風竜胆の書評

コミックスから専門書まで、あらゆる本を読みます。元エネルギー企業の専任部長。現在は、ライター・書評家を標榜する自由人w 時に書評が過激になるのは、長州人の血? 現在「シミルボン」と「本が好き!」でも活動中。 執筆依頼、献本等歓迎します。右欄のメッセージ機能にてご連絡ください。 旧ブログ名:本の宇宙(そら)

2019年11月

珈琲店タレーランの事件簿 6  コーヒーカップいっぱいの愛4


・珈琲店タレーランの事件簿 6  コーヒーカップいっぱいの愛
・岡崎琢磨
・宝島文庫

 なんと3年ぶりに新作が出たこのシリーズ。前巻でアオヤマ氏が、切間美星にプロポーズの言葉らしき言葉を言っていたので、てっきり前巻で完結したと思っていたら、まさかの新作。

 逆に言えば、この3年間全く二人の仲は進展していなかったことになる。何をやっているんだアオヤマ。

 この巻では、タレーランのオーナーで美星の大叔父でもある藻川又次が狭心症で倒れてしまう。又次の妻千恵が生きていたころ、又次がコーヒーカップを割ってしまったときに、怒った千恵が1週間帰ってこなかったことがあった。今回のテーマは、この謎解きをすること。そして明らかになってくる、画家で故人の影井城と千恵との関係。

 アオヤマ、美星は、静岡からやってきた又次の孫という藻川小原(オハラ)といっしょに当時のことを調べ始める。最後にどんでん返しなんかがあったりして、なかなか楽しめる。

 こんどこそ、最後にプロポーズの言葉があったので、これで完結だろう。

「僕はあなた以外と結婚なんてしない。(中略)藻川さんと奥さんのような、素敵な二人になりたいと思っています。美星さん、僕と正式にお付き合いしていただけませんか」(p296)


 でもヘタレのアオヤマ君のことひょっとしたら、また何の進展もないまま、次巻が発売される可能性もある。おまけに作家には、プロポーズを無かったことにするという必殺技もあるからなあ。 


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白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記3



・白銀の墟 玄の月 第二巻 十二国記
・小野不由美
・新潮社

 中国風の異世界を舞台にした十二国記。この世界では、麒麟が、天の意思に沿って王を選ぶ。麒麟と言うのは、某ビールメーカーの瓶に絵があるように、中国の霊獣としてしられているが、この作品世界では人間の姿をしている。そして選ばれた王は不老不死になるらしい。本書は、新作文庫4巻構成の第2巻。舞台は、戴国。18年ぶりの新刊だという。この国では阿選という男が、王の驍宗に反旗を翻して、覇者となっている。

 大分前にNHKでアニメを放映していたので雰囲気は分かっていた。帯にシリーズ累計1000万部突破とあるように、熱球的なファンがいることも理解できるような気がする。

 あえて言えば、「グイン・サーガ」(栗本薫:栗本の死後、五代ゆう、宵野ゆめが書き継ぎ)となんとなく似ているのだろうか。嵌る人は嵌るんだろうと思う。今回は、私がこの作品に嵌るかどうかという実験も兼ねていたのだが、どうもそこまではいかなかったようだ。

 ハイファンタジーなのだが、その世界で無双しまくる絶対強者のようなものは出てこない。どうも古代中国を舞台にした作品を読んでいるようで、この巻を読む限り、別に異世界の物語にするだけの根拠は見当たらなかった。

「しかも、地の底から妖魔が湧く。」(p130)
「これまでに三度、出たことがある。二度が妖魔で一度は妖獣だ。」(p138)
「黄海は妖魔の跋扈する人外の地で、・・」(p191)
「瑞州に妖魔が出て大変な騒ぎになったことがございますが・・」(p308)
「獣の姿も、妖魔の影もない。」(p420)
 


と言うような記述があるように、この世界にも魔物がいるのだが、あまり存在感がない。確かアニメでは結構出ていたような記憶があるが、この巻では、直接は出てこず、話の中に出るばかりなのだ。

