風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

2019年10月

世界最強の魔法剣士師匠と竜殺し4


・世界最強の魔法剣士師匠と竜殺し
・わかつきひかる、(イラスト)西E田
・美少女文庫

 ジュブナイルポルノの旗手、わかつきひかるの作品。舞台は魔法や竜の存在する異世界。主人公はウォルフという25歳の青年。竜に両親と妹を殺され、その竜を退治するために伝説の魔法剣士と言われるマスター・ルディスに弟子入りする。ところが、中年男性と思っていたルディスは、見た感じ16歳くらいの美少女。しかし実年齢は200歳。

 最初は、まったく魔力のないウォルフの弟子入りを拒んでいたルディスだが、腹ペコキャラのルディスは、料理上手な、ウォルフに胃袋をわしづかみにされ、弟子入りを許すことになる。そこは、男と女。おまけにルディスは見た感じ16歳の美少女。ということで、歳の差なんと175歳のカップルが出来上がる。

 昼は剣術の稽古。夜は攻守入れ替わり、別のことに精出す。ルディスは、初めての男であり、超年下のウォルフがかわいくって仕方がない。ウォルフも、初めてをもらったルディスのことが大好きだ(なお、ウォルフもDTだった)。ちなみに、ルディスはMっ気もあるようで、色々目覚めたようである。端的には、次のルディスのセリフに現れているだろう。ウォルフは、ちょっとSっ気があるようだ。つまりいい組み合わせということだ(何が?)

そ、その、お尻くらいなら、叩いても、(中略)ししし、縛ってもいいぞ(p143)


 実は、ルディスは、魔法実験の失敗で、若化の魔法にかかっており、最近若返りの速度が速くなっている。あと4年でこの世から消滅してしまう運命なのだ。

 しかし、わかつきひかるの作品はハッピーエンドで終わるものが多い。この作品も例に漏れずハッピーエンドとなっている。その意味では安心して読むことができるだろう。美少女文庫なのでイラストも綺麗だ。

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狂気の科学者たち4


・狂気の科学者たち
・アレックス・バーザ、(訳)プレシ南日子
・新潮文庫

 本書を読んで一番感じたのは、色々ヘンな研究をしている人もいるんだなあということ。

 興味深かったのは、「ヒトとサルは交配可能か」(pp43-48)という研究。これは、イリヤ・イワノフ博士という人による実験だが、要はチンパンジーとの交配実験だ。

 皆さんオリバー君を覚えているだろうか? 人間とチンパンジーの混血だと騒がれた、あのオリバー君だ。確か、オリバー君の花嫁も募集され、実際にこれに応募した女性もいたと記憶している。もっとも最後には、オリバー君は、正真正銘のチンパンジーだったことが判明したらしい。

 この実験は、リアルオリバー君を作ろうというもの。チンパンジーと人間が交配可能かどうかということだが、繁殖できるかどうかを別にすれば、おそらく私は可能だろうと思う。何しろライオンと虎やヒョウが交配できたのである。

 人間とチンパンジーの遺伝子は、その99.4%が同じなのだ。出来ないと思う理由はないだろう。むしろ科学的なものより、宗教的、倫理的な忌避感の方が強いのではないだろうか。実験者の名前から分かるように、宗教を弾圧した旧ソ連の人間により計画されたというのは納得できるところだ。

 ユーモラスな研究も多い。例えば、「『くすぐったい』のは気のせい?」(pp65-70)は、「どうして自分で自分をくすぐってもくすぐったくないのか」という疑問を解明するために行われているし、「ワインの専門家は赤く染めた白ワインを見抜けるか」(pp75-79)という研究などは、芸能人を格付けする某番組を思わせる。

 また、「目に見えないゴリラ」(pp93-98)や「なぜドイツ人はユダヤ人の強制収容に反対しなかったのか」(pp347-357)はどこかで読んだり、見たりした人も多いだろう。

 前者はバスケットの試合で、なんの脈絡もなしにゴリラの着ぐるみを着た人が出てきても誰も気が付かないというものであり、後者はアイヒマン実験とも呼ばれており、普通の人でも権威者の指示があれば人を殺しかねないというものだ。どちらも多くの心理学関係の本に出てくる。

 確かに、今の基準からはマッドサイエンティストのような実験もある。例えば、人間の脳に電極をさして、同性愛者を異性愛者にする実験「性的指向を変える快楽ボタン」(pp252-259)などだ。

 タイトルに科学者とあることから、理工系の事例を想像したのだが、収録されているのは、医学・生理学的なものや、心理学的なものである。それはそれで面白かったのだが、理工系にはヘンな研究はないのだろうか。

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捜査一課 美少女部 部長 花園美玲(1)〜(4)4



・捜査一課 美少女部 部長 花園美玲(1)〜(4)
・窪リオン
・Amazon Services International, Inc.

