気の野良犬が、ひっそりと力尽きていくところで終わっている。これはいったい何を表しているのだろう。被害者も主人公のハンネもその他の登場人物たちも、他者との間に色々なしがらみを抱えている。そのしがらみによって、時には自分の命が奪われることもある。しかし野良犬には何のしがらみもなく自由だ。しかし、自由の代償として得られるものは、誰にも知られず、ひっそりと死んでいくこと。いったいどちらが良いのか。もしかするとそういったことを問いかけていたのだろうか。正直私には良く分からない。

 なお本書は、「本が好き!」さまを通じて献本いただいたものです。お礼申し上げます。


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大映特撮映画 DVDコレクション 2014年 9/30号 大怪獣ガメラ3




 DeAGOSTINIの「大映特撮映画」DVDコレクションの第一弾となる「大怪獣ガメラ」。この手のものは、創刊号の価格を安く抑えているので、つい買ってしまったのだが、ずっと積んだままになっていたものだ。もっとも、映画の方は、既にテレビで放映されたのを視ているので、こちらのDVDの方は、まだ封も切っていない。

 このシリーズ、DVDが主と言っても、一応雑誌扱い(表紙裏に「雑誌」と明記されている)で、ISBNコードも付けられているので、ここでのレビューは雑誌としてのレビューである。映画の方のレビューは、リンク先の該当記事を読んで欲しい。

 その雑誌としての部分だが、映画「大怪獣ガメラ」の解説、登場人物、メイキングの様子など、広告を別にすればわずか8ページしかない。創刊号特価999円(税込)なので、あまり文句も言えないのだが、さすがに少し寂しい。

 ところで、怪獣界の東の正横綱はなんといってもゴジラだと思うが、このガメラも西の正大関くらいに位置づけられるのではないだろうか。平成ガメラは、けっこうかっこいいのだが、ここで描かれている昔のガメラは、体のバランスも悪く、人相(いや亀相か?)も悪くて、なんだかとても不細工な感じを受ける。

 平成ガメラは、地球を脅かす怪獣と戦うという明確な使命を帯びていた。昭和ガメラも、2作目からは子供たちの味方と言う性格が強くなるのだが、まだこの1作目では、子供を助けるシーンはあるのだが、悪役モンスターというポジションが非常に強い。

 さすがに昭和40年の作品だけに、全体に作りがチープなのは、映画のレビューでも書いたとおりだが、本書に収められている資料からも実感できる。それにしても、このガメラ、どぶの中からでも出て来たのかと思うくらい、体が汚らしい感じがする。モノクロだけに、よけいそれが目立つのだろうか。

 映画のレビューはこちら

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緊急告知:ツイッターで私の名前を使っている奴にご用心

 ツイッターで、「風竜胆」で検索してみると、なんと私の名前を勝手に使っている奴を見つけた。

 私は、ツイッター上では「竜胆(アマ書評家&資格ゲッター)」と自分の特性を端的に示す名前を使っている。ところが、リンク先の御仁は、これを途中でちょんぎって、「風竜胆(アマ書評家&資格ゲ」と言う名前にしている。 

 ツイッターには同じ名前が結構使われているので、これが、「風竜胆」だけなら、万が一の偶然ということもあるかもしれないが、( )の中までとなると、偶然とは考えられない。いったいどういう意図なのだろうか。プロフィールを読むと、特定のイデオロギーを持った者みたいだが、これも本当かどうか分からないのがネットの欠点でもある。

 アカウントが全く違うので、区別はできるのだが、知らない人が見れば、私がつぶやいていると誤解するかもしれない。私のアカウントはこちらの通りなので、くれぐれもお間違えのないように。

メイド刑事4




 普段はメイド、時々刑事、元レディース「関東流れ星連合」2代目総長の若槻葵が悪を退治するシリーズの第1巻となる「メイド刑事」(早見裕司:GA文庫)。タイトルからすぐ思い出すのは、かっての名作「スケバン刑事」(和田慎二)だが、どうも作者も強烈なファンだったらしく、本作品もそのオマージュのようなものとなっている。またメイドというのは、あとがきによれば「エマ」(森薫)から来ているようだ。しかし、メイドが出てくるからといっても、決して「萌える」作品ではない。作者も言っているように、「燃える」作品なのである。

