風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

2019年06月

仕事が早く終わる人、いつまでも終わらない人の習慣4



・仕事が早く終わる人、いつまでも終わらない人の習慣
・吉田幸弘
・あさ出版

 本書は、仕事が早く終わる人と終わらない人の習慣を最初に端的に表し、それからその解説を行うというスタイルで書かれている。その内容は、「時間の使い方」、「人間関係」、「仕事術」、「思考法」、「感情との付き合い方」といったものである。ただし内容は、オフィスで働いている人や営業社員を想定して書かれているので、工場のライン業務で働いているような人には当てはまらないことも多いかもしれない。

 内容については、基本的には賛成したいようなことが多いので、いくつか紹介してコメントしてみよう。

 まず、「早く終わる人は貯金箱に500円玉から入れ、終わらない人は1円玉から入れる」(p26)というものだ。これは、仕事が早く終わる人は、大きな仕事をするまとまった時間を、まず確保するというものである。大きな仕事の合間にできたスキマ時間に小さな仕事を片付けるというものだ。でも仕事が早く終わらない人は、小さな仕事から先に手をつけるのである。

 この考え方には基本的には賛成だが、少し付け加えたい。著者は大きな仕事の合間にできるスキマ時間に小さな仕事を片付けると言っているが、一つの大きな仕事にも様々なステップがある。一つのステップが終わった時に、気分転換に小さな仕事を片付けるのもありだと思う。なぜなら人間の注意力はそれほど持続しないので、途中で目先を変えることにより全体のパフォーマンスを上げるのだ。

 そして「早く終わる人はスタートダッシュし、終わらない人はラストスパートする」(p30)というものは全面的に賛成だ。締め切りが迫って作りだすと、上司と方向性が違ったり、成果物の品質の方にも疑問が湧く。早く手をつければ、色々調べられるし、何より方向性を上司に確認しながら行うことができるので、全体的な作業時間は少なくなる。

 面白いと思ったのは、「早く終わる人は1人で昼休みを過ごし、終わらない人はみんなとランチに行く」(p50)だ。今はボッチ飯とか酷いのになると便所飯とかいうものがあるらしいが、私に言わせれば飯くらい一人で食べたいというのが正直なところ。それを集まって食べたいというのはなんとも情けない。本書は昼食後の仮眠も勧めているが、私も会社勤めしているころはやっていた。これをやらないと、午後から頭痛がしてくるのだ。

 次に、「早く終わる人は「何を言ったのか」を重視し、終わらない人は「誰が言ったのか」を重視する」(p68)というもので、これはよくあるのではないかと思う。本書には、契約社員の言った案よりベテラン社員の言った案を採用しようとして部長から叱責されたアホ課長の例が出てくるが、管理職になったら、誰が言ったかでなく内容で判断したいものである。

 諸手を上げて賛成したいのは、「早く終わる人は下の人からも学び、終わらない人は上の人からだけ学ぶ」(p89)である。管理職、特に課長になったらこの考えでないと務まらない。仕事はチーム単位で来るので、絶対に一人では片づけられない。そして実際に仕事を担当している人の方が、実務を離れて長い上の人よりは知恵を持っていることは多いのである。

 もうひとつ、「早く終わる人は堂々とする、終わらない人はアリバイづくりをする」(p116)というのがあるが、これは上司の能力も関係してくる。成果物がなかなか出てこないのに、いつも夜遅くまで仕事をしている(ふりをする)ような人がいる。要するに能力がないだけなのだが、上司に見る目がないと「あいつはいつも遅くまでがんばっている」と間違った評価をしてしまう。そして、それに引きずられて、職場はどんどん疲弊していく。くれぐれも部下の人事評定をする立場になったら、そのようなアリバイづくりに惑わされてはならない。

 このように、本書には、部下だけでなく上司としても参考になることがいっぱい詰まっている。仕事を少しでも楽にしたい人、単にハッパをかけるだけの無能上司にはなりたくない人にはお勧めの一冊だ。