 注文したいのは、登場人物が多いので、主要な登場人物だけでも、巻頭にでも簡単な紹介文をつける方がいいと思う。それと色々な官位が出てくるが、これも組織図のようなものも欲しい。そして4巻構成にするからには、前巻までの簡単なあらすじを付けるなど、途中から読みだした人へのサービスも欲しいところだ。

 熱狂的なファンなら不要なのだろうが、そうでもない人、たまたま読んだ人にとっては、あった方が親切ではないかと思う。特に今回は、前作から年数が経っているのだから、この作品の世界観を占めすなり、なにか工夫が欲しかった。
 
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ブタカン!〜池谷美咲の演劇部日誌〜4



・ブタカン!〜池谷美咲の演劇部日誌〜
・青柳碧人
・新潮文庫

 ブタカンというとあなたは何を連想するだろうか。決して鯖缶や鰯缶のような、豚の缶詰という意味ではない。舞台監督の略だ。ヒロインの池谷美咲は、父が餃子屋の経営に失敗して極貧の暮らし。何しろ、白飯だけの弁当に、幼馴染の親友の北条ナナコからおかずをのせてもらっていたくらいである。

 このナナコ、人を驚かせるのが得意である。家出をすれば、鹿児島の漁師の家に居候していたり、温泉を掘るといって、不発弾を掘り当てたり、昆虫採集に行っては、絶滅したはずの古代トンボを捕まえる。

 家に生活費を入れようと、アルバイトに明け暮れ、美咲には、部活などに割く時間はなかった。ところが美咲が高校2年になったころ、伯父が、宝くじに当たり、そのおかげで借金は完済。アルバイトに明け暮れなくとも良くなったのだ。美咲は遅まきながら部活をやって高校生活を謳歌しようと、ナナコの入っていた演劇部に入ることにする。

 ところが、今度はナナコが病に倒れる。本人曰く「白血病的な」病気らしい。病に倒れた親友の代わりに、舞台監督をやることになった美咲だが、この部、奇人・変人ばかり。

 いかにも著者らしく、変なネタが満載なのである。なにしろ演じる劇が、「走るなメロス」だったり、「白柚子姫と六人の忍者」だったり。でも全体を通して、美咲が舞台監督として成長していく物語なのだろう。

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今まで一度も女扱いされたことがない女騎士を女扱いする漫画45



・今まで一度も女扱いされたことがない女騎士を女扱いする漫画4
・マツモトケンゴ
・講談社

 「無敗の聖剣」、「聖剣さま」との二つ名を持つ女騎士、レオ・コルネリアと、そんなレオに恋をした腹筋女子萌えの魔法使いのフーリー・デントが織りなすラブコメ第4弾。

 この巻では新しい登場人物が二人出てくる。一人は、レオの後輩にあたる近衛騎士フルール・バラノヴァ。美人だけどかなりウザい性格をしていて、喋り方が「〇〇ス」と完全に三下口調である。レオ曰く、「ポンコツな癖にすぐイキがるバカ」(p23)らしい。

 フルールと勝負をすることになり、瞬殺されたフーリーだが、レオの腹筋に触れたことにより、驚異的な力を得てフルールを圧倒。そんなフーリーの強さを目の当たりにしてフルールの猛アピールが始まる。フルール曰く、フーリーの嫁、もとい愛人いや奴隷だそうだ。フーリーは少し引き気味。

 もう一人は、メルヴィーという存在。レオと互角に戦ったと言う魔王候補のイルムガルドに勝つという強敵だ。以前レオと戦ったことがあるようだ。最後はメルヴィーに襲われフーリーピンチ。今回はいつものようなオチはなさそうである。

 その他にもフーリーが他の女の子といると、嫉妬しているレオの表情がなんとも可愛らしい。

 爆笑したのは、マーラという魔物を討伐する話。この魔物、攻撃性はないが、交尾している姿を人間に見せて興奮するという性質がある。どうも作者が深夜テンションで描いたらしいが、とにかく笑える。