 この葵、ただのメイドではない。国家特種メイドという資格を持つ、メイド界のスーパーエリートなのだ。ただし月給は、手取りで63653円。葵の「ご主人さま」は、警察庁長官、海堂俊昭。その関係で、時々、疑惑のある家にメイドとして入り、潜入捜査を行う。しかし、心に決めた「ご主人さま」は海堂ただ一人。だから潜入先の主人を、決して「ご主人さま」とは呼ばずに「旦那さま」と呼ぶ。

 葵が海堂家のメイドになったのは、レディース総長の時に、警察の幹部だった海堂とタイマン勝負をして負けたためだ。それ以来、メイドの道をまっしぐら。今では、「ご主人さま」に甲斐甲斐しく使える可愛いメイドなのである。それにしても、いったい、どうやって調教したんだろう(笑)。

 この第1巻には、3つの短編が収められている。大学の不正入学に関する事件、ベンチャー企業社長の人身売買事件、レディースの後輩の恋と罪に関する事件だ。美しすぎる容姿を伊達メガネと古風なメイド服で隠し、ヨーヨーならぬクイックルワイパーで敵と戦う。お掃除道具を武器にするとは、さすがにメイドである。ただしこのクイックルワイパー、特性品でなかなかの優れモノだということは付け加えておこう。

 ところで、この手の作品の常として、色々とツッコミ処も多い。特に、2話目で出てくる、ニキータというメイド。「一匹狼の流れメイド」って、いったいなんやねん。葵は、このニキータと最初は馬が合わず戦うことになるのだが、互いの実力を認めて協力し合うようになる。この時のニキータのセリフが、「これまで会ったメイドの中で、いや、あたしが戦った相手の中で、あんた、一番強いよ」だ。なんかメイド観がいろいろ間違っているような気が・・・(笑)。

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艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 一航戦、出ます!4

艦隊これくしょん ‐艦これ‐ 一航戦、出ます!




 アニメでも人気の「艦隊これくしょん」。もともとはゲームだったが、現在はアニメやコミックスなどが派生して多数のメディアミックス作品が存在している。本書もそのような作品のひとつだ。

 ストーリーは単純明快。軍艦の化身ともいえる美少女(艦娘[かんむす])たちが、制海権をかけて、深海棲艦と呼ばれる敵と戦うというもの。艦娘たちは、軍艦を操作して戦うのではなく、自分が軍艦として戦うのだ。だから艦娘たちには、それぞれ軍艦の名前が付けられている。彼女たちは、妖精が作った装備を艤装することで、海の上を走り、大砲や魚雷などを使って、敵を攻撃するのだ。空母の艦娘などは面白い。弓道娘なのだが、彼女の放つ矢が、途中で艦載機に変わってしまうのである。

 それではなぜ美少女が軍艦なのか。もちろん「萌え」を狙ったのが一番の理由だと思う。戦闘派美少女というのは、かなりの萌え要素らしい。どうせ戦わせるなら、いっそ軍艦にしてしまえといったような発想なのだろう。元々船は、女性に例えられる。だから、軍艦が美少女の姿として具現化されても何の不思議はない。

 また、日本人の心には、万物に神が宿るという思想がある。そして滅び行くものに美を見いだすという独特の美意識も。この二つが結び付き、儚くも海の藻屑となってしまった軍艦たちを、美少女として蘇らせたのだろう。志半ばで沈んだ軍艦たちをせめて物語のなかだけでも活躍させようとする。これは、言霊により、軍艦の船魂を慰めるための鎮魂の書でもあるのだ(本気にしないでほしい)。

 このように(無理矢理)考えると、単に萌えだけを追求しているようなこの物語も、なかなか奥が深い。表面だけをみて、艦娘たちに萌えてばかりではいけないのである(ほんまか?)。