 なお本書は、あさ出版さまからの頂き物です。ありがとうございました。



プラナス・ガール1〜64


・プラナス・ガール1〜6
・松本トモキ
・スクエア・エニックス


 タイトルは「ガール」だが、これがちょっと違う。実は男の娘(たぶん)なのだ。舞台は、緑乃丘高校という私立の進学校。主人公の槙まきとは、合格発表を見に来たときに出会った少女?藍川絆に一目ぼれ。同じクラスとなり喜んだのもつかの間、自己紹介の時に、「こう見ても男です」の言葉に大ショック。でもそう簡単には、男と信じられないくらい、絆は可愛らしいのだ。

 そのあまりに可愛らしさには、学校中の男子たちは夢中。なんとファンクラブまでできているらしい。ちなみに「絆ちゃんは男の子だよ」派、「絆ちゃんは女の子だよ」派と「絆ちゃんならどちらでもいいよ」派の派閥があるらしい。そして、男心も分かる絆は女子にも大人気。これは、小悪魔のような絆にもてあそばれる槙の物語。要するに槙と絆のラブコメである。

 それにしても、この学校は色々とぶっ飛んでいる。絆は、女子の制服着用(男子用も一応持っているらしい)なんだが、ちゃんと制服を着ているのでOKらしい。他に槙の中学時代を知っている、女の子が好きだと公言している女子の花坂、彼女を追って転校してきた若草や、姉弟同志で好き合っている笹木野姉弟。教師側も百合、百合(笑)、

 別にエロい場面は出てこないが、絆に振り回されてい槙がなんとも笑える。そして絆ちゃんがとってもかわいらしいのだ。絆が男だということを示す決定的な場面は作品中には出てこない。これは槙でなくとも「本当に男か?」と疑うところだろう。最後は槙は絆が男でも女でもどうでもよくなって、二人は付き合うことになるのだが、絆は卒業したらうんと爛れた生活を送る気まんまん。大丈夫か(←槙君色々大変かも?)


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内部監査人室―内部監査人のための実践読本3


・内部監査人室―内部監査人のための実践読本
・阿久沢栄夫
・文芸社

 本書は、近年注目を浴びている内部監査について一冊に纏めたものだ。実は私も会社に勤めていた頃、内部監査部門に所属していた時期が長く、配属されたときは大いに参考にしたものだ。

 内部監査と、公認会計士監査、監査役監査の3つを合わせて3様監査というが、内部監査は他の二つのように法令により直接根拠づけられている訳ではない。内部監査は任意監査なのだ。ただ。会社法には、取締役会に対して内部統制システムの整備を義務付けているので、間接的には法律に根拠を持っているといえよう。

 ただし、任意監査なので、必ずこうしなければいけないというものはない。一般社団法人日本内部監査協会というものがあり、CIAなどの監査人資格はあるものの、別に絶対に持っておかないといけないというものはない。

 本書は、内部監査の流れは理解できるが、読者はこれを絶対視しない方がいいと思う。一つの例としてみた方がいいだおう。おそらく会社ごとに細かいところが異なってくるのではないか。私にしても細かいところには異論がある。

 はじめて内部監査部門に配属になったような人は、業務の全体像を知るにはいいだろう。そして内部監査に対するフレームワークを身に着けるのにも。


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amazon「帝国」との共存3


・amazon「帝国」との共存
・ナタリーバーグ、ミヤ・ナイツ、(監訳)成毛眞
・フォレスト出版

 本書はアマゾンの戦略について纏めたものだ。本書にはアメリカでアマゾンが展開しているものについて紹介されている。

 キーワードは、「O2O(オー・ツー・オー)」、つまりオンライン・ツー・オフラインということである。アマゾンは本国でリアル店舗を展開している。例えば、レジのないコンビニであるアマゾン・ゴーやリアル書店であるアマゾン・ブックスなど。また、生鮮食品にも食指を伸ばしている。

