風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

2017年11月

「いい会社」のよきリーダーが大切にしている7つのこと2


・「いい会社」のよきリーダーが大切にしている7つのこと
・瀬戸川礼子
・内外出版

 勤めていると、よくリーダーシップ何たらということを聞くのではないか。会社員は誰でも、リーダーシップというものを求められるらしい。

 ところが、このリーダーという言葉は結構曖昧で、上は経営者から、下はバイトリーダーまで、様々な階層で使われているのではないだろうか。へそ曲がりな私などは、そんなにリーダーをつくってどうするんだろうと思わないでもないのだが、本書で想定しているリーダーとはどちらかというと経営者に近い人たちのことのようだ。

 もちろん、それぞれの階層でリーダーはいるのだろうが、いくら末端で頑張ったからと言って、それで「いい会社」になったりはしない。やはり、経営層、トップ層の影響というのは大きいのではないかと思う。しかし、誰もが認める素晴らしいリーダーが上に来るとは限らないというのが世の常。バカが上に来るほど悲惨なことはないのだが、ドラマなどではそんな例が掃いて捨てるほど出てくるではないか。そういったものを反面教師として人事権を持っている人間がもっと考えてくれればいいのだが、現実にもそんな例はいやになるくらい多いのではないかと思う。

 本書では、「いい会社」のリーダーたちは、何を大事にしているかを、具体的な例を挙げながら示している。それは例えば「心」だったり「順番」だったり。しかし一つ指摘しておきたいのは、これらは相関関係であり、因果関係ではないということだ。いい会社のリーダーはこれらを大切にしているといっても、逆にこれらを大切にしたからと言って、必ずしも「いい会社」になるとは限らないことは注意しておかなければならないと思う。

 また、個別に見ると、どうかなと思うようなことも書いてある。いい会社の取り組み例(p229)として、毎朝1時間かけて社内外を掃除したり、毎日朝礼を1時間といったようなことが載っているのだ。私なら、それだけでそんな会社に入ろうとは思わない。その分の給料はちゃんと出ているのだろうかちょっと気になった。また、日時設定にしても、毎日午前7〜8時に設定しているのを褒めていたが(p228)、いくらなんでも早すぎないか。朝が苦手な私など、絶対にそんな会社が「いい会社」なんて思わないだろう。

 なお、本書は内外出版社さまからのいただきものです。

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哀しみの終着駅―怪異名所巡り〈3〉4


・哀しみの終着駅―怪異名所巡り〈3〉
・赤川次郎
・集英社文庫

 主人公は町田藍というバスガイド。元々は業界最大手の「Hバス」に勤めていたのだが、リストラにあい、現在は最弱小の「すずめバス」のガイドをしている。しかし、彼女には幽霊が見えて話せるという一風変わった特技があった。その能力を活かした「幽霊ツアー」が、大人気という設定である。

 タイトルを見ると、〈3〉という数字が入っているので、これもシリーズ化されているのかとちょっと調べてみた。するとつい最近新書版で9巻目が出ており、かって「霊感バスガイド事件簿」というタイトルでテレ朝系列のドラマ化もされているようである。ちなみに、主演は菊川玲。

 収められているのは以下の5つの短編。

・忠犬ナナの伝説
・哀しみの終着駅
・凡人の恨み
・地獄へご案内
・元・偉人の生涯

 幽霊は出てくるのだが、どれも恐怖で背筋がぞくぞくしてくるような話ではない。むしろその幽霊話に関連して、人間の哀しさ怖さといったものが描かれている気がする。

 ただ「地獄へのご案内」での設定はちょっとヘンかな。定年間際の田舎町の警察署長がK国大統領の先導をしていた時に道を間違えて、自殺してしまった話だ。よく白バイ隊員が駅伝などの先導している場面をテレビで目にするが、その階級は巡査か巡査部長クラスである。しかし警察署長になると最低でも警視クラスだ。いくら県警本部長が引退の花道を飾らせたいからといっても、署長自ら、白バイを運転して大統領の車を先導するなんてまずありえないのではないかと思う。また、道を間違えた原因だが、もしそんなことになっているんなら、警官が絶対に白バイ運転しちゃだめでしょとツッコミたくなるようなものだった。