 それにしても、でてくる艦娘たち、みんな可愛いなあ(笑)。

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愛は自転車に乗って: 歯医者とスルメと情熱と (ドクターごとうの訪問歯科シリーズ)5




 東京新宿で、背中にデイパックをしょい、肩にはカメラバッグを引っ掛けて、自転車で訪問診療に走り回る歯科医の奮闘記、「愛は自転車に乗って: 歯医者とスルメと情熱と (ドクターごとうの訪問歯科シリーズ)」(五島朋幸:大隅書店)。

 寡聞にして、これまで、歯医者には、外来診療しかないものと思っていたのだが、本書を読んで、訪問診療をしてくれる歯科医がいるということを初めて知った。なにしろ、歯医者に行けば、結構大掛かりな設備がある。だから、訪問診療ができるとは、なかなか想像ができない。しかし、考えてみれば、歯医者の治療は、削るのが基本だから、ドリルさえ動けばなんとかなりそうな気もする。

 訪問が必要なくらいだから、患者は高齢者が多い。このような場合に、中心となる治療は、入れ歯の調整と、口内のケアのようだ。入れ歯はバランスで成り立っており、それが少し崩れただけで、痛みが出たり、がたつきが出たりするという。酷い場合は、物をろくに食べることができなくなるのだ。しかし、入れ歯をうまく調整したり、口内ケアを適切に行えば、そのような状態が劇的に改善する。寝たきりでほとんど反応のないような人が、会話ができたり、ものが食べられるようになったりするのだ。なお、副題にある「スルメ」は、患者がものを食べられるようになるための訓練に使うものである。

 著者は、多くの患者の間を飛び回り、食べる喜びを取り戻すお手伝いをする。まさに、著者の言うように、「食べることは生きること」。高齢者で寝たきりの患者が多いので、たとえ歯科の治療は上手く行っていても、結局は病気で亡くなってしまうといったこともある。しかし、僅かの期間とはいえ、自分の口で。少しでもものを食べられ、生きる喜びを取り戻すということは、人間の尊厳の回復ということにも繋がることではないだろうか。

 本書を読んで感じたのは、まさに「医は仁術」ということと、患者と直接向き合うことの大切さである。そして一番大切なのは、そこに愛がこもっていることだ。本書は、診療日記の形式で書かれているが、一応は体験に基づいたフィクションだということである。これは、医師の守秘義務が絡むので、実話は出せないということだろうが、かなり近い事例があっただろうことは想像に難くない。

 自分の口でものを食べられるというのは、なんと幸福なことだろう。本書を読むと、歯の大切さと、口腔ケアの重要さといったことが良く分かる。歳を重ねてもなるべく自分の歯を残すように、今日から、一層気合いを入れて歯を磨こうと決意した。

 なお本書は、「本が好き!」さまを通じて献本いただいたものです。お礼申し上げます。

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H23.3:書評コミュニティ「本が好き!」より「免許皆伝」称号を受ける

H23.3.16:読売新聞朝刊“読者のホンネ”に「カラスと髑髏―世界史の「闇」のとびらを開く」の100字書評掲載

H25.10.26発売の図書新聞(3132号、2013年11月2日号)に「泥棒は几帳面であるべし」の書評掲載

H26.6,28発売の図書新聞(3165号、2014年7月5日号)に、「市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影」の書評掲載

H28.8頃より「シミルボン」への投稿開始

H29.7.4「彗星パンスペルミア」の書評が「新刊JP]に掲載

H29.10.19「ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者」の書評が「新刊JP」に掲載

H29.11.24「ペンギン・ハイウエィ」の書評が「新刊JP」に掲載

H29.12.26.「ニッポンの奇祭」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.1.18.「問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.4.26.「メゾン刻の湯」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.20.「極道ピンポン」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.26.「シミルボン」にインタビュー記事掲載

2019.2.23.「本が好き!」×「書店フェア」で「あなたの街で本と出会う Vol.2」に「こころを彩る徒然草」のレビュー掲載

2019.04.28.【本が好き!×カドブン】コラボレビュー!第4回『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』掲載
本が好き!免許皆伝レビュアー風竜胆
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