〇関連書評
今まで一度も女扱いされたことがない女騎士を女扱いする漫画3
今まで一度も女扱いされたことがない女騎士を女扱いする漫画2
今まで一度も女扱いされたことがない女騎士を女扱いする漫画

古典の裏3


・古典の裏
・松村瞳
・笠間書院

 タイトルに「裏」とあったので、どれだけどろどろしたものかとも思ったのだが、その古典が書かれた背景を解説したものだった。基本的にはQ&A方式で書かれているのだが、これがなかなか面白い。例えば、枕草子に昼間の時間帯が出てこないという。それは清少納言が夜勤だからだそうだ。色々コンプレックスのあった清少納言は、仕えていた中宮定子の計らいで、彼女が恥ずかしがらなくてもよいように、姿の見えにくい夜勤になったという。

 なぜそんなに恥ずかしかったのかと言えば、痩せていたからだという。当時の美人の条件は太っていること。今とは大分美の基準が違うのである。これは納得できる。美男・美女の基準が不変だとすれば、遺伝の法則により、そうでない者は駆逐されていくはずなので、この世は美男・美女だらけになっている筈だ。しかし必ずしもそうでないことは皆さんご存知の通り。これは美の基準が時代時代で変わっていたことから説明できるだろう。

 ただ、断定的に書かれてはいても、良く読めば、こういった説もあるというものもあるので、すべてがその通りという訳ではない。例えば徒然草の吉田兼好には、幕府や朝廷のスパイだったという説があるとのことだが、Q&Aでは、スパイであったことが断定的に書かれている(p97)

 取り上げられているのは、枕草子、源氏物語、徒然草、平家物語、竹取物語、方丈記、土佐日記、伊勢物語、更級日記、大鏡。古典の教科書にでてくるようなものは網羅してある感じだ。

 ただ幾つか気になることもある。例えば次のような記述だ。

ちなみにこのころの(評者注:鎌倉時代)仏教は基本的には「密教」です。理詰めの顕教に比べ、不思議なパワーが救ってくれるとした密教の方が、人々には断然ウケました。(p121)


 これは、浄土系の仏教がひたすら念仏を唱えればいいため、学問のない庶民も簡単に帰依できたことの説明として述べられているものだが、密教とは大日如来の秘密の教えだから密教という。そして密教とは真言宗系の東密と天台宗系の台密(厳密にはこれらの前に部分的に日本に入った雑密がある。また天台宗では顕密一致として顕教も密教も同列に扱われた。)しかないはずだ。だから浄土系の仏教も日蓮宗も密教ではない。

 こういった記述もある。

織田信長は織田家の嫡男として生まれたと思われがちですが、実際には3男でした。(p225)


 これは嫡男と長男の区別がついていないということではないか。正室の子は庶子よりは優先権があり、例え庶兄がいたとしても、正室の一番上の子が嫡男となる。その子が長男かどうかはあまり関係ない。また信長は3男だとあるが、兄弟の多くは生年が不明で、確実に兄と言われるのは、庶兄の信宏が一人だけだ。だから3男の可能性もゼロではないが、言い切るだけの証拠はない。

 このように疑問点もあるが、それを割り引いてもなかなか楽しい。これもうわさ話を面白がる人間の性だろうか。ただ時代が古すぎて、誰も迷惑する人はいないのでいいかなと思う。


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女子かう生1,25


・女子かう生1,2
・若井ケン
・アクションコミックス

 ちょっと変わった漫画だ。登場人物のセリフがまったくない。絵と擬音だけで読ませる漫画である。1巻あたり10話あるのだが、各話には、いずれも「女子かう生と〇〇」というタイトルがつけられている。主な登場人物は、ちょっとおバカだけど美人の富戸もも子と、委員長タイプでツッコミ役の渋沢しぶ美、そして転校生で内気な古井まゆみの3人である。特に大きな事件が起きる訳ではない。描かれているのは、可愛らしい彼女たちの日常の風景。

