風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

2017年01月

<「シミルボン」主催の第1回チキチキ コラム de PVバトル>参戦状況

 以下の通り、「「シミルボン」主催の第1回チキチキ コラム de PVバトル」にコラムを投稿しております。

 1月末までのpvが多ければ勝ちというシンプルなルールになっているので、もし興味がある方がおられたら覗いてやってください。

『マンガ限定。もし結婚できるなら、この作品のこのキャラクター』
  → 「理想の二次元嫁を追及する」
  → 「パンチラシーンも上品、アニメも開始!」


『お腹が空いてたまらない! 飯テロ注意!な作品』 
  → 「食欲だけでなく性欲も刺激!?」


『出勤したくない! そんな時、上司・同僚の机にこっそり置いておきたい一冊』 
  → 「有給を取るのに文句を言わさないように!」

大きな鳥にさらわれないよう



 川上弘美さんの「大きな鳥にさらわれないよう」のレビューをシミルボンに掲載しました。不思議な静けさで綴られた未来SFです。 → 「淡々とした語り口で綴られる人類の衰退史」

地理2017年01月号4


・地理2017年01月号
・古今書院

 最近すっかり雑誌「地理」に嵌っている観もあるが、2017年1月号の特集は、「環境問題解決への科学者の役割」である。まず、このタイトルを見て、「地理」という学問のレンジの広さを再認識した。「環境問題解決」、「科学者」といったキーワードからも、地理というものは、単に地図のうえの学問ではないということが分かるだろう。

 この特集では、環境問題の解決に向けて実施されているいくつかのアウトリーチ活動が紹介されている。アウトリーチという言葉にはいろいろな意味があるが、ここでは地理関係者が働きかけて、産学官民の協働による超学際(トランスディシプリナリティ)な活動を実現していくというようなことのようだ。

 この中で強調されているのがステークホルダー(SH:利害関係者)との関係だ。SHとの協働は重要ではあるが、SH自体が多層性を持っており、研究者がどこに着目するかによって、問題解決の方向性が変わってくる。また、場合によっては研究者とSHの意識のズレを感じることもあるだろう。

 もちろん環境問題の解決に向けたアプローチの方法は一通りではない。しかし、ここに挙げられた例は、この問題の解決に取り組うに当たって、フレームワークを与えてくれるものと思う。

 この他興味深いトピックも多く掲載されているが、この雑誌の特徴として書評欄が充実していることが挙げられよう。今は色々あわただしくて余裕がないが、また落ち着いたら、これまで紹介された本のいくつかは読んでみたいものである。

※初出は「本が好き!」です。

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すべてがFになる



 森博嗣さんのデビュー作「すべてがFになる」のレビューをシミルボンに掲載しました。S&Mシリーズの幕開けとなる作品でもあります。 → 「世間を震撼させた森博嗣のデビュー作!」

ホーンテッド・キャンパス



 櫛木理宇さんの「ホーンテッド・キャンパス」の書評を、シミルボンに掲載しました。八神森司と灘こよみを初めとする雪越大オカルト研究会の面々が、学生たちから持ち込まれた怪奇現象を解決していくというものです。
 →「果たして森司とこよみの行く末は?」

水鏡推理后.縫紂璽リアフュージョン3


・水鏡推理后.縫紂璽リアフュージョン
・松岡圭祐
・講談社文庫

 文科省の一般職水鏡瑞希が、科学技術に関する不正を暴いていくというシリーズの第5弾。今回瑞希が暴くのは、サブタイトルからわかるように「核融合」に関する不正。

 この核融合、私が学生のころは21世紀には実用化するだろうという夢のエネルギーとしてもてはやされていたものだ(はい、私が学生だったのは20世紀ですよ(笑))。しかし、既に21世紀になってかなり経過しているというのに、まったく実用化の兆しはみられない。

 今回瑞希は、これまで所属していた「研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース」から「研究公正推進室」に異動になる。しかしやっていることにはあまり変わりはないようだ。推進室の室長は米谷謙造、瑞希が直接下につくことになったのは、技術開発担当分析官の泉田佳奈。