 表紙イラストからもわかるように、絵は最近の漫画家さんと比べると決してうまいとは言えないのだが、どこか味がある。本作品は、捜査1課に作られた美少女部という組織の部長である花園美玲の物語のはずだが、なぜかその部下の喜多川鏡子の方が目立っている。

 作中でも突っ込まれているが、なぜ課の下に部があるのか謎だ。ひょっとすると、学校のクラブ活動の野球部とか美術部といった感じなのだろうか。それに美少女部が置かれているのは、ネオン東京KABUKI−CITY2丁目署なのだ。もちろん名前は架空のものだが、署というから所轄だ。しかし、捜査一課は警視庁(本庁)の組織である。所轄ならあるのは刑事課だと思うが、このあたりの関係がよく分からない。

 美少女と銘打っているが、この部長、決して「少女」という年齢ではない。花園部長の階級は警部だそうだ。キャリアだったら全員23歳(浪人してないものとする)でなれるのだが、ノンキャリアだったら最速で30歳くらい(まずそんな人はいないようだが)のはずである。それに、1巻によると、美少女部には他にも部員がいたはずだが、鏡子が部室を訪れた際に出てきただけで、それ以降、花園部長はいつも鏡子といっしょに行動して事件を解決している。

 絵は鉛筆書きなのだろうか。どうも下書きを読んでいるようで少し読みにくい。これは手持ちのKindleでカラーページを読むときにこんな感じになるので、念のためPCで確認してみた。Kindleよりははっきりして見えるものの、別にカラーという訳ではない。やはり最初からこんな感じで描かれているようだ。

 でも鏡子が犯人を逮捕する際に見せる必殺技はなかなか面白い。読者サービスも行き届いているのではないだろうか。でももっと絵がうまければと惜しい面もある。まあ、ストーリー自体は結構面白いと思う。

放課後ていぼう日誌 14



・放課後ていぼう日誌 1
・小坂泰之
・ヤングチャンピオン烈コミックス


 この作品は、「月刊ヤングチャンピオン烈」(秋田書店)に、2017年から連載されている漫画だ。ヒロインは関東から父の故郷と言う設定の、九州の海辺にある芦方町に引っ越してきた鶴木陽渚(つるぎひな)。地元にある海野高校に新入生としてやってきた女子高生である。手芸部希望だったが、なぜか堤防で「ていぼう部」の部長である黒岩悠希(くろいわゆうき)と出会い、なりゆきでその部に入ることに。でも陽渚は生き物が大の苦手。

 作品内でもつっこみがあったが、「ていぼう部」って「堤防」でもつくるような、なんか怪しげな感じだ。その実態は堤防での釣りが主体の部なのだが、陽渚の父親によれば、創立依頼の伝統ある部のようだ。ただし部員は変な人が多かったらしい。

 その伝統?に違わず、部員は変な人ばかり。部長の黒岩を筆頭に、色々大きく(といっても横幅以外)無口な大野真(おおのまこと)と陽渚が小さいころよく遊んだ帆高夏海(ほだかなつみ)という少女。別に海野高校は女子高というわけではないが、「ていぼう部」の部員はみんな女子ばかり。調べてみると、この巻には出てこないが顧問も女子で、養護教諭の小谷さやかという人らしい。

 そしてこの巻で釣られるのは、タコ、小アジ、マゴチ。釣り漫画は数あれど、JKたちが釣りの楽しさをガイドするようなものは初めてだ。

 インドア派だった陽渚が、「ていぼう部」の活動を通じて次第に釣りの楽しさに目覚めていく内容かと思ったら、どうも活動は釣りだけではないようである。次巻の予告に「狩り」という言葉が出てくるし、最初に黒岩部長が活動は釣りだけではないと言っていたのである。果たして釣り以外にどんな活動をするのか?堤防をつくるのか?それは次巻のお楽しみ。