 1巻巻末のおまけ漫画「女子かう生と朝の出席」に、彼女たちが2年の時の出席簿に教師が特徴を一言ずつ書いているが、これが端的に彼女たちの特徴を表していて面白いので、紹介しておこう。もも子、しぶ美、まゆみの順に、それぞれ「残念美人」、「思いの〇脳筋」(〇部分は見えないがおそらく外だと思われる)、「小さい。まゆげ」である。そして3人纏めると「かしまし娘」らしい(笑)。

 実は転校生のまゆみはその内気な性格もあり、最初は友達もできず、隣のもも子のことも、外見の派手さから怖がっていた。しかし、もも子が影絵で遊んでいたところに加わり、まずもも子と仲良くなり、もも子としぶ美が仲が良かったことから3人で行動するようになった。そのしぶ美も小学校のころに、もも子の優しさに触れて仲良くなったという過去がある。

 読んでいて、ほっこりした気になってくる。不思議な魅力の作品である。

 

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ビジネスと生活を100%楽しめる! 陰山手帳20204


・ビジネスと生活を100%楽しめる! 陰山手帳2020
・陰山英男
・ダイヤモンド社

 影山英男氏といえば、立命館大学の教授や立命館小学校の副校長を歴任した人だが、元々は兵庫県の山口小学校で基礎学力向上のため、いろいろと改革を行って成果を上げてきた人だ。その陰山氏がプロデュースしたのがこの手帳。

 この時期になると手帳が書店に並ぶが、それを見る度にもう1年が終わるんだなあと思う。この1年あまり自分が進歩したようには見えないのに、時間だけが粛々と過ぎていくという感じだ。しかし、来年こそ、この手帳を活用して新たな成長を実感したいと思う。

 今回出るのは、通常版3種類とライト版1種類だ。通常版の方は昨年とあまり変わりはないのだが、ライト版の方は昨年2種類が出ていたのに今年は1種類だ。しかし、表紙がリバーシブルになっており、裏がエメラルドグリーンになっている。少しずつこちらも進化しているということだろうか。

 自由人になってから、毎日決まった時間会社にいなければならないという制約がなくなり、もっと時間的には余裕ができるものと思っていた。しかし、不思議なことに、結構やることが多く、あまり時間的な余裕ができたとは感じられない。

 来年こそは、この手帳を活用して、実り多い1年にしたいと思う。ビジネスに使うにせよ、勉強に使うにせよ、それだけの内容がこの手帳にはあるだろう。


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H23.3:書評コミュニティ「本が好き!」より「免許皆伝」称号を受ける

H23.3.16:読売新聞朝刊“読者のホンネ”に「カラスと髑髏―世界史の「闇」のとびらを開く」の100字書評掲載

H25.10.26発売の図書新聞(3132号、2013年11月2日号)に「泥棒は几帳面であるべし」の書評掲載

H26.6,28発売の図書新聞(3165号、2014年7月5日号)に、「市場主義のたそがれ―新自由主義の光と影」の書評掲載

H28.8頃より「シミルボン」への投稿開始

H29.7.4「彗星パンスペルミア」の書評が「新刊JP]に掲載

H29.10.19「ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者」の書評が「新刊JP」に掲載

H29.11.24「ペンギン・ハイウエィ」の書評が「新刊JP」に掲載

H29.12.26.「ニッポンの奇祭」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.1.18.「問題解決大全――ビジネスや人生のハードルを乗り越える37のツール」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.4.26.「メゾン刻の湯」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.20.「極道ピンポン」の書評が「新刊JP」に掲載

H30.7.26.「シミルボン」にインタビュー記事掲載

2019.2.23.「本が好き!」×「書店フェア」で「あなたの街で本と出会う Vol.2」に「こころを彩る徒然草」のレビュー掲載

2019.04.28.【本が好き!×カドブン】コラボレビュー!第4回『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』の書評が掲載

2020.01.24.「貧乏大名“やりくり”物語 たった五千石! 名門・喜連川藩の奮闘」が「新刊JP」に掲載

2020.02.04.『どんなことからも立ち直れる人』の書評が「新刊JP」に掲載
本が好き!免許皆伝レビュアー風竜胆
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