 この部署ではSOTA(State Of The Arts)というシステムを使って、世界中の先端技術の実現度を測定しているという設定だ。このシステムは世界中で発表された論文やデータを分析して、その技術の実現可能性を判定するというもので、その実現度は予算にも大きく影響するということになっている。

 毎回危機一髪の目にあっている瑞希だが、今回は何者かに「不妊バクテリア」なるものを注射され、もう半狂乱状態。この事件が、どう「核融合」の不正につながるのかと思ったら、ダブルミーニングをうまく使って結び付けているのには感心した。同じ専門用語を使っていても、分野によってはまったく別のものを指しているのはよくある話だ。これは目の付け所がなかなか面白い。

 事件を仕組んだのは意外な人物だったが、最後に室長の米谷が見せた熱血ぶりも面白かった。最初は彼のことを疑った瑞希だったが、また一人信頼できる官僚とつながりができたようだ。

 しかし残念なことに、科学技術に関する箇所は私にはまったく理解不能だった。読んでいてとめどもなく疑問が沸き上がるのだ。

 まず問題となる核融合プロジェクトの中に、燃料電池が入っていることだ。核融合と燃料電池は、同じように水素を使うとはいえその原理はまったく違う。技術的には全く別物なのである(注1)。

 そして、その燃料電池の損失がないということを証明するために燃料電池を搭載しているミニカーが、一度水素を供給しただけで、延々と走り続けている。(もちろんインチキで、そのチープなからくりは瑞希によって暴かれるのだが)ここで燃料電池として搭載されているのが固体酸化物型(SOFC)というものだ。通常燃料電池車に使われるのは固体高分子型(PEFC)である。

 固体酸化物型は、効率が高い代わりに熱も1000度くらいになる。結構大きなシステムになると思うので、どうやってミニカーに搭載するのか。ミニカーは1000度の熱に耐えられるのか。そもそも熱が発生する以上、それを回収しないと損失になる。熱回収して運動に変えることは、熱力学の第二法則により100%はできない(注2)。どうしてそれで無損失の燃料電池などできるのか。さらに言えば、運動自体も一種の損失と見なせるので、いくら燃料電池の効率を良くしても、永久機関のように、ずっとミニカーが走り回るはずはない。だから、瑞希が暴くまでもなく、少し科学技術を知っていればインチキだということはすぐ分かる。

 もうひとつ、超電導コイルのためのヘリウム液化設備で、メーカーから購入した5台の変圧器の設定がひとつひとつ違い、それを正しく接続しないと。熱交換器の電圧が不安定になり火災が発生するというのだ。シンカーと呼ばれる連中が、研究所で事故を起こして、関連する株価の暴落させることによる大儲けを企んでおり、この変圧器の順番を狂わせたということなのだが、これにもいろいろと疑問がある。

 まず熱交換器の電圧とは何だろう。熱交換器に液体を運ぶためのポンプなどは電動かもしれないが、熱交換器自体は、電気を必要としないパッシブな機器だと思うのだが。

 変圧器の設定というのもよくわからない。変圧器は大まかに言えば鉄心にコイルを巻いているだけのものだ。設定できると言えばタップくらいか。しかし、それが全部違うとなると、明らかに設計に問題ありだと思うが。それにこういったものは、工場で試験した後、現地でも確認・試験をするのが普通だ。(輸送中に壊れたりする場合もあるので)だから、この作品にあるような細工をしたとしても、通常は現地試験の中で発見されるだろう。

 そして極め付けは、瑞希と米谷が必死になって変圧器を元に戻そうとしている箇所。最初は二人で、最後は瑞希だけで行ったのだが、なんと装備はゴム手袋のみ。停電もせずに、活線状態で、変圧器を入れ替えているのだ。変圧器の仕様は不明だが、まさか100Vをもっと低圧に変換するようなものではないだろうから、命知らずとしか言いようがない。電気をなめるなよ!