 ともあれ、赤川次郎は著作が沢山ありすぎて、これまで「セーラー服と機関銃」のシリーズと大林宣彦監督による映画の「新尾道三部作」の原作である「ふたり」、「午前0時の忘れもの」(映画タイトルは「あした」)くらいしか読んでないが、もっと他にも読んでみたいなと思ったのは確かだ。 

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定年バカ3


・定年バカ
・勢古浩爾
・SBクリエイティブ

 世の中には、定年後の生き方についての本が溢れている。そのどれもが、定年後こそ、これまでやれなかったことをやるチャンスだといった論調で書かれているのではないだろうか。曰く、定年後こそ地域デビューのチャンス。曰く定年後こそ何か勉強をすべき等々。そんな本を読んで、よし自分もと思ったのはよいが、どうもうまくいかずに焦っている人はいないだろうか。

 本書は、そんな本を、次から次に、ばっさばっさとめった切りにする。そのツッコミ具合がシニカルでなんとも面白いのだ。本書が訴えていることは、やりたい人間はやればいいが、やりたくない人間は別にやらなくてもいいんじゃないかということに尽きる。定年後に何かやらなけりゃならないと思い込むのは、それこそ病気ではないか。

 例えば本書には、とある市民講座の例が出ている。定年退職者のための講座だが、その講師が30歳という大学の助教。人生経験豊富な定年退職者が、「定年」をテーマに、よく30歳の若造の話などを聴きたいと思うものだ。受講する方もする方だが、講師を引き受ける方も引き受けるほうで、かなり皮肉な口調で書かれているのだが、私ならまず聴きに行こうなんて思わないだろう。

 定年退職者は、これまで長い間、会社という枠に嵌められてきたのだ。我慢してきたことも沢山あったろう。定年後こそその枠を取り払い自由に生きればいいじゃないだろうか。定年後、何かしなくちゃと脅迫観念に囚われているような人は一読すれば、心がすっきりするのではないかと思う。

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正しい本の読み方2


・正しい本の読み方
・橋爪大三郎
・講談社現代新書


 昔からたくさんの本を読んできたが、こういったタイトルの本を見つけるとつい手を出してしまう。読んでみると、賛成できる部分と、ちょっと自分とは違うなというところがあるのはいつものことだ。

 本書に書かれているのは、本の選び方、本の読み方など。まずどういった本を選ぶかについてだが、本はネットワークを作っているので、その構造が分かれば、読むべき本、読まなくても良い本が分かるという。しかし、これは本を読むことを商売にしているいわゆる学者とか研究者と呼ばれる人の読み方だろう。私のように、興味の向くままに、あらゆる分野の本に手を出している者にとっては、本の作っているネットワークなんて全然興味がない。

 本の読み方だが、印をつけたり線を引いたり、書き込みをしたりといったようなアクションを行いながら読むことを勧めている。著者が故小室直樹氏の本を借りた時、その本は色々な色で塗りつぶされて総天然色になっていたという。私も同じようにマーカーで色を塗ったり、付箋を貼ったり書き込みをしたりといったアクションをしながら読んでいるのだが、確かにただ読むだけの時よりは、内容が頭に入りやすくなるような気がする。また、著者は、あんまり腹が立った時には欄外に「アホ」と書いたりするとのことだが、実は私も似たようなことを・・・(笑)。

 ところで、本書には特別付録として「必ず読むべき「大著者一〇〇人」リスト」というのが付いているのだが、人文・社会系に偏っているので、これについては大いに異論がある。例えばアインシュタインの「相対性理論」などは岩波から出ているのだが、リストには入っていないのである(もっともあれは必ずしも読みやすくないので、通常の相対性理論の教科書を読んだ方がいいかもしれない)。