 そして顧客の囲い込み。これはアマゾン・プライムなどの会員にすることで、アマゾンにロイヤリティを持つ人間を増やそうとする。

<アマゾンの目標は、ペゾスがいうように「プライムに入会しないのは無責任だ」と消費者に感じさせる魅力を作り出すことだった。>(p71)


 たしかにアマゾンは何かにつけ、プライムに入会させようとしているように見える。しかし私は絶対に入会しないだろう。そこまでヘビーユーザーではないからメリットを感じられないだろうからだ。そして一度会員になったら最後、以下のように行動してしまうだろうから。

<入会者は支払った会費の元をとろうという心理が働き、ときに非合理な意思決定をしてしまう。>(p74)


 心理学に「認知的不協和理論」というものがある。要するに自分のした行動を合理化しようとして、傍から見れば不合理な行動をしてしまうのである。これは上記の行動をよく説明している。

 まだ日本で展開されていないものも、アメリカでうまくいけば、日本に進出してくるのは想像に難くない。そのとき既存の小売業はどうするのか。対アマゾンで団結するのか、それともアマゾンの傘下に加わるのか?

 いくつか、アマゾンに注文したいことがある。キンドルで本を買ったとき、こちらの名前が出るのだが、これに敬称も何もついていない。呼び捨てなのだ。そして本などに対するアダルト警告の一貫性のなさ。我々の感覚では、どうしてこれがアダルトなのだろうと思われるようなものまでアダルト警告が出てくる。もっと過激なものはそのまま出てくるにも関わらずだ。アメリカの基準なのかもしれないが、日本で商売をする以上、日本の感覚に合わせるべきだろうと思う。

 なお、本書はフォレスト出版さまからの頂きものです。ありがとうございました。

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僕には家事妖精なメイドがいます4


・僕には家事妖精なメイドがいます
・青橋由高
・美少女文庫

 主人公は臼木英太郎という男子高校生。色々事情があって、祖父の持ち物である洋館に引っ越してきた。なんとその洋館はシルキーという家事妖精付き。この家にある暖炉についてイギリスからやってきたらしい。それも超絶美女で出るところは出ておりスタイル抜群。

 シルキーとは、イングランドに伝わる家事をやってくれる妖精のことだ。絹のドレスを着ているのでシルキーと呼ばれる。

 そのシルキーの名は茶野絹葉。イギリスから来ているのにどうしてそんな名前なんだろうというツッコミはさておいて、英太郎は、「お絹さん」と呼ぶ。もう完全に、イギリスから来た感じではないような気がするが、気のせいか。

 絹葉は、家事妖精なので、家事全般はもちろん、英太郎のお世話も行う。もちろん夜のお世話まで。

 英太郎は絹葉に一目ぼれ、絹葉も英太郎のことが大好きに。2人が出会ったときは、絹葉はちょっとツンのようだったがあっという間にデレ状態になってしまう。その後は、何につけてもとにかく2人いちゃいちゃ(笑)。

 いや、こんな妖精付の家に住んでみたいという人は結構多いんじゃないかな。いくら人外でもこんなに可愛らしければ構わないんでは。

時の娘3


・時の娘
・ジョセフィン・テイ、(訳)小泉喜美子
・ハヤカワ・ミステリ文庫

 このタイトルからSF作品を連想してしまいそうだが、実はこてこてのミステリーである。本作は、著者の遺作であり、ベッドディテクティブの嚆矢とも言える作品だ。

 主人公はアラン・グラント。ロンドン警視庁の警部だ。犯人を追跡中にマンホールに落ちて骨折し、入院生活を送る羽目になってしまう。本作は、その入院生活の徒然を慰めようと、グラント警部が、歴史上のミステリーに挑戦するというものだ。