 来年4月からテレビアニメ化されることが決まったということで放映されるのが楽しみだ。

三江線クルーズ1,25


・三江線クルーズ1,2
・Dangyo.K

 みなさん、三江線というJR線路をご存知だろうか。三次駅と山陰本線江津駅を結ぶ超ローカル線だ。なにしろ列車が走っているのを見かけたらラッキーとささやかれているくらいである。しかし沿線には風光明媚なところが多く、中国太郎と言われる江の川の景色を眺めながらのんびりと鉄道旅をすることができる。実は私も廃線間近にツアーで初めて三江線に乗ってきた。さすがに今住んでいるところからはちょっと遠いので、そう気軽にはいけないのである。

 本作品は、昨年3月末に廃線となったこの三江線沿線の魅力を一連の4コマ漫画で発信したものだ。なお、キンドル版で読めるのは2巻までだが、それ以降も岩見川本鉄道研究会公式サイトに掲載されている。

 特にお勧めなのは、三江線のシンボルともいえる宇津井駅。高架の上に作られた駅で、別名「天空の駅」とも呼ばれる。この宇津井駅を含む鉄道遺産が、島根県邑南町に無償譲渡され、来年4月から鉄道公園としてオープンされるということなので、興味があれば行ってみて欲しい。岩見川本駅近くではランチのできる店が結構あるという。また潮駅近くには温泉もある。

 一度廃線になったら、それを復活させるのは非常に難しい。(不可能と書かなかったのは、同じく廃線となった広島県を走る可部線の可部駅〜三段峡駅までのうち、可部駅 - あき亀山駅間が復活した事例があるからだ。しかし他に例はないらしい。)しかし、ローカル線こそ旅の魅力にあふれている。この作品は、そんな三江線沿線の魅力を良く表している。
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あーーーーー!!!仕事も人間関係もいろいろめんどくさ!!!と思ったら読む 人生をシンプルにする本4


・あーーーーー!!!仕事も人間関係もいろいろめんどくさ!!!と思ったら読む 人生をシンプルにする本
・山田マキ
・ダイヤモンド社

 本書を流れる考え方を一言で言えば、「人は人、自分は自分」ということ。例えばこのような記述がある。

人生をシンプルにするために必要なこと。一つ目は、「自分と他人との境目をはっきりさせる!」ことです。(p16)
どれだけ間柄が近いひとであっても、どれだけ似ているところがたくさんあったとしても、その人は自分ではなくあくまでも別の人。自分のことを100%理解してくれるために存在しているのではない、ということを言い聞かせないといけません。(p19)
人は人、自分は自分。そうして分別をつけるのが大事だとお伝えしたわけですが・・・(p20)


 どうして、人のやること言うことに影響されないといけないのだろう。別に人のうわさや悪口に付き合う必要はないし、人の言うこと、やることをいちいち評価することもないのだ。いい人を演じる必要はないし、自虐に陥る必要もない。「人は人、自分は自分」と思っていれば、自分の道をいけるのだ。要は「個」の確立である。

 私には理解できないのだが、女子の中にはトイレにいくのにも連れ立って行く人がいる。こういった女子は、私の学校時代にもいた。最近では男子も弁当を仲間でいっしょになって食べないといけないらしい。「ボッチ飯」や「便所飯」という言葉があるらしいが、トイレくらいひとりで行けよ、飯くらい一人で食えよと思ってしまう。

 ネットの世界には、やたらとマウントを取りたがり、どこの誰かも分からないのに自分を偉く見せたい人間がけっこういる。これは自分の自信のなさの裏返しだろう。

一見自信がたっぷりに見える言動は、自分に自信がないからこそ自分を大きくみせようとしているのであり、(以下略)(p27)


 自分に自信のある人間はあまりマウントをとりにはいかないものだ。それどころか謙虚ですらある。

 人に迎合しがちで、それが悩みの種になっているような人は、本書を一読してみるのもいいだろう。人のことが気にならなければ、大分心が軽くなるに違いない。


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ホワイトハウスの記憶速読術4


・ホワイトハウスの記憶速読術
・斉藤英治
・ふたばらいふ新書

 昔から速読法の類は、色々試してきた。何しろ積読本だけでも本当に一生の間に読めるのかというくらいある。それに新刊の面白そうなものが加われば、普通の読み方をしていれば絶望的だろう。