 それに変圧器というのは、基本的には鉄の塊だ。瑞希が一人で持ち上げて入れ替えるというのは、相当の怪力娘ということか?それだけの怪力があれば、敵に襲われても跳ね飛ばすことができると思うのだが。

 このように色々と疑問は湧いてくるのだが、私も別に核融合の専門家というわけではないので、最近の技術の進歩に追いついていない可能性もある。もし何かの機会があれば、この辺りについて説明をしてほしいものだ。

 まあ、科学技術に関するところをあまり気にせず、最後の変圧器の入れ替えも、単なるパズルの問題だと考えれば、瑞希の熱血ぶりはなかなか面白いのではあるが。要するにこの作品は、科学技術を扱ったミステリーというよりは、判断・推理を特徴としたパズルミステリーとでもいった方が正解なのだろう。

 ところで、表紙イラストの瑞希、巻を重ねるにつれて綺麗になっているような気がする。第一巻の表紙を見たときなど、「目の周りのあるのは隈?病み上がりかいな?」などと思ったのだが、この巻の瑞希なら文句なし。嫁に欲しいくらいの美人だ。

※本記事は「シミルボン」に投稿したものです。

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時空の流離人

[どこかのバカが某所にて、明らかにこのレビューに対するいちゃもんをつけていたので、以下補足しておきます]

(注1)技術的にまったく違うものを、普通は同じプレジェクトで扱わないと思う。別々のプロジェクトをたてるの通常の姿だろう。

(注2)本文中に以下のような記載がある。
<SOTAが海外のいくつかの研究論文をもとに、固体酸化物燃料電池を進化させる数式を弾きだした。そこでは実に百パーセントの効率が達成される。取り急ぎ東朔大学大学院の水素エネルギー研究室で、理論どおりの実験を再現してもらった。>(p196)
上に述べたように百パーセントの効率など実現できる訳がないというのは、科学技術の常識である。エントロピーというものがあることくらいは勉強しないとね。

<前回の見学以降、ずっと充電なしに走ってます。・・・(中略)・・・水素ガス缶で水素を注入して、走行を開始して以来、いちども停まってないわけですか>(pp257-258)
ずっと動くのなら、永久機関としか言いようがないだろう。そもそも損失があるかないかというテストではこんなことはまず行わない。入力と出力を比べて、その比率で効率を求めるのが、科学技術の常識である。電気的出力なのだから、入力した燃料のカロリーと、電力量計のようなもので図った電気出力から効率を計算するのが、科学技術を少しでも知っている人間のやり方だろう。

 そして、そのバカは、電気的なことに対しては、全く反論できていない。要するに、科学技術に関して基本的なことが分かっていない素人だということだろう。

夜は短し歩けよ乙女



 森見登美彦さんの、「夜は短し歩けよ乙女」のレビューをシミルボンに掲載しました。ハチャメチャでいかにも森見さんらしい作品ですが、とっても楽しい。→「黒髪の乙女と先輩のカオスな恋物語!」
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H23.3:書評コミュニティ「本が好き!」より「免許皆伝」称号を受ける

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H25.10.26発売の図書新聞(3132号、2013年11月2日号)に「泥棒は几帳面であるべし」の書評掲載

H26.6,28発売の図書新聞(3165号、2014年7月5日号)に、「市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影」の書評掲載

H28.8頃より「シミルボン」への投稿開始

H29.7.4「彗星パンスペルミア」の書評が「新刊JP]に掲載

H29.10.19「ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者」の書評が「新刊JP」に掲載

H29.11.24「ペンギン・ハイウエィ」の書評が「新刊JP」に掲載

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H30.1.18.「問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.4.26.「メゾン刻の湯」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.20.「極道ピンポン」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.26.「シミルボン」にインタビュー記事掲載

2019.2.23.「本が好き!」×「書店フェア」で「あなたの街で本と出会う Vol.2」に「こころを彩る徒然草」のレビュー掲載

2019.04.28.【本が好き!×カドブン】コラボレビュー!第4回『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』の書評が掲載

2020.01.24.「貧乏大名“やりくり”物語 たった五千石! 名門・喜連川藩の奮闘」が「新刊JP」に掲載

2020.02.04.『どんなことからも立ち直れる人』の書評が「新刊JP」に掲載
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