 もうひとつ気に食わないのが、どうもマルクスに対して好意的な印象を受けるところだ。ただ、マルクスが資本論を書くにあたってのモデル構築で、どのような考えで書き、何を捨てたかということが書かれているので、それがそのままマルクスなんて読まなくてもいい理由になっていると思えるのはある意味皮肉か。人文社会系の人間には、未だに未練がましく、マルクスに対して一定の評価をしている人が多い(かっての学生運動の残り火?)ようだが、私は理工系なので、まったく評価してない。むしろ世界の現実をみれば、害毒しかたれ流していない気がする。

 笑ったのは、入門書の効用を謳ったところ。講談社現代新書には入門書がごっそり入っているというので、高校生や大学生の本棚には、講談社現代新書がずらっと並んでいなければならないと書いてあったところだ。ちょっと出版社に対するリップサービスが過ぎる?まあ、最近は学生が本を読まなくなっているので、そういった本棚が増えるのは悪いことではないだろうが。

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プロジェクションマッピング3


・プロジェクションマッピング
・三葉かなえ
・市井社

 本書は、著者による五行歌を集めた詩集である。五行歌とは、本書の巻末に「五行歌五則」としてどのようなものか纏められている。もっと詳しいことが知りたければ、本書を読んで見るなり、ググってみれば「五行歌五則」の具体的な内容が分かるだろうが、端的に言えば、五行で表した詩のことである。

 本書は、表題の「プロジェクションマッピング」と各章題の「吐息の膜」、「秋の鱗」、「雲の額縁」、「深緑の氷山」、「星の精」、「生きている証」、「破壊と誕生」のいずれもが、収められている五行歌の一節から取られている。

 確かに、ひとつひとつの歌を見れば、著者の瑞々しい感性が感じられるような気がする。しかし、それを詩集に纏めるとなると、各章にそれなりのテーマというか纏まりが必要になってくるのではないか。

 そういった観点からこの詩集を見てみれば、例えば、第一章の「吐息の膜」はあまり順調ではない恋の苦しさ、第六章の「生きている証」には、生きることの辛さ悲しさといったものが感じられるので、そういった意味で纏まりがあると言えるだろう。

 しかし第二章の「秋の鱗」に収められている歌は、春夏秋冬すべてのものが入っている。それをなぜ「秋」で代表させるのだろう。また、第四章の「深緑の氷山」は、故郷の思い出を歌ったものが多いと思うが、それがなぜ抹茶かき氷で代表されるのだろう。感性の違いということかもしれないが、私にはよく分からない。

 また、私なら、別の章に入れるといったような歌もみられる。単なる好みの問題かもしれないが、その辺りの工夫も望まれる気がする。

※初出は、「本が好き!」です。

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終電ちゃん(1)4


・終電ちゃん(1)
・藤本正二
・モーニングKC

 たまたま見つけた、ちょっと変わった漫画だ。なにしろ、主人公が終電を擬人化した「終電ちゃん」という存在。いや、電車を離れても、かなり広い範囲で行動してるから、終電の妖精か。終電の走行時は、屋根に陣取り、就寝も同じように屋根の上。終電に乗り込む乗客をさばきながらも、もっと早い電車で帰れと叱る。

 「終電ちゃん」は、日本各地の終電に存在するようだが、この巻では、主に、中央線の「終電ちゃん」と、終電に伴ういくつかのエピソードを描いている。描かれるのは、人間ドラマや電車の接続に関する苦労。それがなかなかに泣かせるのだ。

 他にこの巻では、山手線の「終電ちゃん」、小田急小田原線の「終電ちゃん」も登場。それぞれ個性も違うが、みな可愛らしい少女の姿をしており、自分の持ち場でがんばっている。

 基本的には「終電ちゃん」は人気者なのだが、人間とは勝手なもので、電車が遅れた時などには、非難の対象となる。それでも「終電ちゃん」は乗客のことを思い、その時折で最善の行動を取ろうとするのだ。

 さあ、みんな「終電ちゃん」に会いたくなったら、終電に乗ってみよう。でも、うちの田舎のように電化されていないようなところには、「終電ちゃん」はいないだろうなあ。なにしろ「電車」じゃないし。