 さて、本書は、歴代のアメリカ大統領が学んだという記憶速読術について解説したものだ。ニクソン大統領やそのスタッフに記憶速読術を教授したピーター・カンプ氏の手法を中心にして、日本人向けに改良を加えたものだという。私見ではあるが、この「記憶速読術」という言葉に注目して欲しい。要するに、単なる「記憶術」や「速読術」ではだめなのだ。素早く読んで、内容を記憶してこそ、ビジネスなどに役立てることができるのである。

 皆さんは本などを読んだ後、さて何が書いてあったのかを思い出そうとすると、まったく記憶に残っていなかったという体験はないだろうか。実は私には時々ある。特に自分が全く興味がないようなものだと、それが顕著なようだ。

 本書には、スキミングやスキャニングなど、重要なテクニックが多く紹介されている。もしこういったことを、これまでやったことがないという人は試して欲しい。劇的な変化はないにしてもある程度は読みかたの改善ができると思う。

 世の中には速読自慢という人がいる。テレビにも時々出てくるが、あっという間に1冊の本を読んでしまうというものだ。私は常々、あれに疑問を抱いている。速読ができるということは、それが速読できるような本だからではないのか。専門書などが同じような速さで読めるのだろうか。

 写真記憶という異能を持っている人は良く聞く。しかし、写真記憶したとしてもその内容に対しては、解釈という作業が入る。自分が疎い分野などは本当に解釈できるのか?もっとも脳自体が分からないことの塊のようなものである。無意識の領域で解釈のような作業が行われている可能性は否定できないのだが。

 本書には、このような記述がある。

専門分野を学んでいる人は、その分野での基本となる重要な本やテキストを何度も読むことだ。最初に読むときは時間がかかるかもしれないが、二回目、三回目となると本のなかの様々な部分は知っているので、素早く読むことができ、記憶を思い起こすことができる。(p51)


医師や物理学者などの専門家は、その分野の知識の蓄積があるために、その分野の難解な専門書でも理解して速く読めるが、専門外の人にとっては、このような専門書を読んでも、何のことか理解できず、読書スピードも上がらないことからもわかる。
 また、知識の蓄積の少ない小学生や、専門外の高度な分野の本を初めて読む場合など、いくら短期的に集中的に速読訓練などをしても、頭脳内に照合すべき専門的な知識・記憶がない限り、高度な専門書を速く理解して読むことはできない。
(p92)


 この主張には賛成だ。もちろん、速読できることが、知識の蓄積を行うために有利なのは言うまでもないだろうが、決して速読技術だけではないのだ。専門書を理解できる知力と言うものが要求されるのである。そして、そのためには意識的な努力が必要なのである。

 本書は、現在は中古品しか手に入らないようだが、見かけたらぜひ一読することをお勧めしたい。



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H23.3:書評コミュニティ「本が好き!」より「免許皆伝」称号を受ける

H23.3.16:読売新聞朝刊“読者のホンネ”に「カラスと髑髏―世界史の「闇」のとびらを開く」の100字書評掲載

H25.10.26発売の図書新聞(3132号、2013年11月2日号)に「泥棒は几帳面であるべし」の書評掲載

H26.6,28発売の図書新聞(3165号、2014年7月5日号)に、「市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影」の書評掲載

H28.8頃より「シミルボン」への投稿開始

H29.7.4「彗星パンスペルミア」の書評が「新刊JP]に掲載

H29.10.19「ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者」の書評が「新刊JP」に掲載

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H30.1.18.「問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.4.26.「メゾン刻の湯」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.20.「極道ピンポン」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.26.「シミルボン」にインタビュー記事掲載

2019.2.23.「本が好き!」×「書店フェア」で「あなたの街で本と出会う Vol.2」に「こころを彩る徒然草」のレビュー掲載

2019.04.28.【本が好き!×カドブン】コラボレビュー!第4回『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』の書評が掲載

2020.01.24.「貧乏大名“やりくり”物語 たった五千石! 名門・喜連川藩の奮闘」が「新刊JP」に掲載

2020.02.04.『どんなことからも立ち直れる人』の書評が「新刊JP」に掲載
本が好き!免許皆伝レビュアー風竜胆
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