 彼が挑むのは、イングランド王だったリチャード3世。甥2人を殺した極悪人として一般には語られるが、実は無実で、その素顔は全く違うということを色々な資料から証明しようとするのがこの作品の骨子である。

 高木彬光は、この作品にインスパイアされて、「邪馬台国の秘密」や「成吉思汗の秘密」などを書いたと言われる。

 Wikipediaによれば、このタイトルは、"Truth is daughter of time."から来ているという。日本語に直すと、「真実は時の娘」、要するに、このタイトルは、「真実」という意味である。

 イギリス史をまったく知らなくても作品を楽しむことができるが、詳しい方が、一層楽しめると思う。私など〇〇△世と言われても誰だか全く分からない。一応系図はついているのだが、イギリス史を知らないと情報を読み取り難いと思う。




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ミスコン女王が殺された4


・ミスコン女王が殺された
・ジャナ・デリオン、(訳)島村浩子
・創元推理文庫

 前作で色々やらかして、犯罪組織の賞金首になってしまったCIA工作員(スパイ)のレディング(フォーチュン)。ほとぼりを覚ますために、長官の姪になりすまして、田舎町のシンフルにやってきた。本作は、前作「ワニの町から来たスパイ」に続く第二弾だ。

 ところが、パンジーという元ミスコン女王が帰ってきた。フォーチュンが成りすましている長官の姪も元ミスコン女王だ。夏祭りで二人はその経歴から、メインイベントの子供ミスコンの運営を任されるが、二人は大喧嘩をしてしまう。

 バンジーというのが、とんでもないビッチなのだが、フォーチュンと喧嘩した後、何者かに殺されてしまう。静かなはずの田舎町で前作に続き殺人事件。どうもフォーチュンは、巻き込まれ体質のようだ。そしてその犯人という濡れ衣を着さされそうになる。その疑惑を晴らそうと、フォーチュンは、ベトナム戦争帰りのアイダ・ベル、ガーティのおばあちゃんズといっしょに事件を調べ始める

 ところで、保安官助手のカーター・ルブランクは、どうもフォーチュンに気があるようだ。かなりのツンデレのようだが、ツンの部分ばかり目立つなあ。フォーチュンもこの町が気に入ってきている。仲間と言える人々もできたようだ。

 それにしてもフォーチュンは腕ききの工作員(スパイ)(本人談)のはず。いくらなんでも、犯人に殺されそうになるかなあ。犯人もビッチなことは間違いないが、素人だろうに。

〇関連書評
ワニの町に来たスパイ

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H23.3:書評コミュニティ「本が好き!」より「免許皆伝」称号を受ける

H23.3.16:読売新聞朝刊“読者のホンネ”に「カラスと髑髏―世界史の「闇」のとびらを開く」の100字書評掲載

H25.10.26発売の図書新聞(3132号、2013年11月2日号)に「泥棒は几帳面であるべし」の書評掲載

H26.6,28発売の図書新聞(3165号、2014年7月5日号)に、「市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影」の書評掲載

H28.8頃より「シミルボン」への投稿開始

H29.7.4「彗星パンスペルミア」の書評が「新刊JP]に掲載

H29.10.19「ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者」の書評が「新刊JP」に掲載

H29.11.24「ペンギン・ハイウエィ」の書評が「新刊JP」に掲載

H29.12.26.「ニッポンの奇祭」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.1.18.「問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.4.26.「メゾン刻の湯」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.20.「極道ピンポン」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.26.「シミルボン」にインタビュー記事掲載

2019.2.23.「本が好き!」×「書店フェア」で「あなたの街で本と出会う Vol.2」に「こころを彩る徒然草」のレビュー掲載

2019.04.28.【本が好き!×カドブン】コラボレビュー!第4回『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』の書評が掲載

2020.01.24.「貧乏大名“やりくり”物語 たった五千石! 名門・喜連川藩の奮闘」が「新刊JP」に掲載

2020.02.04.『どんなことからも立ち直れる人』の書評が「新刊JP」に掲載
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