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般若心経講義4


・般若心経講義
・高神 覚昇

 「般若心経」の中身は知らずにと、その名を知らない人は少ないだろう。わずか二百六十字程度(若干の増減のあるバージョンもある)であるが、広く仏教宗派の間で唱えられているお経だ。ただし浄土真宗系と日蓮宗系の寺では唱えられないらしい。本書は、真言宗の僧でもあり、仏教学者でもある高神覚昇(1894−1948)が、般若心経を読み解いたものだ。

 本書によれば、仏教の根本思想は「空」に尽きるという。しかし、誰もが分かっているようで分かってないのが「空」らしい。般若心経は空を「色即是空」と「空即是色」の両方向から解いている。空の持つ否定の方向と肯定の方向を弁償法的に統一してのである。

 心経には「因縁」のことは何も書かれていないが、「因縁」を理解しないと「空」は分からないようだ。「因縁」と「空」は表裏一体であるという。

 般若心経は、「観自在菩薩行深般若波羅密多時照見五蘊皆空度一切苦厄」という最初の25字が全てだという。後は、これを色々な観点から説明したものだというのが、本書の教えるところだ。ここで、「観自在菩薩」とは普通は「観世音菩薩」だとか、「観音様」と言われる仏様だ(厳密には仏は如来だけだが、あまり厳密な定義は置いておく)。また、「般若」とは仏の智慧、真理の智慧のことである。

 「波羅密多」は、「到彼岸」という意味。「彼岸」はこの世界である「此岸」に対する理想郷、悟れる自由な世界。仏陀の世界である。「波羅密多」とは此岸より彼岸に渡ることらしい。ここで、「行」という語が入っていることに注意が必要だ。宗教においては、「理解」するだけでは不足なのだ。「行」こそが重要。実践してこそ意味があるのである。最後に「心経」とはあらゆる大乗仏教経典の真髄だという意味だ。

 要するに、この短いお経に、あらゆる大乗経典のエッセンスが詰まっているというのである。確かに、お経は、どんなにありがたいことが書いてあっても、通常は漢文で書いてあり(なぜか日本のお経は中国経由で入ってきているので漢訳のものをありがたがっている)、文字通りちんぷんかんぷんなのだが、般若心経くらいの長さなら、本書のような解説書などの手を借りれば、ある程度内容を理解することが可能になる。

 さすがに、現代人は、特定の宗教や思想に取り込まれるようなことがあってはならない。しかし、般若心経というのは、どこか引かれるものがある。本書は、この般若心経について、いろいろな観点からひもときをしており、一読することで、どんなことが書かれているかくらいは知っておいても良いだろう。

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H23.3:書評コミュニティ「本が好き!」より「免許皆伝」称号を受ける

H23.3.16:読売新聞朝刊“読者のホンネ”に「カラスと髑髏―世界史の「闇」のとびらを開く」の100字書評掲載

H25.10.26発売の図書新聞(3132号、2013年11月2日号)に「泥棒は几帳面であるべし」の書評掲載

H26.6,28発売の図書新聞(3165号、2014年7月5日号)に、「市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影」の書評掲載

H28.8頃より「シミルボン」への投稿開始

H29.7.4「彗星パンスペルミア」の書評が「新刊JP]に掲載

H29.10.19「ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者」の書評が「新刊JP」に掲載

H29.11.24「ペンギン・ハイウエィ」の書評が「新刊JP」に掲載

H29.12.26.「ニッポンの奇祭」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.1.18.「問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.4.26.「メゾン刻の湯」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.20.「極道ピンポン」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.26.「シミルボン」にインタビュー記事掲載

2019.2.23.「本が好き!」×「書店フェア」で「あなたの街で本と出会う Vol.2」に「こころを彩る徒然草」のレビュー掲載

2019.04.28.【本が好き!×カドブン】コラボレビュー!第4回『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』の書評が掲載

2020.01.24.「貧乏大名“やりくり”物語 たった五千石! 名門・喜連川藩の奮闘」が「新刊JP」に掲載

2020.02.04.『どんなことからも立ち直れる人』の書評が「新刊JP」に掲載
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